地域分析記事

地域の暮らしと地域課題を数学とデータで考える

人口減少が進む地域では、「自治会や町内会に入る人が減った」という話を聞くことがあります。

しかし、本当に問題なのは加入者数だけなのでしょうか。

地域には、

草刈り ごみ集積所の清掃 道路や水路周辺の管理 防災活動 防犯活動 回覧 集会所の管理 祭りや地域行事 高齢者の見守り

など、これまで住民が共同で担ってきた仕事があります。

人口が半分になれば、こうした仕事も自動的に半分になるのであれば問題は比較的小さいでしょう。

ところが現実には、

人口が減る速度と、地域で管理しなければならない道路・土地・ごみ集積所・施設などが減る速度は一致しません。

ここに、人口減少地域の自治会・町内会が抱える構造的な問題があります。

最初に結論~30年後も「今と同じ自治会」を維持するのは難しい地域が増える

結論からいえば、外房を含む人口減少地域で自治会・町内会そのものが30年後にすべてなくなるとはいえません。

防災、ごみ、生活環境、住民間の連絡など、地域単位で調整する仕組みには今後も必要性があります。

しかし、

現在と同じ人数、同じ区域、同じ役職数、同じ共同作業、同じ頻度のまま30年間維持できる

と考えるのは現実的ではありません。

必要なのは、

「どうすれば今までの自治会活動を全部残せるか」

ではなく、

「何を地域住民が担い続ける必要があり、何を減らし、何を行政・民間へ移し、どの区域を再編するか」

を考えることです。

墓地や菩提寺の管理と同じように、

次世代へ同じ仕事をそのまま渡すのではなく、次世代が引き継がなければならない仕事そのものを減らす

という発想が必要になります。

自治会・町内会は何をしているのか

自治会・町内会の活動は地域によって異なります。

千葉県も、自治会・町内会などの地縁団体について、環境美化、防災・防犯、地域の見守り、健康づくり、イベントなど多様な活動を担う一方、加入率低下、担い手不足、活動停滞などの問題が生じていると整理しています。

つまり自治会の問題は、

祭りを続けられるか

という文化活動だけの問題ではありません。

日常生活に近いところでは、

ごみ集積所 草刈り 防犯灯 防災訓練 地域内の連絡

などにも関係しています。

ここを分けて考える必要があります。

例えば夏祭りを中止しても、生活そのものが直ちに成立しなくなるわけではありません。

しかし、ごみ集積所の管理者がいなくなる問題は日常生活に直接影響します。

自治会活動を一括して「必要」「不要」と評価するのではなく、

生活維持に必要な機能と、縮小・廃止できる活動を分ける

必要があります。

外房では2050年までに人口が大きく減ると推計されている

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」を見ると、外房の多くの自治体では2050年まで人口減少が続くと推計されています。

2020年から2050年では、

勝浦市 16,927人 → 8,815人 2020年比52.1%

いすみ市 35,544人 → 20,218人 2020年比56.9%

御宿町 6,874人 → 4,381人 2020年比63.7%

です。

これは2020年国勢調査を基準とした将来推計であり、2050年の実績人口を保証するものではありませんが、現在の地域活動を考える際には無視できない規模の人口変化です。

ここで重要なのは、

人口が40%減る =草刈りする場所も40%減る

ではないことです。

道路の長さは簡単には40%減りません。

既存住宅地の道路も残ります。

ごみ集積所も、人口と同じ速度で統廃合できるとは限りません。

集会所もあります。

水路もあります。

空き地や空き家が増えれば、逆に草木管理が難しくなる場所も出てきます。

そのため、人口だけを見ていては地域管理の実態を判断できません。

勝浦市ではすでに「草刈りを誰が続けるのか」が問題になっている

これは30年後だけの仮定の話ではありません。

勝浦市議会では2021年、市道の除草について具体的な議論が行われています。

当時の議会記録では、市道総延長約24万6,000メートルに対して、市が行う除草区間の割合が13%とされ、それ以外の場所では農地所有者、耕作者、地域住民などが草刈りをしている状況が議論されています。

さらに議員からは、ある区では年5回、区民総出で草刈りをしているものの、作業がきつくなってきているという地域の実情が紹介されています。

また、農地所有者や耕作者自身の高齢化が進み、「5年後、10年後に草刈りをする人が本当にいるのか」という問題も指摘されています。

この事例は非常に重要です。

草刈りという作業は、

参加者が減ったから必要なくなる

わけではありません。

草は毎年伸びます。

地域住民が100人から50人になっても、道路延長が同じなら、必要な除草作業量は大きくは減らない可能性があります。

「人口減少率」と「共同作業減少率」は違う

ここで地域活動を簡単な式で整理してみます。

地域維持負担 =地域共同作業量 ÷ 実際に作業可能な人数

これは公式統計の指標ではなく、本記事で問題を整理するための概念式です。

例えば地域全体で年間100という作業量があり、それを50人で担っていたとします。

一人当たりの負担は、

100 ÷ 50 =2

です。

その後、作業量が90までしか減らない一方、実際に作業できる人が25人になったとすると、

90 ÷ 25 =3.6

となります。

人口そのものは半分近くになっても、一人当たりの負担は減るどころか増えます。

人口減少地域では、この構造が起こり得ます。

しかも現実には、「人口」と「作業可能人数」も同じではありません。

乳幼児 児童 身体的に作業が難しい高齢者 仕事で地域活動に参加できない人 長期間地域を離れている人

なども人口には含まれます。

したがって、本当に見るべきなのは、

総人口

ではなく、

実際に地域作業を担える人数

です。

高齢者が増えることと、地域活動の担い手が増えることは同じではない

地方では、「高齢者は時間があるから地域活動をお願いすればよい」という考え方が残っている場合があります。

しかし、これは長期的には成立しにくいでしょう。

70歳でも草刈りができる人はいます。

80歳でも地域活動を続ける人もいます。

しかし、それを地域制度の前提にはできません。

草刈り機を使う作業では転倒や飛散物などの危険もあります。

真夏の共同作業なら暑熱環境への配慮も必要です。

つまり、

高齢者が地域に住んでいる =共同作業の労働力が存在する

ではありません。

自治会員数ではなく、

安全に作業できる人数

を見る必要があります。

ごみ集積所も「行政が全部管理している」とは限らない

生活に最も身近な例が、ごみ集積所です。

勝浦市は2026年3月更新のごみ分別案内で、ごみ集積所について「共同で使用しており、その管理は地域の皆様で行っています」と案内しています。

さらに勝浦市が過去に市民からの質問へ回答した資料では、ごみステーションは区や自治会などの代表者を通して設置場所を選定し、市が指定し、自治会の代表者や利用者が分別、管理、清掃を行う仕組みが説明されています。

いすみ市の2026年版「くらしのガイドブック」でも、ごみ集積所について、自治会や地域住民が管理し、利用範囲も管理する団体が決めると案内されています。

つまり自治体がごみ収集車を走らせていても、

集積所そのものの日常管理

まで行政がすべて行っているとは限りません。

この区別は重要です。

行政が行う 「ごみ収集」

と、

地域が行う 「集積所管理」

は別の仕事だからです。

自治会員が減っても、ごみは毎週出る

例えば50世帯の地域にごみ集積所が2か所あり、当番制で清掃しているとします。

30年後に30世帯になったとしても、ごみ集積所をすぐ1か所にできるとは限りません。

住宅が広い範囲に散らばっていれば、1か所に統合すると高齢者のごみ出し距離が長くなる可能性があります。

すると、

集積所を減らす → 管理負担は減る → 住民のごみ運搬負担は増える

という関係になります。

逆に集積所を現在のまま維持すれば、

利用世帯が減る → 当番が回ってくる頻度が上がる

可能性があります。

つまり単純な解決方法はありません。

地域管理を効率化すると住民側の移動負担が増えることもあります。

自治会に加入しない人が増えると何が起きるのか

自治会への加入は一律に法律で義務づけられているものではありません。

その一方で、実際の地域生活では、

ごみ集積所 防災 清掃 環境整備

など、自治会員と非自治会員を完全に分離することが難しい機能があります。

ここで問題になるのが、

費用や労働を誰が負担するのか

という点です。

例えば10世帯で管理する設備を5世帯だけが管理して、残り5世帯も同じ利益を受ける状態が続けば、負担する側に不公平感が生じる可能性があります。

しかし、その解決を単純に

「全員自治会へ加入させる」

ことだけに求めるのも現実的ではありません。

むしろ、

生活インフラとして全住民が利用する部分と、自治会員だけが行う任意活動を整理する

必要があります。

ごみ、防災、安全など地域生活に不可欠な機能を、任意団体の無償労働へどこまで依存し続けるのかという問題です。

最大の問題は役員より「実働部隊」が減ること

自治会の担い手不足というと、

会長になってくれる人がいない

という問題が注目されます。

もちろん役員不足も重要です。

しかし人口減少地域では、さらに深刻なのが、

実際の作業をする人数の減少

です。

会長が一人決まっていても、

草刈り10人 集会所清掃5人 防災訓練20人

が必要なら、会長一人では地域活動を維持できません。

そのため自治会の持続可能性を見る場合には、

役員充足率

だけでは不十分です。

例えば、

実働可能率 =共同作業へ参加できる人数 ÷ 加入世帯数

のような指標で考える必要があります。

これも公式指標ではなく、分析のための概念的整理です。

「若い人に任せればよい」は解決策にならない

人口減少地域でよくある議論に、

「若い世代に引き継いでもらえばよい」

というものがあります。

しかし若い世代そのものが減っている地域では成立しません。

さらに現役世代には、

仕事 子育て 介護 通勤

があります。

高齢者が平日昼間に行っていた作業を、そのまま現役世代へ移せるとは限りません。

人口減少地域では、

60人で行っていた共同作業を30人で続ける方法

ではなく、

60人で行っていた仕事を、30人でもできる量まで減らす方法

を考える必要があります。

デジタル化で解決できる部分と、できない部分がある

自治会改革ではデジタル化も重要です。

回覧板 会議案内 出欠確認 資料配布 会計処理

などは、電子化によって負担を減らせる可能性があります。

国の地域コミュニティをめぐる議論でも、デジタル化、活動負担の軽減、多様な主体との連携などが自治会・町内会改革の方向として示されています。

しかし、

草刈り ごみ集積所清掃 倒木処理 水路清掃

はスマートフォンではできません。

AI(Artificial Intelligence・人工知能)を導入しても草そのものが消えるわけではありません。

したがってデジタル化は、

事務作業を減らす

ためには有効でも、

物理的な維持作業そのものを減らす政策とは別

に考える必要があります。

外注すれば解決するのか

次に考えられるのが外注です。

例えば住民20人で半日かけて行っていた草刈りを、造園業者や建設業者へ委託すれば、住民の身体的負担は軽減できます。

これは有力な方法です。

しかし、

無償労働 ↓ 有償労働

へ変わるため、今度は費用が発生します。

つまり、

労働力不足の問題 ↓ 財源の問題

へ変換されます。

人口減少で自治会員が減れば、自治会費だけで外注費を負担することも難しくなる可能性があります。

そのため、

外注すれば解決

ではなく、

どの作業を外注し 年間いくらかかり 何世帯で負担し 30年間続けられるか

まで考える必要があります。

行政が全部行えばよいのか

もう一つの考え方は、

「自治会ができないなら行政がやればよい」

というものです。

しかしこれも簡単ではありません。

自治会員が減る地域では、多くの場合、自治体人口そのものも減っています。

人口が減れば地方税収や行政職員数を現在と同じ規模で維持することが難しくなる可能性があります。

一方で、

道路 水道 公共施設 ごみ収集 福祉 防災

など行政が維持すべき仕事は残ります。

地域住民が無償で担ってきた草刈りや施設管理まで行政へ移せば、その分だけ行政側の人件費や委託費が増えます。

したがって、

住民負担をゼロにする

という考え方だけではなく、

住民・行政・民間のどこが担当すると社会全体の負担が最も小さくなるのか

を考える必要があります。

自治会を統合すればよいのか

小規模自治会を統合する方法もあります。

例えば、

A地区20世帯 B地区15世帯 C地区15世帯

を一つの50世帯規模の組織へ統合すれば、

会長 副会長 会計

などの役員数を減らせる可能性があります。

これは事務面では合理的です。

しかし、

ごみ集積所 草刈り場所 水路 道路

まで一つになるわけではありません。

区域が広がれば、会合や共同作業への移動距離が増える可能性もあります。

つまり自治会統合は、

組織管理コストを減らせても、地域に存在する物理的管理対象を自動的には減らさない

という限界があります。

30年後も残すべき仕事を先に決める

将来の自治会改革で重要なのは、活動を一度すべて並べることです。

例えば、

優先度が高いもの

防災 災害時の安否確認 ごみ集積所 危険箇所の把握 最低限の生活環境管理

地域によって判断できるもの

草刈り 集会所管理 防犯活動 回覧

縮小・統合を検討できるもの

頻繁な会議 慣例的な行事 過剰な役職 形式的な会合 長年続けているだけの作業

のように分ける方法があります。

何を残すかは各地域によって違います。

重要なのは、

「昔からやっているから残す」

ではなく、

その活動をやめると住民生活に何が起きるのか

によって判断することです。

自治会活動にもLCCの考え方が必要になる

地域設備や共同管理には、LCC(Life Cycle Cost・取得から廃止までの総費用)に近い考え方が必要です。

例えば集会所なら、

電気代 水道代 保険 清掃 修繕 草刈り 役員の管理時間 将来の解体費

まであります。

人口が減って利用回数も減っているのに、

「地域に一つあるものだから」

という理由だけで維持するのが合理的とは限りません。

一方で、防災拠点として重要なら、利用頻度だけで廃止を判断することも適切ではありません。

費用だけでなく、

生活上の必要性

も合わせて評価する必要があります。

自治会の持続可能性を測るなら「世帯数」だけでは足りない

今後は自治会の将来を考える際に、

加入世帯数

だけではなく、

次のような数字を把握することが重要でしょう。

・現在の世帯数 ・自治会加入世帯数 ・役員数 ・実際に共同作業へ参加できる人数 ・年間共同作業回数 ・年間総作業時間 ・草刈り面積 ・管理する道路・水路の延長 ・ごみ集積所数 ・集会所数 ・自治会費収入 ・外注した場合の年間費用

