地域分析記事

地域の暮らしと地域課題を数学とデータで考える

親が亡くなり、地方の実家を相続する。

しかし、自分はすでに別の地域に自宅を持っている。

子どももその家に住む予定はない。

売ろうと思っても、すぐに買い手が見つかるとは限らない。

こうして、

「誰も住まないが、とりあえず持っておく家」

が生まれます。

空き家というと、固定資産税だけを考えがちです。

しかし実際には、

固定資産税 火災・災害への備え 草刈り 庭木管理 建物修繕 台風後の確認 換気・通水 現地までの交通費 家財処分 最終的な売却または解体

などが関係します。

一つ一つは小さな負担でも、10年、20年、30年と積み重なれば話は変わります。

この記事では、御宿町、勝浦市、いすみ市など外房を念頭に、

「誰も住まない実家を30年間持ち続ける」という選択が、どのような管理と費用を意味するのか

を考えます。

最初に結論~「使わない家を持っているだけ」でも費用は発生する

結論からいえば、

将来自分も子どもも利用する予定がない地方の実家を、明確な目的なく30年間保有することには相応の費用と管理責任が伴います。

しかも問題は固定資産税だけではありません。

家は誰も住まなくても、

屋根は劣化します。

外壁も傷みます。

庭の草は伸びます。

樹木も成長します。

台風も来ます。

設備も古くなります。

つまり、

人が住まない =維持費がなくなる

ではありません。

一方で、

「地方の家は必ずすぐ売るべきだ」

とも言えません。

将来住む可能性がある。

定期的に利用している。

賃貸や事業利用の可能性がある。

土地として価値がある。

家族にとって重要な拠点である。

こうした場合には保有する合理性があります。

重要なのは、

30年間持つことによって何を得るのか、そのためにいくら支払い、何回管理し、最後にどう処分するのか

を考えることです。

千葉県でも空き家は増えている

2023年の住宅・土地統計調査によると、千葉県の空き家は39万4,100戸でした。

2018年と比べて1万1,600戸増えています。

このうち、賃貸・売却用住宅や別荘などを除いた「その他の空き家」は15万8,500戸で、2018年より1万4,100戸増加しました。

さらに千葉県の2023年調査では、世帯が所有している空き家のうち、約8割が1990年以前に建築された住宅です。

つまり相続する段階で、

築30年 築40年 築50年以上

という住宅も珍しくない構造になっています。

これは重要です。

30年間保有する場合、

築40年の家 ↓ 30年後には築70年

になります。

「現在まだ使える」という状態と、

「30年間、大きな修繕なしに維持できる」

ことは別です。

外房でも空き家対策が行政課題になっている

いすみ市は2026年に空家等対策計画を策定しています。

市は、人口減少や住宅・建築物の老朽化によって使用されていない住宅が増え、適切に管理されない空き家が防災、防犯、安全、環境、景観などへ悪影響を及ぼすことを課題として挙げています。

御宿町でも2026年度予算に空き家対策実態調査が計上され、空き家家財等処分への支援も継続されています。

したがって、

「地方の実家を誰も使わなくなった」

という問題は、個々の家庭だけの問題ではありません。

同じ状態の住宅が地域全体で増えれば、

景観 防災 草木管理 防犯 土地利用

にも影響します。

相続した家は「放っておけばよい財産」ではない

2024年4月1日から相続登記が義務化されています。

不動産を相続によって取得したことを知った人は、原則としてその取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。義務化前に発生した相続についても対象です。

つまり、

「親名義のまま何十年も置いておく」

という従来見られた対応は、現在の制度ではそのままにできません。

相続した時点から、

誰が所有するのか 誰が税金を支払うのか 誰が管理するのか

を明確にしておく必要があります。

管理状態が悪ければ固定資産税にも影響する可能性がある

住宅が建っている土地には、一定の要件のもと固定資産税などの住宅用地特例があります。

しかし2023年の空家法改正により、放置すれば特定空家になるおそれがある住宅を「管理不全空家」として市町村が指導・勧告できる仕組みが設けられました。

管理不全空家や特定空家について勧告を受けると、敷地に対する住宅用地特例を受けられなくなる場合があります。

したがって、

建物を残しておけば税金が安いから、管理せず残しておく

という考え方にも注意が必要です。

家を残すなら、

残すこと自体ではなく、適切に管理すること

が必要です。

実家維持費をどう考えるか

本記事では、

実家維持総費用 =税金 +保険等 +修繕 +草刈り・庭木管理 +現地管理・交通 +家財管理 +最終処分費

として考えます。

これは公的な公式指標ではなく、30年間の負担を整理するための概念式です。

重要なのは、

年間いくらか

だけではありません。

30年間の総額で考えることです。

固定資産税は毎年発生する

住宅と土地を所有している限り、原則として固定資産税の対象になります。

実際の税額は、

固定資産評価額 住宅用地特例 土地面積 建物の評価

などによって大きく異なります。

したがって、

地方の一戸建てなら年間○万円

と一律には言えません。

まず確認すべきなのは、親が毎年支払っていた固定資産税額です。

仮に年間5万円なら、

5万円 × 30年 =150万円

です。

年間8万円なら、

8万円 × 30年 =240万円

になります。

この段階ですでに、

「年間ではそれほど高くない」

「30年間でも小さい」

は違うことが分かります。

火災保険・災害への備えも考える必要がある

外房では台風や強風、豪雨などによる住宅被害も考える必要があります。

ただし、空き家については住宅の利用状況や保険会社の商品によって契約条件が異なるため、現在の住宅用火災保険がそのまま継続できるとは限りません。

そのため相続後には、

現在の契約を継続できるか 空き家扱いになるか 補償範囲はどうなるか

を保険会社へ確認する必要があります。

保険へ加入するにしても、加入しないにしてもリスクは残ります。

加入すれば保険料が発生します。

加入しなければ台風などによる損傷を自己負担する可能性があります。

草刈りは30年間続く

地方の実家で意外に大きな負担になるのが庭と敷地です。

家そのものを使用しなくても、

草 竹 庭木 生垣

は成長します。

例えば年2回草刈りを行うとすると、

30年間で、

2回 × 30年 =60回

です。

年3回なら90回です。

本人が行えば業者代はかかりません。

しかし、

現地までの交通費 作業時間 草刈り機 燃料 刈った草の処理

などが必要です。

年齢を重ねれば、自分で続けられなくなる可能性もあります。

自分で草刈りするから無料、とは限らない

例えば東京や千葉市などから外房の実家へ年4回管理に行くとします。

往復交通費と車両費を仮に1回5,000円としても、

5,000円 × 4回 =年間2万円

です。

30年間では60万円です。

さらに往復と作業に毎回半日から1日使う場合、時間負担も発生します。

家族が行えば、

行政支出でも 業者費用でも

ありません。

しかし、

家族の労務費がゼロという意味ではありません。

墓地管理や自治会作業と同様、空き家管理でも「無償労働」が見えにくい費用になります。

住宅は誰も住まない方が傷みにくいとは限らない

空き家では、

換気不足 湿気 設備の不使用 漏水発見の遅れ 害虫・小動物 雨漏り発見の遅れ

などが問題になります。

特に重要なのは、

故障が発生すること

だけではなく、

故障に気づくまで時間がかかること

です。

居住していれば小さな雨漏りに早く気づけても、数か月訪問しない空き家では発見が遅れる場合があります。

そのため、誰も住まない家だから管理しなくてよいのではなく、誰も住まないからこそ定期確認が必要になります。

30年間なら大規模修繕を考えない方が不自然

相続時点ですでに築年数が経過している住宅なら、30年間の間には、

屋根 外壁 雨どい 給湯設備 水道設備 電気設備 床 建具

などの修繕が必要になる可能性があります。

もちろん、実際にどの工事が必要になるかは住宅ごとに異なります。

ここで重要なのは、

毎年修繕費が発生する

ということではありません。

ある年に、

20万円 50万円 100万円

とまとまった支出が発生する可能性があるということです。

30年間の費用を考える場合には、

年間維持費

とは別に、

大規模修繕予備費

を考えておく必要があります。

30年間の仮想モデルを作ってみる

ここでは実際の市場価格ではなく、費用構造を理解するための単純な仮想モデルを作ります。

ケースA~比較的管理負担が小さい家

年間固定資産税 3万円 年間保険等   1万2,000円 年間草刈り等  1万円 年間現地管理等 1万円

30年間の経常費用は、

(3万円+1万2,000円+1万円+1万円)×30年 =186万円

さらに30年間の修繕・最終処分等として120万円を仮定すると、

合計306万円

になります。

ケースB~標準的な仮想例

年間固定資産税 5万円 年間草刈り等  3万円 年間保険等   1万5,000円 年間交通・管理 2万円

30年間で、

(5万円+3万円+1万5,000円+2万円)×30年 =345万円

さらに修繕・家財処分・最終的な解体等を合計180万円と仮定すると、

約525万円

になります。

ケースC~広い敷地・管理負担が大きい例

年間固定資産税 8万円 年間草刈り等  6万円 年間保険等   3万円 年間交通・管理 5万円

30年間の経常費用は660万円です。

さらに修繕・最終処分等として250万円を仮定すると、

約910万円

になります。

これらは実際の外房の住宅について調査した平均値ではありません。

あくまで、

小さな年間費用でも30年間積み上げると数百万円単位になり得る

ことを示すための仮想計算です。

実際には、固定資産税、敷地面積、建物状態、草刈り方法、交通距離、解体条件などによって大きく変わります。

「年間10万円程度だから大丈夫」では判断できない

例えば年間維持費が10万円なら、

10万円 × 30年 =300万円

です。

年間20万円なら600万円です。

さらに最後に、

家財処分 測量 仲介 登記 解体

などの費用が加わる可能性があります。

したがって、

年間支出

だけではなく、

30年間のLCC(Life Cycle Cost・取得から処分までの総費用)

