地域分析記事

地域の暮らしと地域課題を数学とデータで考える

 地方の町を車で走っていると、ときどき不思議な感覚に襲われる。昔そこに何があったのかはもう思い出せないのに、新しく建ったドラッグストアの姿だけは妙にはっきり目に入ってくるのである。広い駐車場に大きな看板、明るい店内には薬だけでなく、牛乳、卵、パン、冷凍食品、菓子、洗剤、ティッシュ、化粧品、酒まで並び、かつて「薬を買う場所」だったはずのドラッグストアは、いつの間にか町の小さな生活百貨店のような存在になった。

 しかも興味深いのは、日本全体では人口減少が続いているにもかかわらず、ドラッグストア市場はなお拡大していることである。経済産業省の商業動態統計によれば、2025年のドラッグストア販売額は前年より5.5%増え、店舗数も3.6%増加した。人口が減れば店も減るという単純な関係では説明できない現象が、現実には起きているのである。

 ただし、ここで一つ慎重にならなければならない。日本全体で人口が減る一方、ドラッグストアの店舗数が増えているという事実と、人口が減っている市町村ほどドラッグストアが増えているという事実は同じではない。後者を証明するためには市町村単位の人口推移と店舗数を重ねて分析する必要があり、全国統計だけからそこまで断定することはできない。それでも、人口減少社会のなかでドラッグストアという業態だけが存在感を強めていること自体は、現在の地方の暮らし方を考えるうえで十分に興味深い。

 住民の立場から見れば、新しいドラッグストアは歓迎すべき存在に見える。薬を買えるだけでなく、食品も日用品もそろい、夜まで営業していて駐車場も広い。スーパー、薬局、化粧品店、酒屋を別々に回らなくても、一つの店でかなりの買い物が済むのだから、忙しい家庭にも高齢者にも便利である。

 それでは、ドラッグストアが増えた町は本当に「便利な町」になったのだろうか。この当たり前に見える問いを少し疑ってみると、地方の商業が静かに組み替えられている姿が見えてくる。

薬を売る店で、なぜ食品を買うようになったのか

 昔ながらの薬局を思い浮かべれば、現在のドラッグストアの姿はかなり違って見える。店の奥には医薬品が並んでいるが、入口近くでは飲料や菓子が山積みになり、冷蔵ケースには牛乳や豆腐、冷凍ケースには食品が並んでいる。店舗によっては酒や生鮮食品まで扱っており、もはや「薬を売る店」という説明だけでは実態を表せない。

 数字を見ると、この変化が単なる印象ではないことが分かる。2025年のドラッグストアでは食品販売額が前年より9.1%増加し、食品は販売額全体のおよそ3分の1を占めるまでになった。ドラッグストア市場の成長を支えている商品群の一つが、薬ではなく食品なのである。

 なぜ薬を売る店が食品をこれほど重視するのか。その理由を考えると、ドラッグストアという業態の強さが見えてくる。牛乳や卵、飲料、菓子、冷凍食品などは日常的に購入されるため、消費者を繰り返し店へ呼び込む力がある。食品を買いに来た人が洗剤を買い、化粧品を買い、必要になれば医薬品も買うようになれば、一つの店舗で複数の需要を取り込むことができる。

 流通研究でも、食品カテゴリーの購入がドラッグストアへの来店頻度や継続利用と結び付くことが示されている。つまり食品は単に売上を作る商品であるだけでなく、「またこの店へ来る」という習慣を作る役割も持っているのである。

 この変化を地域の側から見ると、さらに別の意味が現れる。住民一人が一か月に使えるお金には限りがあり、人口が減ったからといって一人の人が二倍の歯磨き粉を使ったり、三倍の牛乳を飲んだりするわけではない。その状況でドラッグストアの食品や日用品の販売が伸びれば、これまでスーパー、薬局、化粧品店、酒屋などに向かっていた消費の一部が移動している可能性を考える必要がある。

 ただし、それは「ドラッグストアが個人商店を潰した」という単純な因果関係を意味しない。地方の商店が減る背景には人口減少、経営者の高齢化、後継者不足、消費者行動の変化、自動車社会への移行など多くの要因があり、そこへ大型小売業やチェーン店との競争が加わっていると考える方が現実に近い。

 したがってドラッグストアの増加は、地域商業衰退の原因というより、人口減少社会における消費構造の変化に適応した結果として見る方がよい。薬、食品、日用品、化粧品など、かつて複数の店が分担していた役割を一つの店舗に集め、広い商圏から客を集めることで、人口が増えなくても商売を成立させるのである。

「一軒で全部買える」という便利さ

 仕事を終えた夕方、車を停めて店に入り、風邪薬を買い、牛乳を買い、洗剤を買い、翌朝のパンまで買って帰ることができれば、その便利さを否定する理由はない。一つの店舗で買い物が終われば、移動時間も店を探す時間も短縮され、生活は確実に効率的になる。

 しかし、「一軒ですべて買える」という便利さには少し皮肉な性質がある。一軒で買い物が完結するほど、二軒目や三軒目へ行く必要がなくなるからである。

 かつて町には、薬は薬局、肉は肉屋、魚は魚屋、酒は酒屋、日用品は雑貨店というように、それぞれ別の役割を持つ店が存在していた。それを昔の美しい風景として無条件に懐かしむ必要はなく、営業時間が短かったり、品ぞろえが少なかったり、価格が高かったりした店も当然あった。それでも、多くの異なる店が存在するということは、町のなかに複数の商売と複数の選択肢が存在することでもあった。

 ドラッグストアは、それらの役割の一部を一か所へ集約する。消費者個人から見れば移動する必要がなくなって便利になる一方、町全体から見れば利用する店舗の種類が少なくなる可能性があり、ここに「個人にとっての便利さ」と「町全体の便利さ」が必ずしも一致しない理由がある。