これらを把握すれば、

「あと何年持つか」

を感覚ではなく数字で議論できます。

一人当たり地域維持負担という考え方

本記事では、さらに次のように考えます。

一人当たり地域維持負担 =地域全体の維持作業量 ÷ 実際に作業可能な人数

これは公式指標ではありません。

しかし人口減少地域を考えるうえでは重要な考え方です。

人口が減っても管理対象がほぼ同じなら、一人当たりの負担は増えます。

この状態で、

「地域のことは地域で」

と言い続けるだけでは、少数の住民へ負担を集中させることになります。

地域共同体を守ることと、

無償労働を無制限に求めること

は同じではありません。

成立しやすい自治会

今後30年でも比較的維持しやすいのは、

一定数の世帯がまとまって居住している 現役世代を含む複数世代がいる 活動内容が少ない 役員数を減らしている 不要な行事を整理している 行政との役割分担が明確 必要な作業を一部外注できる 周辺自治会と共同化できる

といった地域でしょう。

特に重要なのは、

人口を増やすことだけではなく、

一世帯当たり・一人当たりの作業量を減らしていること

です。

成立しにくい自治会

逆に難しくなるのは、

世帯数が少ない 高齢者世帯が多い 住宅が広く分散している 草刈り範囲が広い ごみ集積所が多い 集会所など管理施設が多い 役職数が昔のまま 毎年多くの行事を行う 作業を無償労働に依存する 自治会費収入が減少する

地域です。

この状態で、

「参加者を増やそう」

だけを対策にしても、長期的な解決にはなりにくいでしょう。

これから必要なのは「自治会を守ること」ではなく「地域機能を守ること」

自治会という組織を存続させること自体が最終目的ではありません。

住民に必要なのは、

安全に暮らせる ごみを出せる 災害時に情報が届く 道路が使える 生活環境が維持される

ことです。

現在それを自治会が担っているのであれば、自治会は重要です。

しかし30年後に同じ組織形態でできないのであれば、

自治会統合 行政への移管 民間委託 地域横断組織 個人単位のサービス

など別の方法へ変えることも考える必要があります。

つまり、

自治会を維持する

ことと、

地域生活を維持する

ことを分けて考える必要があります。

判断前のチェックリスト

自分の地域が30年後も現在の活動を続けられるか考える場合は、次の項目を確認するとよいでしょう。

・10年前と現在で世帯数は何世帯減ったか ・65歳以上の割合はどう変化したか ・共同作業へ実際に参加できる人数は何人か ・10年前より参加者は減っているか ・年間何回草刈りをしているか ・ごみ集積所はいくつあるか ・集会所など自治会管理施設はいくつあるか ・役員は毎年交代できているか ・同じ人が何年も役員をしていないか ・廃止できる行事はないか ・隣の自治会と共同化できる業務はないか ・草刈りなどを外注すると年間いくらになるか ・自治会費だけで10年後も負担できるか ・行政が担うべき仕事と住民が担う仕事が明確か ・現在の活動を70歳、80歳になっても続けられるか

最後の質問は特に重要です。

現実的な結論

人口減少地域で自治会・町内会が30年後も必要かと問われれば、

地域単位で住民生活を調整する機能そのものは必要である可能性が高い

と考えられます。

しかし、

今の自治会をそのまま30年間維持する

必要があるとは限りません。

外房では2050年までに人口が大きく減ると推計される市町があり、すでに勝浦市では地域住民が担う草刈りについて「5年後、10年後」を見据えた問題が議会で指摘されていました。

人口が減る一方で、

道路 草地 水路 ごみ集積所 集会所

などの管理対象が同じ速度で減らなければ、残った住民一人当たりの負担は大きくなります。

そこで必要なのは、

若者に引き継ぐこと

だけではありません。

引き継ぐ必要のある仕事そのものを減らすことです。

草刈り回数を減らす。

管理区域を整理する。

自治会を統合する。

役職を減らす。

行事を整理する。

事務を電子化する。

一部を外注する。

生活インフラに近い仕事は行政との役割分担を見直す。

こうした方法を組み合わせる必要があります。

人口減少社会で問われているのは、

「昔から続いてきた自治会を守れるか」

だけではありません。

少なくなった住民でも、その地域で生活するために本当に必要な機能を維持できる仕組みへ変えられるか

です。

人口が減った後にも、草は伸びます。

ごみは出ます。

道路は残ります。

災害も起こります。

だからこそ、

人口減少率ではなく、「管理対象量 ÷ 管理可能人口」で地域の将来を見ること

が、これからますます重要になるのではないでしょうか。

地域の課題を、自分の判断に置き換えて考える

有限会社アードレでは、住まい・車・移住などの大きな選択を、 費用や将来条件をもとに数字で比較し、判断できる形に整理しています。

数字で比較するサービスを見る

地方のスーパーが閉店すると、「ネットスーパーを利用すればよい」「移動販売が来ればよい」「車で隣町まで行けばよい」と考えられがちです。

しかし、実際の生活はそれほど単純ではありません。

食料品の買い物には、

店舗まで移動できること 商品を選べること 価格を負担できること 商品を持ち帰れること 注文や支払いができること 必要な日に商品を入手できること

まで含まれます。

スーパーが一軒なくなっても、別の方法でこれらの条件を満たせれば生活は続けられます。

反対に、ネットスーパーや移動販売というサービスが存在していても、利用できる曜日、配達区域、商品数、料金、予約方法などが生活条件に合わなければ、「買い物できる地域」とは言い切れません。

この記事では、御宿町、勝浦市、いすみ市など外房地域を中心に、スーパー撤退後の買い物を、移動販売、宅配、公共交通、自家用車、家族送迎などに分解して考えます。

最初に結論~問題は「スーパーがあるか」だけではない

結論からいえば、人口減少地域でスーパーが減った場合でも、買い物を続ける方法はあります。

しかし、

一つの代替手段だけで、スーパーが担っていた機能を完全に置き換えることは難しい

と考えた方が現実的です。

移動販売には移動しなくても商品を選べる利点があります。

宅配には重い商品を運ばなくてよい利点があります。

公共交通があれば店舗まで移動できます。

自動車なら時間や購入量の自由度が高くなります。

ところが、それぞれに弱点があります。

したがって人口減少地域で重要なのは、

「スーパーを一軒残せるか」

だけではなく、

住民が複数の方法を組み合わせて、生鮮食品や日用品を継続的に入手できる仕組みを残せるか

という問題です。

この記事では、この状態を分析するため、

買い物可能性 =店舗への移動可能性 +宅配利用可能性 +商品の選択可能性 +価格負担可能性 +注文・支払可能性

として考えます。

これは公式の指標ではなく、買い物環境を整理するための概念的な式です。

外房では自動車を使えるかどうかが大きい

外房の買い物問題を考えるうえで、最も重要な要素の一つが自動車です。

千葉県が高齢者について整理した資料では、地方部で日常の買い物に「自動車・バイクを自分で運転する」と回答した割合は59.9%、「家族・近所の車に同乗、送迎」が19.7%でした。

合わせると約8割に達します。

一方、バスは3.4%、電車は1.4%でした。これは外房だけの数字ではありませんが、千葉県地方部の買い物が自動車に強く依存していることを示しています。

つまり地方の買い物問題には、

スーパーまで何kmあるか

だけではなく、

その人が運転できるか

という条件が大きく影響します。

現在は問題なく10km先のスーパーへ行ける人でも、免許返納、病気、視力低下、身体機能の低下などによって運転できなくなれば、同じ家に住み続けていても買い物環境は突然変わります。

したがって、

自動車を所有している =将来も買い物に困らない

とは限りません。

外房では高齢化を無視できない

この問題が外房で重要なのは、高齢化がすでに進んでいるからです。

千葉県の2025年度の年齢別人口資料では、市町村別平均年齢が最も高いのは御宿町の61.1歳でした。勝浦市も58.2歳で県内でも高い水準です。

御宿町の2026年7月31日現在の人口は6,609人、3,631世帯です。

勝浦市は2026年6月末現在で人口14,678人、7,976世帯です。

さらに国立社会保障・人口問題研究所の2023年推計では、2020年から2050年にかけて、勝浦市の人口は16,927人から8,815人、いすみ市は35,544人から20,218人へ減少すると推計されています。

御宿町は6,874人から4,381人という推計です。いずれも2020年国勢調査を基準とした将来推計であり、実績値ではありません。

人口が減れば、小売店の商圏人口も小さくなります。

しかし問題は、

人口が半分になる =食料を買う必要性も半分になる

ということではありません。

一人一人には引き続き食料が必要です。

その一方で、一店舗あたりの顧客数や売上が減れば、店舗を維持する採算条件は厳しくなります。

ここに人口減少地域特有の矛盾があります。

移動販売は有力だが万能ではない

スーパー撤退後の方法として非常に重要なのが移動販売です。

いすみ市では、日常生活に必要な食料品や日用雑貨の買い物が困難な人を対象とした買い物支援を行っています。

2024年6月から千葉薬品の「ヤックス移動販売スーパーらくちん便」が月曜日から金曜日まで市内を巡回し、さらに2025年7月から「とくし丸」が週5日、市内を巡回しています。

移動販売の最大の特徴は、

人が店へ行くのではなく、店が人の近くまで来る

ことです。

これは身体的な移動が難しくなった高齢者には大きな意味があります。

商品を実際に見ながら選べることも、インターネット通販にはない利点です。

一方で、移動販売にも限界があります。

通常の大型スーパーと比べれば積載できる商品数には限界があります。

毎日いつでも購入できるわけではありません。

巡回ルートや時間に生活を合わせる必要があります。

さらに重要なのは事業の持続性です。

いすみ市では以前からNPO(Non-Profit Organization・非営利組織)による移動販売が行われていましたが、市の過去の計画資料には、利用者減少のため週5日5コースから週4日4コースへ変更した経緯も記録されています。

この事例が示すのは、

需要がある =事業が採算的に維持できる

ではないということです。

高齢者に必要なサービスほど、利用者が広い地域に少人数ずつ分散している可能性があります。

販売車が長距離を走っても、一か所当たりの売上が小さければ、燃料費、人件費、車両費などを回収することが難しくなります。

「移動スーパーが来れば解決」とは限らない

例えば移動販売車が週1回来る地域を考えてみます。

週1回でも、

米 調味料 野菜 肉 魚 牛乳 パン 日用品

などを計画的に購入できれば、かなりの部分を補うことができます。

しかし、

急に必要になった食品 買い忘れ 薬以外の日用品 大量購入 特殊な商品

まですべて対応できるとは限りません。

そこで実際には、

移動販売 +コンビニエンスストア +ドラッグストア +宅配 +家族送迎

などを組み合わせることになります。

重要なのは、一つ一つのサービスを見るのではなく、

一週間の生活に必要な食料・日用品を全部調達できるか

を見ることです。

宅配は「自宅まで届く」点では強い

宅配の大きな利点は、商品を自宅まで運んでもらえることです。

米、飲料、調味料など重量のある商品では特に有効です。

千葉県が過去に実施した買い物弱者対策の実証事業でも、利用者の70歳代以上が63%を占め、宅配を利用する理由として、車に乗れないことや重い商品を持ち帰れないことが挙げられていました。

つまり宅配は単なる便利なサービスではなく、

商品を運ぶ身体的負担を外部化する仕組み

でもあります。

ただし、宅配にも利用条件があります。

配達区域 最低注文額 送料 注文締切 配達曜日 支払方法 インターネット操作 電話注文の可否

などです。

そのため、

宅配サービスが地域に存在する =全住民が使える

ではありません。

特に高齢者の場合、スマートフォンやウェブサイトからの商品検索、会員登録、パスワード管理、決済方法などが利用上の障壁になる可能性があります。

ネットスーパーだけでは解決しない理由

人口減少地域の買い物問題では、「インターネットで注文すればよい」という意見もあります。

確かに、将来的には重要な手段です。

しかしネットスーパーを実際に利用するには、

配達対象地域である インターネットを利用できる 端末を操作できる 商品を画面から選べる 支払いができる 商品受取ができる

という条件が必要です。

そして人口密度が低い地域ほど、配送距離が長くなりやすくなります。

一軒の注文を届けるために長距離を走れば、物流費が増えます。

つまり人口減少地域では、

需要が小さいから宅配が必要になる一方で、

需要密度が低いから宅配の採算が悪くなる、

という矛盾が発生します。

公共交通でスーパーへ行く方法

もう一つの方法は、人を店まで運ぶことです。

いすみ市では市民乗合タクシーが運行されています。

2026年6月時点の制度では、事前予約によって運行区域内の自宅などから目的地まで移動でき、料金は大人一人1回300円です。月曜日から金曜日まで運行しています。複数の予約があれば乗り合わせになるため、通常のタクシーと同じではありません。

