地域分析記事

地域の暮らしと地域課題を数学とデータで考える

 地方で暮らしていると、ガソリンスタンドが生活を支える重要なインフラであることを、日常的に意識する機会はそれほど多くありません。自動車で買い物や通院に出かけ、仕事へ向かい、農業や建設業、配送業などで使用する車両に燃料を入れる。冬には暖房用の灯油を購入する家庭もあり、地域によっては燃料の配送サービスも欠かせません。こうした生活や経済活動は、必要なときに燃料を購入できることを前提として成立しています。

 しかし、人口減少が今後も続き、自動車の燃費改善や電動化が進めば、地方のガソリンスタンドを取り巻く経営環境は大きく変化します。利用者が減り、販売量が減少する一方で、設備の維持費や人件費、安全管理に必要な費用まで同じ割合で減るわけではありません。需要が小さくなっても一定の固定費が必要な事業である以上、地方ほど経営を継続する条件が厳しくなる可能性があります。

 ここで重要なのは、電気自動車が普及すればガソリンスタンドが不要になるという単純な話ではないことです。むしろ、ガソリンや軽油を必要とする車両が一定数残っているにもかかわらず、それらに燃料を供給する店舗が採算の問題から先に撤退してしまう可能性があります。地方の生活環境を2056年までの約30年間という長期で考えるとき、問題の中心になるのは、燃料需要が完全になくなるかどうかではなく、需要が減少する過程で地域の燃料供給体制を維持できるかどうかです。

ガソリンスタンドはすでに30年以上減少している

 日本のガソリンスタンドは、将来になって突然減り始めるわけではありません。資源エネルギー庁の統計によると、全国の給油所数は1994年度末の6万421か所をピークに減少を続け、2023年度末には2万7414か所、2024年度末には2万7009か所となりました。さらに、2026年8月に公表された2025年度末の集計では2万6412か所となり、前年度末から597か所減少しています。

 1994年度末から2025年度末までの31年間で減少した給油所は3万4009か所に達し、減少率は約56.3%となります。全国の給油所数は、最も多かった時期の半分以下にまで縮小したことになります。ただし、これらの数字は法律に基づく登録上の給油所数であり、すべての店舗が通常どおり営業していることや、地域住民が営業時間内に利用できることまで保証するものではありません。

 減少の理由を電気自動車の普及だけに求めることはできません。人口構造の変化、ガソリン車の燃費向上、燃料需要の減少、販売競争の激化、経営者の高齢化、後継者不足、人手不足、設備更新費用の負担など、複数の要因が長期間にわたって影響しています。電気自動車が本格的に普及する以前から給油所数は大幅に減少しており、今後の電動化は、すでに進行している構造変化に新たな要因が加わるものと考えるべきでしょう。

国の予測でもガソリン需要の減少は続く

 給油所数の減少と同時に確認しておきたいのが、国内の燃料需要そのものの変化です。経済産業省が2026年4月に公表した「2026~2030年度石油製品需要見通し」では、国内のガソリン需要は2024年度実績の約4364万キロリットルから、2030年度には約3915万キロリットルへ減少すると予測されています。6年間で約10.3%の減少となり、政府もガソリン需要の縮小が続くと見込んでいます。

 ただし、石油製品の需要がすべて同じ速度で減少するわけではありません。同じ見通しでは、2024年度から2030年度にかけて、軽油の需要は約4.9%、灯油の需要は約23.2%減少するとされています。乗用車の燃料として使われるガソリン、物流や建設機械などに使われる軽油、家庭や事業所で消費される灯油では、需要を決める要因が異なるためです。

 この違いは、地方のガソリンスタンドの将来を考えるうえで重要です。ガソリンの販売量が減少しても、軽油を使用する事業用車両や農業機械などの需要が残る地域では、燃料販売の構成が変わる可能性があります。一方、灯油配送を重要な収益源としている店舗では、暖房設備の電化や住宅性能の改善などによる灯油需要の減少が経営に影響するかもしれません。給油所の存続可能性を判断するには、ガソリンだけでなく、軽油、灯油、その他のサービスを含めた収益構造を確認する必要があります。

 もっとも、これらは全国の需要見通しであり、個別の市町村にそのまま適用できるものではありません。観光地では地域外から訪れる自動車の給油需要があり、農業や物流の比重が高い地域では住民人口だけでは説明できない燃料消費が存在します。全国平均の需要減少率を、そのまま外房の各自治体の需要減少率とみなすことは適切ではありません。

人口減少と燃費改善が重なると需要はどう変わるのか

 地域のガソリン需要を数理的に考える場合、基本になるのは、自動車の利用台数、1台当たりの年間走行距離、燃費、そしてガソリンを消費しない電動走行の割合です。利用台数が減り、走行距離が短くなり、燃費が改善すれば、ガソリンの販売量は減少します。電気自動車の普及やプラグインハイブリッド車の電動走行が増えれば、さらに需要を押し下げる要因となります。

 ここで注意すべきなのは、人口減少と自動車台数の減少を、それぞれ独立した要因として単純に掛け合わせてはいけないことです。人口減少によって自動車の利用台数が減る場合、その影響はすでに車両台数に含まれています。両方を別々の減少要因として計算すると、同じ効果を二重に数えるおそれがあります。また、地方では一人当たりの自動車保有台数が高い地域もあり、人口減少率と自動車台数の減少率が一致するとは限りません。

 仮に、ある地域で現在3000台の自動車が利用され、1台当たり年間1万2000キロメートル走行し、平均燃費が1リットル当たり15キロメートルだとします。この場合、年間のガソリン消費量は240万リットルになります。30年後に利用車両が2000台へ減少し、年間走行距離は変わらず、ガソリンを使用する車両の平均燃費が20キロメートルまで改善し、走行距離全体の30%が電気などによるガソリンを消費しない走行へ移行したと仮定すれば、年間のガソリン需要は84万リットルとなります。

 この仮想例では、自動車の利用台数は約33%の減少ですが、ガソリン需要は65%減少します。もちろん、これは外房の実際の将来予測ではありません。自動車の保有率や走行距離、電動化の進展、平均燃費などの仮定を変えれば、計算結果も大きく変わります。それでも、車両台数の減少に燃費改善や電動化が重なると、地域の人口減少率を上回る速度でガソリン需要が縮小する可能性を示しています。

