地域分析記事

地域の暮らしと地域課題を数学とデータで考える

人口減少率より年齢構成の変化を見た方が町の将来は分かるのか

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 町の人口について語るとき、私たちはまず「何人減ったのか」を見る。10年前には1万人いた町が9000人になれば、人口は1割減ったと説明できる。数字は明快であり、隣の自治体とも比較しやすい。しかし、その9000人がどのような9000人なのかというところまで踏み込まなければ、その町でこれから何が起こるのかは意外なほど見えてこない。

 たとえば、同じように人口が1割減った二つの町があったとする。一方では子どもや働く世代が大きく減り、高齢者の割合が急速に高まっている。もう一方では人口そのものは同じように減っているものの、30代や40代の子育て世帯が一定程度残り、あるいは町外から転入している。人口減少率だけを見れば二つの町はほとんど同じに見えるが、10年後に必要となる学校、交通、医療、介護、住宅、商店の姿はかなり違ったものになるだろう。

 人口減少率は、町がどのくらいの速さで小さくなっているのかを知るために重要な指標である。しかし年齢構成を見ると、人口減少という一つの数字の内部に隠れていた世代の厚さや薄さが現れ、町がこれからどの方向へ変わっていく可能性が高いのかまで見えてくる。したがって、人口減少率と年齢構成のどちらか一方を選ぶというより、人口減少率で町の縮小速度を測り、年齢構成によってその中身と時間軸を読むことが重要なのである。

人口は「人数」であると同時に「時間」でもある

 人口統計の興味深いところは、現在の数字の中に未来の一部がすでに含まれていることである。現在10歳の人は10年後には20歳になり、現在65歳の人は10年後には75歳になる。もちろん、その間には死亡や転出、転入があり、新しく子どもも生まれるため、現在の人口をそのまま未来へ移動させればよいわけではない。それでも、現在すでに存在している世代については、その人々が時間とともにどの年齢層へ移っていくかをある程度見通すことができる。

 実際、人口学で地域の将来人口を推計するときも、単純に「毎年何%減る」と仮定しているわけではない。年齢ごとの人口を時間とともに移動させながら、出生、死亡、転入、転出を組み合わせて将来を考える。そのため、町の将来を読むときには現在の人口総数だけでなく、どの年代にどれだけの人がいるのかを見る意味が大きい。

 現在50代後半から60代前半が厚く、30代から40代が薄い町なら、その大きな世代の塊は十数年後に70代へ移動する一方、その地域の労働や消費、子育てを担う世代は相対的に細くなる可能性がある。人口減少率が町の規模の変化を表す数字だとすれば、年齢構成は町の中を流れている時間そのものを映しているのである。

同じ1000人の減少でも意味はまったく違う

 人口1万人の町から1000人が減ったとしても、その1000人が誰だったのかによって町への影響は変わる。若い世代を中心に転出して1000人減ったのであれば、単に現在の住民が減るだけでは済まない。将来の出生数、住宅取得世帯、地域で働く人、地域消費を支える人まで減る可能性があり、現在の人口減少が次の人口減少につながる構造が生まれることもある。

 一方、高齢者を中心とする自然減によって1000人減った地域では、人口総数の減り方は同じでも現れる問題は異なる。医療や介護需要が将来的にピークを越える可能性がある一方で、住宅が空き家となり、空き地が増え、人口が減っても簡単には縮小できない道路や上下水道などのインフラを誰が負担するのかという問題が強まるかもしれない。

 つまり、人口減少には「どれだけ減ったか」という量の問題と、「誰が減ったのか」という構造の問題がある。さらに、その減少が出生数の減少や死亡による自然減なのか、転出と転入の差による社会減なのかによっても意味は変わる。人口減少率だけでは、この三つの違いを十分に捉えることはできない。

高齢化率だけを見ればよいわけでもない

 それなら人口減少率ではなく高齢化率を見ればよいのかというと、話はそれほど単純ではない。65歳以上の住民が40%を占める二つの町があったとしても、65歳から74歳が厚い町と、80歳以上が厚い町では地域に必要となるサービスが異なる可能性が高い。

 65歳になったからといって生活が急に変わるわけではなく、自家用車を運転しながら仕事や地域活動を続けている人も多い。一方で、年齢がさらに上がれば通院、買い物、移動支援、介護などへの需要が増える傾向がある。同じ「高齢者」という一つのカテゴリーにまとめてしまえば、人口減少率だけを見たときと同じように、人口構造の内部で起きている変化を見落としかねない。