勝浦市でもデマンド交通などの施策が進められています。

御宿町では、勝浦市のデマンドタクシーを町内の共通乗降場所まで乗り入れる仕組みが導入され、買い物、医療機関、金融機関などへの移動可能範囲を広げています。

これは重要な方向です。

ただし、公共交通でスーパーへ行く場合には、

自宅 ↓ 乗車 ↓ スーパー ↓ 買い物 ↓ 待ち時間 ↓ 帰宅

という一連の時間を考える必要があります。

自家用車なら30分で終わる買い物が、予約や待ち時間を含めると数時間になる可能性があります。

したがって、

交通が存在する =買い物に実用的

とは限りません。

買い物では「運べる量」も重要

公共交通の問題として見落とされやすいのが購入量です。

例えば、

米5kg 牛乳2本 ペットボトル飲料 野菜 肉 魚 トイレットペーパー

を一度に購入すると、かなりの重量と容積になります。

健康な人が自家用車で買い物する場合にはほとんど問題になりません。

しかし、高齢者がバスや鉄道で持ち帰るとなると事情は変わります。

つまり交通政策を考える場合も、

「スーパーまで行けるか」

だけでなく、

買った商品を家まで持ち帰れるか

を考える必要があります。

この意味では、

人を店へ運ぶ仕組み

と、

商品を家へ運ぶ仕組み

は別の役割を持っています。

コンビニエンスストアやドラッグストアは代わりになるのか

スーパーがなくなっても、コンビニエンスストアやドラッグストアが残っていれば一定の商品を購入できます。

特に近年のドラッグストアは、食品を扱う店舗も多くなっています。

しかし、

スーパー コンビニエンスストア ドラッグストア

では、商品構成も価格体系も異なります。

弁当、飲料、菓子、冷凍食品などを確保できても、生鮮食品を十分に購入できるとは限りません。

したがって、

食品を売る店がある =通常の食生活を維持できる

とも限りません。

重要なのは店舗数ではなく、

必要な食品群を継続的に取得できるか

です。

家族送迎は無料ではない

地方では家族が車で買い物に連れて行くことも多くあります。

家族送迎は行政統計上「公共交通費」として現れません。

しかし実際には、

家族の時間 ガソリン代 車両維持費 待ち時間 仕事や家事の調整

が発生します。

例えば高齢の親を週1回スーパーへ連れて行くとして、往復と買い物に2時間かかれば、年間では、

2時間 × 52週 =104時間

になります。

これは分析のための単純計算ですが、約13日分の8時間労働に相当します。

したがって、

行政支出が発生していない =社会的費用がゼロ

ではありません。

買い物支援を考える際には、家族が無償で負担している時間も考える必要があります。

最も弱いのは「単一手段依存」の地域

買い物環境を考えるうえで危険なのは、一つの方法に依存することです。

例えば、

自動車だけ

移動販売だけ

家族送迎だけ

ネットスーパーだけ

という状態です。

一つが使えなくなると生活が急に成立しなくなるからです。

反対に、

週1~2回の移動販売 +宅配 +近隣の小売店 +デマンド交通

など複数の選択肢があれば、一つが使えなくなっても他の方法で補うことができます。

これは地域の買い物環境に「冗長性」を持たせる考え方です。

冗長性とは、ある手段が失われても別の手段で機能を維持できる状態です。

30年後に重要なのは「店舗数」より買い物機能

今後30年間の外房を考える場合、

スーパーを何店舗残すか

という発想だけでは十分ではないでしょう。

人口が大きく減る地域では、すべての店舗を現在と同じ形で維持することは難しくなる可能性があります。

その場合には、

大型店舗 移動販売 宅配 小型店舗 コンビニエンスストア ドラッグストア 公共交通

を一つの生活インフラとして考える必要があります。

例えば、一つの大型スーパーを維持できなくても、

地域拠点店舗 +移動販売 +宅配

によって食品アクセスを維持できる可能性があります。

逆に店舗だけ残っていても、自動車を運転できない高齢者がそこへ行けなければ、生活機能としては不十分です。

店を残す政策と買い物を残す政策は違う

ここで重要な区別があります。

スーパーを残すことと、住民の買い物を維持することは同じではありません。

スーパーへの補助によって店舗を残す方法もあります。

しかし利用者が減り続ければ、長期的な維持費は増える可能性があります。

一方で、店舗閉鎖をそのまま受け入れてしまえば、自動車を利用できない住民が生活できなくなる可能性があります。

そのため政策として考えるべきなのは、

どの店を残すか

だけではなく、

地域住民が食品へアクセスするための総費用をどう小さくするか

です。

行政負担 事業者負担 住民負担 家族負担 移動時間

を合わせて考える必要があります。

現実的には「人を運ぶ」と「商品を運ぶ」の併用になる

人口密度が下がっていく地域では、一つの方法ですべての住民を支えることは難しいでしょう。

比較的元気で移動できる人には、

デマンド交通 路線バス 家族送迎

などで店舗へ行く方法があります。

移動が難しい人には、

移動販売 宅配

が有効です。

つまり、

人を商品まで運ぶ

方法と、

商品を人まで運ぶ

方法を組み合わせることになります。

どちらが常に優れているという問題ではありません。

地域人口、住宅密度、利用人数、店舗距離によって効率は変わります。

成立しやすい地域

買い物支援が比較的成立しやすいのは、

一定数の利用者がいる 住宅がある程度まとまっている 既存スーパーを商品供給拠点として使える 移動販売と自治体が連携できる 宅配と公共交通を併用できる

といった地域です。

特に利用者がある程度まとまっていれば、一台の販売車や配送車が短時間で複数世帯を回ることができます。

成立しにくい地域

反対に難しいのは、

人口が非常に少ない 住宅が広範囲に分散している 道路距離が長い 利用者一人当たりの購入額が小さい 販売拠点となる店舗も遠い

といった地域です。

この場合、

需要はあるのに採算が取れない

という状態が起こります。

だからこそ、

「必要なら民間企業がやるはずだ」

という考え方だけでは解決できません。

買い物環境を見るチェックリスト

地方へ移住する場合や、高齢期の住まいを考える場合には、最寄りスーパーまでの距離だけを見るのではなく、次の項目を確認した方がよいでしょう。

・現在の最寄りスーパーまでの距離 ・自動車を運転できなくなった場合の移動方法 ・移動販売の有無 ・巡回曜日 ・宅配サービスの有無 ・配送料 ・最低注文額 ・電話注文が可能か ・インターネット注文だけか ・生鮮食品を購入できるか ・公共交通でスーパーへ行けるか ・帰宅便までの待ち時間 ・重い商品を持ち帰れるか ・家族送迎が必要か ・家族が遠方へ転居しても生活できるか

特に重要なのは、

「今、自動車を運転できる状態」ではなく、「自動車を運転できなくなった状態」で生活を想定すること

です。

外房の買い物問題から見えてくること

外房では人口減少と高齢化が同時に進んでいます。

人口が減れば、スーパーにとって商圏は縮小します。

しかし住民一人一人に必要な食料がなくなるわけではありません。

このため今後重要になるのは、

大型スーパーを今までと同じ形で残し続けること

だけではありません。

むしろ、

店舗 移動販売 宅配 公共交通 地域の小売店

を組み合わせ、

少ない人口でも食品へのアクセスを維持できる地域構造へ変えていくこと

ではないでしょうか。

現実的な結論

スーパーが撤退した地域でも、生活を続けること自体は可能です。

しかし、それには条件があります。

移動販売だけでもありません。

ネットスーパーだけでもありません。

公共交通だけでもありません。

家族送迎だけでもありません。

重要なのは、それらを組み合わせることです。

そして人口減少地域で問うべきなのは、

「スーパーが何軒あるか」

ではなく、

「自動車を運転できなくなった住民でも、必要な食品を適切な価格と負担で継続的に入手できるか」

です。

人口が減った地域では、店舗そのものをすべて維持することが難しくなる可能性があります。

しかし、

店舗が減ること =買い物機能まで失ってよい

ということではありません。

これからの地域政策では、

店を維持することから、買い物という生活機能を維持することへ

考え方を広げる必要があります。

そして30年後の外房で重要なのは、

「昔と同じ店舗網を残せたか」

ではなく、

少ない人口でも、必要な食品に誰もがアクセスできる仕組みを残せたか

ではないでしょうか。

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はじめに

地方では、「町の本屋がなくなった」という話を聞くことが珍しくなくなりました。

千葉県の外房地域でも、茂原市、いすみ市、勝浦市、鴨川市、館山市などには現在も書店がありますが、市町村によって状況は大きく異なります。

一方、公共図書館についても、すべての自治体が同じ規模の図書館を持っているわけではありません。

市立・町立図書館を設置している自治体がある一方、公民館の一角に図書室を設けている自治体もあります。

さらに、2025年3月には茂原市立図書館が茂原ショッピングプラザアスモ内へ移転し、2026年7月1日には、いすみ市で初めて「いすみ市図書館」が開館しました。

外房の読書環境は、一方的に縮小しているわけではありません。

民間の書店は全国的な縮小圧力を受けていますが、公共図書館については再編、移転、新設、デジタル化など別の動きも起きています。

この記事では、

「外房から本を入手する場所はなくなってしまうのか」

という問題を、

  • 書店
  • 公共図書館
  • 公民館図書室
  • 通信販売
  • 電子書籍
  • 人口減少
  • 高齢化
  • 自動車依存
  • 地域拠点

という複数の視点から検討します。


最初に結論~書店と図書館は同じ問題ではない

最初に結論を示すと、今後の外房では、

民間書店は地域中心都市への集中がさらに進む可能性が高い一方、公共図書館・図書室は自治体による公共サービスとして一定程度維持される可能性が高い

と考えられます。

ただし、

書店がある =十分な読書環境がある

でも、

図書館がある =書店がなくても問題ない

でもありません。

両者は役割が異なるからです。

書店は、

「欲しい本を購入する場所」

であり、

図書館は、

「資料へアクセスする公共施設」

です。

したがって地域の読書環境は、

地域の本へのアクセス =書店へのアクセス +図書館へのアクセス +図書館間貸借 +インターネット通販 +電子書籍

という複数の経路で考える必要があります。

これは公式指標ではなく、本記事で地域の読書環境を整理するための考え方です。


全国の書店数は長期的に大きく減少している

まず、外房だけの問題ではないことを確認しておく必要があります。

日本出版インフラセンターの書店マスタを基にした出版科学研究所の統計では、登録書店数は2003年度に20,880店ありました。

2024年度には10,417店となり、さらに2025年度末には9,993店となっています。

つまり約20年間で、

20,880店 ↓ 9,993店

まで減ったことになります。

単純計算では半分以下に近い水準です。

特に重要なのは、一時的な景気後退による閉店ではないことです。

長期間にわたり減少が続いています。

したがって、

「景気が回復すれば昔のように町の本屋が戻る」

と考えることには慎重であるべきでしょう。


紙の出版市場そのものも縮小している

書店経営が難しくなっている背景には、人口減少だけではなく出版市場そのものの構造変化があります。

2025年の紙と電子を合わせた出版市場は約1兆5,462億円でした。

その中で紙の出版物市場は1兆円を下回りました。

一方、紙の書籍販売額は約5,939億円で、前年よりわずかに増加しました。

ここから分かるのは、

「本そのものが完全に読まれなくなった」

という単純な話ではありません。

むしろ、

  • 紙から電子へ
  • 書店からインターネット通販へ
  • 雑誌から別の情報媒体へ

という購入・情報取得手段の変化が進んでいます。

特に雑誌の縮小は書店にとって大きな問題です。

以前の町の書店では、書籍だけでなく、

  • 週刊誌
  • 月刊誌
  • 漫画雑誌
  • 学習雑誌
  • 趣味雑誌

などを定期的に買う顧客が重要でした。

この需要が減ると、来店頻度そのものが低下します。


書店経営を人口だけで説明してはいけない

地方書店の撤退は、

人口減少 ↓ 客が減る ↓ 閉店

だけで説明できません。

書店経営を簡単に表すなら、

書店利益 =書籍・雑誌等の売上 -仕入関連費 -人件費 -家賃 -電気料金 -物流費 -店舗維持費 -その他経費

となります。

人口が減れば売上にはマイナスですが、それだけではありません。

インターネット通販、電子書籍、コンビニエンスストアなどとの競争があります。

さらに地方では、

「町全体では本を買う人がいる」

ことと、

「1店舗を維持できるだけの売上が集中する」

ことは同じではありません。


外房では書店が地域中心都市へ集まりやすい

2026年8月時点で確認できる外房の代表的な書店を見ると、地域差が明確です。

茂原市には蔦屋書店茂原店があります。

館山市には宮沢書店本店や宮沢書店TSUTAYA館山店があります。

鴨川市には鴨川書店やTSUTAYA鴨川店があります。

いすみ市では井上書店、土屋鍾文堂、伊丹屋などの書店が確認できます。

勝浦市にも既存の書店があります。

御宿町にも地域の書店が確認できます。

一宮町には小規模な独立系書店も存在します。

つまり、

「外房にはもう書店がない」

という表現は正確ではありません。

一方、

どの町にも大型書店があり、多数の新刊から自由に選べる環境がある

とも言えません。


外房の書店問題は「ゼロか一か」だけでは測れない

書店については、

書店が存在する =1

存在しない =0

という評価だけでは不十分です。

実際の利便性は、

書店アクセス =店舗数 ×品揃え ×営業時間 ×交通利便性 ×利用者の移動能力

のような要素で決まります。

これも公式指標ではなく、分析のための概念です。

例えば町内に1軒の書店があっても、

  • 欲しい専門書がない
  • 新刊の種類が少ない
  • 自動車がなければ行けない

なら、大都市の書店とは機能が異なります。

逆に小規模書店でも、

  • 教科書
  • 学習参考書
  • 地域資料
  • 文具
  • 地元学校への納品

などを扱うことで、地域では重要な役割を果たしている場合があります。


小さな書店には大型店とは違う役割がある

地方の小規模書店を、

「大型書店より品揃えが少ないから不要」

と評価するのも適切ではありません。

地域書店には、

  • 学校教材
  • 教科書
  • 地域出版物
  • 文具
  • 地域住民からの取り寄せ
  • 行政・学校との取引

など、大型店とは異なる機能があります。

特に高齢者の場合、インターネット通販や電子書籍が使えるとは限りません。

したがって、

Amazonなどがある =地域書店が不要

という関係にはなりません。


ただし小規模書店を公費だけで維持するのも容易ではない

一方で、

「文化的に必要だから書店を補助金で維持すればよい」

という考え方にも限界があります。

民間書店を維持するには継続的な売上が必要です。

書店1店舗を維持する年間必要売上を考えると、

必要売上高 =固定費 ÷粗利益率

という関係があります。

家賃、人件費、光熱費などが存在する以上、一定以上の販売量がなければ営業を続けることはできません。

人口数千人規模の自治体すべてに大型書店を復活させる政策は、現実性が高いとは言えません。


では外房の図書館はどうなっているのか

ここから公共図書館を見ます。

千葉県統計年鑑の2023年度公共図書館統計では、外房・南房総地域に、

  • 茂原市立図書館
  • 勝浦市立図書館
  • 館山市図書館
  • 鴨川市立図書館
  • 南房総市図書館
  • 大多喜町立大多喜図書館天賞文庫

などがあります。

一方、

  • 一宮町
  • 睦沢町
  • 長生村
  • 白子町
  • 長柄町
  • 長南町
  • 御宿町

などでは、公民館や文化施設内の図書室が読書サービスを担っていました。

そして当時のいすみ市も、大原・岬・夷隅の各公民館図書室を中心とする体制でした。

この構造が2026年に変化しました。


いすみ市に2026年7月、市として初めて図書館が開館

いすみ市では2026年7月1日、大原文化センター2階に「いすみ市図書館」が開館しました。

これは重要な変化です。

それまでいすみ市の公共読書施設は公民館図書室を中心としていました。

新しい図書館では、開館時間が午前9時から午後7時となっています。

一方、公民館図書室は午前9時から午後5時です。

図書・雑誌は合わせて10冊まで、3週間借りることができます。

さらに、市内所蔵資料を予約し、図書館だけでなく近くの公民館図書室で受け取る仕組みもあります。

つまり、

大原に中央的図書館 +岬・夷隅の図書室

というネットワーク型に変わったと考えることができます。


いすみ市図書館の本当の意味は建物を一つ増やしたことではない

図書館新設というと、

「立派な建物ができた」

ことが注目されがちです。

しかし地域サービスとして重要なのは建物そのものではありません。

いすみ市の場合、

中央施設 +地域図書室 +蔵書検索 +予約 +取り寄せ

を組み合わせたことに意味があります。

これは人口密度の低い地域では重要です。

市域が広い自治体で、

「全住民が中央図書館まで行く」

ことを前提にするのは現実的ではありません。


外房の図書館規模には大きな差がある

2023年度の千葉県統計年鑑によると、主な施設の蔵書数は次のようになっていました。

施設 蔵書冊数 年間貸出冊数
茂原市立図書館 約23.5万冊 約21.9万冊
館山市図書館 約16.3万冊 約11.2万冊
南房総市図書館 約13.6万冊 約7.2万冊
鴨川市立図書館 約10.6万冊 約10.8万冊
大多喜図書館天賞文庫 約5.0万冊 約3.7万冊
勝浦市立図書館 約4.1万冊 約2.8万冊
当時のいすみ市大原公民館 約5.7万冊 約3.7万冊
長生村文化会館 約3.8万冊 約1.0万冊
睦沢町中央公民館図書室 約3.0万冊 約1.5万冊
長柄町公民館図書室 約2.5万冊 約1.8万冊
白子町青少年センター図書室 約1.6万冊 約0.5万冊
一宮町まちの図書室 約1.5万冊 約1.4万冊
長南町中央公民館 約0.9万冊 約0.2万冊
御宿町公民館 約0.6万冊 約0.2万冊