 家から五分のところに大型店が一軒ある町と、十分以内に性格の違う店が五軒ある町では、どちらが便利なのだろう。価格や移動時間を重視すれば前者かもしれないが、商品の選択肢や店同士の多様性を重視すれば後者かもしれず、さらに唯一の大型店が撤退したときのことまで考えれば答えは変わってくる。

 つまり、便利さとは店の数だけでは測れないのである。

「増えた店」だけを見ていると、町の変化を見誤る

 町を観察するとき、人は新しくできたものには敏感だが、静かに消えていったものには意外と気づかない。新しいドラッグストアの大きな看板は目に入るが、その数年前に閉店した小さな薬局や酒屋、化粧品店、食料品店のことは時間とともに忘れられていく。

 そうなると町の記憶には、「ドラッグストアが増えた」という変化だけが残る。

 しかし、本当に地域を分析しようとするなら、増えた店だけを数えても十分ではない。十年あるいは二十年という時間のなかで、どの種類の店が増え、どの種類の店が減ったのかを同時に見る必要がある。もし薬局、酒屋、個人商店、小型スーパーなどが減る一方でドラッグストアが増えている地域があるなら、そこでは単純に店舗が増えたのではなく、地域消費の受け皿となる業態が変化した可能性がある。

 大規模小売店の出店が周辺の既存店に与える影響については国内でも実証研究が行われており、既存の食料品店などの売上や存続に負の影響が現れる例も確認されている。ただし、その影響は店舗の種類、規模、距離、商圏などによって異なり、大型店ができれば必ず既存店が消えるというほど単純ではない。

 だからこそ、「ドラッグストアが増えた町」を見るときには、それを犯人探しにしてはいけない。むしろ、消費者がどの店を選ぶようになり、その結果として地域の商業構造がどのように変化したのかを見る方が面白い。

 消費者が便利で安い店を選ぶことは合理的であり、店側がそれに応えることも合理的である。しかし、誰も間違った判断をしていないのに、十年後の町の風景がまったく違うものになることがある。市場というものの興味深さは、まさにそこにある。

高齢社会でドラッグストアが担うもの

 ドラッグストアと高齢社会の関係も単純ではない。「高齢者が増えたからドラッグストアが増えた」と因果関係を決めつけることはできず、店舗立地には人口密度、交通量、競合状況、土地価格、企業の出店戦略など多くの条件が影響する。

 それでも、現在のドラッグストアが高齢社会で担える役割が大きいことは間違いない。医薬品だけでなく、衛生用品、介護関連商品、食品、日用品などを扱い、調剤薬局を併設する店舗であれば、医療機関を受診したあと薬を受け取り、そのまま生活用品や食品まで買って帰ることができる。

 ところが、この便利さには一つの条件が潜んでいる。

 店まで行けなければならないのである。

 地方のドラッグストアには、幹線道路沿いに大きな駐車場を備え、自動車で来店することを前提としている店舗が少なくない。車を運転できる人にとっては非常に便利だが、運転できなくなった瞬間、同じ店が突然遠い場所へ変わる可能性がある。

 農林水産省は食料品へのアクセスを考える際、店舗まで500メートル以上離れ、自動車を利用することが困難な65歳以上の人を「食料品アクセス困難人口」として把握している。2020年には全国で約904万人、65歳以上人口のおよそ4人に1人がこの条件に該当すると推計されている。

 この数字が示しているのは、店が存在することと、その店を利用できることが同じではないという事実である。

 六十代では車で五分の大型店を便利だと感じていた人が、八十代になって免許を返納すると、その店へ行く交通手段を失うかもしれない。そのとき、以前なら歩いて行けた小さな商店がすでになくなっていれば、「大型店がある便利な町」は突然、「買い物へ行けない町」に変わる。

 したがって町の便利さを考えるなら、「店があるか」という問いだけでは足りない。「誰が、どのような交通手段で、その店へ行けるのか」まで考える必要がある。

安さが示しているのは、所得よりも買い物行動かもしれない

 ドラッグストアの大きな魅力の一つが価格であることは間違いない。食品や日用品が安く売られていることも多く、家計にとってその恩恵は大きい。

 しかし、ここから「ドラッグストアが多い町は所得が低い」と結論づけることはできない。店舗立地には所得以外にも人口、交通量、地価、物流、競合店舗、商圏人口、企業ごとの出店戦略など多数の要因が関係しているため、店舗数だけから住民の経済状態を推測すれば誤った結論に到達する危険がある。

 むしろ地域分析として興味深いのは、所得そのものより「住民がどのような買い方を選んでいるか」である。

 一つの店舗で食品と日用品をまとめて買いたいのか、安さを重視するのか、専門店を使い分けるのか、車で遠くまで買い物へ行くのか、近所の店を頻繁に利用するのか。こうした小さな選択が積み重なり、その町で成立する店舗の種類を変えていく。

 店は単に商品を置いている建物ではない。その町に暮らす人が、何を買い、どこまで移動し、何を一度に済ませ、何に時間と金を使うのかという日常行動の結果として存在している。

 そう考えると、ドラッグストアの看板は人口統計とは別の意味で、地域生活を読むための一つのデータになる。

店が増えても、町の機能が増えたとは限らない

 最も重要なのは、ドラッグストアが増えること自体ではない。

 同じ種類の店ばかり増えることである。

 ドラッグストア同士が競争すれば、価格が下がり、品ぞろえが充実し、営業時間も便利になる可能性がある。しかし、どれほど立派なドラッグストアが三軒あっても、それだけで本屋、衣料品店、飲食店、電器店などの役割まで満たせるわけではない。