として見る方が合理的です。

相続の場合には取得費がゼロに見えやすいため、この視点が特に重要です。

相続したから「無料で家を手に入れた」とは限らない

親から住宅を相続すると、購入代金は支払いません。

そのため、

無料でもらった家

のように感じることがあります。

しかし経済的には、

購入価格0円 =保有費用0円

ではありません。

むしろ相続後に誰も利用しない場合、

収益を生まない資産に対して、

税金 維持管理 修繕 時間

を投入し続ける状態になります。

重要なのは、

取得価格

ではなく、

将来キャッシュフロー

です。

家の価値と土地の価値を分けて考える

地方住宅では、

家屋そのものにはほとんど市場価値がなくても、土地に一定の価値が残る

場合があります。

反対に、

土地は広いが需要が少なく、売却まで長期間かかる

場合もあります。

そのため、

固定資産税評価額がある =その価格で売れる

ではありません。

不動産会社へ査定を依頼し、

実際にいくらなら売れそうか どの程度の期間が必要か 古家付きで売れるか 解体が必要か

を確認することが重要です。

「将来値上がりするかもしれない」で30年間保有するリスク

不動産には将来価格が上昇する可能性もあります。

しかし人口減少地域で、

いつか高く売れるかもしれない

だけを理由に、30年間維持費を支払う場合には慎重な判断が必要です。

例えば30年間で維持費500万円を支払い、

現在300万円で売れる土地が、

30年後に500万円で売れたとしても、

単純には利益とはいえません。

途中の維持費や管理労務を考える必要があるからです。

不動産投資として考えるなら、

将来売却価格

だけでなく、

保有期間中のキャッシュフロー

を見る必要があります。

売れないなら持つしかない、とは限らない

地方の実家について、

「売れないから仕方なく持っている」

という状態もあります。

しかし売却価格を高く設定しすぎている可能性もあります。

例えば、

500万円なら買い手がいない。

300万円ならいる。

100万円ならいる。

ということもあり得ます。

このとき、

500万円で売れるまで10年間待つ

ことと、

300万円で早期に売却する

ことでは、維持費を含めると結果が変わります。

仮に年間維持費20万円なら、

10年間で200万円です。

500万円で10年後に売るより、

300万円ですぐ売る方が、

少なくとも単純な維持費だけを見れば同程度になる場合があります。

つまり、

売却価格だけではなく「売れるまでの時間」も価格の一部

として考える必要があります。

空き家バンクという選択肢もある

空き家を市場へ出す方法として、市町村などが関与する空き家バンクもあります。

国も全国版空き家・空き地バンクなどを通じ、空き家の流通や活用を促進しています。

ただし、

空き家バンクへ登録する =必ず買い手が見つかる

ではありません。

住宅の状態 立地 価格 交通 修繕必要性

によって需要は変わります。

重要なのは、

「いつか考える」

のではなく、

相続後比較的早い段階で市場へ出した場合に需要があるか確認すること

です。

空き家は時間が経てば売りやすくなるとは限らない

住宅が古くなれば、

雨漏り 腐食 設備故障 庭木繁茂

などによって状態が悪化する可能性があります。

千葉県の世帯所有空き家の約8割が1990年以前の建築であることを考えても、既存空き家の老朽化は重要な問題です。

例えば、

相続時ならそのまま使える家

でも、

10年間無人 ↓ 修繕が必要 ↓ 20年間無人 ↓ 建物利用が難しい

となる可能性があります。

つまり、

何もしない

ことも一つの選択ですが、

時間の経過によって選択肢が減る可能性

があります。

家財を残したままにする問題

実家を相続すると、

家具 衣類 食器 本 仏壇 写真 農機具 家電

などが残っている場合があります。

これらの整理にも時間と費用がかかります。

御宿町では2026年度も定住促進策の中で空き家家財等処分への補助を予算化しています。

これは逆に言えば、

家そのものだけでなく、

家の中に残った物の処分も空き家活用の障害になり得る

ということです。

相続直後は親の物を捨てにくくても、20年後には自分自身も高齢になっています。

大量の家財整理は、できる時期に進めた方が負担は小さい場合があります。

解体すればすべて解決するのか

建物を取り壊せば、

雨漏り 建物倒壊 建物修繕

などの問題はなくなります。

しかし、

土地は残ります。

草刈りも必要です。

土地の固定資産税も残ります。

さらに、住宅がなくなることで住宅用地特例が適用されなくなり、土地の固定資産税等の負担が変わる可能性があります。

したがって、

家を壊す =その後の費用がゼロ

でもありません。

解体する場合には、

解体費 その後の土地管理費 税負担 土地売却可能性

を一緒に確認する必要があります。

管理しないまま残すという選択肢はリスクが大きくなった

現在の空家法では、特定空家になる前段階の「管理不全空家」についても自治体が指導・勧告できます。

勧告を受ければ住宅用地特例が外れる可能性があります。

つまり、

使わない 売らない 壊さない 管理もしない

という状態を長期間続けることは、制度上もリスクが高くなっています。

相続した時点で四つに分類すると分かりやすい

実家を相続したら、まず将来用途を次の四つに分けると判断しやすくなります。

1.自分または家族が住む

明確な利用予定があるなら維持する意味があります。

ただし、予定時期とそれまでの管理費を考えます。

2.定期的に利用する

別荘、帰省拠点、仕事場などとして実際に利用する場合です。

利用価値と維持費を比較します。

3.貸す・活用する

賃貸、事業利用などです。

改修費と需要を確認する必要があります。

4.誰も利用する予定がない

最も慎重に考えるべきケースです。

明確な利用目的がなければ、

売却 譲渡 解体後売却

なども早期に比較した方がよいでしょう。

「子どもがいつか使うかもしれない」は確認した方がよい

親世代が、

この家は子どもへ残してあげたい

と考えていても、

子ども側が必要としているとは限りません。

仕事がある。

自宅を所有している。

配偶者の生活圏がある。

子どもの学校がある。

こうした事情があります。

したがって、

先祖代々の家だから残す

だけではなく、

次の世代が本当にその資産を必要としているのか

を確認することが重要です。

必要としていない住宅を、

税金 草刈り 修繕

と一緒に引き継がせることは、

資産承継

ではなく、

管理義務の承継

になる場合があります。

「家を残すこと」と「家族の思い出を残すこと」は別

実家には家族の歴史があります。

そのため売却や解体を、

親を忘れること

のように感じる場合があります。

しかし、

思い出を残すこと ≠ 建物を永久に所有すること

です。

写真。

家具の一部。

仏壇。

記録。

土地の歴史。

残す方法はいくつもあります。

これは墓地管理にも似ています。

先祖を大切にすることと、

子孫が永久に物理的管理を続けること

は分けて考えることができます。

30年後、自分自身も30歳年を取る

実家を相続する時点で50歳なら、

30年後は80歳です。

60歳なら90歳です。

現在なら、

草刈りできる。

車で行ける。

屋根を確認できる。

家財を運べる。

としても、30年間同じことができるとは限りません。

つまり、

家の老朽化だけでなく、管理者自身の高齢化

も考える必要があります。

これは非常に重要です。

今管理できるから、

30年間管理できる

ではありません。

管理を子どもへ引き継げばよいのか

自分ができなくなれば子どもへ任せればよい、という考え方もあります。

しかし、

子どもが遠方に住んでいる 本人が利用する意思がない さらに孫世代は地域との関係が薄い

という可能性があります。

すると、

祖父母 ↓ 親 ↓ 子

と、誰も住まない住宅の管理だけが承継されます。

この構造をどこかで止めなければ、

所有者数が増えたり、

意思決定が難しくなったり、

処分がさらに困難になる可能性があります。

最も避けたいのは「誰も判断しないまま30年」

実家問題でリスクが高いのは、

残すと決めること

でも、

売ると決めること

でもありません。

何も決めないまま時間だけが経過すること

です。

その間にも、

建物は古くなる。

庭は伸びる。

所有者も高齢になる。

相続人も増える。

地域人口も減る可能性があります。

30年後の方が処分しやすくなる保証はありません。

30年間持ち続けやすい家

保有する合理性が比較的高いのは、

将来利用予定が具体的 定期的に使用している 土地需要が一定程度ある 建物状態がよい 敷地管理が容易 近隣に管理を依頼できる 年間維持費を十分負担できる

住宅でしょう。

「いつか使うかもしれない」ではなく、利用目的が明確であることが重要です。

30年間持ち続けにくい家

反対に、

誰も住む予定がない 遠方にある 庭や敷地が広い 建物が古い 定期的な台風被害が心配 売却需要が小さい 子どもも不要と言っている 管理者自身が高齢

という条件が重なるほど、長期保有の合理性は低くなります。

特に、

利用価値ゼロ+維持費あり+管理労働あり

という状態を何十年も続けることには慎重な検討が必要です。

判断するときのチェックリスト

実家を相続した場合、次の項目を確認するとよいでしょう。

・年間固定資産税はいくらか ・現在の建物築年数は何年か ・30年後には築何年になるか ・火災保険等を継続できるか ・年間何回草刈りが必要か ・庭木管理が必要か ・自分で管理できるのはあと何年か ・管理を外注すると年間いくらか ・自宅から実家までの往復費用はいくらか ・年間何回現地確認が必要か ・雨漏りや外壁修繕が必要か ・家財はどれだけ残っているか ・現在売却した場合の査定価格はいくらか ・古家付きで売れるか ・土地だけなら売れるか ・賃貸需要はあるか ・子どもは本当に相続したいか ・解体費用はいくらか ・解体後の土地管理費はいくらか ・10年後に売る合理的理由があるか ・30年間保有して何に利用するのか

