地域分析記事

地域の暮らしと地域課題を数学とデータで考える

地方でスーパーが閉店したというニュースを見ても、それだけで地域から食料が消えるわけではない。車を運転できる人であれば隣町のスーパーへ行けるし、家族に買ってきてもらうこともできる。移動販売車が巡回している地域もあれば、宅配サービスを利用できる地域もある。

そのため、スーパーの撤退は一見すると「店が一つ減った」という問題に見える。

しかし、人口減少がさらに進んだ30年後まで視野を広げると、問題の性質はかなり違ってくる。問われるのはスーパーが存在するかどうかではない。人口が減り続ける地域で、食品を住民のところまで運ぶ仕組みそのものを維持できるのかという問題だからである。

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口」は、2020年を基準として2050年までの市区町村別人口を推計している。つまり、現在から見ればすでに「約30年後の地方」がかなり具体的に見え始めている。人口減少は全国一律ではなく、地方の小規模自治体ほど大きな人口減少に直面する地域が少なくない。

この人口減少は、買い物環境に二重の影響を与える。

一つは、利用者が減ることである。

スーパーを維持するためには一定数の客が必要になる。人口が1万人の地域と3,000人の地域では、同じ規模の店舗を維持する難易度がまったく違う。さらに人口が減るだけではなく、高齢化によって一人当たりの購買量も変化する可能性がある。若い家族世帯が多い地域では肉、魚、飲料、日用品などをまとめて購入する世帯が多いが、高齢者の単身世帯や夫婦世帯では購入量そのものが小さくなりやすい。

店舗側から見ると、「人口減少」と「一世帯当たり購買量の縮小」が同時に起きる可能性がある。

すると店舗の売上が減り、固定費を支えられなくなる。最初に大型店が撤退し、その後、小型スーパーや商店も維持できなくなるという現象が起こり得る。

もう一つは、商品を運ぶ側も減ることである。

スーパーがなくなれば宅配を利用すればよい、と考えることはできる。しかし、宅配も商品が自動的に家まで移動してくるわけではない。倉庫から地域までトラックが走り、さらに各家庭まで商品を届ける人が必要になる。

現在すでに物流では運転手不足が問題になっている。国土交通省も、過疎地域では貨物量の減少や積載効率の低下によって、物流サービスを持続的に提供することが困難になる可能性を指摘している。2025年にまとめられたラストマイル配送に関する提言でも、人口の少ない地域で配送を維持すること自体が政策課題として扱われている。

ここに、将来の買い物問題の難しさがある。

人口が減ればスーパーが成立しにくくなる。しかしスーパーがなくなったから宅配へ移行しようとしても、その宅配も人口密度が低くなるほど効率が悪くなる。

例えば100軒の住宅へ商品を届ける場合を考えてみよう。

住宅が半径1キロメートル程度に集中していれば、一台の配送車で短時間に多くの家庭を回ることができる。しかし同じ100軒が山間部や海岸部に10キロメートル、20キロメートルと分散していれば、一軒当たりの配送距離は長くなる。

配送事業者から見れば、

人口密度の低下=一件の商品を届けるために必要な移動距離の増加

である。

単純化すれば、配送の採算性は、

配送収入 ÷ 配送に必要な時間・距離・人件費

によって決まる。

人口密度が下がれば分母が大きくなり、配送の採算は悪化する。

つまり地方の買い物問題は、小売業だけの問題ではない。人口密度と物流密度の問題なのである。

「ネットスーパーがあるから大丈夫」とは限らない

30年後には現在よりデジタル技術が進歩している可能性が高い。そのため、店舗へ行くのではなくスマートフォンや音声端末から商品を注文する生活は、現在以上に一般的になっているだろう。

しかし、注文方法がデジタル化しても、最後には米、野菜、肉、牛乳、飲料水を物理的に運ばなければならない。

インターネットは注文を運ぶことはできても、牛乳を運ぶことはできない。

この違いは非常に重要である。

電子商取引が発達すれば「買う場所」はなくせる。しかし「運ぶ工程」はなくならない。

しかも食品には一般の商品とは異なる制約がある。冷蔵品、冷凍品、生鮮食品には温度管理が必要であり、保存できる期間も短い。書籍や衣類であれば数日まとめて配送することが可能でも、食品では同じ方法が常に使えるわけではない。

したがって30年後の地方では、ネットスーパーが店舗を完全に代替するというより、物流インフラと一体化した新しい買い物システムへ変化していく可能性が高い。

移動販売車も万能ではない

スーパーが撤退した地域で現在よく利用されている方法の一つが移動販売である。

経済産業省も買物困難者対策として、移動販売、宅配、買い物代行、店舗への送迎など、さまざまな取り組みを紹介している。実際に移動販売は、自動車を運転できない高齢者にとって重要な生活インフラになっている地域がある。