 つまり「店舗数」と「町に存在する機能の種類」は別のものである。

 十軒の店があっても九軒が同じような業態なら、数字の上では店が多い町でも、生活上の選択肢は意外に狭いかもしれない。反対に店舗数が少なくても、スーパー、飲食店、本屋、医療機関、衣料品店、ホームセンターなど異なる機能が残っていれば、町の生活には一定の多様性が残る。

 チェーン店の増加が商業空間を均質化させる可能性については、都市計画や商業研究の分野でも指摘されている。全国どこへ行っても同じ看板、似た建物、似た商品構成が現れることで、買い物の安心感や効率性は高まる一方、土地ごとの商業景観の違いは小さく見えるようになる。

 ここでも「チェーン店は悪い」という話にする必要はない。むしろチェーン店が成功するのは、それを利用する消費者に明確な利便性があるからであり、問題は便利さそのものではなく、地域全体の機能が一つの種類へ偏りすぎていないかという点にある。

 ドラッグストアが増えた町は、便利になっていないわけではない。ただ、町全体の便利さが増えたというより、「ある種類の便利さが非常に強くなった」と考える方が正確かもしれない。

「便利な一軒」がなくなったとき

 大型店舗へ買い物機能が集まることには、もう一つ見落とされやすい問題がある。その店がなくなったときである。

 地方都市では、大型店が撤退したあと地域住民の買い物環境が急激に悪化した事例が実際に研究されている。もちろん一つの事例を全国へそのまま当てはめることはできないが、生活機能を少数の店舗へ集中させれば、その店舗が撤退した際の影響が大きくなるという構造は理解しやすい。

 商売である以上、どんな店舗も永遠に存在する保証はない。人口が減り、競争環境が変化し、企業が出店戦略を変更すれば、昨日まで町の中心だった大型店が閉店することもある。

 ここに「効率」と「冗長性」の違いがある。

 同じ役割を担う小さな店がいくつも存在する町は、一見すると非効率かもしれない。しかし一軒がなくなっても別の店が残るという意味では、地域としての耐久力を持っている。反対に、一つの大型店ですべてを済ませられる町は非常に効率的だが、その一つへの依存が高まれば、撤退したときの影響も大きくなる。

 町の便利さを考えるなら、今日の買い物がどれほど楽かだけでなく、その便利さが十年後にも残っているかという視点が必要なのである。

ドラッグストアの駐車場から、町の未来を見る

 夕方になると、地方のドラッグストアの駐車場には次々と車が入ってくる。会社帰りの人、高齢の夫婦、子どもを乗せた家族が店へ入り、食品や薬や日用品を買って帰っていく。その風景だけを見れば、ドラッグストアが地域生活を支えていることに疑いはない。

 だから、ドラッグストアを地方衰退の象徴として描くのも正しくない。

 むしろ人口が減り、高齢化が進み、買い物行動が自動車中心になった地域社会に適応しながら、薬、食品、日用品を供給し続ける店舗として、現在のドラッグストアは非常に合理的な存在である。

 しかし、合理的な店舗が増えることと、町全体が豊かになることは同じではない。

 薬も買える。食品も買える。洗剤も買える。夜まで営業していて駐車場も広い。それでも別の場所では本屋がなくなり、衣料品店がなくなり、食堂が減り、個人商店が閉じていくのだとすれば、私たちは単純に「不便な町から便利な町へ」移動しているのではなく、「多様な町から効率的な町へ」移動しているのかもしれない。

 効率的な町は暮らしやすいが、効率だけを追求した町は、何か一つが失われたときに思いがけない弱さを見せることがある。

 だから地域を見るときには、ドラッグストアが何軒あるかだけを数えてはいけない。その周囲で何が消えたのか、どの種類の店が残っているのか、誰が車で来ているのか、車を使えなくなった人はどこで買い物をしているのか、そして十年後にも同じ生活が可能なのかまで考える必要がある。

 ドラッグストアの増加は、町が発展した証拠でも、衰退した証拠でもない。

 それは、人口が減っても暮らしは続き、人が減っても買い物はなくならず、限られた消費をめぐって商業の仕組みそのものが静かに組み替えられていることを映す、一つの風景なのだろう。

 次に新しいドラッグストアを見つけたとき、「またできた」とだけ思わず、その広い駐車場の向こう側まで少し眺めてみるとよい。そこには新しくできた店だけではなく、消えていった店、変わっていく住民の生活、車を降りた後の高齢者の暮らし、そしてこれからその町がどのような場所になろうとしているのかまで、ぼんやりと映っているのかもしれない。

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地方のスーパーはなぜ撤退するのか~人口減少だけでは説明できない店舗経営の構造

地方のスーパーが閉店すると、「人口が減ったから仕方がない」と説明されることがあります。

確かに、商圏人口の減少は店舗経営に大きな影響を与えます。しかし、人口が減少している地域のスーパーがすべて撤退するわけではありません。反対に、人口が比較的維持されている地域でも、競争激化、人手不足、建物の老朽化、物流費の上昇などを理由に店舗が閉鎖されることがあります。

地方スーパーの撤退は、人口だけでなく、次の要素が重なって起こります。

  • 商圏内の人口と世帯数
  • 高齢化と1世帯当たりの購入量
  • 来店客数と客単価
  • 競合店との距離
  • ドラッグストアやコンビニエンスストアとの競争
  • 人件費と採用難
  • 電気料金と冷蔵・冷凍設備の維持費
  • 商品配送にかかる物流費
  • 生鮮食品や総菜の値引き・廃棄
  • 建物や設備の更新費
  • 本部が店舗に求める収益水準
  • 店舗網全体の再編方針