最後の質問が最も重要です。

「30年間で何に使うのか」を言葉にできるか

例えば、

毎月利用する。

10年後に移住する。

子どもが住む。

賃貸する。

という具体的用途があれば、維持費は利用価値を得るための支出です。

しかし、

特に使わないが何となく残しておく

場合には、

30年間の費用を何のために支払っているのか

を考える必要があります。

現実的な結論

地方の実家を相続しても誰も住まない場合、その家を持ち続けること自体は可能です。

しかし、

固定資産税だけ払えばよい

という問題ではありません。

草は伸びます。

家は老朽化します。

台風も来ます。

現地確認も必要です。

最後には、

売る 譲る 壊す

という判断も必要になります。

仮想モデルではありますが、本記事の例では30年間の総負担が約300万円から900万円程度になるケースを示しました。

これは外房住宅の平均費用ではありません。

重要なのは金額そのものではなく、

年間数万円から数十万円程度に見える管理費でも、30年間では大きな金額になる

という構造です。

そして金銭以上に見落とされやすいのが、

管理する人の時間

です。

相続した人自身も30年間で30歳年を取ります。

現在できる草刈りや遠距離運転を、30年後にもできるとは限りません。

人口減少地域では、

人が減っても住宅はすぐには減りません。

これは、このブログで繰り返し扱っている、

人口が減る速度と管理対象が減る速度は一致しない

という問題そのものです。

墓。

自治会。

ごみ集積所。

道路。

そして実家。

いずれも、

人が減っても管理対象だけが残る

可能性があります。

だからこそ、地方の実家についても、

「どうやって次の世代へ残すか」

だけではなく、

「次の世代へ管理する必要のない状態で渡せないか」

を考える必要があります。

家を残すことが目的ではありません。

家族が必要な資産を残すことが目的です。

誰も利用しない住宅については、

30年間持ち続ける費用と、

今整理する費用を比較する。

これが、人口減少時代の実家相続では重要になるのではないでしょうか。

地域の課題を、自分の判断に置き換えて考える

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地方にある実家や親族の家を相続したものの、今後どのように扱えばよいのか分からず、そのままにしている方は少なくありません。

空き家について考えるとき、多くの方が最初に思い浮かべる選択肢は、次の4つです。

  1. 売却する
  2. 賃貸住宅として貸す
  3. 空き家のまま持ち続ける
  4. 建物を解体して土地として保有または売却する

一見すると、売却すれば問題は解決し、賃貸すれば家賃収入が得られ、持ち続ければ将来使うことができ、解体すれば管理負担が減るように見えます。

しかし、実際にはそれほど単純ではありません。

売却しようとしても買い手が見つからないことがあります。賃貸に出すには修繕費が必要です。持ち続ければ固定資産税や草刈り、建物管理の費用が発生します。解体すると高額な工事費がかかり、土地の固定資産税が変わる可能性もあります。

つまり、どの方法が最も得になるかは、目先の収入や支出だけでは判断できません。

この記事では、地方にある一般的な戸建て空き家を想定し、売る、貸す、持ち続ける、解体するという4つの選択肢を、10年間の費用と収入で比較します。

なお、この記事で示す金額は、特定の物件についての見積額ではありません。比較方法を分かりやすくするための仮定です。

実際の判断では、不動産事業者、建築事業者、税理士、司法書士、自治体などへの確認が必要になる場合があります。


空き家の問題は、時間とともに大きくなる

空き家について最も注意したいのは、「今すぐ困っていないから、そのままでもよい」と考えてしまうことです。

空き家は、何もしなければ同じ状態のまま保存されるわけではありません。

人が住まなくなった住宅では、換気が行われず、湿気がこもりやすくなります。水道を使用しなくなれば、排水口や配管に問題が生じることがあります。庭木や雑草は伸び、雨どいや屋根、外壁などの傷みも発見されにくくなります。

建物の状態が悪化すれば、売却価格や賃貸可能性も下がります。

さらに、倒壊や外壁材の落下、害虫、害獣、不法侵入などによって、近隣へ影響を与える可能性もあります。

2023年12月に施行された改正空家法では、放置すれば「特定空家」になるおそれのある住宅を「管理不全空家」として、市区町村が指導や勧告の対象にできる仕組みが設けられました。勧告を受けると、敷地に対する固定資産税などの住宅用地特例を受けられなくなる場合があります。

そのため、「何もしない」という状態も、実際には一つの選択です。

しかも、多くの場合、その選択には毎年費用がかかります。


まず整理したい4つの選択肢

空き家の処分方法を考える際には、最初から一つの方法に決めるのではなく、4つの選択肢を同じ基準で比較することが重要です。

選択肢 主な利点 主な負担・リスク
売却する 管理負担を終了できる 売却価格が低い、買い手が見つからない
賃貸する 家賃収入を得られる 修繕費、空室、入居者対応
持ち続ける 将来利用できる 税金、管理費、老朽化
解体する 建物管理の負担を減らせる 解体費、土地の税負担、売れない土地が残る

重要なのは、「売却価格がいくらか」だけではありません。

次のような項目をすべて含めて比較する必要があります。

  • 初期費用
  • 毎年の維持費
  • 修繕費
  • 税金
  • 保険料
  • 草刈りや庭木管理
  • 売却や賃貸の仲介費用
  • 空室期間
  • 将来の処分費用
  • 所有者自身が管理に使う時間
  • 現地までの交通費
  • 近隣トラブルのリスク
  • 10年後に残る資産価値

今回の比較に使う空き家の想定条件

今回は、次のような地方の戸建て住宅を仮定します。

項目 想定条件
建物 木造2階建て
築年数 約40年
延べ床面積 約100平方メートル
土地面積 約250平方メートル
現在の状態 数年間空き家
売却想定価格 土地・建物合計300万円
賃貸想定家賃 月額5万円
現在の固定資産税等 年額6万円
所有者の居住地 空き家まで片道約1時間30分
比較期間 10年間

ここでいう固定資産税等は、分かりやすくするための仮定です。実際の税額は、固定資産税評価額、土地面積、建物評価、都市計画税の有無、住宅用地特例などによって異なります。

また、売却価格300万円、家賃5万円という数字も、全国の相場を示すものではありません。

同じ築年数と広さであっても、駅や商店への距離、道路条件、災害リスク、接道、上下水道、建物状態などによって価格は大きく変わります。


選択肢1 空き家を売却する

売却の最大の利点は、将来の管理負担を終わらせられること

空き家を売却する最大の利点は、売却後の固定資産税、草刈り、修繕、見回りなどの負担を原則として終了できることです。

売却価格が低いと、「安く手放すのは損ではないか」と感じる方もいます。

しかし、空き家を持ち続ける場合には、毎年費用が発生します。

仮に年間15万円の維持費がかかる場合、10年間では150万円です。

さらに、屋根や外壁、水道設備などの修繕が発生すれば、支出はさらに増えます。

そのため、売却価格だけを見て判断するのではなく、売却しなかった場合に今後発生する費用も比較しなければなりません。

売却時に考えられる費用

空き家を300万円で売却できたとしても、300万円がそのまま手元に残るわけではありません。

一般的には、次のような費用が発生する可能性があります。

  • 不動産仲介手数料
  • 売買契約書の印紙税
  • 所有権移転に必要な書類の取得費
  • 相続登記や住所変更登記などの費用
  • 境界確認や測量費
  • 家財や残置物の処分費
  • 建物の簡易修繕費
  • 譲渡所得が発生した場合の税金

空き家の名義が亡くなった親のままになっている場合は、売却前に相続登記が必要になります。

2024年4月1日から相続登記が義務化され、不動産を相続したことを知った日などから原則3年以内に申請する必要があります。正当な理由なく義務に違反すると、10万円以下の過料の対象になる可能性があります。

売却の試算例

今回は次のように仮定します。

項目 金額
売却価格 3,000,000円
仲介・契約関係費用 250,000円
残置物処分 400,000円
登記・書類等 150,000円
簡易清掃・修繕 200,000円
手取り概算 2,000,000円

この例では、売却後に約200万円が残る計算です。

売却までに1年間かかり、その間に固定資産税、草刈り、見回りなどで15万円かかったとすると、最終的な手取りは185万円程度になります。

売却した場合の10年間の概算

売却による手取り 約200万円
売却までの維持費 約15万円
10年間の収支   約185万円

売却後は、原則として管理費や固定資産税は発生しません。

したがって、今回の仮定では、4つの選択肢の中で最も早く問題を終わらせられる方法になります。

売却が向いている空き家

次のような場合には、売却を優先して検討する合理性があります。

  • 所有者や家族が今後住む予定がない
  • 賃貸需要が弱い
  • 遠方に住んでいて管理が難しい
  • 建物の劣化が進んでいる
  • 修繕にまとまった費用がかかる
  • 相続人が複数いて将来の合意形成が難しくなる
  • 土地や建物の価格がさらに下がる可能性がある
  • 維持費を払い続けることに意味を感じない

一方で、急いで売却すると、相場より低い価格で手放す可能性もあります。

複数の不動産事業者へ査定を依頼し、「仲介で売る場合」と「事業者に直接買い取ってもらう場合」を分けて比較することが重要です。


選択肢2 空き家を賃貸住宅として貸す

家賃5万円なら年間60万円になるが、その全額が利益ではない

月額5万円で貸すことができれば、年間家賃収入は60万円です。

10年間、入居者が途切れず、家賃の未払いもなく、修繕も発生しなければ、家賃収入は600万円になります。

この数字だけを見ると、300万円で売却するより、貸した方が得に見えます。

しかし、現実の賃貸経営では、家賃収入から多くの費用を差し引く必要があります。

主な費用は次のとおりです。

  • 入居前の改修費
  • 台所、浴室、トイレ、給湯器などの修理
  • 壁紙や床の張り替え
  • 不動産事業者への仲介・管理費用
  • 固定資産税
  • 火災保険
  • 退去時の修繕費
  • 空室期間の家賃減少
  • 設備故障への対応
  • 庭木や外構の管理
  • 所得税などの税負担