ただし、移動販売にもスーパーと同じ問題がある。

客が減れば採算が悪くなる。

仮に一つの集落に50人の利用者がいれば販売車を走らせる意味があっても、10人、5人と減っていけば、一人の利用者のために走行する距離が長くなる。

さらに移動販売車を運転し、商品を積み込み、販売する人も必要である。

したがって人口減少が極端に進んだ地域では、「店が維持できないから移動販売にする」というだけでは問題は解決しない。

店舗、移動販売、宅配は形こそ違うが、すべて、

一定数の利用者が一定範囲に存在すること

を前提としているからである。

本当に深刻なのは「運転できなくなったとき」

地方では、自動車を持っている間は買い物問題が表面化しにくい。

スーパーまで10キロメートル離れていても、自動車なら15分程度で行けるかもしれない。そのため店舗が減少していても、多くの住民は日常生活を続けることができる。

ところが高齢になると状況が変わる。

視力、判断力、身体能力が低下し、運転をやめる時期が来る。

その瞬間、それまで10キロメートルだったスーパーまでの距離が、生活上はほとんど越えられない距離になることがある。

地方の買い物問題で重要なのは、「スーパーまで何キロメートルあるか」だけではない。

自動車を使わずにスーパーまで行けるか

である。

ここまで考えると、スーパー撤退問題は交通問題ともつながってくる。

バスがあれば店舗へ行ける。しかし人口が減れば路線バスも採算が悪化する。タクシーを利用する方法もあるが、年金生活者が毎回数千円の交通費を負担することは現実的ではない。

店舗、物流、公共交通は別々の問題に見えて、実際には同じ人口密度の低下によって同時に弱くなっていく可能性がある。

30年後に残るのは「スーパー」ではなく「買い物機能」かもしれない

では、人口が大きく減った地域では買い物ができなくなるのだろうか。

必ずそうなるわけではない。

ただし現在と同じスーパーをそのまま残すことだけを目標にするのは、人口が大幅に減少する地域では現実的ではないだろう。

必要なのは、スーパーという「施設」を守る発想から、住民が食品を手に入れられる「機能」を守る発想への転換である。

例えば地域の中心部に小規模な物流拠点を置き、そこへ複数のスーパーや卸売事業者の商品をまとめて運ぶ。その先を移動販売、共同配送、福祉車両、公共交通などが担う仕組みである。

現在は別々に走っている車両を統合することも考えられる。

宅配便の車、スーパーの商品配送車、移動販売車、介護関連車両、自治体の車両が、それぞれ少量の荷物や人を運んでいるのであれば、地域全体として輸送を最適化する余地がある。

国土交通省も、物流の担い手不足への対応として共同輸配送や事業者間の協業などを課題として挙げている。

これは単なる効率化ではない。

人口が少なくなる地域では、一つの事業だけで採算を取ることが難しくなるため、複数の生活サービスを一つの物流網に載せる必要が出てくるのである。

週7日いつでも買える社会から「曜日で届く社会」へ

もう一つ、大きく変わる可能性があるのがサービス水準である。

現在の都市生活では、欲しい商品を欲しい日に購入できることが当然になっている。

しかし人口密度が極端に低い地域で、このサービス水準をそのまま維持するには高いコストがかかる。

そこで30年後には、

月曜日はA地区、火曜日はB地区、水曜日はC地区というように配送日を集約したり、住民があらかじめ注文した商品を週に数回まとめて届けたりする仕組みが増えるかもしれない。

これはサービスの後退に見える。

しかし毎日配送して赤字になり、最終的に撤退してしまうより、週2回でも確実に商品が届く仕組みを維持する方が生活インフラとしては安定している。

地方では今後、

利便性の最大化より、持続可能性の最大化

が重要になる可能性がある。

買い物問題は福祉政策だけでは解決できない

高齢者の買い物問題は、しばしば福祉の問題として語られる。

しかし実態はそれほど単純ではない。

スーパーは商業政策、配送は物流政策、移動手段は交通政策、高齢者支援は福祉政策、人口分布は都市計画や住宅政策に関係する。

つまり一人の高齢者が夕食の食材を買えるかどうかという問題の背後には、複数の社会システムが存在している。

そのため自治体が「高齢者向け買い物支援事業」を一つ始めただけでは、長期的な解決にならない可能性がある。

特に30年間という時間で考えれば、現在70歳の住民を支援するだけでは不十分である。

その地域に2040年、2050年に何人が住み、どこに居住し、何人が自動車を運転でき、どの程度の配送需要が存在するのかを予測したうえで、商業、交通、福祉、物流を一つの生活インフラとして設計する必要がある。

人口が減るほど「住む場所」そのものが重要になる

そして最終的には、さらに難しい問題に行き着く。

人口が減少しても、住宅が広い範囲に散らばったままであれば、一人当たりのインフラ維持費は高くなる。

道路、水道、電気、通信、医療、介護、公共交通、そして食品配送まで、すべて同じ問題を抱える。

人口1,000人が半径2キロメートルに暮らしている地域と、同じ1,000人が半径20キロメートルに散らばっている地域では、生活サービスを維持するコストは大きく違う。

だからスーパー撤退問題を突き詰めると、最後には、

人口減少時代に人はどのように集まって暮らすのか

という地域構造の問題になる。

すべての集落にスーパーを置くことはできなくても、生活拠点となる地域に食品、医療、行政、交通などの機能を集約し、周辺集落との移動手段を確保することはできるかもしれない。