 反対に、公共交通の縮小によって自動車への依存度が高まれば、人口が減少しても一人当たりの走行距離が増える可能性があります。地方の燃料需要を将来推計するには、人口だけを使った単純な予測では不十分であり、地域の交通環境や産業構造まで考慮する必要があります。

2035年にガソリン車がなくなるわけではない

 政府は2035年までに、乗用車の新車販売に占める電動車の割合を100%にする目標を掲げています。しかし、この電動車には、電気自動車だけでなく、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、燃料電池自動車も含まれています。ハイブリッド自動車はガソリンを使用するため、2035年以降にガソリンを使用する乗用車が新車として販売されなくなるという意味ではありません。

 さらに、新車販売の構成が変化しても、道路を走る自動車が直ちにすべて入れ替わるわけではありません。自動車は購入後も長期間使用されるため、過去に販売された車両は2040年代以降も一定数残ると考えられます。また、トラック、農業機械、建設機械、二輪車、発電機などは、それぞれ用途や技術的条件が異なり、乗用車と同じ速度で電動化が進むとは限りません。

 将来の技術進歩によって電池の性能が大幅に向上したり、脱炭素燃料の利用が広がったりする可能性もありますが、30年後の燃料別車両構成を現時点で正確に予測することは困難です。したがって、2056年になっても地方にガソリンや軽油の需要が残る可能性は十分に考えられる一方、その需要が現在の何割になるかを断定することはできません。

 ただし、液体燃料の需要が残ることと、それを販売するガソリンスタンドが存続することは別の問題です。燃料を必要とする人が一定数存在していても、販売量が店舗の経営を維持する水準に達しなければ、民間事業者は営業を継続できなくなる可能性があります。

ガソリンが売れていても店舗が維持できない理由

 ガソリンスタンドの経営では、燃料販売量が減少しても、設備の維持管理費、人件費、光熱費、保険料、安全管理費などが同じ割合で減るわけではありません。特に地下タンクや配管、給油設備には法令に基づく安全対策や点検が必要であり、設備の老朽化が進めば補修や更新の費用も発生します。販売数量の少ない店舗ほど、こうした費用を燃料販売による利益で回収することが難しくなります。

 例えば、ある給油所の年間固定費を1000万円、燃料販売以外の事業から得られる年間の限界利益を100万円、燃料1リットル当たりの限界利益を15円と仮定すると、固定費を回収するためには年間60万リットルの燃料販売が必要になります。これは説明用の仮定であり、実際の給油所の利益率や採算水準を示すものではありませんが、販売量が一定水準を下回ると経営が成立しにくくなる構造を理解するには有効です。

 先ほどの仮想地域で、現在240万リットルの需要を3店舗が均等に分けているとすれば、1店舗当たりの年間販売量は80万リットルです。しかし、30年後の需要が84万リットルまで減少すると、3店舗では1店舗当たり28万リットル、2店舗でも42万リットルにしかならず、仮定した損益分岐点を下回ります。一方、1店舗に需要が集約されれば84万リットルとなり、経営が成立する余地が生まれます。

 もちろん、実際には店舗ごとに立地条件、販売価格、仕入れ条件、設備費用、その他の収益が異なり、需要が均等に配分されるわけでもありません。店舗が閉鎖されれば利用者が地域外へ流出する可能性もあり、残った店舗にすべての需要が移るとは限りません。それでも、燃料需要が減少する過程では、すべての店舗が同じように小さくなるのではなく、撤退と集約が進む可能性があります。

 さらに、経営者の引退や地下タンクなどの設備更新は、店舗の存続を判断する重要な節目となります。日々の営業で一定の利益を得ていても、大規模な設備更新に必要な投資を回収できないと判断すれば、経営者は廃業を選択するかもしれません。そのため、給油所の減少は毎年一定の速度で進むとは限らず、設備更新や事業承継の時期に閉鎖が集中する可能性もあります。

「町に一軒しかない」状態では問題の性質が変わる

 資源エネルギー庁は、市町村内の給油所数が3か所以下である地域を、給油所過疎の重要な対象として扱ってきました。2026年8月に公表された「新たな地域燃料流通に関する研究会」の中間とりまとめでは、さらに、居住地から15キロメートル以内に給油所が存在しない地域を含む市町村も、給油所過疎の対象として明確に位置付けています。

 給油所が3店舗から2店舗になる段階では、住民生活への影響が限定的に見える場合もあります。しかし、2店舗が1店舗になると、地域の燃料供給は特定の事業者に大きく依存することになります。唯一の店舗が設備故障や従業員不足で休業したり、経営者が引退して廃業したりすれば、住民は自治体の外まで燃料を購入しに行かなければならないかもしれません。

 競争環境にも変化が生じます。都市部では複数の給油所から価格やサービスを比較できますが、選択肢が限られる地域では価格競争が弱まりやすくなります。一方、燃料価格が高ければ必ず不当な利益が生じているというわけではありません。販売量が少なく配送費や固定費の負担が大きい地域では、都市部と同じ販売価格では採算が成立しない場合があります。

 この段階になると、給油所は単なる民間の小売店舗ではなく、地域の生活と経済活動を支える基礎的な供給施設としての性格を強めます。利用者が少ないからといって簡単になくせるものではなく、かといって利用者が少ないまま従来の店舗数を維持すれば、事業者の経営負担が大きくなるという難しさがあります。

外房の給油所は現在どのような状況にあるのか

 外房の将来を考えるために、勝浦市、いすみ市、大多喜町、御宿町の状況を確認してみます。2024年6月付で公表された石油販売業界の市町村別資料によると、登録給油所数は、いすみ市が18か所、勝浦市が8か所、大多喜町が6か所、御宿町が3か所で、4市町の合計は35か所でした。

 この時点ですでに御宿町は、市町村内の給油所が3か所以下という基準に該当しています。ただし、これは2024年当時の登録数であり、2026年現在の営業店舗数や営業時間を示したものではありません。また、御宿町内の店舗が減少した場合でも、住民が必ず遠方まで給油に行くとは限りません。町境に近い地区では、勝浦市やいすみ市の給油所を利用できる場合があるためです。