 子どもの人口も同じである。0歳から14歳までを一まとめにして子どもの人口が減ったと把握するだけでは、これから保育需要が減るのか、小学校の児童数が急減するのか、中学校の統廃合が問題になるのかまでは分からない。そのため人口の将来を詳しく見る場合には、5歳程度の年齢階級に分けて世代の塊を追う方法が有効になる。

 細かな人口表は一見すると数字の羅列に見える。しかし、その数字を時間の方向へ並べ直すと、単なる統計表の中から町の過去と現在、そして未来へ続く流れが浮かび上がってくる。

年齢構成の変化は時間差を伴って町全体へ広がる

 人口構造の変化は、一つの分野だけに現れるわけではない。ある世代が小さくなれば、その影響は時間を置きながら保育、学校、労働、住宅、商業へと波及し、別の世代が高齢化すれば医療、介護、交通などへの需要が変化していく。

 ただし、その順番がどの町でも同じになるわけではない。すでに高齢化が進んだ町なら、学校の問題より先に医療や介護、地域交通が深刻になることもある。若者が少ない地域でも、周辺自治体から通勤者が入っていたり、外国人労働者によって人手不足が補われたりすれば、住民人口だけから想像するほど急速には地域産業が縮小しないこともある。

 重要なのは、人口構造の変化が地域のさまざまな機能へ同時かつ機械的に影響するのではなく、それぞれ異なる時間差と条件を伴って現れるということである。だからこそ年齢構成を見ることには意味がある。現在どの年代が厚く、どの年代が薄いのかを知れば、次にどの分野へ変化が現れやすいのかを考える材料になるからである。

 人口減少率が町の現在の速度を示す速度計だとすれば、年齢構成は道路の先にどのような地形が待っているのかを考えるための地図に近い。ただし、その地図だけで未来が決まるわけではなく、そこには人口移動や産業、政策という別の道も描き加える必要がある。

若者が少ない町と、若者が出ていく町は同じではない

 現在若者が少ないという事実だけを見ても、その町の将来はまだ十分には分からない。若者が少ない理由が、20年前から出生数が少なかったためなのか、18歳や22歳を境に進学や就職で若者が大量に町外へ出ていくためなのかでは、政策として考えるべき問題が違う。

 出生数の減少が主な原因なら、現在の人口構造そのものが長い時間をかけて形成されている。一方、若者の転出が中心なら、教育、雇用、住宅、交通、都市へのアクセスなどとの関係を考える必要がある。さらに、若者が町外へ出ていくこと自体が必ずしも問題とも限らない。進学などで一度町を離れても、30代や40代になって戻ってくる地域もあれば、反対に高齢者の転入によって人口が一定程度維持される地域もある。

 この違いを捉えるには、人口の年齢構成だけでなく転入と転出を合わせて見る必要がある。人口減少が自然減によるものなのか社会減によるものなのかを分けることで、人口という一つの数字の背後にある地域の性格が見えてくる。

「人口が減る町」と「機能が減る町」は同じではない

 人口減少について考えるとき、本当に重要なのは住民の人数だけではなく、その人口で町の生活機能を維持できるかどうかである。

 人口が8000人から7000人に減ったとしても、診療所、スーパー、学校、鉄道やバス、行政サービスが一定程度維持されていれば、住民の生活は人口減少率ほど急には変わらないかもしれない。しかし同じ7000人でも、高齢者が広い範囲に分散して暮らし、医療や商業施設まで遠く、公共交通も乏しい町なら、生活上の負担ははるかに大きくなる。

 ここで重要なのは、人口と地域サービスが比例して縮小するわけではないことである。人口が毎年1%減ったからといって、スーパーが毎年1%ずつ小さくなるわけではない。利用者数、人口密度、周辺地域からの来訪者、観光客、道路交通、競合店、経営者の年齢など、さまざまな条件によって営業が続くこともあれば、採算や担い手の条件を維持できなくなった時点で店舗そのものが撤退することもある。

 したがって、人口と生活サービスの関係には単純な比例では説明できない部分がある。人口が緩やかに減っているように見えても、ある時点でバス路線や商店、診療所などが失われれば、住民の生活環境は段階的ではなく大きく変化する。この違いを考えるときにも、人口総数だけではなく、誰がそのサービスを利用し、どのくらいの頻度で必要とするのかを年齢構成から読むことが重要になる。

町を支える側の年齢構成も変わっている

 年齢構成という言葉から、多くの人は住民の高齢化を思い浮かべる。しかし、地域の将来を決めるのはサービスを利用する住民だけではない。医師、看護師、介護職員、バスやタクシーの運転手、自治体職員、建設業者、商店主など、町の生活を支える側にも年齢構成が存在する。