一方で、居住地が極端に分散した状態を維持しながら、現在と同じサービスを将来も提供し続けることには限界がある。

30年後、高齢者は買い物できるのか

結論として、スーパーがなくなった地域でも、30年後に高齢者が買い物を続けることは不可能ではない。

しかし、それは現在のスーパーの代わりに移動販売車を一台走らせれば解決する、というほど簡単な話でもない。

人口が減れば店舗の客が減る。

客が減れば店舗が撤退する。

店舗がなくなれば宅配需要が増える。

ところが人口密度が下がれば配送効率も悪化する。

高齢化が進めば自動車を運転できない人が増え、公共交通も人口減少によって維持が難しくなる。

つまり、スーパー撤退は問題の始まりにすぎない。

30年後の地方で問われるのは「スーパーを残せるか」ではなく、人口が減っても食品を住民の手元まで運び続けられる地域構造を作れるかである。

そのためには、店舗、宅配、移動販売、公共交通、福祉を別々に考えるのではなく、一つの地域物流システムとして組み直す必要がある。

人口減少社会では、すべての地域に現在と同じ便利さを残すことは難しいだろう。

しかし、便利さを少し下げる代わりに、買い物できる仕組みそのものを残すことはできる。

地方にとって本当に危険なのは、スーパーが一軒なくなることではない。

スーパーがなくなってから代替手段を考え始めることである。

人口が減ることがかなり高い確度で分かっているのであれば、30年後の買い物問題は30年後に考える問題ではない。

現在の人口と店舗数を見るだけではなく、2040年、2050年に誰が、どこに住み、どのように食料を受け取るのか。

そこから逆算して地域の商業と物流を設計することが、いま必要になっている。

地域の課題を、自分の判断に置き換えて考える

有限会社アードレでは、住まい・車・移住などの大きな選択を、 費用や将来条件をもとに数字で比較し、判断できる形に整理しています。

数字で比較するサービスを見る

郵便・宅配は人口減少地域でも維持できるのか

人口が減少する地方では、鉄道、路線バス、水道、医療、介護など、さまざまな生活サービスの維持が問題になります。

そのなかで、普段はあまり意識されないものの、生活に大きな影響を与えるのが郵便と宅配です。

現在は、山間部でも海沿いの集落でも、手紙や荷物は基本的に自宅まで届けられます。インターネットで商品を注文すれば、都市部と大きく変わらない感覚で宅配便を利用できる地域も少なくありません。

しかし、この仕組みは人口が減っても自然に維持されるのでしょうか。

問題を考えるときに重要なのは、単純な人口の減少ではありません。

荷物を届けなければならない地域の面積は変わらないのに、同じ地域で受け取る人だけが減っていく

という構造です。

人口密度が低下するほど、一つの郵便物や荷物を届けるために必要な走行距離や時間は相対的に増えます。しかも、配送を担う人材そのものも減少していきます。

地方の郵便・宅配をめぐる問題は、すでに「将来起きるかもしれない問題」ではなく、現在の物流政策で持続可能性が議論される段階に入っています。国土交通省も、過疎地域では貨物量の減少と積載効率の低下によって物流サービスの持続的な提供が困難になることを課題として明示しています。

人口が半分になっても、配達区域は半分にならない

地方物流の構造を理解するには、簡単な例を考えると分かりやすくなります。

面積100平方キロメートル、人口1万人の地域があり、毎日1000個の郵便物や荷物を配達していたとします。

30年後、人口が5000人に減り、配達物も500個まで減ったとします。

荷物の個数だけを見れば、仕事量は半分です。

しかし、配達区域の面積は100平方キロメートルのままです。

道路もそのまま残り、山間部の住宅にも、集落の端にある住宅にも配送しなければなりません。

人口を (P)、地域面積を (A) とすれば、人口密度 (D) は、

[ D=\frac{P}{A} ]

で表せます。

人口だけが半分になれば、

[ D'=\frac{0.5P}{A}=0.5D ]

となります。

つまり、平均的に見れば、一軒と次の一軒との距離は広がっていきます。

物流にとって重要なのは荷物の総数だけではなく、一個届けるために何キロメートル走らなければならないかです。

国土交通省が過去に示した物流事業者の実績例では、荷物一個当たりのトラック走行距離が、過疎地域では都市部の平均約6倍、条件によっては最大約7倍になるケースが確認されています。

これは地方物流の本質的な問題です。

都市では一つのマンションに数十個の荷物を届けられます。

地方では数キロメートル走って一軒に一個届け、その次の家まで再び走ることがあります。

同じ「100個の荷物を届ける」という仕事でも、必要な時間と燃料、人件費は同じではありません。

郵便と宅配は似ているようで、仕組みが違う

ここで郵便と宅配を分けて考える必要があります。

宅配便は基本的には民間の商業サービスです。

一方、郵便には全国的な郵便ネットワークを維持するという公共サービスとしての性格があります。

日本郵政グループは全国約2万4000の郵便局ネットワークを持っています。

この全国ネットワークがあるため、都市部だけでなく人口の少ない地域でも郵便サービスを利用できます。

しかし、その維持が以前より容易になっているわけではありません。

日本郵政自身が2026年の経営計画で、郵便物数の大幅な減少や郵便局窓口の利用者減少によって、郵便・郵便局ネットワークによる持続可能なユニバーサルサービスの提供が課題になっていると説明しています。