※2023年度の千葉県統計年鑑「公共図書館」を基礎として整理。2026年現在の蔵書数ではないため、新設・移転・購入・除籍によって現在とは異なる。

この表からも、同じ「図書館・図書室」と呼ばれる施設でも規模が大きく違うことが分かります。


蔵書数だけで図書館を評価してはいけない

ただし、

蔵書20万冊 > 蔵書5万冊

だから前者が5倍優れている、というわけではありません。

重要なのは、

  • 新しい本が継続して入るか
  • 必要な本を探せるか
  • 他館から取り寄せられるか
  • 専門職員に相談できるか
  • 子どもが利用できるか
  • 高齢者が行けるか
  • 学習スペースがあるか
  • 開館時間が利用者に合うか

です。

地方の小規模図書室では、すべての分野の本を大量に持つことはできません。

そこで重要になるのが図書館間のネットワークです。


千葉県では県立図書館から本を取り寄せられる

千葉県では、市町村立図書館や読書施設と県立図書館の間で資料を貸し借りする仕組みがあります。

これは外房の小規模自治体にとって重要です。

例えば、

自分の町の図書室にはない ↓ 県立図書館・他自治体から取り寄せる ↓ 近くの図書室で受け取る

という仕組みが機能すれば、

「小さな町だから数千冊しか利用できない」

という状態をある程度改善できます。

したがって地方図書館では、

自館蔵書数

だけではなく、

利用者がアクセス可能な図書館ネットワーク全体の蔵書

を見る必要があります。


御宿町のような小規模自治体ではネットワークの価値が大きい

御宿町の2023年度統計では、公民館の蔵書規模は約5,900冊でした。

単独の図書館として見れば大きな規模ではありません。

しかし現在の御宿町公民館では、千葉県立図書館資料の取り寄せも可能です。

また、冷暖房やWi-Fi(Wireless Fidelity・無線通信によるインターネット接続環境)があり、学習・読書スペースとしても利用されています。

ここから重要なことが分かります。

小規模自治体では、

巨大図書館を建設する

ことだけが選択肢ではありません。

小規模図書室 +県立図書館 +他市町村図書館 +電子資料

という方法もあります。


茂原市では図書館を商業施設へ移転した

茂原市立図書館は2025年3月21日、茂原ショッピングプラザアスモ内へ移転しました。

これは地方図書館の将来を考えるうえで興味深い例です。

従来の図書館は駅前のサンヴェルビルにありました。

移転先は商業施設です。

商業施設型図書館には、

  • 大きな駐車場
  • 買い物との組み合わせ
  • 子ども連れでの利用
  • 高齢者の利用
  • 建物の共同利用

などの利点があります。

特に自動車依存度の高い外房では、

「駅から近いこと」

だけがアクセスの良さとは限りません。


図書館とショッピングセンターの組み合わせは外房と相性がよい可能性がある

外房の生活では、

スーパー +ドラッグストア +飲食 +銀行ATM(Automated Teller Machine・現金自動預払機) +図書館

などを一度の移動で利用できれば、自動車移動の回数を減らせます。

高齢化地域ではこの効果は無視できません。

利用者移動負担を単純化すると、

生活サービス利用負担 =移動距離 ×訪問回数

と考えることができます。

複数サービスを一つの場所へ集約すれば、訪問回数を減らすことができます。

ただし、商業施設が将来撤退した場合のリスクも考えておかなければなりません。


図書館を新設すれば地域が活性化する、とは限らない

図書館をめぐっては、

「立派な図書館を作れば交流人口が増える」

という議論があります。

実際に全国には、図書館を中心とした複合施設で多数の来館者を集めている自治体があります。

しかし、

図書館建設 =地域活性化

ではありません。

図書館には、

  • 建設費
  • 賃借料
  • 職員費
  • 資料購入費
  • システム費
  • 光熱費
  • 修繕費

が必要です。

重要なのは建設時の来館者数ではなく、

20年、30年にわたり住民が使い続けられるか

です。


書店と図書館は競争相手なのか

「図書館で無料で本を借りられるから書店が売れなくなる」

という議論もあります。

しかし、両者の関係は単純ではありません。

図書館利用者は本への関心が高い人も多く、図書館で知った作家の本を購入することもあります。

一方でベストセラーを大量に貸し出せば、購入需要の一部と競合する可能性も否定できません。

したがって、

図書館 対 書店

という二者択一ではなく、

地域全体で本に触れる人口を維持する

という視点が重要です。


地方では書店と図書館の連携に意味がある

地方では、

図書館が地域書店から本を購入する

ことにも一定の意味があります。

図書館にとっては資料調達であり、地域書店にとっては売上になります。

また、

  • 図書館イベントで地域書店が販売
  • 地域作家の紹介
  • 郷土資料コーナー
  • 読書会
  • ビブリオバトル
  • 子どもの読み聞かせ

なども考えられます。

ただし、これによって地域書店の経営問題がすべて解決するわけではありません。

自治体図書館の年間購入額だけで一般書店を維持できるとは限らないからです。


電子書籍は地方の情報格差を小さくできる

地方にとって電子書籍には大きな利点があります。

物理的な距離がなくなるからです。

電子図書館なら、

自宅 ↓ インターネット ↓ 電子資料

という形で利用できます。

特に、

  • 自動車を運転できない人
  • 高齢者
  • 障害のある人
  • 山間部の住民

には意味があります。

千葉県立図書館でも電子書籍サービスが提供されており、2026年5月末時点で5,600点を超える電子資料が利用可能となっています。


ただし電子書籍ですべて解決するわけではない

電子書籍には限界があります。

すべての本が電子化されているわけではありません。

また、

  • スマートフォン
  • タブレット
  • インターネット
  • 利用者登録
  • 操作能力

が必要です。

高齢者の中には電子サービスを利用しにくい人もいます。

したがって、

電子書籍 =図書館不要

でも、

電子書籍 =書店不要

でもありません。


高齢化地域ほど「移動」が重要になる

外房では、この問題を読書だけで考えてはいけません。

今後、

免許返納 ↓ 自動車移動困難 ↓ 書店・図書館へ行けない

という問題が増える可能性があります。

特に、

店舗や図書館が10キロメートル離れている

場合、

自動車を持つ人には大きな問題でなくても、自動車を持たない人には非常に大きな距離になります。

したがって、

図書館アクセス =施設数

ではありません。

実際には、

図書館アクセス =距離 +交通手段 +開館時間 +身体条件

です。


今後の外房で大型書店が各町に増える可能性は高くない

人口動態と全国の書店数減少を考えると、

御宿町 大多喜町 長南町 長柄町 睦沢町 白子町

など人口規模の小さい自治体に、今後大型総合書店が次々と出店する可能性は高くないでしょう。

これは悲観論ではありません。

商圏規模から考えた経営上の問題です。

大型書店必要商圏 > 単独町村人口

となる場合、複数自治体を商圏として考える必要があります。


外房の書店は「生活圏単位」で考えた方がよい

今後の現実的な構造は、

茂原圏

茂原市を中心に長生郡から利用。

夷隅圏

いすみ市を中心とし、勝浦・御宿・大多喜にも地域書店が存在。

安房圏

館山・鴨川を主要な書籍購入拠点とする。

という形です。

行政区域ごとに大型店を置くよりも、

生活圏単位で一定規模の書店を維持する

方が現実的です。


一方、図書館はもう少し細かい配置が必要

書店と違って公共図書館には社会教育という役割があります。

したがって、

「人口が少ないから全部閉鎖して中心都市の図書館だけ利用すればよい」

とも言い切れません。

子どもや高齢者は自由に自動車で移動できないからです。

したがって外房では、

中心図書館 +地域図書室 +学校図書館 +図書館間貸借 +電子図書館

という構造が合理的です。


いすみ市方式は外房の一つの現実的モデルになり得る

2026年に始まったいすみ市の方式は興味深いものです。

大原に市立図書館を置き、

岬・夷隅には既存の公民館図書室を残す。

さらに、蔵書検索・予約を利用して近くの施設で受け取れるようにする。

これは、

すべての地域に大規模図書館を建設する

わけでも、

中央図書館だけに集約する

わけでもありません。

中央 +分散拠点

という方式です。

人口密度の低い自治体では合理性があります。


今後の図書館に必要なのは「本の倉庫」以上の役割

人口減少が進む地域で図書館を維持するには、

「本が並んでいる施設」

だけでは利用価値が弱くなる可能性があります。

今後は、

  • 読書
  • 学習
  • 調査
  • インターネット利用
  • 地域資料
  • 子育て
  • 高齢者の居場所
  • 市民活動

などを組み合わせる必要があります。

ただし、

何でも図書館に入れればよい

という意味ではありません。


図書館の役割を広げすぎる危険もある

図書館に、

観光 カフェ 交流 子育て イベント コワーキング

などをすべて求める議論があります。

しかし、本来の図書館機能が弱くなってしまえば本末転倒です。

図書館の基本機能は、

  • 資料収集
  • 保存
  • 貸出
  • 調査支援
  • 情報提供

です。

交流施設として人気があっても、必要な資料を探せないなら図書館として十分とはいえません。


今後、重要になるのは蔵書数より「アクセス可能資料数」

地方図書館では、今後この考え方が特に重要になります。

例えば小さな図書室に2万冊しかなくても、

県立図書館 +周辺市町村 +電子書籍

を利用できれば、実際に利用可能な資料ははるかに多くなります。

したがって、

地域読書資源 =自館蔵書 +相互貸借可能蔵書 +電子資料

として考える方が合理的です。

これは本記事での独自整理で、公式指標ではありません。


外房の書店と図書館を維持する現実的な5つの方向

1 地域中心都市の書店を維持する

各町に大型店を復活させるより、

茂原 いすみ 館山 鴨川

などの地域中心都市で一定規模の書店を維持する方が現実的です。


2 小規模書店は専門性を持つ

小規模店が大型店と品揃えだけで競争するのは難しくなっています。

そこで、

  • 地域本
  • 文芸
  • 子どもの本
  • 教科書
  • 学習参考書
  • 独立系出版物

など、地域ごとの特色を持つ方法があります。


3 図書館はネットワーク化する

単独施設ですべてを保有しようとせず、

県立図書館 +市町村図書館 +公民館図書室

を接続します。


4 電子資料を補完的に利用する

紙を廃止するのではなく、

紙 +電子

で利用機会を増やします。


5 図書館を生活動線の中へ置く

茂原市のような商業施設への配置は、その一つの方法です。

買い物と図書館利用を同時に行える場所は、自動車依存地域では一定の合理性があります。


現実性の低い主張

外房の書店・図書館問題について、次のような主張には注意が必要です。

「ネット通販があるから書店はいらない」

高齢者、子ども、地域文化、実際に本を見て選ぶ機能を無視しています。

「図書館があれば書店はいらない」

購入と貸出は役割が異なります。

「すべての町に大型書店を誘致すべきだ」

人口・商圏から成立しない可能性があります。

「立派な図書館を建てれば地域活性化する」

建設費だけでなく長期運営費を見る必要があります。

「電子図書館なら建物はいらない」

デジタル利用が難しい住民もいます。

「書店を補助金で支援すれば維持できる」

補助終了後の採算が必要です。


書店がなくなることには文化以外の問題もある

書店は文化施設として語られがちですが、経済的な側面もあります。

書店では、

「目的の本を買う」

だけではありません。

棚を見ることによって、

知らなかった本 ↓ 関心 ↓ 購入

という偶然の発見があります。

インターネットでは利用履歴に基づく推薦が中心になりやすいのに対し、書店では自分の関心外の本を偶然見る機会があります。

これは数値化しにくい価値です。

ただし、価値があることと、事業として黒字になることは別問題です。


図書館にも同じ問題がある

図書館についても、

社会的に必要 ≠ どの施設規模でも維持可能

です。

図書館の社会的価値と財政負担は両方を見る必要があります。

図書館の社会的便益を概念的に表すなら、

図書館便益 =資料利用価値 +学習機会 +情報格差縮小 +子どもの読書支援 +地域資料保存 +居場所機能 -運営費用

となります。

これも公式の計算式ではありません。

重要なのは、

「赤字だから不要」

でも、

「文化施設だから費用を考えなくてよい」

でもないということです。


外房の今後は「一つの大型施設」ではなく「ネットワーク」にある

外房は人口密度が低く、市町村が広く分散しています。

この地域条件を考えると、

大型書店1店 大型図書館1館

ですべてを解決するのは難しいでしょう。

現実的なのは、

地域書店 +市町村図書館 +公民館図書室 +学校図書館 +県立図書館 +電子書籍 +インターネット通販

を組み合わせることです。


現実的な結論~外房で本へのアクセスをどう残すか

外房の書店と図書館を調べると、二つの異なる流れが見えてきます。

民間書店については、全国的な店舗減少が続いています。

2025年度末には全国の登録書店数が1万店を下回りました。

人口減少が進む外房だけが、この流れから完全に逃れることは難しいでしょう。

今後は、

各自治体に大型書店を維持する構造から、茂原・いすみ・館山・鴨川など地域中心地の書店を周辺地域の住民も利用する構造

が一層強まる可能性があります。

一方、公共図書館では別の動きがあります。

茂原市では2025年に図書館を商業施設へ移転しました。

いすみ市では2026年7月に、市として初めて市立図書館が開館しました。

これは地方の読書環境が単純に縮小しているわけではなく、

施設の再配置とネットワーク化が進んでいる

ことを示しています。


外房の課題は「本がない」ことより「本まで到達できるか」である

今後、高齢化と人口減少が進む外房では、

蔵書が何冊あるか

だけでなく、

住民が実際にその本へ到達できるか

が重要になります。

本へのアクセスを阻害するものは、

本の不足だけではありません。

  • 距離
  • 自動車を運転できるか
  • 開館時間
  • インターネット利用能力
  • 身体状況

なども関係します。

したがって、今後の外房で必要なのは、

「豪華な図書館を作ること」

でも、

「町の本屋を昔の数まで復活させること」

でもありません。

より現実的なのは、

地域中心都市には持続可能な書店を残し、小規模自治体では図書館・図書室を維持しながら、県立図書館、周辺自治体、電子資料を結び、本へのアクセスを地域全体で保証すること