 住民人口がそれほど急速に減っていなくても、地域の診療所を長年支えてきた医師に後継者がいなければ医療サービスは失われる可能性がある。バスの利用者が一定数残っていても運転手が確保できなければ路線維持は難しくなり、水道や道路を維持する技術者が不足すれば人口とは別の理由からインフラ管理が難しくなる。

 人口減少社会とは、単に地域サービスを利用する人が減る社会ではない。そのサービスを供給する人も同時に減少し、高齢化していく社会である。この問題を分析するには、住民の年齢構成だけでは足りず、産業別の就業者数、職業別の年齢、事業所数なども合わせて見る必要がある。

 ここまで来ると、町の将来を一つの人口指標だけで説明することが難しい理由が分かってくる。

年齢構成も未来を確定する数字ではない

 年齢構成を見ると町の将来を考えやすくなるが、それでも未来を正確に予言できるわけではない。特に人口の少ない自治体では、数十世帯の転入や転出によって年代別人口の構成が大きく変わることがあり、大規模な企業立地、住宅開発、学校開設、交通環境の変化などが人口移動を変える場合もある。

 さらに、同じ人口構成を持つ町でも人口密度が違えば生活環境は異なる。5000人が狭い市街地に集中して暮らしている町と、同じ5000人が山間部や沿岸部に広く分散している町では、病院、買い物、公共交通、上下水道、行政サービスを維持するコストは同じではない。

 そのため、町の将来を分析するなら、人口減少率と年齢構成に加えて、出生と死亡、転入と転出、人口密度、就業構造、産業、交通、医療や商業施設の配置まで見ていく必要がある。人口統計は未来を決める答えではなく、未来について何を調べるべきかを教える入口なのである。

それでも人口減少率を見る意味はなくならない

 人口減少率より年齢構成を見た方が町の将来は分かるのかという問いに対して、「だから人口減少率には意味がない」と答えるのは正しくない。

 人口減少率は、町の規模がどの程度の速さで縮小しているのかを把握するうえで依然として重要である。人口が急速に減れば、税収、住宅需要、商業規模、公共施設利用者数などさまざまな分野に影響が及ぶ。人口が長期にわたって減少している自治体と、人口がほぼ横ばいの自治体を同じ条件で考えることもできない。

 問題なのは、人口減少率という一つの数字を、そのまま町の将来だと思ってしまうことである。

 年間1%ずつ人口が減っている町があったとして、その1%の中で子どもが減っているのか、働く世代が転出しているのか、それとも高齢者の自然減が大きくなっているのかによって意味はまったく違う。さらに人口がどこに住んでいるのか、どのような仕事をしているのか、地域サービスを誰が提供しているのかまで加われば、同じ人口減少率を持つ町でも将来像は大きく異なる。

町の将来を見る視点を「何人いるか」から「誰が、どこに、どう暮らしているか」へ

 これまで地域の将来は、人口が増えるのか減るのかという尺度で語られることが多かった。人口増加は発展であり、人口減少は衰退であるという構図は分かりやすい。しかし人口減少が多くの地域にとって一時的な異常ではなく長期的な前提になるなら、これから重要になるのは人口を増減だけで評価することではなく、残る人口によってどのような生活と地域機能を維持できるのかを考えることである。

 そのためには、5年後に何人の小学生がいるのか、10年後にどの年代が地域で働いているのか、15年後にはどの世代が医療や介護を多く必要とするのか、そのとき医療や介護を提供する人は残っているのか、車を運転できない住民が増えたときにスーパーや病院まで行く手段は確保されているのか、といった問いを一つずつ重ねていかなければならない。

 こうした問いは人口減少率という一つの数字だけからは出てこない。年齢構成を見ることで町に流れている時間が見え、出生と死亡、転入と転出を見ることでその流れが生まれた理由が見え、人口密度や交通、産業、施設配置を重ねることで、その変化が暮らしにどのような影響を与えるのかが見えてくる。

 人口減少率は町がどのくらいの速さで小さくなっているのかを知らせてくれる。しかし、年齢構成はその小さくなっていく町の中で誰が残り、その人々がこれからどのような年齢を迎えるのかを語っている。

 だから町の将来を知りたいのであれば、「人口が何%減ったか」で分析を終えてはいけない。その数字を入口にして、「誰が減ったのか」「誰が残っているのか」「誰が入ってきているのか」、そして「その人々が10年後にどのような暮らしを必要とするのか」まで見ていく必要がある。

 人口減少率から見えるのは、町が歩いてきた軌跡と現在の縮小速度である。年齢構成から見えるのは、その町を構成している世代がこれから進んでいく時間の方向である。そして町の本当の未来は、その二つに人口移動、産業、交通、医療、住宅などを重ね合わせたところに、ようやく姿を現すのである。

地域の課題を、自分の判断に置き換えて考える

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