つまり、「郵便だから将来も現在と全く同じ形で維持される」と考えることもできません。

全国的なサービスを維持するという原則と、そのサービスをどのような頻度、料金、方法で提供するのかは別の問題だからです。

郵便物は減っているが、宅配荷物は簡単には減らない

さらに難しいのは、郵便物と宅配便では需要の変化が逆方向に動いていることです。

日本郵便によると、2024年度の郵便物・荷物などの総引受物数は約169億通・個で、前年度から3.2%減少しました。

手紙、請求書、通知書などは電子化が進み、従来型の郵便物は長期的に減少する方向にあります。

一方で宅配便は、EC(Electronic Commerce・電子商取引)の普及によって大きな物流需要を抱えています。

国土交通省によれば、2024年度の宅配便取扱個数は約50億個に達しています。物販系のEC市場も15兆円を超える規模となっています。

これは地方にとって重要です。

人口減少地域では実店舗が減る可能性があります。

スーパー、衣料品店、家電店、書店、ホームセンターなどが撤退すれば、住民はインターネット通販への依存度を高める可能性があります。

その結果、

人口が減少しているのに、一人当たりの宅配需要は増える

という現象も起こり得ます。

地域人口だけを見て「人口が半分なら荷物も半分になる」と推定すると、将来の物流需要を過小評価する可能性があります。

店舗がなくなるほど、宅配の重要性は高くなる

人口減少地域では、物流は単なる便利なサービスではなくなります。

例えば、地域にスーパーがある間は、高齢者でも家族に送迎してもらったり、自家用車で買い物に行ったりできます。

しかし店舗が撤退した場合、日用品や食品を入手する方法そのものが変わります。

そこで宅配が生活インフラになります。

薬、衛生用品、介護用品、衣類、食品、家電製品などが自宅に届くことには、都市部以上の意味があります。

したがって地方では、

配送効率が最も悪くなる地域ほど、宅配の社会的重要性が高くなる

という矛盾が生じます。

市場原理だけで考えると、配送コストが高い地域ほどサービス縮小の対象になりやすくなります。

しかし生活インフラという視点で考えれば、そうした地域ほど配送サービスを維持する必要性があります。

ここに、地方物流の難しさがあります。

最大の制約は「荷物」ではなく「人」になる可能性がある

物流問題では燃料価格や車両コストも重要ですが、中長期的には配送する人を確保できるかが大きな問題になります。

トラック運転者の時間外労働規制などを背景として、物流業界では輸送能力不足への対応が進められています。

国土交通省が示してきた試算では、対策を講じなければ2030年度に輸送能力が約34%不足する可能性があるとされています。

この数字を「2030年に荷物の34%が必ず届かなくなる」という意味に理解するのは適切ではありません。

料金、配送方法、共同配送、効率化、労働生産性などが変われば需給は調整されるからです。

しかし、少なくとも現在と同じ方法で、現在と同じ量の物流を、現在と同じ人数で処理し続けることが難しいという方向性は明確です。

特に人口減少地域では、配送需要の減少と同時に、配送員となる生産年齢人口も減ります。

そのため、

「荷物が少なくなったから配送員も少なくてよい」

とは単純にはなりません。

荷物が減っても配達距離は残るからです。

再配達は地方物流ではさらに大きな負担になる

物流効率を考えるとき、再配達も無視できません。

2025年10月の宅配便再配達率は全国で約8.3%でした。以前より低下しているものの、依然として一定量の再配達が発生しています。

都市部であれば、一度不在だった住宅の近くに別の配達先が多数存在します。

しかし人口密度の低い地域では、一軒の再配達のために数キロメートル余分に走ることもあります。

仮に一軒の再配達に追加で往復6キロメートル必要で、それが一日に10件発生すれば、60キロメートルの追加走行です。

人口密度が低い地域では、再配達率をわずか数%下げるだけでも配送効率に与える影響が大きくなります。

このため国土交通省も、宅配ボックス、置き配、コンビニ受取など、多様な受取方法を推進しています。

地方ではこれらを単なる利便性向上ではなく、物流網を維持するための手段として考える必要があります。

将来は「家まで毎回来る」ことが当たり前ではなくなる可能性がある

人口減少がさらに進めば、物流サービスそのものが消えるというより、配送方法が変わる可能性の方が高いと考えられます。

例えば、複数の宅配会社が別々の車で同じ集落を回る現在の方法は、人口密度が低下するほど非効率になります。

A社が一個、B社が一個、日本郵便が一個の荷物を持って、同じ日に同じ山間集落へ向かうのであれば、三台の車が同じ道路を走ることになります。

将来は地域の配送拠点まで各社が荷物を運び、そこから先は一つの事業者がまとめて配送する共同配送が合理的になる可能性があります。

国土交通省も、人口減少地域の物流について、事業者間の連携や地域物流の共同化などを検討してきました。

つまり、

「どの会社で注文しても最後に運んでくる車は同じ」

という地域が増えても不思議ではありません。

利用者にとって重要なのは、配送会社の境界ではなく、荷物が確実に届くことだからです。

集落ごとの共同受取拠点という方法もある

さらに人口密度が下がれば、すべての荷物を一軒ずつ玄関まで届ける仕組みそのものを見直す地域も出てくる可能性があります。

例えば郵便局、道の駅、スーパー、コンビニエンスストア、公民館などを地域物流拠点として利用し、そこに荷物をまとめて届ける方法です。

利用者が自分で受け取りに行ける場合は拠点受取を使い、高齢者や移動困難者には自宅まで配送するという仕組みも考えられます。

これは一律のサービスを全員に提供する方法から、

必要度に応じて配送方法を変える仕組み

への転換です。

特に地方では、すでに医療、介護、買い物支援、移動販売などが別々に地域を回っています。

郵便、宅配、買い物支援、見守りなどを完全に別々の事業として維持するより、一部の機能を統合した方が地域全体の効率は高くなる可能性があります。

ドローンがすべてを解決するわけではない

人口減少地域の物流というと、ドローン配送が解決策として語られることがあります。

確かに山間部、離島、道路条件の悪い地域では、無人航空機による配送が有効な場合があります。国土交通省も過疎地域の物流効率化策の一つとしてドローン活用を検討してきました。