 一方、大多喜町のように山間部を広く抱える地域では、行政区域内に複数の店舗が残っていても、住宅地から最寄りの給油所まで相当な距離がある可能性があります。勝浦市やいすみ市でも、沿岸部と内陸部では道路網や店舗の分布が異なります。そのため、単純に市町村の人口を給油所数で割った数字だけでは、住民の利便性を正しく評価できません。

 御宿町のように比較的面積が小さく、隣接自治体との往来が可能な地域と、大多喜町のように広い山間部を抱える地域では、同じ給油所数でも住民生活への影響が異なります。外房全体の燃料供給を考えるなら、自治体ごとの店舗数だけでなく、店舗の所在地、営業時間、販売する燃料の種類、道路網、実際の移動距離を組み合わせて分析する必要があります。

2050年の外房人口は約44%減少する推計

 外房の燃料需要を長期的に考えるうえで、人口減少は無視できません。国立社会保障・人口問題研究所が2023年に公表した地域別将来推計人口によると、勝浦市、いすみ市、大多喜町、御宿町の2市2町の総人口は、2020年の6万8230人から2050年には3万7912人へ減少すると見込まれています。30年間で約44.4%の減少です。

 自治体別に見ると、いすみ市は3万5544人から2万218人へ、勝浦市は1万6927人から8815人へ、大多喜町は8885人から4498人へ、御宿町は6874人から4381人へ減少する推計です。減少率はそれぞれ約43.1%、47.9%、49.4%、36.3%となり、どの自治体でも大幅な人口減少が予測されています。

 ただし、これは2020年の国勢調査を基準に一定の仮定を置いて算出された将来推計であり、2050年の人口が必ずこの数字になるという意味ではありません。また、2050年の推計をそのまま2056年の人口予測として扱うこともできません。移住や出生、死亡、転出入の状況が変化すれば、実際の人口は推計値から離れる可能性があります。

 それでも、外房の人口規模が今後数十年間で大幅に縮小する可能性を示している点は重要です。地域全体の人口が減れば、自動車の利用者数や燃料購入者数も減少する方向に働きます。一方、観光客の来訪や業務用車両の利用、公共交通の変化などによって、燃料需要が人口と同じ割合で減るとは限りません。

 また、高齢化も給油所の立地を考えるうえで重要な要因です。自動車を運転できる高齢者であっても、遠方への運転や夜間の移動が負担になる場合があります。人口が少なくなるだけでなく、長距離移動が難しい住民の割合が高まる地域では、給油所までの距離が生活上の問題として一層重要になる可能性があります。

ガソリンスタンドが何軒あるかより、何キロ先にあるか

 地方の生活インフラを評価する場合、施設の総数と住民の利用しやすさは必ずしも一致しません。行政区域内に給油所が存在していても、住宅地から遠く離れていたり、営業時間が限られていたりすれば、実際の利便性は低くなります。反対に、自治体内の給油所数が少なくても、隣接自治体の店舗が近くにあれば、日常生活への影響は小さい場合があります。

 仮に、近くの給油所が閉鎖されたことで、給油のために往復20キロメートルの追加走行が必要になったとします。燃費が1リットル当たり15キロメートル、ガソリン価格が1リットル180円なら、追加燃料費は約240円になります。さらに、平均時速35キロメートルで移動すれば、約34分の移動時間が増える計算です。これは説明用の仮定であり、実際には買い物や通院の途中で給油することもあるため、追加の移動距離が常に20キロメートルになるわけではありません。

 しかし、燃料費だけでなく時間や移動の負担を含めて考える必要があることは明らかです。高齢者にとっては運転時間の増加が負担になることもあり、農業や配送などで頻繁に燃料を補給する事業者にとっては、給油のための移動が生産性の低下につながる可能性があります。

 地域分析では、居住地から最寄りの給油所までの道路距離を計測し、それぞれの地区の人口を考慮した平均距離を求める方法が有効です。ただし、平均値だけでは、特に遠方に住む人の不便さが見えなくなる場合があります。そのため、最寄り店舗まで15キロメートル以上ある地区の人口、店舗が1か所閉鎖された場合の追加移動距離、高齢者人口、営業時間、公共交通による代替可能性などを合わせて評価することが望まれます。

 国の研究会でも、最寄りの給油所までの道路距離が15キロメートル以上となる地区を含む市町村が、全国で291自治体存在するという状況が示されています。給油所までの距離が問題になる地域は、将来初めて現れるわけではなく、すでに各地に存在しています。

災害時にはガソリンスタンドの価値がさらに高まる

 地方の燃料供給を考える際、平常時の経営採算だけでは評価できない理由があります。それは災害時の燃料供給です。大規模停電や道路寸断が発生した場合、救急車、消防車、自治体の災害対応車両、復旧工事車両、発電機などに燃料が必要になります。停電が長期化すれば、医療施設や福祉施設、通信設備などの非常用電源を動かすための燃料供給も重要になります。

 資源エネルギー庁は、自家発電設備を備え、停電時にも給油を継続できる給油所を「住民拠点SS(Service Station・サービスステーション)」として整備してきました。2026年3月31日時点では、全国で1万4215か所が住民拠点給油所となっています。こうした施設は、平常時の販売拠点であると同時に、非常時には地域の燃料供給を支える役割を担います。

 もっとも、自家発電設備を設置していれば、どのような災害でも給油を継続できるわけではありません。給油設備の損壊、燃料在庫の不足、道路の通行止め、配送体制の混乱などが発生すれば、店舗が存在していても必要な燃料を供給できなくなる可能性があります。災害対応力を評価するには、給油所数や非常用電源の有無だけでなく、燃料の備蓄量、補給経路、設備の耐災害性、関係機関との協力体制も確認する必要があります。

 房総半島では、2019年の台風第15号によって広範囲の停電が発生した経験があります。こうした地域では、平常時には販売量が少ない給油所でも、非常時には重要な供給拠点となる場合があります。経営効率だけを優先して店舗数を減らした結果、災害時の燃料供給能力まで低下するのであれば、社会全体として別の負担が発生する可能性があります。

 ただし、災害対応のためにすべての給油所を現在の形で維持することが最善とは限りません。重要な拠点への設備投資、燃料備蓄、配送体制の強化、緊急車両への優先供給など、複数の対策を比較し、限られた財源で地域の供給力を確保する必要があります。