つまり、地方スーパーの撤退は、単純な「人口減少の結果」ではありません。

人口減少によって売上の上限が下がる一方で、人件費、電気料金、物流費、設備更新費などの固定的な負担が下がりにくくなり、最終的に必要な利益を確保できなくなる問題です。

最初に結論

地方スーパーが撤退する最大の構造的理由は、次の関係にあります。

店舗利益 =売上高 -商品仕入原価 -人件費 -電気・燃料費 -物流費 -建物・設備費 -廃棄・値引き損失 -その他の経費

人口が減少すると、店舗の売上高は減少しやすくなります。

しかし、売上が10%減少しても、従業員数、冷蔵設備、照明、配送回数、建物面積などを同じ10%だけ減らせるとは限りません。営業を続けるために必要な最低限の費用が残るからです。

さらに、近年は食品価格の上昇によって売上高が増えていても、販売数量や利益まで増えているとは限りません。

経済産業省の商業動態統計によると、2025年のスーパー販売額は前年比4.7%増加し、1店舗当たり販売額と店舗数も増加しました。しかし、これは全国集計です。都市部の新規出店や大型店の成長を含むため、人口減少地域にある個別店舗の経営改善を示すものではありません。

したがって、地方スーパーの問題を理解するには、

「全国のスーパー市場が成長しているか」

ではなく、

「その店舗の商圏で、必要な来店客数と粗利益を確保できているか」

を見る必要があります。

スーパーの売上は何で決まるのか

スーパーの売上高は、概念的には次のように分解できます。

売上高 =1日当たり来店客数 ×1人当たり購入額 ×営業日数

例えば、1日1,500人が来店し、1人当たり2,000円購入する店舗では、1日の売上高は約300万円です。

ところが、来店客数が1,200人に減少すると、客単価が変わらなければ売上高は約240万円となります。

1日当たりの差は60万円です。

年間360日営業すると仮定すれば、単純計算では年間約2億1,600万円の売上差になります。

実際には、値上げによって客単価が上昇したり、営業時間や品ぞろえを変更したりするため、売上高がこのまま減少するとは限りません。しかし、客数の減少が長期間続けば、店舗の採算を維持することは難しくなります。

全国スーパーマーケット協会の2025年版白書では、2024年の年次統計調査における中央値として、平日の1日客数が1,675人、客単価が2,191円、土日祝日の1日客数が1,800人、客単価が2,555円と示されています。これらは全国の調査対象店舗の中央値であり、地方の小規模店舗にそのまま当てはめることはできませんが、スーパーが相当数の来店客を前提にした事業であることは分かります。

人口減少だけでは不十分な理由

人口と来店客数は同じ割合では減らない

商圏人口が10%減少したからといって、店舗の来店客数が必ず10%減るわけではありません。

競合店が閉店すれば、残った店舗に利用者が集中することがあります。反対に、新しいドラッグストアや大型店が開業すれば、人口が変わらなくても来店客数が減ることがあります。

来店客数は、おおむね次の要素によって決まります。

来店客数 =商圏人口 ×来店可能率 ×店舗選択率 ×来店頻度

商圏人口が維持されていても、自動車で別の市町村に買い物へ行く人が増えれば、地元店舗の店舗選択率は下がります。

人口が減少していても、競合店が少なく、地域住民から支持されている店舗なら、一定の利用者を確保できる可能性があります。

高齢化すればスーパーの需要が増えるとは限らない

高齢者は食料品を必要とするため、高齢化地域でもスーパーの需要はなくなりません。

一方で、高齢化によって次の変化が起こることがあります。

  • 1世帯当たりの人数が減る
  • 1回当たりの購入量が減る
  • 自動車を運転できない人が増える
  • 重い商品を持ち帰りにくくなる
  • 店舗までの移動回数が減る
  • 宅配、生協、移動販売へ移行する
  • 調理済み食品の需要が増える
  • 少量商品への需要が増える

高齢者世帯が増えると、総菜や少量包装への需要は高まる可能性があります。しかし、少量包装は包装、加工、品出しなどの手間が相対的に大きくなることがあります。

したがって、高齢化は単なる需要減少ではなく、需要内容の変化として捉える必要があります。

全国売上の増加と地方店舗の撤退は矛盾しない

全国のスーパー販売額が増えているのに、なぜ地方のスーパーは閉店するのでしょうか。

この二つは矛盾しません。

全国の販売額は、次の要因でも増加します。

  • 食品価格の上昇
  • 都市部への新規出店
  • 大型店舗の増加
  • 高付加価値商品の販売
  • 総菜や冷凍食品の需要増加
  • 一部企業への売上集中
  • 店舗統合後の大型店への顧客集中

仮に販売数量が変わらなくても、平均価格が5%上がれば、名目上の売上高は約5%増えます。

しかし、仕入価格も上昇していれば、店舗の利益が同じ割合で増えるわけではありません。

重要なのは売上高そのものではなく、粗利益です。

粗利益 =売上高 -商品仕入原価

さらに、店舗が最終的に残せる利益は、粗利益から人件費、電気料金、物流費、設備費などを差し引いた金額です。

売上高が増えていても、費用の増加がそれを上回れば、店舗の利益は減少します。

原因1~商圏人口と世帯構成の変化

地方スーパーにとって、人口減少は売上の上限を下げる要因です。

特に影響が大きいのは、単なる人口総数ではなく、店舗周辺の商圏人口です。

同じ市町村の中でも、人口が比較的集まる中心部と、住宅が分散する周辺部では店舗経営の条件が異なります。

例えば、市町村全体の人口が2万人であっても、住民が広い範囲に分散していれば、店舗までの移動距離が長くなります。住民が隣接自治体の大型店を利用している場合、市町村人口のすべてが地元店舗の顧客になるわけではありません。