しかし、ドローンが普通の配送車を全面的に置き換えると考えるのは現実的ではありません。

重量物、大型商品、多数の荷物、悪天候、離着陸地点、安全管理、運航コストなどの制約があります。

むしろドローンは、

通常の配送車では非効率になる最後の数キロメートル、

離島、

山間部、

緊急性の高い小型物資

などで有効になる可能性があります。

将来の地方物流は、一つの技術ですべてを解決するのではなく、トラック、軽貨物車、共同配送、宅配ボックス、地域拠点、場合によってはドローンを組み合わせる形になると考えた方が合理的です。

問題は「届くか」ではなく「今と同じ条件で届くか」

人口減少地域の郵便・宅配について考えるとき、「将来も荷物は届くのか」という問いだけでは十分ではありません。

より重要なのは、

今と同じ料金で届くのか。

今と同じ曜日に届くのか。

今と同じ翌日・翌々日という速度で届くのか。

今と同じように玄関まで届けてもらえるのか。

というサービス水準の問題です。

物流サービスを完全になくすことは社会的に難しくても、配送頻度、料金体系、受取方法、配送日数が変わる可能性はあります。

例えば、毎日配達していた地域を曜日別配送にするだけでも、車両一台当たりの荷物密度を高められます。

一日に50個しかない荷物を毎日配るより、二日分をまとめて100個配る方が、一個当たりの配送コストは低下します。

物流の持続可能性を考えれば、このようなサービス水準の調整は十分起こり得ます。

物流は人口ではなく「密度」で考える必要がある

地方政策では人口何万人という数字がよく使われます。

しかし物流を考えるとき、総人口だけでは重要なことが分かりません。

同じ人口1万人でも、10平方キロメートルに集中して住んでいる地域と、300平方キロメートルに分散して住んでいる地域では配送効率が全く違います。

物流サービスを考えるうえでは、

[ 物流効率 \approx \frac{荷物数}{走行距離\times配送時間} ]

という考え方ができます。

同じ荷物数でも走行距離が増えれば効率は低下します。

人口減少によって荷物数が減り、さらに住宅間距離が広がれば、効率は二重に悪化します。

そのため、30年後の地方物流を予測するときには人口減少率だけを見るのではなく、

人口密度、

集落配置、

高齢化率、

宅配便利用量、

商業店舗の分布、

道路網、

物流拠点までの距離

などを重ねて見る必要があります。

30年後も郵便・宅配は残る可能性が高い。しかし形は変わる

郵便も宅配も、地方生活に不可欠なインフラです。

特に実店舗が減る地域では、その重要性は現在より高くなる可能性があります。

したがって、人口が減ったからといって郵便や宅配そのものが地方から消えると考える必要はありません。

一方で、

今と同じ会社が、今と同じ人数で、今と同じ頻度で、今と同じ料金体系で、一軒ずつ玄関まで届け続ける

という仕組みまで30年後も維持されると考えるのは楽観的です。

日本郵政自身が郵便物数や窓口利用者の減少を背景としてユニバーサルサービスの持続性を経営課題として掲げ、国土交通省も過疎地域のラストマイル配送の持続可能性を政策課題として扱っています。

将来必要になるのは、配送サービスを廃止することではなく、配送の仕組みを組み替えることです。

共同配送、置き配、宅配ボックス、地域受取拠点、郵便局の物流拠点化、地域事業者との連携、そして条件によってはドローンなどを組み合わせ、一人の配送員が一日に届けられる荷物数を維持する必要があります。

人口減少社会で問われるのは、「郵便や宅配を残すか、なくすか」ではありません。

人口密度が低下しても、必要な物流をどのような形なら維持できるのか。

それを地域ごとに設計することです。

これまで地方物流は、人口が多かった時代に作られた仕組みを縮小しながら使ってきました。

しかし人口減少が本格化するこれからは、単なる縮小では対応できなくなる可能性があります。

郵便・宅配の将来は、荷物を運ぶ会社だけの問題ではありません。

スーパーや商店が減り、高齢者が増え、自家用車を運転できない住民が増える地域では、物流網そのものが生活を維持する最後のインフラになるからです。

人口が減っても道路の距離は短くなりません。

家と家の距離も縮まりません。

だからこそ地方では、人口減少そのものよりも、「薄くなった人口をどのように物流で支えるか」という問題が、今後ますます重要になっていくのです。

地域の課題を、自分の判断に置き換えて考える

有限会社アードレでは、住まい・車・移住などの大きな選択を、 費用や将来条件をもとに数字で比較し、判断できる形に整理しています。

数字で比較するサービスを見る

地方のスーパーが閉店すると、「ネットスーパーを利用すればよい」「移動販売が来ればよい」「車で隣町まで行けばよい」と考えられがちです。

しかし、実際の生活はそれほど単純ではありません。

食料品の買い物には、

店舗まで移動できること 商品を選べること 価格を負担できること 商品を持ち帰れること 注文や支払いができること 必要な日に商品を入手できること

まで含まれます。

スーパーが一軒なくなっても、別の方法でこれらの条件を満たせれば生活は続けられます。

反対に、ネットスーパーや移動販売というサービスが存在していても、利用できる曜日、配達区域、商品数、料金、予約方法などが生活条件に合わなければ、「買い物できる地域」とは言い切れません。