国も給油所の維持を地域政策の問題として捉え始めている

 給油所の減少が全国で続くなか、国も燃料供給を民間事業者の経営判断だけに委ねることの難しさを認識しています。経済産業省は2026年8月、「新たな地域燃料流通に関する研究会」の中間とりまとめを公表するとともに、自治体向けの「過疎地におけるガソリンスタンドの維持に関するガイドライン」を策定しました。

 この中間とりまとめでは、給油所過疎地に該当する自治体の約6割が問題を認識している一方、実際に対策を実施している自治体は約1割にとどまるという課題も示されています。地域の燃料供給が重要であることは理解されていても、事業者の経営に行政がどこまで関与すべきか、どのような方法で維持するかという具体的な対応は、十分に進んでいない状況がうかがえます。

 国は2026年度、最寄り給油所までの距離がおおむね15キロメートル以上となることなどを基準として、全国50か所程度の給油所を「地域インフラSS」の候補として選定し、自治体や石油販売事業者などによる地域の燃料供給計画づくりを支援する方針を示しました。これは、給油所の維持を個々の事業者だけの問題ではなく、地域全体で検討すべき課題として位置付ける動きといえます。

 もっとも、給油所が3か所以下になったからといって、自治体にその店舗を維持する法的義務が発生するわけではありません。公的な支援を行う場合には、生活への必要性、代替店舗までの距離、災害時の役割、事業者の経営状況、自治体の財政負担などを検証し、支援の対象や方法を合理的に判断する必要があります。

最後の一軒を残すには、どのような方法があるのか

 地域の燃料需要が減少するなかで、従来と同じ経営方法を続けるだけでは維持が難しい給油所も出てくると考えられます。その場合、営業時間の調整、複数事業者の共同運営、設備の省力化、他業種との複合化、燃料配送の効率化、公設民営方式など、地域の条件に応じた対応が必要になるでしょう。

 例えば、一定の需要を一つの店舗に集約することで販売量を確保できれば、従来より経営が安定する可能性があります。人手不足が主な原因であれば、省力化設備や運営方法の見直しによって営業を継続できる場合もあります。また、自治体や地域の公共的な事業者が継続的に燃料を購入する仕組みは、店舗の需要を安定させる一つの方法となり得ます。

 一方で、自治体が設備を所有し、民間事業者が運営する公設民営方式には、初期投資や更新費用を地域の財政で負担するという問題があります。公的資金を投入する以上、その店舗が地域にとってどれだけ必要なのか、代替手段が存在するのか、他の公共サービスとの優先順位をどう考えるのかという検証を避けることはできません。

 地方の給油所を維持する政策では、すべての店舗を救済することと、地域に必要な燃料供給を守ることを区別する必要があります。既存店舗を維持するより、配送体制を確保した方が効率的な場合もあれば、周辺の住民や事業者にとって不可欠な場所にある店舗を維持する方が合理的な場合もあります。重要なのは、個々の店舗の存続そのものではなく、地域全体として必要な燃料を確保できる仕組みを残すことです。

30年後のガソリンスタンドは地域エネルギー拠点になるのか

 今後の給油所の役割を考えると、従来のガソリンや軽油の販売に加えて、電気自動車の充電、灯油配送、自動車整備、災害対応、地域商店などを組み合わせた施設へ変化する可能性があります。人口が減少する地域では、単一の事業だけで採算を確保することが難しくなり、複数のサービスを提供することで収益機会を増やそうとする動きが生じると考えられます。

 ただし、事業の複合化が必ず経営改善につながるわけではありません。電気自動車は自宅や目的地で充電できるため、ガソリン車と同じ頻度で給油所を利用するとは限りません。また、急速充電設備には導入費用や受電設備の整備、電力契約、維持管理費などが必要であり、利用者が少なければ投資を回収できない可能性があります。

 灯油配送や液化石油ガスの販売なども、それぞれ異なる設備、配送体制、安全管理が必要になるため、単純に事業を増やせば利益が増えるというものではありません。地域エネルギー拠点として成立させるには、地域の需要、利用者の移動行動、投資額、人員配置などを具体的に検証する必要があります。

 また、将来の給油所がすべて同じ形になるとも限りません。人口の多い幹線道路沿いでは従来型の給油所が残り、人口の少ない地区では営業時間を限定した小規模な供給拠点や、配送機能を中心とした施設が必要になるかもしれません。地域の産業構造や道路事情によって、適切な施設の規模や機能が異なると考える方が現実的です。

外房では、給油所の将来をどのように分析すべきか

 外房の給油所問題を具体的に分析するためには、まず現在営業している店舗の位置と機能を正確に把握する必要があります。登録上の店舗数だけでなく、実際の営業状況、営業時間、ガソリン・軽油・灯油の取扱状況、配送サービスの有無、災害対応設備などを整理することが出発点となります。

 そのうえで、地区別の将来人口や高齢者人口、自動車の利用状況、農業・建設・物流などの産業活動、観光客の流入、道路網などを重ね合わせ、燃料需要と供給施設の配置を分析する必要があります。特に重要なのは、給油所が1か所閉鎖された場合に、どの地区の住民が何キロメートル余計に移動しなければならなくなるかという点です。

 さらに、2030年、2040年、2050年という複数の時点について、燃料需要の減少が緩やかな場合、中程度の場合、急速に進む場合という複数の条件を設定すれば、地域ごとの供給体制がどの程度維持できるかを比較できます。ただし、人口推計だけで店舗の将来数を算出することはできません。実際の経営採算には店舗ごとの販売量、利益率、固定費、設備更新費用、後継者の有無などが関係するため、それらの情報がなければ閉鎖時期や残存店舗数を正確に予測することは困難です。

 また、給油所の配置は市町村の境界だけで決めるべきものではありません。勝浦市、いすみ市、大多喜町、御宿町は道路によって生活圏がつながっており、住民の移動や事業者の活動も自治体の境界を越えています。地域全体で供給拠点をどのように配置すれば住民の移動負担を抑えられるかを考えることが、将来の燃料供給政策では重要になるでしょう。