また、人口が同じでも、世帯構成によって食品需要は変わります。

  • 子育て世帯が多い地域
  • 単身高齢者が多い地域
  • 観光客が多い地域
  • 別荘や二地域居住が多い地域
  • 昼間人口が多い地域
  • 通勤によって昼間人口が減る地域

これらでは、来店時間、購入量、需要商品が異なります。

地方店舗を分析するときは、市町村人口だけではなく、店舗から一定時間で到達できる範囲の人口、世帯数、年齢構成、昼間人口、競合店舗を確認する必要があります。

原因2~ドラッグストアとの競争

近年、地方の食品スーパーにとって大きな競争相手になっているのがドラッグストアです。

ドラッグストアは医薬品、化粧品、日用品だけでなく、飲料、菓子、調味料、冷凍食品、牛乳、卵などを販売する店舗が増えています。

2025年の経済産業省の統計では、ドラッグストア販売額が前年比5.5%増加し、食品や調剤医薬品などが増加要因となりました。

ドラッグストアは、医薬品や化粧品など食品以外の商品からも利益を得られます。そのため、一部の食品を低価格で販売し、来店を促す戦略を取ることができます。

これに対して、食品スーパーは、生鮮食品や総菜の売上比率が高く、鮮度管理、加工、値引き、廃棄などの負担があります。

ドラッグストアが地域に出店すると、住民が食品をすべて移行するわけではありません。しかし、牛乳、飲料、菓子、冷凍食品、調味料など、保存しやすい商品がドラッグストアへ流れる可能性があります。

その結果、スーパーには管理が難しい生鮮食品や総菜の販売負担が残り、利益を得やすい商品の売上が減ることがあります。

原因3~大型店と地域外店舗への顧客流出

地方では、自動車を使って買い物をする世帯が多いため、行政区域の境界は必ずしも商圏の境界になりません。

住民は、町内の店舗よりも、

  • 品ぞろえが多い
  • 価格が安い
  • 駐車場が広い
  • 他の店舗と一緒に利用できる
  • 飲食店や医療機関にも立ち寄れる

といった条件を持つ近隣都市の大型店を選ぶことがあります。

道路が整備され、移動時間が短くなることは住民にとって便利です。一方、地元店舗にとっては、商圏外への顧客流出を促す場合があります。

このため、交通利便性の向上が、必ずしも地元商業の維持につながるわけではありません。

道路整備によって、地域外から顧客を呼び込める店舗もありますが、品ぞろえや価格で劣る店舗では、逆に顧客が外へ流出する可能性があります。

原因4~人手不足と人件費

スーパーは、多くの作業を人に依存しています。

主な業務には、次があります。

  • 商品の荷受け
  • 品出し
  • 発注
  • 在庫管理
  • レジ対応
  • 生鮮食品の加工
  • 総菜調理
  • 清掃
  • 値引き
  • 廃棄処理
  • 衛生管理
  • 売場変更
  • 顧客対応

セルフレジや自動発注を導入しても、すべての作業を無人化できるわけではありません。

全国スーパーマーケット協会の調査では、人手不足への採用対策に取り組む企業の割合が高く、2023年調査では採用活動に関する人手不足対策の実施率が98.1%でした。また、同調査では、同じ売場面積区分でも、都市圏店舗の従業員1人当たり年間売上高が地方圏を上回る傾向が示されています。

これは、地方店舗では従業員1人当たりの売上を確保しにくい可能性を示します。ただし、調査対象や店舗規模による違いがあるため、すべての地方店舗に当てはまるとは限りません。

地方では若年人口が少なく、早朝、夕方、土日、祝日に働ける人材を確保しにくい場合があります。

人手が不足すると、店舗は次の対応を迫られます。

  • 営業時間を短縮する
  • 売場面積を縮小する
  • 加工商品を減らす
  • 総菜の種類を減らす
  • レジを減らす
  • 本部や他店から応援を出す
  • 時給を引き上げる
  • 省力化設備を導入する

しかし、省力化設備には初期投資と維持費が必要です。小規模店舗では、投資額を回収できないこともあります。

原因5~電気料金と冷蔵・冷凍設備

スーパーは、一般の小売店と比べて、冷蔵・冷凍設備を長時間稼働させる必要があります。

冷蔵ケース、冷凍ケース、バックヤードの冷蔵庫、冷凍庫、空調、照明、調理設備などが必要です。

電気料金は、単純な使用量だけでなく、契約電力、燃料費、託送料金、再生可能エネルギー発電促進賦課金などの影響を受けます。資源エネルギー庁によると、自由化後の電気料金には、発電・調達費、人件費などのほか、送配電網の利用料金である託送料金や各種公租公課などが含まれます。