築40年の住宅を貸すための改修費

築40年程度の住宅では、そのまま貸せるとは限りません。

見た目が古いだけでなく、次の設備が使用可能かを確認する必要があります。

  • 給湯設備
  • 水道管
  • 排水管
  • 浴室
  • トイレ
  • 台所
  • 電気設備
  • 雨漏り
  • シロアリ被害
  • 建具
  • 床の傾き
  • エアコン
  • 火災報知器

大規模な改修を行えば、費用は数百万円になることがあります。

一方、最低限の修繕に抑えれば初期費用は小さくなりますが、入居後に設備故障が続く可能性があります。

今回は、賃貸開始前の改修費を200万円と仮定します。

空室率を考える

家賃収入を計算するときは、常に満室であると仮定しない方が現実的です。

地方では、入居者が退去した後、次の入居者が決まるまで数か月以上かかることがあります。

そこで今回は、10年間のうち実際に家賃を受け取れる期間を85%と仮定します。

月額家賃5万円
×12か月
×10年間
×入居率85%
=510万円

10年間の家賃収入は、510万円です。

賃貸した場合の10年間の試算

項目 10年間の金額
家賃収入 5,100,000円
初期改修費 ▲2,000,000円
固定資産税等 ▲600,000円
管理委託費等 ▲510,000円
保険・点検等 ▲300,000円
追加修繕費 ▲800,000円
退去時費用等 ▲300,000円
10年間の概算収支 590,000円

今回の仮定では、10年間の利益は約59万円です。

ただし、10年後にも土地と建物が残ります。

そのため、賃貸の場合は、10年間の家賃収支だけでなく、10年後の資産価値も加えて考える必要があります。

仮に10年後、土地と建物を150万円で売却できるとすれば、

10年間の賃貸収支 約59万円
10年後の売却手取 約100万円
合計      約159万円

となります。

一方、10年後には建物がさらに老朽化し、売却前に解体費が必要になる可能性もあります。

賃貸は「家賃が入るか」ではなく「修繕費を回収できるか」で考える

賃貸の判断で重要なのは、月額家賃ではありません。

最初にかける改修費を何年で回収できるかです。

仮に改修費が200万円で、諸経費を差し引いた年間利益が25万円なら、改修費の回収だけで8年かかります。

200万円 ÷ 年間利益25万円 = 8年

8年目までに給湯器や屋根などの大きな修繕が発生すれば、回収期間はさらに長くなります。

賃貸が向いている空き家

賃貸が有力になるのは、次の条件がそろっている場合です。

  • 一定の賃貸需要がある
  • 建物状態が比較的良い
  • 少額の修繕で貸せる
  • 駐車場を確保できる
  • スーパー、学校、病院、勤務先などへの利便性がある
  • 管理を依頼できる不動産事業者がいる
  • 家賃に対して改修費が過大でない
  • 10年以上の長期保有を予定している
  • 空室が続いても資金的に耐えられる

反対に、改修費が高く、家賃が低く、入居需要が弱い場合には、賃貸は収益事業にならない可能性があります。

自治体の空き家バンクには、売りたい人だけでなく、貸したい人が物件を登録できる制度もあります。ただし、登録条件や契約への自治体の関与範囲は自治体ごとに異なるため、所在地の自治体へ確認する必要があります。


選択肢3 空き家のまま持ち続ける

「何もしない」場合にも費用は発生する

空き家を売らず、貸さず、解体もしない場合、当面は大きな初期費用を払わずに済みます。

このため、相続直後などには「しばらくそのままにしておこう」と考えやすくなります。

しかし、持ち続ける場合にも、毎年次のような費用がかかります。

  • 固定資産税等
  • 火災保険
  • 草刈り
  • 庭木の剪定
  • 建物の換気
  • 郵便物の確認
  • 雨漏りや破損の修理
  • 害虫・害獣対策
  • 現地までの交通費
  • 水道や電気の基本料金
  • 台風や大雨後の確認
  • 防犯対策

所有者自身が無償で作業している場合でも、時間と交通費はかかります。

年間維持費の試算

今回は、次のように仮定します。

項目 年間費用
固定資産税等 60,000円
火災保険等 30,000円
草刈り・庭木管理 50,000円
見回り交通費 30,000円
電気・水道基本料金 20,000円
小修繕・消耗品 30,000円
年間合計 220,000円

年間22万円であれば、10年間では220万円です。

さらに、10年間の途中で屋根補修や給排水設備への対応が必要になり、100万円の臨時支出が発生すると仮定します。

持ち続けた場合の10年間の費用

年間維持費22万円 × 10年間 = 220万円
臨時修繕         = 100万円
10年間の支出合計     = 320万円

10年後に物件を200万円で売却できたとしても、売却費用などを差し引いた手取りが150万円であれば、

10年間の維持・修繕費 ▲320万円
10年後の売却手取り  150万円
最終収支      ▲170万円

となります。

つまり、10年間持ち続けた結果、170万円程度の持ち出しになる試算です。

持ち続けることが必ずしも悪いとは限らない

ただし、保有がすべて不合理というわけではありません。

次のような目的がある場合は、一定期間持ち続ける意味があります。

  • 数年後に自分や家族が住む予定がある
  • 定期的に別荘や帰省先として使っている
  • 土地の将来利用が決まっている
  • 周辺で道路整備や開発計画がある
  • 家族間で処分方針を決めるための時間が必要
  • 売却前に相続や境界の問題を整理している
  • 建物に家族史上の価値があり、保存の意思がある

重要なのは、「なぜ持ち続けるのか」を明確にすることです。

目的も期限もないまま保有すると、数年後には建物状態が悪化し、売却も賃貸も難しくなる可能性があります。

保有するなら期限を決める

空き家を当面保有する場合は、次のように期限を決める方法が有効です。

今後2年間は保有する
↓
2年後までに家族が利用しなければ売却する
↓
その間は年2回、建物状態を点検する
↓
年間管理費が25万円を超えたら早期売却を再検討する

「いつか使うかもしれない」という理由だけでは、処分判断が先送りされやすくなります。

保有には、目的、期限、年間予算の3つを設定する必要があります。


選択肢4 建物を解体する

解体すれば問題がすべて解決するわけではない

老朽化した空き家では、建物を解体して更地にする方法があります。

建物がなくなれば、屋根や外壁の落下、倒壊、不法侵入、雨漏りなどの問題は大きく減ります。

庭や土地の管理は残りますが、建物の維持管理よりは単純になる可能性があります。

一方で、解体にはまとまった費用が必要です。

解体後も土地が売れなければ、固定資産税や草刈りの費用を払い続けることになります。

解体費用は建物だけでは決まらない

解体費用は、建物の床面積だけでは決まりません。

次の条件によって変わります。

  • 木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造
  • 建物の広さ
  • 前面道路の幅
  • 重機が入れるか
  • 隣家との距離
  • 家財や残置物の量
  • ブロック塀、物置、庭石、樹木の有無
  • アスベストの有無
  • 地中埋設物の有無
  • 浄化槽や井戸の処理
  • 廃材の運搬距離
  • 地域の処分費用

今回は、建物本体、家財処分、外構の一部撤去などを含め、解体関連費用を250万円と仮定します。

解体後の固定資産税に注意する

住宅の敷地には、一定の条件のもとで固定資産税の課税標準を軽減する住宅用地特例があります。

小規模住宅用地では、200平方メートル以下の部分について、固定資産税の課税標準が6分の1となる仕組みがあります。建物を解体して住宅用地でなくなると、この特例が適用されなくなる可能性があります。

ただし、「建物を解体すると固定資産税が必ず6倍になる」と単純に断定することはできません。

税額は、土地の評価額、面積、負担調整措置、都市計画税、自治体の取扱いなどによって変わるためです。

解体前には、市区町村の固定資産税担当部署へ、解体後の概算税額を確認することが重要です。

解体して土地を持ち続ける場合の試算

今回は、解体費250万円、解体後の税金と管理費を年間18万円と仮定します。

項目 10年間の金額
解体費用 ▲2,500,000円
固定資産税等 ▲1,300,000円
草刈り・土地管理 ▲500,000円
10年間の支出合計 ▲4,300,000円

10年後に土地を250万円で売却し、諸費用を差し引いた手取りが220万円だとすると、

10年間の支出   ▲430万円
10年後の売却手取 220万円
最終収支    ▲210万円

となります。

この例では、解体して土地を持ち続ける方法は、金銭面では最も不利です。

解体後すぐ売却できるなら結果は変わる

解体費250万円をかけても、更地にすることで土地が500万円で売却できるなら、結果は変わります。

土地売却価格  500万円
解体費用   ▲250万円
売却諸費用等  ▲50万円
概算手取り   200万円

建物付きでは300万円、解体後は500万円で売れるとしても、解体費を差し引けば手取りは同程度です。

したがって、解体前に確認すべきなのは、「更地ならいくらで売れるか」ではありません。

次の差額です。

解体後の土地売却手取り
-解体費
-解体までの維持費

この金額を、建物付きで売却した場合の手取りと比較します。

解体が向いているケース

次のような場合には、解体を検討する合理性があります。

  • 建物が著しく老朽化している
  • 倒壊や外壁落下などの危険がある
  • 建物付きでは売却が難しい
  • 土地としての需要がある
  • 隣地所有者が購入を希望している
  • 駐車場や資材置場など別用途がある
  • 自治体の解体補助制度を利用できる
  • 解体後すぐに土地を売却する予定がある