30年後も残るのではなく、残す必要がある地域が出てくる

 今後30年間で、地方のガソリンスタンドがさらに減少する可能性は高いと考えられます。人口減少や燃費改善、電動化によって燃料需要が縮小するという基本的な方向性は、これまでの統計や政府の需要見通しとも整合しています。ただし、需要の減少と店舗数の減少が同じ割合で進むとは限らず、どの地域で何店舗が残るのかを現在の情報だけで断定することはできません。

 ある地域では店舗の集約によって残った給油所の経営が安定するかもしれませんが、別の地域では需要が小さくなりすぎて、最後の一店舗を民間事業だけで維持することが難しくなる可能性があります。その場合には、自治体や地域の事業者が連携し、設備投資の支援、共同運営、配送体制の整備などを含めて、必要な燃料を供給する方法を検討しなければならなくなるでしょう。

 重要なのは、ガソリン車が完全になくなるまで給油所が自然に残るという保証はないことです。車両が残っていても、販売量が採算水準を下回れば店舗は撤退する可能性があり、住民はより遠くまで燃料を購入しに行かなければならなくなります。公共交通が十分ではない地方ほど自動車への依存度が高いにもかかわらず、人口減少によって燃料供給の維持が難しくなるという構造的な問題が存在しています。

 30年後の地方で問われるのは、ガソリンスタンドという名称の店舗が現在と同じ数だけ残っているかどうかではありません。ガソリンや軽油を必要とする住民や事業者が、生活や経済活動を継続できる距離と費用で燃料を確保できるかどうかです。さらに、災害時にも地域に必要な燃料を供給できる体制を維持できるかという問題もあります。

 人口が減少しても、地域の道路や住宅が直ちになくなるわけではありません。救急、消防、介護、配送、農業、建設などの機能も、地域社会が存続する限り一定の需要が残ります。自動車の電動化が進んだとしても、その移行期間に必要となる燃料供給をどのように確保するかは、地方にとって避けられない課題です。

 水道、医療、スーパー、公共交通などと同じように、給油所もまた、利用者が減ったからといって単純に廃止できる施設ではありません。一方で、すべてを従来どおり維持することも現実的ではなくなっていきます。どの施設を、どの場所に、どの規模で残すべきかという判断が、地域政策として重要になるでしょう。

 地方のガソリンスタンドの30年後を考えることは、石油産業の将来だけを考えることではありません。人口が減少する地域で、限られた住民と財源によって、どこまで現在の生活圏を維持できるのかという問題です。

 そして外房でも、給油所が一軒減ったという出来事を、単なる店舗の閉鎖として捉えるだけでは不十分になる時代が近づいています。これから必要になるのは、閉鎖が決まってから対応を考えることではなく、地域の将来人口、燃料需要、給油所の採算、住民の移動距離を継続的に確認し、供給が途絶える前に必要な対策を検討することです。30年後の地方に残すべきものは、現在と同じ数のガソリンスタンドとは限りません。しかし、必要な燃料を、必要な場所で、無理のない負担で購入できる仕組みは、地域社会を維持するために残していかなければならないのです。

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外房でガソリンスタンドがなくなると何が起きるのか~給油・灯油・農業・医療・災害を支える地域インフラとして考える

はじめに

 人口減少地域では、鉄道や路線バス、スーパー、金融機関など、日常生活を支える施設の減少が問題になります。その中で見落とされやすいのが、ガソリンスタンドです。ガソリンスタンドが閉店すると、自動車を利用する人が少し遠くまで給油に行けば済むようにも思えますが、地方ではそれほど単純ではありません。

 ガソリンスタンドは、自家用車へガソリンを販売するだけの店舗ではありません。軽油を使用する農業機械や建設機械、事業用車両への燃料供給、灯油販売や家庭への配送、災害時の消防・救急・行政車両への燃料供給、非常用発電機用燃料の確保などを担うことがあります。人口減少地域では、民間の小売店であると同時に、地域のエネルギー供給拠点という性格を持っています。

 特に外房では、居住地、医療機関、商業施設、農地、観光施設などが広い範囲に分散しており、自動車に依存する生活が少なくありません。本稿では、御宿町、勝浦市、いすみ市、大多喜町などを含む外房地域を念頭に、ガソリンスタンドの減少が生活や地域産業、防災にどのような影響を与えるのかを考えます。

全国ではガソリンスタンドが長期的に減り続けている

 全国のSS(Service Station・サービスステーション、一般にいうガソリンスタンド)は、1994年度末の6万421か所をピークとして長期的に減少してきました。資源エネルギー庁によると、2024年度末には2万7,009か所まで減少しています。さらに石油連盟が2026年にまとめた資料では、2025年度末には2万6,412か所とされており、ピーク時の半分以下になっています。

 背景には、人口減少だけではなく、自動車の燃費向上、石油製品需要の減少、価格競争、設備の老朽化、地下タンクや計量機などの更新費用、経営者の高齢化、人手不足、後継者不足があります。今後はEV(Electric Vehicle・電気自動車)などの普及もガソリン需要を減らす方向に働くと考えられます。一方で、需要が減ったからといって、地域に必要な燃料供給機能まで同じ速度でなくしてよいとは限りません。

 販売量の少ない地域では、競合店舗が閉店すれば残った店舗へ需要が集まり、経営が安定するようにも見えます。しかし、地域全体の人口と燃料需要そのものが減少していれば、最後の1店舗になっても十分な販売量を確保できない場合があります。むしろ、少ない需要で広い地域を支えることになり、灯油配送や災害対応などの負担が最後の店舗へ集中する可能性があります。

全国615市町村がSS過疎地等に該当している

 国は、市町村内のSSが3か所以下となった地域だけでなく、居住地から最寄りのSSまで道路距離で15キロメートル以上離れている地域についても、燃料供給上の問題を把握しています。2025年3月31日時点では、SSが3か所以下の市町村が381市町村、15キロメートル以上離れた地域を持つ市町村が291市町村あり、両方に該当する57市町村を重複除外すると、合計615市町村がSS過疎地等に該当します。

 ただし、市町村内の店舗数だけで住民の不便さを判断することはできません。自治体内に2店舗しかなくても、隣接自治体の店舗が近ければ給油環境は比較的良い場合があります。反対に、自治体内に4店舗以上あっても、市域が広く、山間部や沿岸部などから最寄り店舗まで15キロメートル以上離れている場合があります。