です。

書店の存在と図書館の存在を別々に考えるのではなく、

住民が「読みたい本を知り、探し、手に取ることができる仕組み」をどこまで維持できるか。

これが、人口減少が進む外房で書店と図書館の将来を考える際の、本質的な問題ではないでしょうか。

地域の課題を、自分の判断に置き換えて考える

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地方のスーパーはなぜ撤退するのか~人口減少だけでは説明できない店舗経営の構造

地方のスーパーが閉店すると、「人口が減ったから仕方がない」と説明されることがあります。

確かに、商圏人口の減少は店舗経営に大きな影響を与えます。しかし、人口が減少している地域のスーパーがすべて撤退するわけではありません。反対に、人口が比較的維持されている地域でも、競争激化、人手不足、建物の老朽化、物流費の上昇などを理由に店舗が閉鎖されることがあります。

地方スーパーの撤退は、人口だけでなく、次の要素が重なって起こります。

  • 商圏内の人口と世帯数
  • 高齢化と1世帯当たりの購入量
  • 来店客数と客単価
  • 競合店との距離
  • ドラッグストアやコンビニエンスストアとの競争
  • 人件費と採用難
  • 電気料金と冷蔵・冷凍設備の維持費
  • 商品配送にかかる物流費
  • 生鮮食品や総菜の値引き・廃棄
  • 建物や設備の更新費
  • 本部が店舗に求める収益水準
  • 店舗網全体の再編方針

つまり、地方スーパーの撤退は、単純な「人口減少の結果」ではありません。

人口減少によって売上の上限が下がる一方で、人件費、電気料金、物流費、設備更新費などの固定的な負担が下がりにくくなり、最終的に必要な利益を確保できなくなる問題です。

最初に結論

地方スーパーが撤退する最大の構造的理由は、次の関係にあります。

店舗利益 =売上高 -商品仕入原価 -人件費 -電気・燃料費 -物流費 -建物・設備費 -廃棄・値引き損失 -その他の経費

人口が減少すると、店舗の売上高は減少しやすくなります。

しかし、売上が10%減少しても、従業員数、冷蔵設備、照明、配送回数、建物面積などを同じ10%だけ減らせるとは限りません。営業を続けるために必要な最低限の費用が残るからです。

さらに、近年は食品価格の上昇によって売上高が増えていても、販売数量や利益まで増えているとは限りません。

経済産業省の商業動態統計によると、2025年のスーパー販売額は前年比4.7%増加し、1店舗当たり販売額と店舗数も増加しました。しかし、これは全国集計です。都市部の新規出店や大型店の成長を含むため、人口減少地域にある個別店舗の経営改善を示すものではありません。

したがって、地方スーパーの問題を理解するには、

「全国のスーパー市場が成長しているか」

ではなく、

「その店舗の商圏で、必要な来店客数と粗利益を確保できているか」

を見る必要があります。

スーパーの売上は何で決まるのか

スーパーの売上高は、概念的には次のように分解できます。

売上高 =1日当たり来店客数 ×1人当たり購入額 ×営業日数

例えば、1日1,500人が来店し、1人当たり2,000円購入する店舗では、1日の売上高は約300万円です。

ところが、来店客数が1,200人に減少すると、客単価が変わらなければ売上高は約240万円となります。

1日当たりの差は60万円です。

年間360日営業すると仮定すれば、単純計算では年間約2億1,600万円の売上差になります。

実際には、値上げによって客単価が上昇したり、営業時間や品ぞろえを変更したりするため、売上高がこのまま減少するとは限りません。しかし、客数の減少が長期間続けば、店舗の採算を維持することは難しくなります。

全国スーパーマーケット協会の2025年版白書では、2024年の年次統計調査における中央値として、平日の1日客数が1,675人、客単価が2,191円、土日祝日の1日客数が1,800人、客単価が2,555円と示されています。これらは全国の調査対象店舗の中央値であり、地方の小規模店舗にそのまま当てはめることはできませんが、スーパーが相当数の来店客を前提にした事業であることは分かります。

人口減少だけでは不十分な理由

人口と来店客数は同じ割合では減らない

商圏人口が10%減少したからといって、店舗の来店客数が必ず10%減るわけではありません。

競合店が閉店すれば、残った店舗に利用者が集中することがあります。反対に、新しいドラッグストアや大型店が開業すれば、人口が変わらなくても来店客数が減ることがあります。

来店客数は、おおむね次の要素によって決まります。

来店客数 =商圏人口 ×来店可能率 ×店舗選択率 ×来店頻度

商圏人口が維持されていても、自動車で別の市町村に買い物へ行く人が増えれば、地元店舗の店舗選択率は下がります。

人口が減少していても、競合店が少なく、地域住民から支持されている店舗なら、一定の利用者を確保できる可能性があります。

高齢化すればスーパーの需要が増えるとは限らない

高齢者は食料品を必要とするため、高齢化地域でもスーパーの需要はなくなりません。

一方で、高齢化によって次の変化が起こることがあります。

  • 1世帯当たりの人数が減る
  • 1回当たりの購入量が減る
  • 自動車を運転できない人が増える
  • 重い商品を持ち帰りにくくなる
  • 店舗までの移動回数が減る
  • 宅配、生協、移動販売へ移行する
  • 調理済み食品の需要が増える
  • 少量商品への需要が増える

高齢者世帯が増えると、総菜や少量包装への需要は高まる可能性があります。しかし、少量包装は包装、加工、品出しなどの手間が相対的に大きくなることがあります。

したがって、高齢化は単なる需要減少ではなく、需要内容の変化として捉える必要があります。

全国売上の増加と地方店舗の撤退は矛盾しない

全国のスーパー販売額が増えているのに、なぜ地方のスーパーは閉店するのでしょうか。

この二つは矛盾しません。

全国の販売額は、次の要因でも増加します。

  • 食品価格の上昇
  • 都市部への新規出店
  • 大型店舗の増加
  • 高付加価値商品の販売
  • 総菜や冷凍食品の需要増加
  • 一部企業への売上集中
  • 店舗統合後の大型店への顧客集中

仮に販売数量が変わらなくても、平均価格が5%上がれば、名目上の売上高は約5%増えます。

しかし、仕入価格も上昇していれば、店舗の利益が同じ割合で増えるわけではありません。

重要なのは売上高そのものではなく、粗利益です。

粗利益 =売上高 -商品仕入原価

さらに、店舗が最終的に残せる利益は、粗利益から人件費、電気料金、物流費、設備費などを差し引いた金額です。

売上高が増えていても、費用の増加がそれを上回れば、店舗の利益は減少します。

原因1~商圏人口と世帯構成の変化

地方スーパーにとって、人口減少は売上の上限を下げる要因です。

特に影響が大きいのは、単なる人口総数ではなく、店舗周辺の商圏人口です。

同じ市町村の中でも、人口が比較的集まる中心部と、住宅が分散する周辺部では店舗経営の条件が異なります。

例えば、市町村全体の人口が2万人であっても、住民が広い範囲に分散していれば、店舗までの移動距離が長くなります。住民が隣接自治体の大型店を利用している場合、市町村人口のすべてが地元店舗の顧客になるわけではありません。

また、人口が同じでも、世帯構成によって食品需要は変わります。

  • 子育て世帯が多い地域
  • 単身高齢者が多い地域
  • 観光客が多い地域
  • 別荘や二地域居住が多い地域
  • 昼間人口が多い地域
  • 通勤によって昼間人口が減る地域

これらでは、来店時間、購入量、需要商品が異なります。

地方店舗を分析するときは、市町村人口だけではなく、店舗から一定時間で到達できる範囲の人口、世帯数、年齢構成、昼間人口、競合店舗を確認する必要があります。

原因2~ドラッグストアとの競争

近年、地方の食品スーパーにとって大きな競争相手になっているのがドラッグストアです。

ドラッグストアは医薬品、化粧品、日用品だけでなく、飲料、菓子、調味料、冷凍食品、牛乳、卵などを販売する店舗が増えています。

2025年の経済産業省の統計では、ドラッグストア販売額が前年比5.5%増加し、食品や調剤医薬品などが増加要因となりました。

ドラッグストアは、医薬品や化粧品など食品以外の商品からも利益を得られます。そのため、一部の食品を低価格で販売し、来店を促す戦略を取ることができます。

これに対して、食品スーパーは、生鮮食品や総菜の売上比率が高く、鮮度管理、加工、値引き、廃棄などの負担があります。

ドラッグストアが地域に出店すると、住民が食品をすべて移行するわけではありません。しかし、牛乳、飲料、菓子、冷凍食品、調味料など、保存しやすい商品がドラッグストアへ流れる可能性があります。

その結果、スーパーには管理が難しい生鮮食品や総菜の販売負担が残り、利益を得やすい商品の売上が減ることがあります。

原因3~大型店と地域外店舗への顧客流出

地方では、自動車を使って買い物をする世帯が多いため、行政区域の境界は必ずしも商圏の境界になりません。

住民は、町内の店舗よりも、

  • 品ぞろえが多い
  • 価格が安い
  • 駐車場が広い
  • 他の店舗と一緒に利用できる
  • 飲食店や医療機関にも立ち寄れる

といった条件を持つ近隣都市の大型店を選ぶことがあります。

道路が整備され、移動時間が短くなることは住民にとって便利です。一方、地元店舗にとっては、商圏外への顧客流出を促す場合があります。

このため、交通利便性の向上が、必ずしも地元商業の維持につながるわけではありません。

道路整備によって、地域外から顧客を呼び込める店舗もありますが、品ぞろえや価格で劣る店舗では、逆に顧客が外へ流出する可能性があります。

原因4~人手不足と人件費

スーパーは、多くの作業を人に依存しています。

主な業務には、次があります。

  • 商品の荷受け
  • 品出し
  • 発注
  • 在庫管理
  • レジ対応
  • 生鮮食品の加工
  • 総菜調理
  • 清掃
  • 値引き
  • 廃棄処理
  • 衛生管理
  • 売場変更
  • 顧客対応

セルフレジや自動発注を導入しても、すべての作業を無人化できるわけではありません。

全国スーパーマーケット協会の調査では、人手不足への採用対策に取り組む企業の割合が高く、2023年調査では採用活動に関する人手不足対策の実施率が98.1%でした。また、同調査では、同じ売場面積区分でも、都市圏店舗の従業員1人当たり年間売上高が地方圏を上回る傾向が示されています。

これは、地方店舗では従業員1人当たりの売上を確保しにくい可能性を示します。ただし、調査対象や店舗規模による違いがあるため、すべての地方店舗に当てはまるとは限りません。

地方では若年人口が少なく、早朝、夕方、土日、祝日に働ける人材を確保しにくい場合があります。

人手が不足すると、店舗は次の対応を迫られます。

  • 営業時間を短縮する
  • 売場面積を縮小する
  • 加工商品を減らす
  • 総菜の種類を減らす
  • レジを減らす
  • 本部や他店から応援を出す
  • 時給を引き上げる
  • 省力化設備を導入する

しかし、省力化設備には初期投資と維持費が必要です。小規模店舗では、投資額を回収できないこともあります。

原因5~電気料金と冷蔵・冷凍設備

スーパーは、一般の小売店と比べて、冷蔵・冷凍設備を長時間稼働させる必要があります。

冷蔵ケース、冷凍ケース、バックヤードの冷蔵庫、冷凍庫、空調、照明、調理設備などが必要です。

電気料金は、単純な使用量だけでなく、契約電力、燃料費、託送料金、再生可能エネルギー発電促進賦課金などの影響を受けます。資源エネルギー庁によると、自由化後の電気料金には、発電・調達費、人件費などのほか、送配電網の利用料金である託送料金や各種公租公課などが含まれます。

店舗の売上が減っても、食品を安全に保存するために冷蔵・冷凍設備を停止することはできません。

営業時間を短縮しても、冷蔵設備は閉店中も動かす必要があります。

そのため、来店客数が少ない店舗ほど、1人の顧客または1円の売上に対する電力費の割合が高くなりやすい構造があります。

原因6~地方物流の非効率性

スーパーでは、商品を継続的に配送する必要があります。

特に、生鮮食品、牛乳、豆腐、総菜材料などは、在庫を長期間持ちにくいため、一定の配送頻度が必要です。

物流費は、次の要素から構成されます。

物流費 =車両費 +燃料費 +運転者の人件費 +荷役費 +物流施設費 +配送管理費

人口密度が低い地域では、1回の配送で納品できる商品量が少なくなることがあります。

都市部であれば、短い距離で複数店舗へ配送できます。地方では店舗間の距離が長く、1店舗当たりの配送量も少ないため、商品1個当たりの物流費が高くなりやすくなります。

チェーン全体で見れば、遠隔地にある売上規模の小さい店舗を維持するために、専用の配送経路や長距離輸送が必要になることがあります。

店舗自体がわずかに黒字でも、物流網全体の効率を考えると、閉店や店舗統合が選ばれる場合があります。

原因7~生鮮食品と総菜の廃棄・値引き

食品スーパーは、生鮮食品や総菜を扱うことで、コンビニエンスストアやドラッグストアとの差別化を図っています。

一方、生鮮食品や総菜には、売れ残りの問題があります。

需要を正確に予測できなければ、次のどちらかが起こります。

  • 商品が足りず、販売機会を失う
  • 商品が余り、値引きや廃棄が増える

人口が少ない地域や、曜日・天候・観光客数による変動が大きい地域では、需要予測が難しくなる場合があります。

農林水産省によると、2024年度の事業系食品ロスは237万トンで、このうち食品小売業は48万トンでした。これはスーパーだけの数字ではありませんが、食品小売業全体で、売れ残りなどによる食品ロスが一定規模存在することを示します。