反対に、土地需要がほとんどなく、解体後も長期間保有する見込みであれば、解体費と毎年の土地管理費が重い負担になる可能性があります。


4つの方法を10年間で比較する

ここまでの仮定をまとめます。

選択肢 10年間の最終的な概算収支 10年後の状態
売却する 約185万円 所有関係・管理負担が終了
賃貸する 約159万円 売却まで含めた場合
持ち続ける 約▲170万円 10年後に売却した場合
解体して保有する 約▲210万円 10年後に土地売却した場合

この試算では、売却が最も有利です。

次に賃貸、持ち続ける、解体して保有するという順番になります。

しかし、これはすべての空き家に当てはまる結論ではありません。

条件を少し変えるだけで結果は逆転します。


賃貸が売却より有利になる条件

今回の試算では賃貸収入を月額5万円、入居率85%、初期改修費200万円としました。

次のような条件であれば、賃貸の方が有利になる可能性があります。

  • 改修費が100万円以下
  • 家賃が月額6万円以上
  • 長期間入居する需要がある
  • 建物の設備状態が良い
  • 管理費が低い
  • 10年後にも一定の売却価値が残る

反対に、改修費が300万円を超え、家賃が月額4万円程度で、入居率が低い場合には、賃貸収支は厳しくなります。


保有が合理的になる条件

保有が合理的なのは、単純な投資収益ではなく、将来の利用価値がある場合です。

たとえば、3年後に家族が移住する予定があり、その間だけ維持するのであれば、売却してから別の住宅を買い直すより合理的かもしれません。

また、年に数回利用しており、宿泊施設の代替として価値がある場合には、その利用価値も計算に入れる必要があります。

仮に年10泊利用し、周辺の宿泊費が1泊2万円なら、年間20万円相当の利用価値があると考えることもできます。

ただし、その利用価値と年間管理費を同じ基準で比較する必要があります。


解体が合理的になる条件

解体が有利になるのは、次の差が十分に大きい場合です。

更地の売却手取り
-建物付きの売却手取り
>解体に必要な総費用

たとえば、建物付きでは100万円でしか売れないものの、更地なら500万円で売れ、解体総費用が200万円なら、解体後売却の方が有利になる可能性があります。

更地売却500万円
-解体費200万円
=300万円

建物付きの売却手取りが100万円なら、解体した方が200万円有利です。

しかし、更地価格が250万円にしかならない場合は、

更地売却250万円
-解体費200万円
=50万円

となり、建物付きで100万円で売る方が有利です。


空き家判断では「利益」だけでなく時間も評価する

空き家問題では、金額に表れにくい負担もあります。

たとえば、年6回現地へ行き、往復3時間、現地作業2時間なら、1回5時間です。

5時間 × 年6回 = 年30時間

10年間では300時間です。

自分の時間を1時間1,500円として評価すれば、

300時間 × 1,500円 = 45万円

となります。

交通費や作業道具代とは別に、45万円相当の時間を使っていることになります。

高齢になると、草刈り、清掃、屋根の確認などの作業も難しくなります。

今は自分で管理できても、5年後、10年後には業者へ依頼しなければならない可能性があります。

そのため、比較では現在の費用だけでなく、将来の管理能力も考える必要があります。


売却・賃貸の前に確認すべきこと

1.名義を確認する

法務局で登記事項証明書を取得し、所有者名義を確認します。

亡くなった方の名義であれば、相続関係を整理する必要があります。

相続人が複数いる場合は、一人だけの判断で売却や賃貸を進められないことがあります。

2.固定資産税の明細を確認する

固定資産税納税通知書などから、土地と建物それぞれの評価額、税額、所在地を確認します。

複数の土地がまとめて記載されていることもあるため、対象物件の範囲を確認します。

3.境界と接道を確認する

境界が不明確な土地や、公道に十分接していない土地では、売却や再建築が難しい場合があります。

測量図、公図、地積測量図、道路種別などを確認します。

4.建物状態を確認する

屋根、外壁、基礎、床、配管、電気、シロアリ、雨漏りなどを確認します。

賃貸を検討する場合は、「住めるか」ではなく、「他人へ安全に貸せるか」という基準で確認する必要があります。

5.残置物を確認する

家具、衣類、食器、家電、仏壇、農機具などが残っている場合、処分費がかかります。

相続人の合意なく処分すると問題になる物もあるため、所有関係の確認が必要です。

6.地域の需要を確認する

売却価格や家賃は、建物の広さだけでは決まりません。

  • 駅までの距離
  • スーパーまでの距離
  • 病院までの距離
  • 学校までの距離
  • 駐車可能台数
  • 道路幅
  • 災害リスク
  • インターネット環境
  • 水道・下水道
  • 地域の人口動向

などを確認します。

7.自治体の制度を確認する

自治体によっては、空き家バンク、解体補助、改修補助、家財処分補助などを設けている場合があります。

ただし、対象となる建物、申請時期、契約前の申請、所得制限などの条件があります。

工事や契約を始めてからでは申請できない制度もあるため、必ず事前に確認します。


相続した空き家を売る場合の税制にも注意する

相続した空き家を売却した場合、一定の要件を満たすと、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。

ただし、取得した相続人が3人以上の場合は、一人当たりの控除上限が2,000万円となる場合があり、対象となる建物や売却時期などにも細かな要件があります。

この特例は、売却価格から3,000万円が支給される制度ではありません。

売却によって生じた譲渡所得から、一定額を控除する制度です。

また、すべての相続空き家が対象になるわけではありません。

売却を検討する場合は、契約前に税務署や税理士へ確認することが重要です。


空き家の判断に使える簡易チェック表

次の項目に「はい」が多い選択肢ほど、検討の優先度が高いと考えられます。

売却を優先しやすい条件

  • 今後住む予定がない
  • 遠方にあり管理が難しい
  • 年間維持費が負担である
  • 賃貸需要が弱い
  • 建物の劣化が進んでいる
  • 相続人が複数いる
  • 現金化して相続人間で分けたい
  • 早めに管理責任から離れたい

賃貸を検討しやすい条件

  • 比較的少ない修繕で貸せる
  • 月額家賃を十分に確保できる
  • 周辺に賃貸需要がある
  • 駐車場がある
  • 管理を依頼できる事業者がいる
  • 10年以上保有する予定がある
  • 修繕費を負担できる
  • 空室があっても生活資金に影響しない

保有を検討しやすい条件

  • 数年以内に利用予定がある
  • 家族が将来住む可能性が高い
  • 定期的に利用している
  • 年間管理費を負担できる
  • 管理する人がいる
  • 保有期限を決めている
  • 建物状態が比較的良い
  • 土地の将来利用計画がある

解体を検討しやすい条件

  • 倒壊や部材落下の危険がある
  • 建物付きでは売れない
  • 更地にすると土地需要がある
  • 隣地所有者が購入を希望している
  • 解体後すぐに売却できる
  • 補助制度を利用できる
  • 建物の修繕価値が低い
  • 解体後の固定資産税を確認済みである

結論――今回の試算では売却が有利だが、判断の核心は条件整理にある

今回の試算では、10年間の収支は次のようになりました。

選択肢 概算結果
売却 約185万円
賃貸 約159万円
持ち続ける 約▲170万円
解体して保有 約▲210万円

この条件では、早期に売却する方法が最も有利です。

しかし、これは「地方の空き家はすべて売るべきだ」という意味ではありません。

建物状態が良く、安定した賃貸需要があり、少ない修繕費で貸せるなら、賃貸が有利になる可能性があります。

数年後に家族が利用する予定があるなら、一定期間の保有にも意味があります。

建物が危険な状態で、更地として高く売れるなら、解体後売却が有利になる可能性もあります。

重要なのは、感情や印象だけで決めず、次の数字を集めることです。

  1. 建物付きの売却価格
  2. 更地にした場合の土地価格
  3. 解体費
  4. 賃貸前の改修費
  5. 想定家賃
  6. 想定空室率
  7. 年間固定資産税
  8. 年間管理費
  9. 10年間の修繕費
  10. 10年後の予想売却価格

最低でも、この10項目をそろえて比較する必要があります。

空き家の判断を先送りすると、選択肢が増えるのではなく、建物の劣化によって選択肢が減ることがあります。

現在は貸せる状態でも、数年後には大規模修繕が必要になるかもしれません。

現在は建物付きで売却できても、将来は解体を条件にしなければ売れなくなるかもしれません。

そのため、今すぐ売るかどうかを決められなくても、現在の建物状態、維持費、売却価格、賃貸可能性だけは早めに確認しておくことが大切です。


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親が亡くなり、実家を相続したものの、自分や家族が住む予定がない場合、「早めに売った方がよいのではないか」と考える人は少なくありません。