 したがって、本当に重要なのは行政区域内の店舗数だけではありません。集落ごとの道路距離、所要時間、営業時間、定休日、ガソリン・軽油・灯油の取扱い、灯油配送の有無、大型車両への対応、自家発電設備の有無、隣接自治体にある代替店舗まで含めて考える必要があります。2026年に資源エネルギー庁が検討している重点的な維持支援でも、単純な店舗数だけでなく、最寄りSSとの距離や、その店舗がなくなった場合に生じる供給空白が重視されています。

御宿町はすでに「店舗数が少ない地域」である

 外房について考えるうえで、御宿町は分かりやすい例です。経済産業省を出所とする2023年3月31日時点の資料では、御宿町のSSは2か所とされており、店舗数基準ではすでにSS過疎地に該当していました。2026年時点の民間のガソリンスタンド検索でも、通常の給油所として2店舗が確認されています。ただし、登録上の店舗数と実際の営業状況が必ず一致するとは限らず、将来の営業継続予定や販売量については公開資料だけでは判断できません。

 ここで重要なのは、「御宿町ではすでに給油できない」という意味ではないことです。現在2店舗があるのであれば、日常生活が直ちに成り立たなくなる状況ではありません。しかし、2店舗から1店舗へ減る場合と、10店舗から9店舗へ減る場合では、地域供給網への影響が違います。店舗数が少なくなるほど、1店舗の廃業、設備故障、定休日、災害被害、在庫切れが地域全体へ与える影響は大きくなります。

御宿町の生活は自動車への依存度が高い

 御宿町が実施した住民アンケートでは、通勤・通学の交通手段として自家用車を挙げた回答が56.2%で最も多く、30代では80.4%、40代では80.2%でした。これは回答者511人を対象とした調査結果であり、町民全体にそのまま当てはめることはできませんが、自動車が重要な移動手段であることを示しています。

 さらに日常の移動先を見ると、通勤・通学では74.0%、通院では81.8%、買い物では62.7%が御宿町外と回答しています。つまり、町内だけで日常生活が完結しているわけではなく、多くの住民が町外への移動を必要としています。特に通院先が町外である割合が高いことは、高齢化が進む地域において自動車と燃料供給を考える際の重要な要素です。

 この結果から「御宿町民の何%が自動車なしでは生活できない」とまでは言えません。しかし、ガソリンスタンドの減少を単なる民間店舗の閉店として考えるのではなく、通勤、通院、買い物を支える交通インフラとの関係で評価する必要があることは分かります。

給油場所が遠くなると、燃料を買うために燃料を使う

 給油拠点の減少による負担を簡単な数値で考えてみます。仮に最寄りのガソリンスタンドへ行くための往復距離が10キロメートル増え、月2回給油するとします。年間の追加走行距離は、10キロメートル×2回×12か月で240キロメートルです。

 自動車の実燃費を1リットル当たり15キロメートルとすると、追加走行に必要な燃料は年間16リットルです。ガソリン価格を1リットル180円と仮定すれば、追加の燃料費は年間2,880円になります。往復距離が20キロメートル増えれば、同じ条件では5,760円です。

 ただし、この数字をそのまま「1世帯当たりの損失」と考えるのは適切ではありません。実際には通勤や買い物の途中で給油する人も多く、給油だけを目的とした追加走行が10キロメートル発生するとは限らないからです。この計算は実態推計ではなく、給油場所が遠距離化した場合のシナリオ試算と考えるべきです。

 時間についても同じです。仮に1回30分余計に必要となり、月2回給油すれば年間12時間になります。時間価値を1時間1,000円と仮定すると、機会費用は1万2,000円相当です。しかし、燃料費2,880円は実際に財布から出ていく現金支出であるのに対し、1万2,000円は失われた時間を金額換算した経済的評価です。両者を区別し、「現金支出」と「時間を含めた一般化費用」を分けて示す方が正確です。

高齢者ほど影響を受けやすい

 給油距離の増加は住民へ均等に影響するわけではありません。遠距離運転や夜間運転を避けている人、運転できる家族が1人しかいない世帯、複数台の車を必要とする世帯、農業機械を利用する農家などでは負担が大きくなります。

 さらに高齢者世帯では、ガソリンより灯油の問題が深刻になる場合があります。灯油18リットルは灯油そのものだけでおおむね14キログラム程度となり、容器を含めればさらに重くなります。自分で店舗へ行き、容器へ給油し、自動車へ積み、自宅で降ろして室内へ運ぶ作業は、年齢や身体状況によっては容易ではありません。

灯油配送はガソリン販売とは別の重要な機能である

 人口減少地域でガソリンスタンドがなくなるとき、見落としてはいけないのが灯油配送です。店舗へ自分で行けない高齢者にとって、灯油配送は単なる便利なサービスではなく、冬季の暖房を維持するための生活インフラになる場合があります。

 しかし灯油配送には、配送車両、燃料、人件費、受注管理、日程調整、不在時の再訪問などの費用がかかります。利用世帯が広い地域へ分散しているほど、1件当たりの配送時間と費用は増えます。人口が減り、灯油使用世帯も減少すると、必要性は残っているのに事業としては維持しにくいという問題が生じます。

 灯油配送がなくなれば、電気暖房へ切り替える方法もありますが、停電への弱さという別の問題が生じます。ただし、灯油暖房ならすべて停電時に使用できるわけではありません。石油ファンヒーターは通常、送風や制御に電気を必要とします。一方、電源を必要としない芯式の石油ストーブなどは停電時にも利用できるため、災害対策では暖房方式の違いまで考える必要があります。

農業では燃料供給の遅れが作業時期へ影響する

 外房では、水稲、野菜、施設園芸、畜産などさまざまな農業が行われています。農業では自動車だけでなく、トラクター、コンバイン、田植機、草刈機、管理機、乾燥機、暖房機、揚水ポンプ、発電機などでガソリン、軽油、灯油、重油を使用する場合があります。

 一般家庭なら給油日を数日前後させても大きな問題にならないことがありますが、農業は同じではありません。田植え、収穫、防除、耕起などには適期があり、天候が崩れる前に作業を終える必要がある場合もあります。燃料供給が不安定になると、単なる燃料価格の問題ではなく、作業時期、収量、品質へ影響する可能性があります。