売れ残った商品を値引き販売すれば、廃棄量は減らせます。しかし、値引きによって粗利益は小さくなります。

また、値引き時刻が固定化すると、消費者が値引きを待つようになり、通常価格での販売が減る可能性もあります。

重要なのは、廃棄をゼロにすることではなく、欠品による機会損失と、過剰在庫による値引き・廃棄損失の合計を小さくすることです。

原因8~店舗と設備の老朽化

地方スーパーの撤退理由として見落とされやすいのが、建物と設備の更新問題です。

営業を継続するには、次の設備を更新する必要があります。

  • 冷蔵・冷凍ケース
  • 空調設備
  • 照明
  • レジシステム
  • 発注・在庫管理システム
  • 厨房設備
  • 防火設備
  • 給排水設備
  • 屋根・外壁
  • 駐車場舗装
  • 看板
  • 非常用電源
  • バリアフリー設備

日常の営業では利益が出ていても、数億円規模の改装や建て替えが必要になれば、企業は将来の投資回収可能性を検討します。

投資回収年数は、概念的には次のように表せます。

投資回収年数 =更新投資額 ÷更新後の年間利益増加額

例えば、改装に3億円必要で、改装による年間利益の増加が2,000万円と見込まれる場合、単純な回収年数は15年です。

しかし、商圏人口が今後も減少すると予測される地域では、15年間にわたって利益を維持できる保証はありません。

そのため、現在赤字だから閉店するのではなく、次の更新投資を回収できないため閉店することがあります。

原因9~賃貸借契約と土地・建物の問題

店舗が自社所有ではなく賃借物件の場合、契約更新や賃料改定が閉店の契機になることがあります。

また、店舗建物の所有者と運営会社が異なる場合、運営会社が営業継続を希望しても、建物所有者が建て替えや売却を選ぶ可能性があります。

一方、自社所有店舗であっても、建物の維持費、固定資産税、解体費、跡地利用などを含めて判断されます。

閉店理由が「契約満了」「諸般の事情」としか公表されない場合、公開情報だけで採算悪化を断定することはできません。

原因10~チェーン全体の店舗再編

チェーン店では、個別店舗だけでなく、企業全体の資本効率によって存廃が決まります。

本部は、限られた人材と資金を、より成長性の高い店舗に配分しようとします。

例えば、ある地方店舗がわずかに黒字でも、その店舗を閉じて、従業員や設備投資資金を都市部の大型店へ移した方が利益を増やせると判断される場合があります。

企業が比較するのは、単なる黒字・赤字ではありません。

  • 売上高営業利益率
  • 投下資本利益率
  • 改装投資の回収期間
  • 店舗当たり売上高
  • 従業員1人当たり売上高
  • 売場面積当たり売上高
  • 将来の商圏人口
  • 競合店の出店計画
  • 物流網との位置関係

このため、利用者が多いと感じている店舗でも、本部の基準を満たさず閉店することがあります。

小さな店舗ほど維持しやすいとは限らない

売場面積を小さくすれば、家賃や電気料金を抑えられる可能性があります。

しかし、小規模店舗には別の不利があります。

  • 大量仕入れの効果が小さい
  • 商品数を確保しにくい
  • 1人の欠勤の影響が大きい
  • 店長や管理者の費用を分散しにくい
  • 設備投資を売上で回収しにくい
  • 配送1回当たりの商品量が少ない
  • 値引き・廃棄を吸収しにくい

全国スーパーマーケット協会の2023年調査では、売場面積800平方メートル未満の店舗は、従業員1人当たり年間売上高が他の面積区分よりやや低い傾向が示されました。

小型化は有力な対応策ですが、単に店舗を小さくすれば採算が改善するとは限りません。

観光客が多ければ維持できるのか

外房のような観光地域では、夏季、週末、連休に来訪者が増えます。

観光需要はスーパーの売上を支える可能性があります。飲料、酒類、総菜、肉、魚、氷、行楽用品などの需要が増えるためです。

一方で、観光需要には次の問題があります。

  • 季節変動が大きい
  • 天候に左右される
  • 平日の売上を支えにくい
  • 繁忙期だけ人員を増やす必要がある
  • 需要予測を外すと廃棄が増える
  • 観光客が地域外の大型店で購入してから来訪することがある

年間数日や数週間の繁忙期だけでは、年間を通した固定費を支えられないことがあります。

観光客数だけでなく、地域内で実際に食料品を購入する割合と、年間を通した売上への寄与を確認する必要があります。

競合店がなくなれば残った店舗は安泰なのか

競合店の閉店は、残った店舗に顧客が集中する効果を持ちます。

しかし、競合店がないことが、必ずしも店舗の存続を保証するわけではありません。

地域全体の需要が、店舗を維持する最低水準を下回っていれば、独占状態でも採算を確保できないことがあります。

また、競合店がなくなった後に価格を大幅に上げれば、住民が遠方の大型店、宅配、インターネット通販へ移行する可能性があります。

スーパーには、地域内の競争だけでなく、地域外店舗や異業態との競争があります。

ネットスーパーは代替になるのか

ネットスーパーや食品宅配は、店舗まで移動できない人にとって有効な手段です。

しかし、地方では次の制約があります。

  • 配達区域外となる
  • 配達時間を指定しにくい
  • 配送料がかかる
  • 最低注文額が設定される
  • 当日配送に対応しない
  • 生鮮食品を自分で選べない
  • インターネット操作が必要になる
  • クレジットカードなど支払方法が限られる
  • 欠品時に代替商品を選びにくい

配送密度が低い地域では、1件当たりの配送費が高くなります。

ネットスーパーも、店舗型スーパーと同じように、需要密度の問題から逃れられません。

移動販売は撤退後の解決策になるのか

移動販売は、店舗へ行けない住民に商品を届ける有力な手段です。

一方、移動販売車には、次の費用がかかります。

移動販売の利益 =商品販売額 -商品仕入原価 -車両費 -燃料費 -人件費 -保冷設備費 -決済費用 -売れ残り損失

集落が分散している地域では、移動時間が長くなり、1時間当たりに対応できる利用者数が少なくなります。

利用者にとって必要性が高くても、事業者にとって採算が合うとは限りません。

そのため、移動販売を持続させるには、

  • 既存店舗との連携
  • 福祉サービスとの共同運行
  • 自治体による運行支援
  • 複数地区を組み合わせた巡回
  • 注文予約による廃棄削減
  • 高齢者見守りとの複合化

などが必要になることがあります。

ただし、補助金によって開始できても、運転者、車両更新、利用者数を長期間確保できなければ継続できません。

スーパー撤退が住民生活に与える影響

スーパーの閉店は、単なる店舗数の減少ではありません。

買い物距離が延びる

近隣店舗がなくなると、住民は遠方の店舗へ移動する必要があります。

自動車を運転できる人にとっては、数キロメートルの増加で済む場合があります。しかし、運転できない人には大きな影響があります。

食品価格以外の負担が増える

遠方の店舗が安くても、交通費と時間を含めると必ずしも安いとは限りません。

実質的な買い物費用 =商品代金 +燃料費・運賃 +配送料 +移動時間 +家族の送迎負担

商品の店頭価格だけでは、住民の負担を評価できません。

生鮮食品を買う頻度が下がる

買い物回数が減ると、保存しやすい食品の購入が増える可能性があります。

冷凍食品、加工食品、菓子、レトルト食品が直ちに健康へ悪影響を与えるとは限りません。しかし、生鮮食品を選択できる機会が減ることは、食生活の多様性に影響する可能性があります。

農林水産省は、食料品店の減少や高齢化により、高齢者を中心に買い物へ不便や苦労を感じる人が増えている問題を「食料品アクセス問題」と位置づけています。

家族の送迎負担が増える

本人が運転できない場合、家族が買い物を代行したり、店舗へ送迎したりする必要があります。

この負担は、統計上の買い物費用には表れにくいものです。

食料品アクセス困難人口という考え方

農林水産政策研究所は、食料品アクセス困難人口を、

「店舗まで500メートル以上離れ、自動車の利用が困難な65歳以上の高齢者」

として推計しています。

対象店舗には、生鮮食品店、百貨店、総合スーパー、食料品スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストアなどが含まれます。

ただし、この定義には注意が必要です。

500メートル以内にコンビニエンスストアがあれば、統計上はアクセス困難者に含まれない場合があります。しかし、コンビニエンスストアで、価格、品ぞろえ、容量を含めてスーパーと同等の買い物ができるとは限りません。

また、自動車を保有していても、本人が安全に運転できるとは限りません。

したがって、地域の買い物環境を評価するときは、500メートルという距離だけでなく、

  • 実際の道路距離
  • 坂道や歩道
  • 商品の品ぞろえ
  • 店舗価格
  • 荷物を運べるか
  • バスの運行本数
  • 家族の支援
  • 配達サービスの有無

まで確認する必要があります。

スーパーが残りやすい条件

地方でも、次の条件がそろえばスーパーを維持しやすくなります。

  • 一定範囲に人口が集中している
  • 競合店との差別化ができている
  • 地域外からも顧客を集められる
  • 幹線道路から入りやすい
  • 十分な駐車場がある
  • 生鮮食品や総菜に支持がある
  • 店舗規模が需要に合っている
  • 物流拠点から遠すぎない
  • 従業員を確保できる
  • 建物や設備が比較的新しい
  • 観光需要が年間売上に寄与する
  • 他店舗との配送効率が良い
  • 地域住民が継続的に利用する

特に重要なのは、商圏人口の総数だけでなく、一定時間内に来店できる顧客がどの程度いるかです。

スーパーが残りにくい条件

次の条件が重なる店舗は、存続が難しくなります。

  • 商圏人口が減少している
  • 住宅が広範囲に分散している
  • 高齢化により来店頻度が低下している
  • 近隣都市の大型店へ顧客が流出している
  • ドラッグストアとの価格競争が激しい
  • 人材を確保できない
  • 冷蔵・冷凍設備が老朽化している
  • 大規模な改装が必要である
  • 配送距離が長い
  • 売上の季節変動が大きい
  • 生鮮食品の廃棄率が高い
  • 店舗面積が需要に対して大きすぎる
  • 本部の店舗再編対象になっている

一つの条件だけで閉店が決まるとは限りません。

複数の問題が同時に発生し、更新投資の時期や契約満了をきっかけに閉店する場合が多いと考えられます。

スーパーを補助金で維持すべきか

スーパーは民間企業ですが、地方では生活インフラに近い役割を持ちます。

特に、代替店舗が遠く、自動車を運転できない住民が多い地域では、店舗の閉鎖が生活維持に直接影響します。

ただし、特定店舗へ恒常的に公費を投入する場合は、次を検討する必要があります。

  • 支援しなければ本当に撤退するのか
  • 支援額はいくらか
  • 何年間維持できるのか
  • 対象住民は何人か
  • 1人当たりの公費負担はいくらか
  • 移動販売や宅配より効率的か
  • 競合企業との公平性を保てるか
  • 店舗の経営改善策があるか
  • 経営情報をどこまで確認できるか
  • 支援終了後に存続できるか

例えば、年間3,000万円の公費を投入して、実質的な利用者が1,000人なら、単純計算で利用者1人当たり年間3万円です。

この金額が高いか安いかは、代替手段の費用と比較しなければ判断できません。

店舗維持、移動販売、買い物バス、タクシー助成、宅配支援などを同じ基準で比較する必要があります。

現実性の低い主張

人口を増やせばスーパーを維持できる

人口増加は需要を増やす可能性があります。

しかし、店舗維持に必要な規模の人口を短期間で増やすことは容易ではありません。また、移住者が必ず地元店舗を利用するとは限りません。

道の駅があれば代替できる

道の駅は農産物や地域商品を購入する場所として有効です。

しかし、肉、魚、加工食品、日用品、医薬品など、日常生活に必要な商品をすべて安定的に供給できるとは限りません。

コンビニエンスストアがあれば問題ない

コンビニエンスストアは、営業時間や立地の面で重要です。

一方、価格、容量、生鮮食品、日用品の品ぞろえでは、スーパーと同じ役割を果たせない場合があります。

ネットスーパーですべて解決できる

配達区域、配送料、注文方法、決済方法、物流採算などの制約があります。

自治体が運営すればよい

自治体が店舗を直接または間接的に支える場合でも、仕入れ、在庫管理、食品衛生、人材確保、廃棄、設備更新などの経営課題は残ります。

民間店舗の赤字が、公営化によって自動的に消えるわけではありません。

地方で現実的に取り得る対応

地域全体の生活を維持するには、スーパー1店舗を無条件に残すことだけが選択肢ではありません。

現実的には、複数の手段を組み合わせる必要があります。

店舗の小型化

需要に合わせて売場面積や商品数を縮小します。

ただし、小型化による売上減と固定費削減の効果を比較する必要があります。

営業時間の見直し

利用者が少ない時間帯を短縮し、人件費や照明・空調費を抑えます。

冷蔵設備の電力費は残るため、営業時間短縮だけで大幅な改善ができるとは限りません。

予約販売と受け取り拠点

事前注文によって需要を把握し、廃棄を減らします。

電話注文を併用すれば、インターネットを利用しない高齢者にも対応できます。

移動販売との併用

店舗を商品供給拠点とし、周辺集落へ移動販売車を運行します。

店舗単独と移動販売単独ではなく、在庫と人員を共有する方法です。

医療・介護・交通との連携

通院バス、デマンド交通、福祉サービスなどと買い物機会を組み合わせます。

ただし、目的外利用や運行制度上の制約を確認する必要があります。

複合店舗化

食品、日用品、行政手続、金融、宅配受け取り、地域交流などをまとめます。

複数の需要を集約することで、来店頻度を高められる可能性があります。

一方、業務が複雑になり、必要な人材や設備が増える可能性もあります。

自治体が確認すべきこと

自治体は、店舗の閉店が発表されてから対応するのではなく、地域の買い物環境を定期的に把握する必要があります。

確認項目としては、次が考えられます。

  • 食料品を扱う店舗の所在地
  • 地区別の人口と高齢化率
  • 店舗までの道路距離
  • 自動車を運転できない住民数
  • 路線バスとデマンド交通
  • 移動販売の曜日と区域
  • 生協・宅配・ネットスーパーの区域
  • タクシー料金
  • 家族送迎の実態
  • 店舗閉鎖時の代替店舗
  • 災害時の食料供給拠点
  • 小売・物流分野の人材確保状況