この記事では、御宿町、勝浦市、いすみ市など外房地域を中心に、スーパー撤退後の買い物を、移動販売、宅配、公共交通、自家用車、家族送迎などに分解して考えます。

最初に結論~問題は「スーパーがあるか」だけではない

結論からいえば、人口減少地域でスーパーが減った場合でも、買い物を続ける方法はあります。

しかし、

一つの代替手段だけで、スーパーが担っていた機能を完全に置き換えることは難しい

と考えた方が現実的です。

移動販売には移動しなくても商品を選べる利点があります。

宅配には重い商品を運ばなくてよい利点があります。

公共交通があれば店舗まで移動できます。

自動車なら時間や購入量の自由度が高くなります。

ところが、それぞれに弱点があります。

したがって人口減少地域で重要なのは、

「スーパーを一軒残せるか」

だけではなく、

住民が複数の方法を組み合わせて、生鮮食品や日用品を継続的に入手できる仕組みを残せるか

という問題です。

この記事では、この状態を分析するため、

買い物可能性 =店舗への移動可能性 +宅配利用可能性 +商品の選択可能性 +価格負担可能性 +注文・支払可能性

として考えます。

これは公式の指標ではなく、買い物環境を整理するための概念的な式です。

外房では自動車を使えるかどうかが大きい

外房の買い物問題を考えるうえで、最も重要な要素の一つが自動車です。

千葉県が高齢者について整理した資料では、地方部で日常の買い物に「自動車・バイクを自分で運転する」と回答した割合は59.9%、「家族・近所の車に同乗、送迎」が19.7%でした。

合わせると約8割に達します。

一方、バスは3.4%、電車は1.4%でした。これは外房だけの数字ではありませんが、千葉県地方部の買い物が自動車に強く依存していることを示しています。

つまり地方の買い物問題には、

スーパーまで何kmあるか

だけではなく、

その人が運転できるか

という条件が大きく影響します。

現在は問題なく10km先のスーパーへ行ける人でも、免許返納、病気、視力低下、身体機能の低下などによって運転できなくなれば、同じ家に住み続けていても買い物環境は突然変わります。

したがって、

自動車を所有している =将来も買い物に困らない

とは限りません。

外房では高齢化を無視できない

この問題が外房で重要なのは、高齢化がすでに進んでいるからです。

千葉県の2025年度の年齢別人口資料では、市町村別平均年齢が最も高いのは御宿町の61.1歳でした。勝浦市も58.2歳で県内でも高い水準です。

御宿町の2026年7月31日現在の人口は6,609人、3,631世帯です。

勝浦市は2026年6月末現在で人口14,678人、7,976世帯です。

さらに国立社会保障・人口問題研究所の2023年推計では、2020年から2050年にかけて、勝浦市の人口は16,927人から8,815人、いすみ市は35,544人から20,218人へ減少すると推計されています。

御宿町は6,874人から4,381人という推計です。いずれも2020年国勢調査を基準とした将来推計であり、実績値ではありません。

人口が減れば、小売店の商圏人口も小さくなります。

しかし問題は、

人口が半分になる =食料を買う必要性も半分になる

ということではありません。

一人一人には引き続き食料が必要です。

その一方で、一店舗あたりの顧客数や売上が減れば、店舗を維持する採算条件は厳しくなります。

ここに人口減少地域特有の矛盾があります。

移動販売は有力だが万能ではない

スーパー撤退後の方法として非常に重要なのが移動販売です。

いすみ市では、日常生活に必要な食料品や日用雑貨の買い物が困難な人を対象とした買い物支援を行っています。

2024年6月から千葉薬品の「ヤックス移動販売スーパーらくちん便」が月曜日から金曜日まで市内を巡回し、さらに2025年7月から「とくし丸」が週5日、市内を巡回しています。

移動販売の最大の特徴は、

人が店へ行くのではなく、店が人の近くまで来る

ことです。

これは身体的な移動が難しくなった高齢者には大きな意味があります。

商品を実際に見ながら選べることも、インターネット通販にはない利点です。

一方で、移動販売にも限界があります。

通常の大型スーパーと比べれば積載できる商品数には限界があります。

毎日いつでも購入できるわけではありません。

巡回ルートや時間に生活を合わせる必要があります。

さらに重要なのは事業の持続性です。

いすみ市では以前からNPO(Non-Profit Organization・非営利組織)による移動販売が行われていましたが、市の過去の計画資料には、利用者減少のため週5日5コースから週4日4コースへ変更した経緯も記録されています。

この事例が示すのは、

需要がある =事業が採算的に維持できる

ではないということです。

高齢者に必要なサービスほど、利用者が広い地域に少人数ずつ分散している可能性があります。

販売車が長距離を走っても、一か所当たりの売上が小さければ、燃料費、人件費、車両費などを回収することが難しくなります。

「移動スーパーが来れば解決」とは限らない

例えば移動販売車が週1回来る地域を考えてみます。

週1回でも、

米 調味料 野菜 肉 魚 牛乳 パン 日用品

などを計画的に購入できれば、かなりの部分を補うことができます。

しかし、

急に必要になった食品 買い忘れ 薬以外の日用品 大量購入 特殊な商品

まですべて対応できるとは限りません。

そこで実際には、

移動販売 +コンビニエンスストア +ドラッグストア +宅配 +家族送迎

などを組み合わせることになります。

重要なのは、一つ一つのサービスを見るのではなく、

一週間の生活に必要な食料・日用品を全部調達できるか

を見ることです。

宅配は「自宅まで届く」点では強い

宅配の大きな利点は、商品を自宅まで運んでもらえることです。

米、飲料、調味料など重量のある商品では特に有効です。

千葉県が過去に実施した買い物弱者対策の実証事業でも、利用者の70歳代以上が63%を占め、宅配を利用する理由として、車に乗れないことや重い商品を持ち帰れないことが挙げられていました。