店舗の売上が減っても、食品を安全に保存するために冷蔵・冷凍設備を停止することはできません。

営業時間を短縮しても、冷蔵設備は閉店中も動かす必要があります。

そのため、来店客数が少ない店舗ほど、1人の顧客または1円の売上に対する電力費の割合が高くなりやすい構造があります。

原因6~地方物流の非効率性

スーパーでは、商品を継続的に配送する必要があります。

特に、生鮮食品、牛乳、豆腐、総菜材料などは、在庫を長期間持ちにくいため、一定の配送頻度が必要です。

物流費は、次の要素から構成されます。

物流費 =車両費 +燃料費 +運転者の人件費 +荷役費 +物流施設費 +配送管理費

人口密度が低い地域では、1回の配送で納品できる商品量が少なくなることがあります。

都市部であれば、短い距離で複数店舗へ配送できます。地方では店舗間の距離が長く、1店舗当たりの配送量も少ないため、商品1個当たりの物流費が高くなりやすくなります。

チェーン全体で見れば、遠隔地にある売上規模の小さい店舗を維持するために、専用の配送経路や長距離輸送が必要になることがあります。

店舗自体がわずかに黒字でも、物流網全体の効率を考えると、閉店や店舗統合が選ばれる場合があります。

原因7~生鮮食品と総菜の廃棄・値引き

食品スーパーは、生鮮食品や総菜を扱うことで、コンビニエンスストアやドラッグストアとの差別化を図っています。

一方、生鮮食品や総菜には、売れ残りの問題があります。

需要を正確に予測できなければ、次のどちらかが起こります。

  • 商品が足りず、販売機会を失う
  • 商品が余り、値引きや廃棄が増える

人口が少ない地域や、曜日・天候・観光客数による変動が大きい地域では、需要予測が難しくなる場合があります。

農林水産省によると、2024年度の事業系食品ロスは237万トンで、このうち食品小売業は48万トンでした。これはスーパーだけの数字ではありませんが、食品小売業全体で、売れ残りなどによる食品ロスが一定規模存在することを示します。

売れ残った商品を値引き販売すれば、廃棄量は減らせます。しかし、値引きによって粗利益は小さくなります。

また、値引き時刻が固定化すると、消費者が値引きを待つようになり、通常価格での販売が減る可能性もあります。

重要なのは、廃棄をゼロにすることではなく、欠品による機会損失と、過剰在庫による値引き・廃棄損失の合計を小さくすることです。

原因8~店舗と設備の老朽化

地方スーパーの撤退理由として見落とされやすいのが、建物と設備の更新問題です。

営業を継続するには、次の設備を更新する必要があります。

  • 冷蔵・冷凍ケース
  • 空調設備
  • 照明
  • レジシステム
  • 発注・在庫管理システム
  • 厨房設備
  • 防火設備
  • 給排水設備
  • 屋根・外壁
  • 駐車場舗装
  • 看板
  • 非常用電源
  • バリアフリー設備

日常の営業では利益が出ていても、数億円規模の改装や建て替えが必要になれば、企業は将来の投資回収可能性を検討します。

投資回収年数は、概念的には次のように表せます。

投資回収年数 =更新投資額 ÷更新後の年間利益増加額

例えば、改装に3億円必要で、改装による年間利益の増加が2,000万円と見込まれる場合、単純な回収年数は15年です。

しかし、商圏人口が今後も減少すると予測される地域では、15年間にわたって利益を維持できる保証はありません。

そのため、現在赤字だから閉店するのではなく、次の更新投資を回収できないため閉店することがあります。

原因9~賃貸借契約と土地・建物の問題

店舗が自社所有ではなく賃借物件の場合、契約更新や賃料改定が閉店の契機になることがあります。

また、店舗建物の所有者と運営会社が異なる場合、運営会社が営業継続を希望しても、建物所有者が建て替えや売却を選ぶ可能性があります。

一方、自社所有店舗であっても、建物の維持費、固定資産税、解体費、跡地利用などを含めて判断されます。

閉店理由が「契約満了」「諸般の事情」としか公表されない場合、公開情報だけで採算悪化を断定することはできません。

原因10~チェーン全体の店舗再編

チェーン店では、個別店舗だけでなく、企業全体の資本効率によって存廃が決まります。

本部は、限られた人材と資金を、より成長性の高い店舗に配分しようとします。

例えば、ある地方店舗がわずかに黒字でも、その店舗を閉じて、従業員や設備投資資金を都市部の大型店へ移した方が利益を増やせると判断される場合があります。

企業が比較するのは、単なる黒字・赤字ではありません。

  • 売上高営業利益率
  • 投下資本利益率
  • 改装投資の回収期間
  • 店舗当たり売上高
  • 従業員1人当たり売上高
  • 売場面積当たり売上高
  • 将来の商圏人口
  • 競合店の出店計画
  • 物流網との位置関係

このため、利用者が多いと感じている店舗でも、本部の基準を満たさず閉店することがあります。

小さな店舗ほど維持しやすいとは限らない

売場面積を小さくすれば、家賃や電気料金を抑えられる可能性があります。

しかし、小規模店舗には別の不利があります。

  • 大量仕入れの効果が小さい
  • 商品数を確保しにくい
  • 1人の欠勤の影響が大きい
  • 店長や管理者の費用を分散しにくい
  • 設備投資を売上で回収しにくい
  • 配送1回当たりの商品量が少ない
  • 値引き・廃棄を吸収しにくい

全国スーパーマーケット協会の2023年調査では、売場面積800平方メートル未満の店舗は、従業員1人当たり年間売上高が他の面積区分よりやや低い傾向が示されました。

小型化は有力な対応策ですが、単に店舗を小さくすれば採算が改善するとは限りません。

観光客が多ければ維持できるのか

外房のような観光地域では、夏季、週末、連休に来訪者が増えます。

観光需要はスーパーの売上を支える可能性があります。飲料、酒類、総菜、肉、魚、氷、行楽用品などの需要が増えるためです。

一方で、観光需要には次の問題があります。

  • 季節変動が大きい
  • 天候に左右される
  • 平日の売上を支えにくい
  • 繁忙期だけ人員を増やす必要がある
  • 需要予測を外すと廃棄が増える
  • 観光客が地域外の大型店で購入してから来訪することがある