特に重要なのは、現在の店舗が閉店した場合に、次の店舗までの距離と時間がどれだけ増えるかを事前に把握することです。

住民が住宅購入・移住前に確認すべきこと

地方への移住や住宅購入では、現在スーパーがあるかだけでなく、次を確認する必要があります。

  1. 最寄りのスーパーまでの実際の道路距離
  2. 自動車を運転できなくなった場合の移動手段
  3. 第二候補のスーパーまでの距離
  4. 生協・宅配・ネットスーパーの配達区域
  5. 移動販売の運行日
  6. コンビニエンスストアとドラッグストアの品ぞろえ
  7. 冬季・荒天時の移動条件
  8. 家族に買い物を頼めるか
  9. 店舗が閉店した場合の代替手段
  10. 10年後、20年後も生活を維持できるか

現在自動車を運転できる人でも、将来の免許返納や健康状態の変化を考える必要があります。

公開資料から確認できないこと

個別店舗については、次の情報が通常公開されません。

  • 店舗単独の売上高
  • 店舗単独の営業利益
  • 廃棄率
  • 人件費率
  • 賃料
  • 電気料金
  • 設備更新額
  • 本部の撤退基準
  • 契約条件
  • 今後の閉店計画

したがって、客が少なく見える、建物が古い、競合店ができたという情報だけで、閉店の可能性を断定することはできません。

閉店理由が企業から明示されていない場合は、「人口減少が原因」「赤字店舗だった」などと断定すべきではありません。

現実的な結論

地方スーパーが撤退する理由は、人口減少だけでは説明できません。

人口減少は、店舗の売上上限を下げる重要な要因です。しかし、撤退を直接決めるのは、売上に対して人件費、物流費、電気料金、廃棄損失、設備更新費などを負担し、企業が必要とする利益を確保できるかどうかです。

全国のスーパー販売額が増加していても、地方の個別店舗が安定しているとは限りません。

食品価格の上昇によって名目売上が増えても、仕入価格や各種費用が増えれば、利益は改善しない可能性があります。

また、店舗が現在黒字でも、老朽設備の更新投資を将来の商圏人口から回収できないと判断されれば、閉店することがあります。

地方スーパーを生活インフラとして維持するには、単に「住民が必要としている」と訴えるだけでは足りません。

誰が利用するのか。 1日に何人が来店するのか。 1人がいくら購入するのか。 商品を誰が運ぶのか。 従業員を確保できるのか。 設備更新にいくら必要なのか。 赤字を誰が何年間負担するのか。

これらを具体的に検証する必要があります。

スーパーを残すことが最も合理的な地域もあれば、小型店舗、移動販売、宅配、交通支援を組み合わせた方が現実的な地域もあります。

重要なのは、すべての店舗を一律に残すことでも、市場原理だけに任せることでもありません。

地域ごとに、必要な食料供給機能を定め、その機能を最も持続可能な方法で維持することです。

データ利用上の注意

本記事で使用した販売額や店舗数は、全国または業界全体の統計です。

個別の地方店舗の売上、利益、閉店理由を直接示すものではありません。

また、経済産業省の商業動態統計は、2025年1月分に2021年経済センサス~活動調査を基礎とする水準調整が行われており、2024年12月以前の販売額との間に不連続がある点に注意が必要です。

地域や個別店舗を分析する場合は、国勢調査、住民基本台帳、経済センサス、企業の公式発表、自治体資料、交通情報などを組み合わせて判断する必要があります。

主な参考資料

  • 経済産業省「商業動態統計」
  • 経済産業省「2025年小売業販売を振り返る」
  • 全国スーパーマーケット協会「2025年版スーパーマーケット白書」
  • 全国スーパーマーケット協会「スーパーマーケット年次統計調査」
  • 農林水産省「食品アクセス問題の現状」
  • 農林水産政策研究所「食料品アクセスマップ」
  • 農林水産省「事業系食品ロス量(2024年度推計値)」
  • 資源エネルギー庁「電気料金の仕組み」
  • 総務省統計局「人口推計」

地域の課題を、自分の判断に置き換えて考える

有限会社アードレでは、住まい・車・移住などの大きな選択を、 費用や将来条件をもとに数字で比較し、判断できる形に整理しています。

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はじめに

外房で暮らすために必要なものは、住宅と自動車だけではありません。

水道、電気、通信、道路、公共交通、医療、買い物、ごみ収集、行政窓口、消防・救急、金融、郵便、ガソリンスタンドなど、日常生活を支える複数の機能が安定して動いて、初めて地域での暮らしが成立します。

人口が減少しても、これらのサービスが直ちになくなるとは限りません。一方で、人口が減れば利用者や料金収入が減り、人材確保が難しくなり、広い地域に施設や設備を維持する負担が重くなります。

重要なのは、「外房に何が必要か」を理想論で列挙することではありません。

どのサービスが生活継続に不可欠なのか、どの機能を各市町村が単独で維持できるのか、どの機能は広域化や集約が避けられないのか、住民の移動負担をどう補うのかを、現実の人口、地理、財政、人材、利用状況から検討する必要があります。

本記事では、外房に必要な生活インフラ・地域サービスを、長生地域、夷隅地域、安房地域を中心に整理します。

最初に結論~外房に必要なのは「すべてを各地に残すこと」ではない

外房に必要なのは、すべての集落にすべての施設を残すことではありません。

現実的に必要なのは、次の三層を組み合わせた生活基盤です。

第一は、各家庭や各集落の近くで維持しなければ生活できない基礎機能です。

これには、水道、電気、通信、道路、ごみ収集、消防・救急、日常的な買い物手段などが含まれます。

第二は、市町村または複数市町村で共有する地域拠点機能です。

診療所、薬局、スーパー、行政窓口、金融、介護、公共交通の乗り継ぎ拠点などが該当します。

第三は、外房全域または県内の都市部と連携して維持する広域機能です。

入院医療、高度医療、専門医療、大規模な水道施設、鉄道、幹線バス、災害時の物流や通信復旧などが該当します。

人口減少地域では、施設を分散したまま維持し続けることが難しくなります。しかし、単に施設を集約すると、住民の移動距離や家族の送迎負担が増えます。

したがって、外房の生活インフラ政策は、次の式で評価する必要があります。

地域サービスの実質的な維持可能性 =施設・設備の維持 +必要な人材の確保 +住民が利用できる交通手段 +料金の負担可能性 +災害時の代替手段 +サービスが停止した場合の支援体制

施設が残っていても、そこまで移動できなければ、住民にとっては利用できないサービスです。

反対に、近隣の施設が統合されても、予約型交通、送迎、訪問サービス、オンライン手続き、移動販売などが適切に整備されれば、生活機能を維持できる場合があります。

分析する外房の範囲

本記事では、主として次の地域を対象とします。

長生地域は、茂原市、一宮町、睦沢町、長生村、白子町、長柄町、長南町です。

夷隅地域は、勝浦市、いすみ市、大多喜町、御宿町です。

安房地域は、館山市、鴨川市、南房総市、鋸南町です。

千葉県の毎月常住人口調査でも、長生、夷隅、安房はこの区分で集計されています。

ただし、住民の生活圏は行政区分と一致しません。

長生地域では茂原市、夷隅地域ではいすみ市や勝浦市、安房地域では館山市や鴨川市が一定の地域拠点となっています。専門医療や大規模な買い物については、千葉市、市原市、木更津市など外房外へ移動する住民もいます。

したがって、市町村ごとの施設数だけで地域生活の利便性を判断することはできません。

人口減少はインフラ需要をなくすのではなく、維持効率を悪化させる

2025年10月1日現在の国勢調査速報では、千葉県人口は625万8,512人で、2020年調査より2万5,968人減少しました。千葉県全体としては、国勢調査開始後初めて人口減少に転じています。一方、世帯数は増加し、1世帯当たり人員は2.18人まで低下しました。

県全体の人口減少率だけを見ると、大きな変化ではないように見えるかもしれません。しかし、市町村別では、人口増加が県北西部の一部自治体に偏り、外房を含む多くの地域では人口減少が続いています。

さらに、人口が減少しても、水道管、道路、橋、配水場、通信設備、ごみ収集区域などの面積が同じ割合で小さくなるわけではありません。

たとえば、人口が20%減少しても、住宅が地域内に分散したままであれば、水道管や道路の延長を20%削減できるとは限りません。

このため、人口減少地域では、住民一人当たり、または一世帯当たりの維持負担が上昇しやすくなります。

また、世帯数が増えても、単身世帯や高齢夫婦世帯が増えている場合、地域サービスを支える利用者や担い手が増えたとは限りません。

人口だけでなく、年齢構成、世帯構成、居住地の分散、運転可能者の有無を確認する必要があります。

1.水道~外房で最も基礎的で、単独維持が難しくなるインフラ

水道は、生活インフラの中でも代替が難しい機能です。

買い物であれば宅配、行政手続きであればオンライン化、移動であればタクシーなどの代替策があります。しかし、水道が安定して供給されなければ、飲料、調理、入浴、洗濯、トイレ、医療、介護、消防など、生活の広い範囲が停止します。

千葉県は、人口減少が進む中でも安定して水を供給するため、2019年に水道事業基盤強化に係る千葉県基本計画を策定し、2023年には千葉県水道広域化推進プランを策定しました。

県の広域化方針では、九十九里地域では経営の一体化、夷隅地域と安房地域では事業統合や施設統廃合の検討が進められてきました。

ただし、広域化すれば自動的に水道料金が下がり、経営問題が解消するわけではありません。

千葉県自身も、広域化の試算は仮定条件に基づくものであり、各地域の実情を反映した精緻なシミュレーション、技術的・財政的課題、地域の合意形成が必要であるとしています。

外房の水道で必要なのは、次の機能です。

老朽管の計画的な更新

水道管の更新を先送りすると、漏水、断水、道路陥没、復旧費用の増加につながる可能性があります。

ただし、すべての管路を同じ優先順位で更新することは現実的ではありません。

病院、避難所、福祉施設、人口が集中する地区、代替供給が難しい地区などを優先し、管路の重要度に応じた更新計画が必要です。

広域化と施設集約

浄水場、配水場、管理部門、料金徴収、保守点検などを共同化すれば、重複業務を減らせる可能性があります。

一方で、施設を減らしすぎると、一つの施設や幹線管路が停止した際の影響範囲が広がることがあります。

したがって、効率性だけでなく、非常時の代替経路や応急給水能力を含めて評価する必要があります。

小規模・分散地区への供給

人口密度の低い山間部や半島部では、少数の利用者のために長い管路を維持する場合があります。

こうした地区については、単純な採算だけで供給可否を決めるべきではありません。しかし、将来も同じ設備構成を維持できるかは、現実的に検討しなければなりません。

外房の水道政策は、「広域化するか、しないか」という二択ではなく、管理の共同化、施設の統廃合、災害時の相互応援、資材の共同購入、人材の共同確保などを段階的に組み合わせる必要があります。

2.道路と橋~自動車依存地域では生活設備そのもの

外房では、道路は単なる移動手段ではありません。

通勤、通学、通院、買い物、訪問介護、救急搬送、ごみ収集、宅配、郵便、給油、農業、観光など、多くの地域サービスが道路を前提にしています。

長生地域では、千葉県の長生土木事務所が7市町村の道路や河川の建設、維持管理、災害対策などを担当しています。道路損傷については、道路緊急ダイヤルやオンライン通報の仕組みも設けられています。

道路維持で重要なのは、新しい道路を増やすことだけではありません。

むしろ人口減少地域では、既存道路、橋、トンネル、側溝、法面、街路灯などを、どこまで安全に維持できるかが重要です。

外房では、沿岸部、山間部、河川沿い、狭い生活道路など、地域によって道路条件が異なります。

必要な対策は次のとおりです。

  • 救急搬送や避難に必要な道路の優先保全
  • 病院、スーパー、駅、行政拠点への経路確保
  • 橋梁や法面の定期点検
  • 台風や豪雨後の倒木、土砂、冠水への対応
  • ごみ収集車、移動販売車、福祉車両が通行できる幅員の確保
  • 道路損傷を住民が通報できる仕組み
  • 災害時に一つの経路が寸断された場合の代替経路確保

ただし、利用が極めて少ない道路をすべて同じ水準で維持することは、財政的にも人材面でも難しくなります。

今後は、道路ごとに生活上の重要度を評価し、補修の優先順位を公開する必要があります。

3.地域交通~鉄道やバスを残すだけでは生活交通にならない

外房線、地域路線バス、コミュニティバス、乗合タクシーは、運転できない人にとって重要な生活基盤です。

しかし、路線が存在していることと、生活に使えることは同じではありません。

通院に使うには、診療時間に間に合うこと、帰りの便があること、駅やバス停から病院まで移動できることが必要です。

買い物に使うには、荷物を持って乗降できること、店舗での滞在時間を確保できること、帰宅便があることが必要です。

国土交通省の地域交通に関する資料でも、人口減少による利用者減少、路線バスの低い収支、高齢者の移動手段確保が課題として挙げられています。

過去の南房総地域の交通施策でも、幹線交通とデマンド型乗合タクシーを組み合わせ、交通結節点で接続する考え方が採用されてきました。

外房で現実的に必要なのは、次のような階層型交通です。

幹線交通

外房線、内房線、主要な路線バスなど、地域拠点間を結ぶ交通です。

運行本数だけでなく、通勤、通学、通院に使える時間帯を確保する必要があります。

地域内交通

コミュニティバスやデマンド型乗合交通によって、住宅地と駅、病院、スーパー、行政拠点を結びます。

ただし、予約方法が電話だけ、予約締切が早い、運行区域をまたげない、目的地が限定されると、実際の利用は難しくなります。

個別支援交通

介護タクシー、福祉有償運送、病院送迎、家族送迎などです。

身体機能が低下した人には必要ですが、利用料金、人材、車両数に限界があります。

したがって、外房の地域交通は、単独のコミュニティバスを導入すれば解決する問題ではありません。

鉄道、路線バス、デマンド交通、タクシー、病院送迎を、時刻と乗り継ぎを含めて一つの仕組みとして設計する必要があります。

4.医療と救急~病院数よりも、到達可能性と役割分担が重要

外房では、高齢化や人口減少が進む一方、医療需要が一律に減るとは限りません。

高齢者人口の割合が上昇すれば、慢性疾患、救急搬送、在宅医療、訪問看護、服薬管理などの需要が高まる場合があります。

千葉県の保健医療計画では、長生地域と夷隅地域は山武地域と合わせて山武長生夷隅保健医療圏に区分され、安房地域は安房保健医療圏として整理されています。

2025年から2040年にかけて、山武長生夷隅保健医療圏の人口は約40万1千人から約31万9千人へ、安房保健医療圏は約11万5千人から約8万8千人へ減少する推計が示されています。