つまり宅配は単なる便利なサービスではなく、

商品を運ぶ身体的負担を外部化する仕組み

でもあります。

ただし、宅配にも利用条件があります。

配達区域 最低注文額 送料 注文締切 配達曜日 支払方法 インターネット操作 電話注文の可否

などです。

そのため、

宅配サービスが地域に存在する =全住民が使える

ではありません。

特に高齢者の場合、スマートフォンやウェブサイトからの商品検索、会員登録、パスワード管理、決済方法などが利用上の障壁になる可能性があります。

ネットスーパーだけでは解決しない理由

人口減少地域の買い物問題では、「インターネットで注文すればよい」という意見もあります。

確かに、将来的には重要な手段です。

しかしネットスーパーを実際に利用するには、

配達対象地域である インターネットを利用できる 端末を操作できる 商品を画面から選べる 支払いができる 商品受取ができる

という条件が必要です。

そして人口密度が低い地域ほど、配送距離が長くなりやすくなります。

一軒の注文を届けるために長距離を走れば、物流費が増えます。

つまり人口減少地域では、

需要が小さいから宅配が必要になる一方で、

需要密度が低いから宅配の採算が悪くなる、

という矛盾が発生します。

公共交通でスーパーへ行く方法

もう一つの方法は、人を店まで運ぶことです。

いすみ市では市民乗合タクシーが運行されています。

2026年6月時点の制度では、事前予約によって運行区域内の自宅などから目的地まで移動でき、料金は大人一人1回300円です。月曜日から金曜日まで運行しています。複数の予約があれば乗り合わせになるため、通常のタクシーと同じではありません。