不動産会社に査定を依頼し、「300万円程度で売れそうです」と言われれば、300万円が手元に残るように感じることもあります。

しかし、相続した実家の売却では、査定価格と実際の手取額は同じではありません。

売却するまでには、相続登記、家財の整理、建物の管理、草刈り、修繕、測量、解体、仲介手数料、税金などが関係します。

さらに、売却に時間がかかれば、その間も固定資産税、保険料、管理費、交通費などが発生します。

例えば、300万円で売れるまで2年間待つ場合と、250万円で早期に売却する場合では、一見すると300万円で売る方が有利に見えます。

ところが、年間25万円の維持費がかかるなら、2年間で50万円を負担します。

300万円で売却-2年間の維持費50万円
=実質250万円

この場合、250万円で早期に売却する案と、金額上の差はほとんどありません。

しかも、2年間の管理作業、遠方からの移動、建物の劣化、将来の値下がりまで考えると、早期売却の方が有利になる可能性もあります。

相続した実家を売るときに重要なのは、査定価格の高さだけではありません。

売却までの期間、必要経費、税金、相続人間の合意、建物状態、将来の処分可能性を含めて比較する必要があります。

この記事では、相続した実家を売る前に確認したい10項目を、一般的な地方の戸建てをモデルケースとして整理します。

記事内の金額は、判断方法を説明するための試算例です。実際の費用、税額、売却価格は、物件、地域、建物状態、相続関係などによって異なります。

相続した実家の売却は「いくらで売れるか」だけでは決められない

相続した実家について、最初に不動産会社へ査定を依頼すること自体は有効です。

現在の市場でどの程度の価格が期待できるかを把握しなければ、売却、賃貸、保有、解体などを比較できないからです。

ただし、査定価格だけで売却方法を決めると、実際の手取額や将来負担を見誤る可能性があります。

売却による実質的な手取額は、次のように考えます。

実質手取額
=売却代金
-売却に直接かかる費用
-売却までの維持費
-家財処分費
-修繕費
-測量費
-解体費
-税金

修繕や解体を行わない場合、その費用は発生しません。

一方で、何もせず売り出すと、売却価格が下がったり、買い手が見つかるまで時間がかかったりすることがあります。

つまり、費用をかければ必ず高く売れるわけではなく、費用をかけなければ必ず損になるわけでもありません。

物件ごとに、どの費用をかけると売却条件がどの程度改善するのかを確認する必要があります。

今回のモデルケース

この記事では、次のような地方の実家を相続したケースを想定します。

項目 仮定条件
土地面積 250平方メートル
建物面積 100平方メートル
建物構造 木造2階建て
築年数 45年
空き家期間 1年
相続人 兄弟2人
査定価格 300万円
年間維持費 25万円
家財処分費 50万円
最低限の修繕費 80万円
解体費 200万円
売却までの想定期間 6か月~3年
所有者の居住地 実家から片道100キロメートル

今回は説明を分かりやすくするため、比較的低価格で取引される地方の戸建てを想定しています。

都市近郊の土地価値が高い住宅や、建物状態の良い住宅では、結果が大きく異なります。

確認項目1 相続登記が完了しているか

最初に確認するのは、実家の名義です。

不動産の所有者が亡くなった後も、登記上の名義が亡くなった人のままになっている場合があります。

相続した不動産を売却するには、誰がその不動産を相続したのかを明確にし、原則として相続人名義への相続登記を行う必要があります。

相続登記は、2024年4月1日から申請が義務化されています。相続によって不動産を取得したことを知った相続人は、原則として、そのことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。2024年4月1日より前に発生した相続も義務化の対象です。

名義が故人のままでは売却準備が進まない

不動産会社へ査定を依頼することはできても、最終的な売買契約や所有権移転を行う段階では、現在の権利関係を明確にする必要があります。

相続人が1人であれば比較的整理しやすい場合がありますが、兄弟姉妹、甥や姪、前婚の子など、関係者が多い場合は手続が複雑になります。

特に、何代にもわたって相続登記を行っていない場合は、現在の相続人を確定するために、多数の戸籍を収集しなければならないことがあります。

売却価格より先に権利関係を確認する

査定価格が高くても、相続人を確定できなかったり、遺産分割協議がまとまらなかったりすれば、すぐには売却できません。

最初に確認するものは、次の書類です。

  • 登記事項証明書
  • 固定資産税の納税通知書
  • 固定資産評価証明書
  • 公図
  • 地積測量図
  • 建物図面
  • 遺言書
  • 遺産分割協議書
  • 被相続人と相続人の戸籍関係書類

書類が見つからない場合でも、法務局や自治体などで取得できるものがあります。

相続関係や登記手続に不明点がある場合は、司法書士、弁護士、法務局などへの確認が必要です。

確認項目2 相続人全員の意向が一致しているか

実家を複数人で相続した場合、建物の状態や売却価格よりも先に、相続人間の意向を確認する必要があります。

例えば、兄は「早く売りたい」と考えていても、弟は「思い出があるので残したい」と考えているかもしれません。

また、売却自体には同意していても、希望価格が異なることがあります。

共有不動産では一人だけで全体を売れない

兄弟2人が2分の1ずつ共有している不動産について、実家全体を売却するには、通常、共有者全員の協力が必要になります。

一人が売却に反対すれば、不動産全体の売却は進みません。

自分の共有持分だけを売却する方法が理論上考えられる場合でも、一般の買い手にとって利用しにくく、売却条件が大幅に不利になる可能性があります。

売却前に決めておきたい事項

相続人間では、少なくとも次の事項を確認します。

  • 実家を売却するか
  • 売却せず保有する可能性はあるか
  • 誰が売却手続を担当するか
  • 査定を何社に依頼するか
  • いくらまで値下げを認めるか
  • 家財の整理を誰が行うか
  • 維持費を誰が負担するか
  • 売却代金をどのように分けるか
  • 修繕や解体を行うか
  • 仏壇、写真、重要書類をどう扱うか

口頭だけで決めると、後で認識の違いが生じることがあります。

重要な事項は、メールや書面などで記録を残しておく方が安全です。

確認項目3 査定価格と実際の成約価格を分けて考えているか

不動産会社から「300万円程度」と査定されたからといって、300万円で確実に売れるわけではありません。

査定価格は、不動産会社が周辺事例、土地条件、建物状態、市場動向などをもとに算出する予想価格です。

実際の売却価格は、買い手との交渉、売却期間、修繕状態、残置物、境界、接道条件などによって変わります。

査定価格には複数の意味がある

不動産会社によっては、比較的早く売れる価格を提示する場合があります。

一方で、売主の期待に合わせて、やや高めの査定価格を提示する場合も考えられます。

そのため、査定額を見るときは、金額だけでなく、次の点を確認します。

  • 査定の根拠となった取引事例
  • 土地価格と建物価格の内訳
  • 想定する売却期間
  • 同じ価格帯の競合物件
  • 値下げを検討する時期
  • 買取価格との違い
  • 古家付き土地としての評価
  • 解体後の土地価格
  • 再建築の可否
  • 買い手として想定している層

1つの査定額ではなく価格帯で考える

売却価格は、1つの数字ではなく、複数のシナリオで考える方が現実的です。

シナリオ 想定売却価格 想定期間
強気価格 350万円 2~3年
標準価格 300万円 1年前後
早期売却価格 250万円 3~6か月
不動産会社の買取 150万円 比較的短い

これは説明用の仮定です。

重要なのは、「350万円で売れる可能性」だけを見るのではなく、「何年待つ必要があるか」「待っても売れなかった場合にどうするか」を同時に考えることです。

確認項目4 売却までの年間維持費を計算しているか

相続した実家に誰も住まなくても、費用がなくなるわけではありません。

売却までの間には、固定資産税、保険、草刈り、庭木管理、換気、清掃、修繕、交通費などが発生します。

今回のモデルケースでは、年間維持費を次のように仮定します。

項目 年間試算額
固定資産税等 6万円
火災保険等 4万円
草刈り・庭木管理 6万円
換気・清掃・点検 4万円
小規模修繕 3万円
現地までの交通費 2万円
合計 25万円

実際の費用は、建物、敷地、地域、保険内容、管理方法などによって異なります。

売却に時間がかかるほど実質手取額は減る

査定価格300万円の物件を、3年間かけて300万円で売却したとします。

3年間の維持費
=年間25万円×3年
=75万円

売却代金から維持費だけを差し引くと、実質225万円です。

300万円-75万円
=225万円

一方、250万円で半年以内に売却でき、半年分の維持費を12万5,000円とすると、維持費差引後は237万5,000円です。

売却方法 売却代金 維持費 差引額
300万円で3年後に売却 300万円 75万円 225万円
250万円で半年後に売却 250万円 12万5,000円 237万5,000円

このモデルでは、売却価格が50万円低くても、早期売却の方が差引額は12万5,000円多くなります。

さらに、3年間の管理作業や建物劣化を考えると、差は大きくなる可能性があります。

自分で管理する時間も負担になる

自分で月1回実家へ行き、換気、清掃、郵便物確認、草刈りなどを行う場合を考えます。

往復移動と作業を合わせて、1回5時間かかるとします。

年間作業時間
=5時間×12回
=60時間

自分の時間を1時間2,000円と評価すると、年間12万円です。

60時間×2,000円
=12万円

実際に現金を支払っていなくても、時間と労力が使われています。

売却を待つ費用には、金銭だけでなく管理時間も含める必要があります。

確認項目5 家財や残置物の処分費を見積もっているか

相続した実家には、家具、家電、衣類、食器、布団、書類、写真、仏壇、農機具などが残っていることがあります。

売却時に家財をそのまま引き渡せるとは限りません。

一般の個人へ売却する場合は、売主側で片付けることを求められるケースがあります。

家財処分は金額だけの問題ではない

家財処分では、次の作業が必要です。

  1. 必要な物と不要な物を分ける
  2. 相続人間で形見分けをする
  3. 写真や重要書類を確認する
  4. 個人情報を含む書類を処分する
  5. 家電や大型家具を搬出する
  6. 一般廃棄物の収集方法を確認する
  7. 仏壇や神棚の扱いを決める
  8. 物置や倉庫の中も確認する