また、山武長生夷隅保健医療圏は医師少数区域として示されており、人口当たりの医師確保が課題です。

安房医療圏では、高齢者割合が県内でも高く、亀田総合病院への手術機能の集約、医療人材確保、病床機能の調整などが課題として挙げられています。

外房に必要な医療インフラは、すべての市町村に総合病院を置くことではありません。

必要なのは、次の役割分担です。

  • 日常的な慢性疾患を診る診療所
  • 検査、入院、手術を担う地域病院
  • 救急搬送を受け入れる医療機関
  • 高度医療を担う広域病院
  • 在宅医療、訪問看護、薬局
  • 回復期、慢性期、介護施設
  • 医療機関まで患者を運ぶ交通

医療機関の集約には、専門職を集中させやすい利点があります。

一方、患者の移動距離、家族の送迎時間、救急搬送時間が長くなる可能性があります。

したがって、病院再編や機能集約を評価するときは、病院側の経営だけでなく、次の合計を確認しなければなりません。

医療提供の実質費用 =病院の運営費 +医療従事者の負担 +救急搬送負担 +患者の移動時間 +家族の送迎・付き添い負担 +地域交通の維持費

外房に必要なのは、病床数の単純な維持ではなく、住民が必要な医療へ実際に到達できる仕組みです。

5.買い物と食品アクセス~店舗の有無だけでは判断できない

買い物環境は、スーパーの所在地だけでは評価できません。

自宅から店舗までの距離、移動手段、坂道、荷物の重量、配送区域、最低注文額、配送料、支払方法、注文方法などが重要です。

農林水産省は、国内市場の縮小などを背景に、食品への経済的・物理的アクセスが難しい人が増加しているとしています。

2025年1月に実施された全国調査では、公共交通または徒歩で食品店へ15分以内に行けないと答えた人が37.8%、健康的な食事に必要な食品を手頃な価格で購入できていないと答えた人が45.4%とされています。ただし、これは全国調査であり、外房の住民割合を直接示すものではありません。

外房の買い物支援では、次の手段を組み合わせる必要があります。

固定店舗

品ぞろえと価格面では最も効率的ですが、商圏人口が減れば撤退リスクが高まります。

宅配

自動車を運転できない世帯には有効です。

ただし、インターネットや電話で注文できること、配送区域内であること、受け取りができることが条件です。

移動販売

集落を巡回できる利点がありますが、利用者が少ない地域では、燃料費、人件費、商品廃棄、移動時間の負担が大きくなります。

必要性が高くても、民間事業単独では採算が合わない場合があります。

買い物代行

個別の要望に対応できますが、注文確認、店舗までの移動、買い物、配送、代金精算を含めると、一件当たりの所要時間が長くなります。

外房の買い物支援では、「店舗を誘致する」「移動販売を始める」という単独策ではなく、固定店舗、宅配、移動販売、交通支援を地域ごとに組み合わせる必要があります。

6.ごみ収集と生活衛生~目立たないが停止できないサービス

ごみ収集は、日常的に利用される一方、サービスが維持されている間は重要性が見えにくいインフラです。

人口が減少しても、住宅が分散していれば収集距離は大きく減りません。

むしろ一か所当たりのごみ量が減り、収集効率が低下する場合があります。

高齢者世帯では、ごみ集積所まで運べない、ごみ袋を持って坂道を歩けない、分別方法が理解しにくいといった問題もあります。

外房で必要なのは、次の仕組みです。

  • 定期的な一般ごみ収集
  • 高齢者や障害者への戸別収集
  • 粗大ごみの搬出支援
  • 不法投棄対策
  • 災害ごみの仮置場計画
  • ごみ処理施設の広域運営
  • 収集作業員と運転手の確保

ごみ処理施設を広域化すれば、設備投資を集約できる可能性があります。

一方で、収集車の走行距離や運搬時間が増える場合があります。

施設費だけでなく、収集・運搬費を含めた総費用で判断する必要があります。

7.電気と燃料~停電時の地域生活をどう支えるか

外房では、台風、強風、倒木などにより、電力設備や道路が影響を受ける可能性があります。

停電が長引くと、照明だけでなく、冷蔵庫、給湯、井戸ポンプ、通信機器、医療機器、電動ベッド、空調、店舗の決済などが停止します。

したがって、電気については通常時の供給だけでなく、停電時の代替手段が重要です。

必要な対策としては、次が考えられます。

  • 避難所や医療施設の非常用電源
  • 燃料の備蓄と補給契約
  • 在宅医療機器利用者の個別支援計画
  • 携帯電話や情報端末の充電拠点
  • 給水設備を動かす非常用電源
  • ガソリンスタンドの営業継続支援
  • 復旧優先施設の事前指定

太陽光発電や蓄電池は、一部の停電対策にはなりますが、天候、容量、設備費、機器寿命などの制約があります。

「再生可能エネルギーを導入すれば災害時も安心」と単純化することはできません。

8.通信~外房では通信が行政・医療・買い物を支える基盤になる

インターネットや携帯電話は、もはや娯楽だけの設備ではありません。

行政手続き、銀行取引、医療予約、薬の確認、買い物、災害情報、家族との連絡、仕事、教育など、多くの機能が通信を前提にしています。

一方で、通信を利用できる地域であっても、高齢者が端末を操作できるとは限りません。

デジタル化には、三つの条件が必要です。

第一は、通信回線が利用できることです。

第二は、スマートフォンやパソコンなどの端末を保有できることです。

第三は、本人または支援者が操作できることです。

この三つのどれかが欠けると、オンライン手続きは生活支援になりません。

外房に必要なのは、行政窓口をすべて廃止してオンライン化することではなく、オンライン、電話、対面、代理申請を併存させることです。

また、災害時には停電や基地局障害で通信が使えなくなる可能性があります。

防災行政無線、ラジオ、広報車、掲示板、地域の見守りなど、通信障害時の代替手段も残す必要があります。

9.行政、郵便、金融~高齢化地域では「手続きへの到達可能性」が重要

行政サービスは、市役所や町役場の建物が存在していれば十分ではありません。

住民票、税、介護、医療、福祉、年金、相続、死亡届、住宅、廃棄物など、手続き内容は複雑です。

高齢者や単身者には、窓口まで行けない、必要書類が分からない、オンライン申請ができないという問題があります。

郵便局や金融機関についても、店舗数だけでなく、次を確認する必要があります。

  • 現金を引き出せるか
  • 公共料金を支払えるか
  • 年金や相続の相談ができるか
  • 本人確認手続きができるか
  • 車がなくても行けるか
  • 訪問や代理手続きが可能か

今後、窓口の統廃合が進む場合には、移動窓口、予約相談、電話相談、郵送、代理申請などを組み合わせる必要があります。

10.消防・救急~施設数だけでなく到着時間と人員を確認する

消防署や救急車は、地域生活の安全を支える重要なインフラです。

特に高齢化地域では、急病、転倒、脳卒中、心疾患などに対する救急需要が増える可能性があります。

消防・救急で重要なのは、次の一連の時間です。

救急対応時間 =通報から出動までの時間 +現場到着までの時間 +現場活動時間 +搬送先選定時間 +病院までの搬送時間

救急車が現場に早く到着しても、受入先が決まらなければ、医療開始は遅れます。

反対に、高度医療機関があっても、自宅から遠く、搬送時間が長ければ地域住民の利用条件は厳しくなります。

必要なのは、消防署や病院の数の比較ではなく、時間帯別、地区別、疾患別の搬送体制の確認です。

外房で優先順位が高い生活インフラ・地域サービス

以上を踏まえると、外房で特に優先順位が高いのは、次の七分野です。

第一優先~水道、電気、道路、通信

これらは多くの地域サービスの前提となる基礎インフラです。

一つが停止すると、医療、買い物、行政、介護にも影響します。

第二優先~救急医療と地域医療への移動

病院の維持だけでなく、救急搬送、通院交通、訪問診療、薬局を一体として整備する必要があります。

第三優先~運転できない人の移動手段

デマンド交通、タクシー、病院送迎、買い物支援を組み合わせる必要があります。

第四優先~食品と日用品へのアクセス

スーパーの誘致だけでなく、宅配、移動販売、地域交通を含めて設計します。

第五優先~ごみ収集と住宅周辺管理

ごみ出し、粗大ごみ、草刈り、住宅修繕など、高齢者が自力で行えなくなる生活作業への支援が必要です。

第六優先~行政・金融・郵便へのアクセス

窓口の集約と、移動・訪問・代理・電話支援を組み合わせます。

第七優先~災害時の代替機能

非常用電源、応急給水、燃料、通信、道路、避難所を、通常時から準備します。

現実性の低い対策

外房の生活インフラを考える際には、効果を立証しにくい案にも注意が必要です。

すべての集落に同じ施設を残す

人口、利用者、人材、財政が減少する中で、すべての施設を同じ規模で維持することは難しいと考えられます。

観光収入だけで生活サービスを維持する

観光客数が増えても、その収入が水道、医療、交通、ごみ収集などの維持費へ十分に回るとは限りません。

観光客の増加が、住民向けサービスの持続性を直接保証するものではありません。

デジタル化ですべて代替する

通信環境、端末、操作能力がそろわなければ利用できません。

医療、介護、ごみ出し、救急、住宅管理など、現地での人手が必要なサービスも残ります。

ボランティアだけに依存する

住民の善意は重要ですが、高齢化した地域で長期間、安定的に担い手を確保できるとは限りません。

責任、事故、保険、燃料費、時間負担もあります。

自動運転がすぐに交通問題を解決する

自動運転には、道路条件、法制度、運行管理、車両費、保守、通信、事故対応などの課題があります。

将来の可能性はありますが、現時点の通院や買い物問題を先送りする理由にはなりません。

外房で現実的に進めるべき対策

最も現実的なのは、既存の施設と人材を前提に、段階的に機能を再編することです。

1.生活圏単位でサービスを把握する

行政区域ではなく、住民が実際に利用している病院、スーパー、駅、金融機関、行政窓口を地図上で把握します。

GIS(Geographic Information System・地理情報システム)を利用すれば、人口、年齢、道路、施設、所要時間を重ねて分析できます。

2.サービスごとに最低水準を定める

たとえば、「病院を一つ残す」という表現では不十分です。

  • 救急車が何分以内に到着できるか
  • 食料品を週何回購入できるか
  • 断水時に何時間以内に給水できるか
  • ごみを週何回収集するか
  • 行政相談を月何回受けられるか

という利用者側の基準が必要です。

3.拠点集約と移動支援を同時に行う

施設を集約する場合は、交通や訪問サービスを同時に整備しなければなりません。

施設だけを減らし、移動手段を用意しない集約は、住民サービスの実質的な縮小になります。

4.市町村を越えた共同運営を増やす

水道、医療、ごみ処理、消防、交通、専門職採用などは、小規模自治体単独よりも広域で運営した方が合理的な場合があります。

ただし、広域化の効果は事業ごとに異なります。

管理費の削減だけでなく、住民の移動距離や運搬費の増加も確認する必要があります。

5.民間事業が成立しない部分を明確にする

移動販売、買い物代行、デマンド交通、住宅管理などは、需要があっても採算が合わない場合があります。

その場合、補助金を投入するかどうかを曖昧にせず、誰の生活を、年間いくらで支えるのかを明示する必要があります。

判断前のチェックリスト

外房の市町村や地区で、生活インフラが維持できるかを判断する際には、次を確認する必要があります。

  • 水道の供給主体と更新計画
  • 水道料金と将来見通し
  • 停電時の給水・通信手段
  • 病院と診療所までの所要時間
  • 夜間・休日の救急搬送先
  • 公共交通の実際の運行時間
  • デマンド交通の予約条件
  • スーパー、薬局までの距離
  • 宅配や移動販売の対象区域
  • ごみ集積所までの距離
  • 高齢者向け戸別収集の有無
  • ガソリンスタンドの所在地と営業時間
  • 行政窓口までの交通手段
  • 金融・郵便サービスの利用条件
  • 携帯電話と固定通信の利用可能性
  • 災害時の代替道路
  • 非常用電源と応急給水拠点
  • 家族による送迎や支援がなくなった場合の代替手段

現実的な結論

外房に必要な生活インフラ・地域サービスは、都市部と同じ数の施設を維持することではありません。

人口が減少し、専門人材の確保が難しくなる中では、水道、医療、ごみ処理、消防、交通などの広域化や拠点集約は、一定程度避けにくいと考えられます。

しかし、集約だけを進めれば、運転できない高齢者や障害者、単身世帯に負担が集中します。

外房で今後も暮らし続けるために必要なのは、施設の維持と住民の利用可能性を分けずに考えることです。

水道施設があることではなく、水が安定して届くこと。

病院があることではなく、必要な時に到達できること。

バスが走っていることではなく、通院や買い物に使えること。

オンライン手続きがあることではなく、住民が実際に申請できること。

スーパーがあることではなく、食品を自宅まで持ち帰れること。

これらを基準にすれば、外房で本当に不足しているサービスと、形だけ残っているサービスを区別できます。

外房の生活基盤を維持するには、人口増加だけを期待するのではなく、人口が減少しても最低限の生活機能を維持できる地域構造へ移行する必要があります。

その中心になるのは、地域拠点への適切な機能集約、市町村を越えた共同運営、住民の移動支援、訪問型サービス、災害時の代替機能です。

すべてを残すことも、すべてを集約することも現実的ではありません。

どの機能を身近に残し、どの機能を広域で共有し、距離が広がった部分をどのように補うか。

この具体的な設計こそが、外房で生活を維持するための最も重要な課題です。

地域の課題を、自分の判断に置き換えて考える

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