勝浦市でもデマンド交通などの施策が進められています。

御宿町では、勝浦市のデマンドタクシーを町内の共通乗降場所まで乗り入れる仕組みが導入され、買い物、医療機関、金融機関などへの移動可能範囲を広げています。

これは重要な方向です。

ただし、公共交通でスーパーへ行く場合には、

自宅 ↓ 乗車 ↓ スーパー ↓ 買い物 ↓ 待ち時間 ↓ 帰宅

という一連の時間を考える必要があります。

自家用車なら30分で終わる買い物が、予約や待ち時間を含めると数時間になる可能性があります。

したがって、

交通が存在する =買い物に実用的

とは限りません。

買い物では「運べる量」も重要

公共交通の問題として見落とされやすいのが購入量です。

例えば、

米5kg 牛乳2本 ペットボトル飲料 野菜 肉 魚 トイレットペーパー

を一度に購入すると、かなりの重量と容積になります。

健康な人が自家用車で買い物する場合にはほとんど問題になりません。

しかし、高齢者がバスや鉄道で持ち帰るとなると事情は変わります。

つまり交通政策を考える場合も、

「スーパーまで行けるか」

だけでなく、

買った商品を家まで持ち帰れるか

を考える必要があります。

この意味では、

人を店へ運ぶ仕組み

と、

商品を家へ運ぶ仕組み

は別の役割を持っています。

コンビニエンスストアやドラッグストアは代わりになるのか

スーパーがなくなっても、コンビニエンスストアやドラッグストアが残っていれば一定の商品を購入できます。

特に近年のドラッグストアは、食品を扱う店舗も多くなっています。

しかし、

スーパー コンビニエンスストア ドラッグストア

では、商品構成も価格体系も異なります。

弁当、飲料、菓子、冷凍食品などを確保できても、生鮮食品を十分に購入できるとは限りません。

したがって、

食品を売る店がある =通常の食生活を維持できる

とも限りません。

重要なのは店舗数ではなく、

必要な食品群を継続的に取得できるか

です。

家族送迎は無料ではない

地方では家族が車で買い物に連れて行くことも多くあります。

家族送迎は行政統計上「公共交通費」として現れません。

しかし実際には、

家族の時間 ガソリン代 車両維持費 待ち時間 仕事や家事の調整

が発生します。

例えば高齢の親を週1回スーパーへ連れて行くとして、往復と買い物に2時間かかれば、年間では、

2時間 × 52週 =104時間

になります。

これは分析のための単純計算ですが、約13日分の8時間労働に相当します。

したがって、

行政支出が発生していない =社会的費用がゼロ

ではありません。

買い物支援を考える際には、家族が無償で負担している時間も考える必要があります。

最も弱いのは「単一手段依存」の地域

買い物環境を考えるうえで危険なのは、一つの方法に依存することです。

例えば、

自動車だけ

移動販売だけ

家族送迎だけ

ネットスーパーだけ

という状態です。

一つが使えなくなると生活が急に成立しなくなるからです。

反対に、

週1~2回の移動販売 +宅配 +近隣の小売店 +デマンド交通

など複数の選択肢があれば、一つが使えなくなっても他の方法で補うことができます。

これは地域の買い物環境に「冗長性」を持たせる考え方です。

冗長性とは、ある手段が失われても別の手段で機能を維持できる状態です。

30年後に重要なのは「店舗数」より買い物機能

今後30年間の外房を考える場合、

スーパーを何店舗残すか

という発想だけでは十分ではないでしょう。

人口が大きく減る地域では、すべての店舗を現在と同じ形で維持することは難しくなる可能性があります。

その場合には、

大型店舗 移動販売 宅配 小型店舗 コンビニエンスストア ドラッグストア 公共交通

を一つの生活インフラとして考える必要があります。

例えば、一つの大型スーパーを維持できなくても、

地域拠点店舗 +移動販売 +宅配

によって食品アクセスを維持できる可能性があります。

逆に店舗だけ残っていても、自動車を運転できない高齢者がそこへ行けなければ、生活機能としては不十分です。

店を残す政策と買い物を残す政策は違う

ここで重要な区別があります。

スーパーを残すことと、住民の買い物を維持することは同じではありません。

スーパーへの補助によって店舗を残す方法もあります。

しかし利用者が減り続ければ、長期的な維持費は増える可能性があります。

一方で、店舗閉鎖をそのまま受け入れてしまえば、自動車を利用できない住民が生活できなくなる可能性があります。

そのため政策として考えるべきなのは、

どの店を残すか

だけではなく、

地域住民が食品へアクセスするための総費用をどう小さくするか

です。

行政負担 事業者負担 住民負担 家族負担 移動時間

を合わせて考える必要があります。

現実的には「人を運ぶ」と「商品を運ぶ」の併用になる

人口密度が下がっていく地域では、一つの方法ですべての住民を支えることは難しいでしょう。

比較的元気で移動できる人には、

デマンド交通 路線バス 家族送迎

などで店舗へ行く方法があります。

移動が難しい人には、

移動販売 宅配

が有効です。

つまり、

人を商品まで運ぶ

方法と、

商品を人まで運ぶ

方法を組み合わせることになります。

どちらが常に優れているという問題ではありません。

地域人口、住宅密度、利用人数、店舗距離によって効率は変わります。

成立しやすい地域

買い物支援が比較的成立しやすいのは、

一定数の利用者がいる 住宅がある程度まとまっている 既存スーパーを商品供給拠点として使える 移動販売と自治体が連携できる 宅配と公共交通を併用できる

といった地域です。

特に利用者がある程度まとまっていれば、一台の販売車や配送車が短時間で複数世帯を回ることができます。

成立しにくい地域

反対に難しいのは、

人口が非常に少ない 住宅が広範囲に分散している 道路距離が長い 利用者一人当たりの購入額が小さい 販売拠点となる店舗も遠い

といった地域です。

この場合、

需要はあるのに採算が取れない

という状態が起こります。

だからこそ、

「必要なら民間企業がやるはずだ」

という考え方だけでは解決できません。

買い物環境を見るチェックリスト

地方へ移住する場合や、高齢期の住まいを考える場合には、最寄りスーパーまでの距離だけを見るのではなく、次の項目を確認した方がよいでしょう。

・現在の最寄りスーパーまでの距離 ・自動車を運転できなくなった場合の移動方法 ・移動販売の有無 ・巡回曜日 ・宅配サービスの有無 ・配送料 ・最低注文額 ・電話注文が可能か ・インターネット注文だけか ・生鮮食品を購入できるか ・公共交通でスーパーへ行けるか ・帰宅便までの待ち時間 ・重い商品を持ち帰れるか ・家族送迎が必要か ・家族が遠方へ転居しても生活できるか

特に重要なのは、

「今、自動車を運転できる状態」ではなく、「自動車を運転できなくなった状態」で生活を想定すること

です。

外房の買い物問題から見えてくること

外房では人口減少と高齢化が同時に進んでいます。

人口が減れば、スーパーにとって商圏は縮小します。

しかし住民一人一人に必要な食料がなくなるわけではありません。

このため今後重要になるのは、

大型スーパーを今までと同じ形で残し続けること

だけではありません。

むしろ、

店舗 移動販売 宅配 公共交通 地域の小売店

を組み合わせ、

少ない人口でも食品へのアクセスを維持できる地域構造へ変えていくこと

ではないでしょうか。

現実的な結論

スーパーが撤退した地域でも、生活を続けること自体は可能です。

しかし、それには条件があります。

移動販売だけでもありません。

ネットスーパーだけでもありません。

公共交通だけでもありません。

家族送迎だけでもありません。

重要なのは、それらを組み合わせることです。

そして人口減少地域で問うべきなのは、

「スーパーが何軒あるか」

ではなく、

「自動車を運転できなくなった住民でも、必要な食品を適切な価格と負担で継続的に入手できるか」

です。

人口が減った地域では、店舗そのものをすべて維持することが難しくなる可能性があります。

しかし、

店舗が減ること =買い物機能まで失ってよい

ということではありません。

これからの地域政策では、

店を維持することから、買い物という生活機能を維持することへ

考え方を広げる必要があります。

そして30年後の外房で重要なのは、

「昔と同じ店舗網を残せたか」

ではなく、

少ない人口でも、必要な食品に誰もがアクセスできる仕組みを残せたか

ではないでしょうか。

地域の課題を、自分の判断に置き換えて考える

有限会社アードレでは、住まい・車・移住などの大きな選択を、 費用や将来条件をもとに数字で比較し、判断できる形に整理しています。

数字で比較するサービスを見る