家財処分を業者へ依頼する場合でも、残す物を相続人が判断しなければならないことがあります。

今回のモデルケース

今回のモデルケースでは、家財処分費を50万円と仮定します。

ただし、相続人が自分たちで20日間かけて整理する場合、業者費用を抑えられる可能性があります。

自分の作業時間を1日1万円と評価すると、20日間で20万円です。

時間負担
=1万円×20日
=20万円

処分場までの運搬車両、燃料、分別用品、宿泊費なども必要になる可能性があります。

したがって、「自分で片付ければ無料」とは限りません。

確認項目6 修繕して売るべきか、そのまま売るべきか

古い実家を売る前に、壁紙、畳、水回り、屋根などを修繕した方が高く売れるのではないかと考えることがあります。

修繕によって買い手が見つかりやすくなる可能性はあります。

しかし、修繕費を売却価格の上昇によって回収できるとは限りません。

80万円の修繕で売却価格はいくら上がるのか

次の2つを比較します。

売却案 修繕費 売却価格 修繕費差引後
現状のまま売却 0円 250万円 250万円
80万円修繕して売却 80万円 300万円 220万円

このモデルでは、修繕によって売却価格が50万円上がっても、80万円の費用を回収できません。

売却価格の上昇50万円-修繕費80万円
=30万円の負担増加

一方、修繕によって売却期間が2年から半年に短縮されるなら、維持費の削減効果があります。

年間維持費25万円として、1年6か月短縮できれば、維持費は37万5,000円減少します。

25万円×1.5年
=37万5,000円

この場合は、売却価格上昇50万円と維持費削減37万5,000円を合わせて、87万5,000円の効果があります。

修繕費80万円を上回るため、修繕が合理的になる可能性があります。

価格上昇50万円
+維持費削減37万5,000円
-修繕費80万円
=7万5,000円

つまり、修繕の効果は、売却価格だけでなく売却期間も含めて評価する必要があります。

売却前に優先したい修繕

一般に、好みが分かれる内装を全面的に変更するより、次のような問題を整理する方が売却条件の改善につながる可能性があります。

  • 雨漏り
  • 漏水
  • 排水不良
  • 危険な床
  • 割れた窓
  • 倒れそうな塀
  • 越境している庭木
  • 大量の残置物
  • 害虫や小動物
  • 臭気
  • 電気や水道の使用可否

ただし、どの修繕が有効かは物件と買い手によって異なります。

工事を発注する前に、不動産会社へ「この修繕によって売却価格や売却期間がどの程度変わるか」を確認することが重要です。

確認項目7 解体して更地にする方が有利か

建物が古い場合、「解体して土地だけにすれば売れやすくなる」と考えることがあります。

確かに、買い手が新築を希望している場合は、更地の方が利用しやすい可能性があります。

一方で、解体費を売主が負担しても、土地価格が同じだけ上がるとは限りません。

古家付きと更地を比較する

今回のモデルケースで、次の条件を仮定します。

売却方法 売却価格 解体費 差引額
古家付きで売却 250万円 0円 250万円
解体後に更地で売却 400万円 200万円 200万円

更地にすることで売却価格が150万円上がっても、解体費200万円を回収できません。

売却価格上昇150万円-解体費200万円
=50万円の負担増加

ただし、古家付きでは3年間売れず、更地にすれば半年で売れる場合は、維持費や管理負担が変わります。

また、買い手側が建物解体費を大きな不確実性として評価している場合、更地化によって売却の可能性が高まることもあります。

解体後の固定資産税等にも注意する

住宅が建っている土地には、一定の要件を満たす場合、固定資産税等の住宅用地特例が適用されます。

建物を解体して住宅用地でなくなれば、翌年度以降の土地の税負担が増える可能性があります。

また、適切に管理されていない空き家について、市区町村長から管理不全空家等または特定空家等として勧告を受けた敷地は、住宅用地特例の対象から除外される仕組みがあります。

「解体すると税金が必ず何倍になる」と一律には判断できません。

土地の評価額、面積、自治体、住宅用地の区分などによって実際の税額は異なります。

解体前には、市区町村の固定資産税担当部署へ、解体後の税額見込みを確認する必要があります。

解体を先に行うべきとは限らない

更地を希望する買い手が見つかった後で、売買契約の条件として解体する方法も考えられます。

買い手の希望が分からない段階で解体すると、古家を改修して利用したい買い手を失う可能性があります。

解体前には、次の点を確認します。

  • 古家付きでの需要
  • 更地での需要
  • 解体費の見積り
  • 地中埋設物の可能性
  • アスベスト調査の必要性
  • 解体後の固定資産税等
  • 売却までの想定期間
  • 再建築の可否
  • 接道条件
  • 補助制度の有無と申請時期

自治体の解体補助制度は、対象建物、所得、工事業者、事前申請、予算枠などの条件がある場合があります。

補助金を前提として契約や解体を進めず、必ず工事前に自治体へ確認する必要があります。

確認項目8 境界・接道・再建築の条件を確認したか

建物が古くても、土地として十分な需要があれば売却できる可能性があります。

反対に、建物を解体しても、土地の利用条件に問題があれば売却が難しいことがあります。

特に確認したいのは、次の項目です。

  • 公道に接しているか
  • 接道幅は十分か
  • 私道を通らなければならないか
  • 私道の持分があるか
  • 建て替えが可能か
  • 土地境界が確定しているか
  • 隣地からの越境物があるか
  • 擁壁に問題がないか
  • 土地の一部が農地や山林ではないか
  • 未登記建物がないか

境界が不明確だと売却条件に影響する

地方の古い実家では、境界標が見つからなかったり、登記簿上の面積と現況が異なったりすることがあります。

買い手や金融機関から境界確認を求められれば、測量が必要になる場合があります。

測量費が発生するだけでなく、隣地所有者との立会いが必要になることもあります。

隣地所有者が遠方に住んでいたり、相続登記がされていなかったりすると、境界確認に時間がかかる可能性があります。

建物を壊す前に再建築可能性を確認する

現在建物が建っていても、現在の法令上、同じ土地に新しい建物を建てられるとは限りません。

再建築できない土地では、古い建物を解体すると住宅としての利用価値が大きく下がる可能性があります。

解体を決める前に、自治体の建築担当部署、建築士、不動産事業者などへ確認する必要があります。

確認項目9 税金の特例を利用できる可能性があるか

相続した実家を売却した場合、売却代金の全額に税金がかかるわけではありません。

基本的には、売却価格から取得費、譲渡費用、一定の特別控除などを差し引いて譲渡所得を計算します。

ただし、相続した古い実家では、親が購入したときの契約書が見つからず、取得費を確認できないことがあります。

税額は個別事情によって大きく異なるため、売却前に確認する必要があります。

相続した空き家の3,000万円特別控除

一定の要件を満たす被相続人の居住用家屋やその敷地を売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。

2026年7月時点の国税庁公表情報では、対象となる譲渡期間は2016年4月1日から2027年12月31日までです。

また、2024年1月1日以後の譲渡で、対象となる家屋や敷地を取得した相続人が3人以上いる場合、控除限度額は1人当たり最高2,000万円とされています。

主な要件には、次のようなものがあります。

  • 相続または遺贈によって取得したこと
  • 被相続人が居住していた一定の家屋と敷地であること
  • 原則として1981年5月31日以前に建築された家屋であること
  • 区分所有建物ではないこと
  • 相続開始から売却まで事業、貸付け、居住などに使用していないこと
  • 一定の期限までに売却すること
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 家屋が一定の耐震基準を満たすか、一定の条件で耐震改修または取り壊しが行われること

相続開始の直前に被相続人が老人ホーム等へ入所していた場合でも、一定の要件を満たせば対象になる場合があります。

この特例は、相続した空き家を売れば自動的に適用されるものではありません。

相続後に誰かが住んだ、賃貸した、事業に使用した、売却期限を過ぎたなどの事情によって、適用できない可能性があります。

売却方法や解体時期によって要件への該当性が変わる場合もあるため、契約前に税務署または税理士へ確認することが重要です。

制度に合わせて不利な売却をしてはいけない

特別控除が使える可能性があっても、経済的に不利な売却方法を選ぶべきとは限りません。

例えば、特例を使うために200万円かけて解体しても、税額の減少が50万円しかないなら、全体としては不利になる可能性があります。

解体費200万円-税負担の減少50万円
=150万円の負担増加

制度の適用可否だけでなく、制度を利用した場合の実際の節税額と、必要になる工事費や手続費を比較する必要があります。

制度の適用条件や税額は、物件、所有者、相続人、売却方法によって異なります。実際の判断では、税務署、税理士、司法書士、不動産事業者、自治体などへ確認してください。

確認項目10 売れなかった場合の次の選択肢を考えているか

地方の空き家は、売り出せば必ず売れるとは限りません。

売却開始から1年、2年と経過しても、問い合わせがほとんどない可能性があります。

売却を始める前に、売れなかった場合の次の行動を決めておく必要があります。

売れない場合の主な選択肢

選択肢 利点 主な負担・リスク
価格を下げる 買い手が増える可能性 手取額が減る
買取を依頼する 比較的早く処分できる可能性 一般売却より価格が低い可能性
賃貸する 家賃収入の可能性 修繕、空室、管理
自分や家族が使う 売却を急がなくてよい 維持費、利用頻度
解体して土地を売る 土地需要を取り込める可能性 解体費、税負担
保有を続ける 将来の利用余地 管理費、劣化、将来処分
空き家バンクへ登録する 移住希望者へ情報提供できる可能性 自治体ごとに制度や条件が異なる

売れないときに毎年価格だけを下げる方法では、最終的な手取額が小さくなり、その間の維持費も増えます。

一定期間ごとに、売却方針を見直す基準を設定しておく方が現実的です。

売却方針を見直す時期を決める

例えば、次のように決めます。

  • 3か月で問い合わせ件数を確認する
  • 6か月で価格を再検討する
  • 1年で売却方法を変更する
  • 2年で買取、賃貸、解体を再比較する

価格変更は、「問い合わせがないから何となく50万円下げる」のではなく、反響状況を確認して判断します。

  • 閲覧数はあるが問い合わせがない
  • 問い合わせはあるが内見につながらない
  • 内見はあるが価格交渉で止まる
  • 建物状態が理由で断られる
  • 立地や接道が理由で断られる
  • 融資が通らず契約できない