年間数日や数週間の繁忙期だけでは、年間を通した固定費を支えられないことがあります。

観光客数だけでなく、地域内で実際に食料品を購入する割合と、年間を通した売上への寄与を確認する必要があります。

競合店がなくなれば残った店舗は安泰なのか

競合店の閉店は、残った店舗に顧客が集中する効果を持ちます。

しかし、競合店がないことが、必ずしも店舗の存続を保証するわけではありません。

地域全体の需要が、店舗を維持する最低水準を下回っていれば、独占状態でも採算を確保できないことがあります。

また、競合店がなくなった後に価格を大幅に上げれば、住民が遠方の大型店、宅配、インターネット通販へ移行する可能性があります。

スーパーには、地域内の競争だけでなく、地域外店舗や異業態との競争があります。

ネットスーパーは代替になるのか

ネットスーパーや食品宅配は、店舗まで移動できない人にとって有効な手段です。

しかし、地方では次の制約があります。

  • 配達区域外となる
  • 配達時間を指定しにくい
  • 配送料がかかる
  • 最低注文額が設定される
  • 当日配送に対応しない
  • 生鮮食品を自分で選べない
  • インターネット操作が必要になる
  • クレジットカードなど支払方法が限られる
  • 欠品時に代替商品を選びにくい

配送密度が低い地域では、1件当たりの配送費が高くなります。

ネットスーパーも、店舗型スーパーと同じように、需要密度の問題から逃れられません。

移動販売は撤退後の解決策になるのか

移動販売は、店舗へ行けない住民に商品を届ける有力な手段です。

一方、移動販売車には、次の費用がかかります。

移動販売の利益 =商品販売額 -商品仕入原価 -車両費 -燃料費 -人件費 -保冷設備費 -決済費用 -売れ残り損失

集落が分散している地域では、移動時間が長くなり、1時間当たりに対応できる利用者数が少なくなります。

利用者にとって必要性が高くても、事業者にとって採算が合うとは限りません。

そのため、移動販売を持続させるには、

  • 既存店舗との連携
  • 福祉サービスとの共同運行
  • 自治体による運行支援
  • 複数地区を組み合わせた巡回
  • 注文予約による廃棄削減
  • 高齢者見守りとの複合化

などが必要になることがあります。

ただし、補助金によって開始できても、運転者、車両更新、利用者数を長期間確保できなければ継続できません。

スーパー撤退が住民生活に与える影響

スーパーの閉店は、単なる店舗数の減少ではありません。

買い物距離が延びる

近隣店舗がなくなると、住民は遠方の店舗へ移動する必要があります。

自動車を運転できる人にとっては、数キロメートルの増加で済む場合があります。しかし、運転できない人には大きな影響があります。

食品価格以外の負担が増える

遠方の店舗が安くても、交通費と時間を含めると必ずしも安いとは限りません。

実質的な買い物費用 =商品代金 +燃料費・運賃 +配送料 +移動時間 +家族の送迎負担

商品の店頭価格だけでは、住民の負担を評価できません。

生鮮食品を買う頻度が下がる

買い物回数が減ると、保存しやすい食品の購入が増える可能性があります。

冷凍食品、加工食品、菓子、レトルト食品が直ちに健康へ悪影響を与えるとは限りません。しかし、生鮮食品を選択できる機会が減ることは、食生活の多様性に影響する可能性があります。

農林水産省は、食料品店の減少や高齢化により、高齢者を中心に買い物へ不便や苦労を感じる人が増えている問題を「食料品アクセス問題」と位置づけています。

家族の送迎負担が増える

本人が運転できない場合、家族が買い物を代行したり、店舗へ送迎したりする必要があります。

この負担は、統計上の買い物費用には表れにくいものです。

食料品アクセス困難人口という考え方

農林水産政策研究所は、食料品アクセス困難人口を、

「店舗まで500メートル以上離れ、自動車の利用が困難な65歳以上の高齢者」

として推計しています。

対象店舗には、生鮮食品店、百貨店、総合スーパー、食料品スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストアなどが含まれます。

ただし、この定義には注意が必要です。

500メートル以内にコンビニエンスストアがあれば、統計上はアクセス困難者に含まれない場合があります。しかし、コンビニエンスストアで、価格、品ぞろえ、容量を含めてスーパーと同等の買い物ができるとは限りません。

また、自動車を保有していても、本人が安全に運転できるとは限りません。

したがって、地域の買い物環境を評価するときは、500メートルという距離だけでなく、

  • 実際の道路距離
  • 坂道や歩道
  • 商品の品ぞろえ
  • 店舗価格
  • 荷物を運べるか
  • バスの運行本数
  • 家族の支援
  • 配達サービスの有無

まで確認する必要があります。

スーパーが残りやすい条件

地方でも、次の条件がそろえばスーパーを維持しやすくなります。

  • 一定範囲に人口が集中している
  • 競合店との差別化ができている
  • 地域外からも顧客を集められる
  • 幹線道路から入りやすい
  • 十分な駐車場がある
  • 生鮮食品や総菜に支持がある
  • 店舗規模が需要に合っている
  • 物流拠点から遠すぎない
  • 従業員を確保できる
  • 建物や設備が比較的新しい
  • 観光需要が年間売上に寄与する
  • 他店舗との配送効率が良い
  • 地域住民が継続的に利用する

特に重要なのは、商圏人口の総数だけでなく、一定時間内に来店できる顧客がどの程度いるかです。

スーパーが残りにくい条件

次の条件が重なる店舗は、存続が難しくなります。

  • 商圏人口が減少している
  • 住宅が広範囲に分散している
  • 高齢化により来店頻度が低下している
  • 近隣都市の大型店へ顧客が流出している
  • ドラッグストアとの価格競争が激しい
  • 人材を確保できない
  • 冷蔵・冷凍設備が老朽化している
  • 大規模な改装が必要である
  • 配送距離が長い
  • 売上の季節変動が大きい
  • 生鮮食品の廃棄率が高い
  • 店舗面積が需要に対して大きすぎる
  • 本部の店舗再編対象になっている