 大規模な農業法人であれば、一定量をまとめて配送してもらえる可能性があります。一方、小規模農家では使用量が少ないため個別配送の効率が低く、自ら燃料を調達する必要が生じることがあります。しかし、農家ごとに大量の燃料を保管すればよいというものでもありません。ガソリンなどの危険物には消防法令や市町村の火災予防条例に基づく規制があり、ガソリンは合計40リットル以上になると保管設備や届出などが問題になります。

建設、物流、漁業、観光にも影響する

 建設会社では、トラック、重機、小型発電機、草刈機などに燃料が必要です。これは平時の工事だけではなく、台風や豪雨後の倒木処理、土砂撤去、道路応急復旧にも関係します。地域内の燃料供給力が弱くなれば、災害から地域を復旧させる事業者自身が活動しにくくなる可能性があります。

 物流でも同様です。宅配便、食品配送、介護用品配送などでは複数台の車両が毎日走行します。給油所が配送経路から遠くなれば、給油のための回送距離と時間が増えます。1台1回では小さな違いでも、複数車両が年間を通して繰り返せば経営費用として無視できなくなることがあります。

 漁業では、漁船そのものへの燃料供給は一般の自動車用ガソリンスタンドとは異なる経路を使う場合があります。それでも、水揚げ後の運搬車、冷蔵車、作業車、発電機などには燃料が必要です。

 観光については注意が必要です。給油所が少なくなれば自家用車やレンタカー利用者の不便が増える可能性はありますが、「ガソリンスタンドが減れば観光客が大幅に減少する」とまで言える公的な統計的根拠は十分ではありません。影響の大きさは、近隣地域までの距離、道路案内、営業時間、電気自動車充電設備などによって変わります。

医療・介護も自動車と燃料に依存している

 外房では、病院へ患者が移動するだけでなく、訪問診療、訪問看護、訪問介護、通所介護の送迎など、多くの医療・介護サービスが自動車によって提供されています。御宿町の住民アンケートで通院先の81.8%が町外だったことを考えても、自動車による移動と医療へのアクセスは切り離して考えにくい問題です。

 訪問型サービスでは、給油場所が遠くなれば給油時間や回送距離が増えます。しかし、診療報酬や介護報酬によって価格が決まるサービスでは、燃料調達費が増えたからといって、その分を自由に利用者料金へ上乗せできるとは限りません。移動距離が長く訪問件数が少ない地域ほど、燃料価格だけでなく給油に要する時間まで含めて採算性を考える必要があります。

災害時にはガソリンスタンドの意味が変わる

 平時にはガソリンスタンドは燃料を購入する店舗ですが、大規模災害時には地域を動かすためのエネルギー拠点になります。消防車、救急車、警察車両、自治体公用車、物資輸送車、給水車、道路復旧用重機、医療・福祉施設の非常用発電機、避難所の発電機、通信設備などが燃料を必要とします。

 外房では地震、津波、台風、高潮、豪雨、土砂災害、大規模停電などを想定する必要があります。特に2019年の房総半島台風では千葉県内で長期間の停電が発生し、電力だけではなく燃料供給を含めた複数のインフラを維持する重要性が改めて認識されました。

 災害時の燃料供給には行政と石油関係団体の協定がありますが、協定を結んでいれば必ず燃料が届くわけではありません。店舗の建物や地下タンク、配管、計量機が無事であること、電源や従業員を確保できること、道路が通行できること、タンクローリーが到着できること、油槽所側に在庫があることなど、複数の条件がそろって初めて供給できます。

 したがって、地域に複数の給油拠点が存在する意味は、価格競争だけではありません。1店舗が使用不能になった場合でも別の店舗を利用できるという冗長性があります。店舗数が少なくなるほど、1店舗の故障や被災が地域全体へ波及しやすくなります。

住民拠点SSがあれば安心とは限らない

 国は、自家発電設備を備え、災害などによる停電時にも可能な限り給油を継続する「住民拠点SS」を整備しています。2025年2月28日時点で千葉県には522か所あり、地域の災害対応力を高める重要な設備です。

 ただし、住民拠点SSは「災害時に必ず営業する店舗」という意味ではありません。店舗自体が被災した場合、燃料在庫がなくなった場合、道路が寸断された場合、従業員が出勤できない場合などには給油できません。自家発電設備は停電という一つの障害には対応できますが、災害時のすべてのリスクを解消するものではありません。

電気自動車が増えればガソリンスタンド問題は解決するのか

 EV(Electric Vehicle・電気自動車)が普及すれば、乗用車のガソリン需要は確実に減少します。しかし、地域の燃料問題が直ちに解決するわけではありません。

 地域にはトラック、建設機械、農業機械、発電機、消防・救急車両、災害復旧車両などが残ります。また、自動車が電動化しても、灯油暖房や非常用発電機などの液体燃料需要が同じ時期にすべて消滅するわけではありません。石油連盟の2026年資料でも、今後の電動車普及がガソリン需要を減少させる一方、地域の燃料供給拠点としてSSを維持する必要性が示されています。

 災害対策でも、電気と液体燃料のどちらか一方だけに完全依存することには弱点があります。停電すれば通常の充電設備は使用できません。一方、ガソリンスタンドも電源や在庫、道路がなければ機能しません。地域全体の耐災害性を考えれば、移行期には複数のエネルギー供給手段を持つ方が合理的です。

最後の1店舗を補助すればよいわけではない

 ガソリンスタンドが地域インフラなら、自治体が補助金を出して残せばよいという考え方もあります。しかし、設備費だけを補助しても、販売量が少なく毎年営業赤字が続けば事業は持続しません。反対に営業赤字だけを補填しても、地下タンク、配管、計量機、自家発電設備、配送車両などを更新できなければ長期的な営業は困難です。

 さらに、人材の問題があります。設備があっても、経営者の後継者や危険物を扱う従業員を確保できなければ営業を続けられません。このため、公共支援を検討するときは、「地域に必要だから」という理由だけではなく、その店舗がなくなれば何世帯が影響を受けるのか、最寄り店舗まで何キロメートルになるのか、年間販売量はどの程度か、灯油配送を何世帯が利用しているか、農業・建設・福祉施設へどの程度供給しているか、災害時にどの施設へ供給するのか、設備更新にいくら必要か、何年間維持できるのかまで評価する必要があります。