原因によって、価格を下げるべきか、片付けるべきか、修繕すべきか、対象となる買い手を変えるべきかが異なります。

4つの売却方法をモデルケースで比較する

ここまでの条件を使い、4つの売却方法を比較します。

共通条件

  • 年間維持費:25万円
  • 家財処分費:50万円
  • 売却関連費用:比較を簡略化するため各案30万円と仮定
  • 税金:個別性が高いため比較表には含めない
  • 相続登記費用:各案共通のため比較表には含めない

比較結果

売却案 売却価格 売却期間 追加費用 概算差引額
現状のまま早期売却 250万円 6か月 約92万5,000円 約157万5,000円
300万円で売れるまで待つ 300万円 2年 130万円 170万円
80万円修繕して売却 330万円 1年 185万円 145万円
200万円で解体して売却 400万円 1年 305万円 95万円

追加費用の内訳は、次の考え方です。

追加費用
=家財処分費
+売却までの維持費
+修繕費または解体費
+売却関連費用

現状のまま早期売却

家財処分費50万円
+半年分の維持費12万5,000円
+売却関連費用30万円
=92万5,000円
250万円-92万5,000円
=157万5,000円

300万円で2年間待つ

家財処分費50万円
+2年間の維持費50万円
+売却関連費用30万円
=130万円
300万円-130万円
=170万円

80万円修繕して1年で売る

家財処分費50万円
+1年間の維持費25万円
+修繕費80万円
+売却関連費用30万円
=185万円
330万円-185万円
=145万円

200万円で解体して1年で売る

家財処分費50万円
+1年間の維持費25万円
+解体費200万円
+売却関連費用30万円
=305万円
400万円-305万円
=95万円

このモデルケースでは、最も高い価格で売れる解体案が、最も手取額の少ない案になりました。

一方、300万円で2年間待つ案は差引額が最も多いものの、早期売却との差は12万5,000円です。

170万円-157万5,000円
=12万5,000円

2年間にわたる管理の手間、建物劣化、相続人間の調整、価格下落リスクを考えると、12万5,000円の差を得るために2年間待つことが合理的とは限りません。

売却価格が最も高い案と、実質的に最も有利な案は一致しないことがあります。

判断が逆転する条件

今回の試算結果は、前提条件が変われば逆転します。

修繕によって売却期間が大幅に短くなる場合

80万円の修繕で売却価格が50万円上がるだけなら、修繕費を回収できません。

しかし、売却期間が3年から半年へ短縮され、維持費を62万5,000円削減できるなら、修繕の意味が出てきます。

売却価格上昇50万円
+維持費削減62万5,000円
=112万5,000円

修繕費80万円を上回るため、修繕案が有利になる可能性があります。

土地需要が高い場合

更地にすることで売却価格が大きく上昇し、短期間で売れる地域なら、解体費を回収できる可能性があります。

例えば、古家付きで250万円、更地で550万円、解体費200万円なら、単純な増加分は100万円です。

更地価格550万円
-古家付き価格250万円
-解体費200万円
=100万円

この条件では、解体案が有利になる可能性があります。

維持費が高い場合

遠方から毎月管理へ行き、交通費や宿泊費を含めて年間50万円かかるなら、売却を待つ不利益は大きくなります。

年間維持費50万円×2年
=100万円

50万円高く売るために2年間待っても、維持費だけで100万円かかるなら、早期売却の方が有利です。

家族が将来使う可能性が高い場合

数年後に子どもが住む、事業で利用する、二地域居住に使うなど、具体的な利用計画がある場合は、売却しない選択が合理的になることがあります。

ただし、「いつか使うかもしれない」という曖昧な予定だけで保有すると、管理費と老朽化が続きます。

利用予定には、時期、利用者、改修予算、管理担当者を設定する必要があります。

地方の実家売却で特に注意したい点

不動産会社の選択肢が少ない

都市部と比べて、地方では地域を扱う不動産会社が限られることがあります。

全国規模の会社より、地域の土地事情、移住需要、農地、山林、私道、浄化槽などを理解している地元事業者が適する場合もあります。

一社だけでなく、複数の事業者へ次の内容を確認すると比較しやすくなります。

  • 仲介で売る場合の価格
  • 買取価格
  • 想定する買い手
  • 売却までの期間
  • 修繕の必要性
  • 解体の必要性
  • 空き家バンクとの併用
  • 広告方法
  • 値下げの基準

土地と建物以外の物が多い

地方の実家では、住宅だけでなく、倉庫、物置、農機具、井戸、浄化槽、庭石、樹木、未登記建物などが存在することがあります。

売却後に撤去責任を巡って問題にならないよう、契約前に扱いを明確にする必要があります。

相続人が遠方に住んでいる

相続人が都市部など遠方に住んでいる場合は、交通費と時間負担が大きくなります。

1回の訪問費用が1万円、年6回訪問すれば6万円です。

3年間では18万円になります。

1万円×年6回×3年
=18万円

さらに、1回6時間かかるなら、3年間で108時間です。

6時間×年6回×3年
=108時間

遠方管理では、現金支出だけでなく、休日や仕事時間への影響も無視できません。

売却前チェックリスト

相続・登記

  • [ ] 登記上の所有者を確認した
  • [ ] 相続人を確定した
  • [ ] 遺言書の有無を確認した
  • [ ] 遺産分割協議が完了した
  • [ ] 相続登記を申請した
  • [ ] 相続人全員の売却意思を確認した
  • [ ] 売却代金の分配方法を決めた

土地・建物

  • [ ] 土地と建物の面積を確認した
  • [ ] 未登記建物の有無を確認した
  • [ ] 境界標を確認した
  • [ ] 接道条件を確認した
  • [ ] 再建築できるか確認した
  • [ ] 雨漏りや傾きを確認した
  • [ ] シロアリや腐朽を確認した
  • [ ] 浄化槽、井戸、給排水を確認した
  • [ ] 災害リスクを確認した
  • [ ] 家財や残置物の量を確認した

費用

  • [ ] 年間維持費を計算した
  • [ ] 家財処分費の見積りを取った
  • [ ] 修繕費の見積りを取った
  • [ ] 解体費の見積りを取った
  • [ ] 測量費の可能性を確認した
  • [ ] 仲介手数料などを確認した
  • [ ] 売却までの交通費を計算した
  • [ ] 税金の概算を確認した
  • [ ] 特例の適用可能性を確認した

売却方法

  • [ ] 複数の査定を比較した
  • [ ] 査定価格の根拠を確認した
  • [ ] 仲介と買取を比較した
  • [ ] 現状売却と修繕後売却を比較した
  • [ ] 古家付きと更地売却を比較した
  • [ ] 想定売却期間を確認した
  • [ ] 値下げする基準を決めた
  • [ ] 売れなかった場合の次の案を決めた

実家売却の判断手順

相続した実家を売る場合は、次の順番で整理すると判断しやすくなります。

第1段階 売却できる状態か確認する

最初に、相続人、登記、共有関係、境界、接道、再建築などを確認します。

この段階で権利関係に問題があれば、査定やリフォームより先に整理する必要があります。

第2段階 現状での売却条件を確認する

家財や建物を現状のままにした場合、いくらで、どのくらいの期間で売れそうかを確認します。

この価格を、比較の基準とします。

第3段階 追加費用による改善効果を比較する

修繕、家財処分、測量、解体などを行った場合に、売却価格と売却期間がどの程度改善するかを確認します。

追加投資の効果
=売却価格の上昇
+維持費の削減
-追加費用

この結果がプラスになる可能性が高ければ、追加投資を検討します。

第4段階 税金と手取額を確認する

売却価格から、取得費、譲渡費用、特別控除などを考慮し、税引後の手取額を確認します。

税制上の特例には期限と要件があるため、売買契約前の確認が重要です。

第5段階 売れなかった場合の期限を決める

「売れるまで待つ」ではなく、6か月後、1年後などに売却方針を再検討する時期を設定します。

期限を決めなければ、維持費を払いながら数年間放置する状態になりやすくなります。

まとめ

相続した実家を売るとき、最初に目に入るのは査定価格です。

しかし、査定価格が300万円でも、300万円がそのまま手元に残るわけではありません。

売却前には、次の10項目を確認する必要があります。

  1. 相続登記が完了しているか
  2. 相続人全員の意向が一致しているか
  3. 査定価格と成約価格を分けて考えているか
  4. 売却までの年間維持費を計算しているか
  5. 家財や残置物の処分費を見積もっているか
  6. 修繕して売るべきか、そのまま売るべきか
  7. 解体して更地にする方が有利か
  8. 境界、接道、再建築の条件を確認したか
  9. 税金の特例を利用できる可能性があるか
  10. 売れなかった場合の次の選択肢を考えているか

今回のモデルケースでは、300万円で2年間待って売る案と、250万円で半年以内に売る案の実質的な差は、12万5,000円でした。

高く売ること自体が目的になると、維持費、管理時間、建物劣化、価格下落などを見落とす可能性があります。

反対に、早く売ることだけを優先すると、本来得られたはずの売却代金を失うこともあります。

重要なのは、売却価格、売却期間、追加費用、税金、時間負担を同じ表の中で比較することです。

実家の売却は、思い出や家族関係も関わるため、金額だけで決められないこともあります。

それでも、金銭的な条件と非金銭的な条件を分けて整理すれば、相続人同士で話し合いやすくなります。

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詳しくは、空き家に関するサービス案内をご覧ください。

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