 2026年の資源エネルギー庁の検討でも、全国のすべての小規模SSを一律に維持するのではなく、地域の燃料供給上、特に重要なSSを選び重点的に支援する方向が示されています。これは、「全店舗維持」と「完全な市場任せ」の中間に、地域インフラとして必要な拠点を選択的に維持する考え方が必要になっていることを示しています。

自治体単位ではなく生活圏単位で考える必要がある

 住民は自治体境界を意識して給油するわけではありません。御宿町の住民が勝浦市やいすみ市の店舗を利用することもあれば、反対方向の住民が御宿町の店舗を利用することもあります。このため、ガソリンスタンド政策を自治体ごとに完全に分けて考えると、実際の生活圏とずれる可能性があります。

 外房では、御宿町、勝浦市、いすみ市、大多喜町、長生地域などを含め、道路網に沿った到達時間で分析する方が合理的です。平均距離だけではなく、集落単位で「現在はどの店舗が最寄りか」「その店舗が閉店した場合、次の店舗まで何分かかるか」「災害で主要道路が使えなくなった場合に代替経路があるか」を調べる必要があります。

 店舗維持策としては、中核的な給油拠点への支援、灯油配送の共同化、農業者や事業者による共同調達、店舗間の休日調整、電気自動車充電設備や日用品販売などとの複合化が考えられます。ただし、どの方法も万能ではありません。例えば複合化すれば収益源は増えますが、人員、設備、在庫、管理業務も増えるため、サービスを増やしただけで黒字になるとは限りません。

休日輪番制という方法もある

 店舗数が少ない地域では、各店舗が無理に毎日営業するより、複数店舗で休業日を調整し、地域内のどこかが営業している状態を作る方法があります。2025年には、公正取引委員会が、参加を強制せず、販売価格などを共同決定しない一定の条件の下で、SS過疎地における休業日の調整が独占禁止法上問題とならないとする事例を公表しています。

 これは人手不足対策として有効な可能性がありますが、住民への周知が不可欠です。営業日が分からなければ、住民が閉店している店舗まで行った後、別の店舗へ長距離移動するという逆効果も起こります。

住民側にもできる備えがある

 地域の燃料供給問題は行政や事業者だけの問題ではありません。平時から通常利用する店舗だけでなく、隣接自治体を含めた代替店舗を把握し、自分が利用可能な住民拠点SSも確認しておくことには意味があります。また、燃料計がほぼ空になるまで給油を待つ生活より、自分の移動距離や避難経路に応じて一定残量で給油する方が災害時の余裕につながります。

 一方、ガソリンスタンドが遠いからといって家庭で大量のガソリンを備蓄することは適切ではありません。ガソリンは非常に引火性が高く、容器や保管量には法令上の制約があります。大量備蓄ではなく、車両内の燃料を一定量以上保つことや、複数の移動・暖房手段を持つことの方が現実的です。

公開資料だけでは分からないことも多い

 全国のガソリンスタンド数、SS過疎地の自治体数、御宿町の交通行動、住民拠点SSなどについては公的資料から把握できます。しかし、地域の燃料供給が何年後に危機的になるかまでは、公開統計だけでは分かりません。

 特に重要なのは、個々の店舗の年間販売量、営業利益、経営者の年齢、後継者の有無、地下タンクなどの更新時期、灯油配送先世帯数、農業者や事業者への販売量、災害時に維持できる在庫日数です。これらは通常、公表されていません。

 したがって、「外房では数年後にガソリンスタンドがなくなる」「御宿町では近いうちに給油できなくなる」と断定することはできません。必要なのは、店舗数の統計だけで危機を煽ることではなく、事業者への聞き取り、店舗の営業実態調査、集落ごとの道路距離分析、灯油配送利用者の把握などを組み合わせることです。

外房で今から調べるべきこと

 外房で燃料供給網を維持する政策を検討するなら、まず現在の店舗数だけでなく、各店舗が閉店した場合の影響を数値化する必要があります。例えば、各集落から現在の最寄りSSまでの道路距離と所要時間を計算し、1店舗ずつ仮想的に閉店させた場合に次の店舗までの距離がどれだけ増えるかを求めれば、「地域にとって重要な店舗」を客観的に比較できます。

 さらに、人口、高齢化率、自動車利用率、灯油配送世帯数、農地面積、事業所数、医療・介護施設、避難所、消防・救急拠点などを重ねれば、単なる店舗数より実態に近い評価ができます。国が2026年に示している方向も、こうした「その店舗がなくなったとき、どの程度の供給空白が発生するか」を重視する考え方です。

現実的な結論

 外房でガソリンスタンドがなくなる問題は、「給油のために少し遠くまで走ればよい」という問題ではありません。住民の自家用車だけでなく、灯油配送、農業、建設、物流、医療、介護、災害復旧などへ影響が連鎖する可能性があります。

 特に御宿町では、公式資料で確認できる時点ですでにSSが2か所という少ない状態にあり、住民アンケートでも自家用車利用の多さや、通院・買い物の町外依存が確認されています。だからといって現在すぐに燃料危機が起きると断定することはできませんが、店舗がさらに減ってから対策を考えるのでは遅い可能性があります。

 ガソリンスタンドは民間企業である以上、地域に必要だからという理由だけで採算を無視して営業を続けることはできません。一方で、完全に市場競争だけへ任せれば、最後の店舗がなくなった後に初めて、その店舗が担っていた灯油配送、農業用燃料、防災機能などの価値に気付くことになりかねません。

 必要なのは、すべての既存店舗を公費で残すことでも、すべてを市場任せにすることでもありません。外房を一つの生活圏として捉え、どの給油拠点がなくなると住民、農業、事業者、医療・福祉、防災に大きな影響が生じるのかを事前に把握し、本当に必要な拠点を選択的に維持する仕組みを作ることです。

 将来、ガソリン車が減少する方向そのものは変わらないでしょう。しかし、ガソリン需要が完全になくなる前に地域の燃料供給網だけが先に消滅すれば、移行期間に大きな空白が生じます。問題の本質は、ガソリン車をいつまで残すかではありません。地域で暮らし、働き、農業を続け、医療や介護を提供し、災害から生活を守るために必要な燃料供給機能を、誰が、どの拠点で、いくらの費用を負担し、いつまで維持するのかという地域インフラ設計の問題です。

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