一つの条件だけで閉店が決まるとは限りません。

複数の問題が同時に発生し、更新投資の時期や契約満了をきっかけに閉店する場合が多いと考えられます。

スーパーを補助金で維持すべきか

スーパーは民間企業ですが、地方では生活インフラに近い役割を持ちます。

特に、代替店舗が遠く、自動車を運転できない住民が多い地域では、店舗の閉鎖が生活維持に直接影響します。

ただし、特定店舗へ恒常的に公費を投入する場合は、次を検討する必要があります。

  • 支援しなければ本当に撤退するのか
  • 支援額はいくらか
  • 何年間維持できるのか
  • 対象住民は何人か
  • 1人当たりの公費負担はいくらか
  • 移動販売や宅配より効率的か
  • 競合企業との公平性を保てるか
  • 店舗の経営改善策があるか
  • 経営情報をどこまで確認できるか
  • 支援終了後に存続できるか

例えば、年間3,000万円の公費を投入して、実質的な利用者が1,000人なら、単純計算で利用者1人当たり年間3万円です。

この金額が高いか安いかは、代替手段の費用と比較しなければ判断できません。

店舗維持、移動販売、買い物バス、タクシー助成、宅配支援などを同じ基準で比較する必要があります。

現実性の低い主張

人口を増やせばスーパーを維持できる

人口増加は需要を増やす可能性があります。

しかし、店舗維持に必要な規模の人口を短期間で増やすことは容易ではありません。また、移住者が必ず地元店舗を利用するとは限りません。

道の駅があれば代替できる

道の駅は農産物や地域商品を購入する場所として有効です。

しかし、肉、魚、加工食品、日用品、医薬品など、日常生活に必要な商品をすべて安定的に供給できるとは限りません。

コンビニエンスストアがあれば問題ない

コンビニエンスストアは、営業時間や立地の面で重要です。

一方、価格、容量、生鮮食品、日用品の品ぞろえでは、スーパーと同じ役割を果たせない場合があります。

ネットスーパーですべて解決できる

配達区域、配送料、注文方法、決済方法、物流採算などの制約があります。

自治体が運営すればよい

自治体が店舗を直接または間接的に支える場合でも、仕入れ、在庫管理、食品衛生、人材確保、廃棄、設備更新などの経営課題は残ります。

民間店舗の赤字が、公営化によって自動的に消えるわけではありません。

地方で現実的に取り得る対応

地域全体の生活を維持するには、スーパー1店舗を無条件に残すことだけが選択肢ではありません。

現実的には、複数の手段を組み合わせる必要があります。

店舗の小型化

需要に合わせて売場面積や商品数を縮小します。

ただし、小型化による売上減と固定費削減の効果を比較する必要があります。

営業時間の見直し

利用者が少ない時間帯を短縮し、人件費や照明・空調費を抑えます。

冷蔵設備の電力費は残るため、営業時間短縮だけで大幅な改善ができるとは限りません。

予約販売と受け取り拠点

事前注文によって需要を把握し、廃棄を減らします。

電話注文を併用すれば、インターネットを利用しない高齢者にも対応できます。

移動販売との併用

店舗を商品供給拠点とし、周辺集落へ移動販売車を運行します。

店舗単独と移動販売単独ではなく、在庫と人員を共有する方法です。

医療・介護・交通との連携

通院バス、デマンド交通、福祉サービスなどと買い物機会を組み合わせます。

ただし、目的外利用や運行制度上の制約を確認する必要があります。

複合店舗化

食品、日用品、行政手続、金融、宅配受け取り、地域交流などをまとめます。

複数の需要を集約することで、来店頻度を高められる可能性があります。

一方、業務が複雑になり、必要な人材や設備が増える可能性もあります。

自治体が確認すべきこと

自治体は、店舗の閉店が発表されてから対応するのではなく、地域の買い物環境を定期的に把握する必要があります。

確認項目としては、次が考えられます。

  • 食料品を扱う店舗の所在地
  • 地区別の人口と高齢化率
  • 店舗までの道路距離
  • 自動車を運転できない住民数
  • 路線バスとデマンド交通
  • 移動販売の曜日と区域
  • 生協・宅配・ネットスーパーの区域
  • タクシー料金
  • 家族送迎の実態
  • 店舗閉鎖時の代替店舗
  • 災害時の食料供給拠点
  • 小売・物流分野の人材確保状況

特に重要なのは、現在の店舗が閉店した場合に、次の店舗までの距離と時間がどれだけ増えるかを事前に把握することです。

住民が住宅購入・移住前に確認すべきこと

地方への移住や住宅購入では、現在スーパーがあるかだけでなく、次を確認する必要があります。

  1. 最寄りのスーパーまでの実際の道路距離
  2. 自動車を運転できなくなった場合の移動手段
  3. 第二候補のスーパーまでの距離
  4. 生協・宅配・ネットスーパーの配達区域
  5. 移動販売の運行日
  6. コンビニエンスストアとドラッグストアの品ぞろえ
  7. 冬季・荒天時の移動条件
  8. 家族に買い物を頼めるか
  9. 店舗が閉店した場合の代替手段
  10. 10年後、20年後も生活を維持できるか

現在自動車を運転できる人でも、将来の免許返納や健康状態の変化を考える必要があります。

公開資料から確認できないこと

個別店舗については、次の情報が通常公開されません。

  • 店舗単独の売上高
  • 店舗単独の営業利益
  • 廃棄率
  • 人件費率
  • 賃料
  • 電気料金
  • 設備更新額
  • 本部の撤退基準
  • 契約条件
  • 今後の閉店計画

したがって、客が少なく見える、建物が古い、競合店ができたという情報だけで、閉店の可能性を断定することはできません。

閉店理由が企業から明示されていない場合は、「人口減少が原因」「赤字店舗だった」などと断定すべきではありません。

現実的な結論

地方スーパーが撤退する理由は、人口減少だけでは説明できません。

人口減少は、店舗の売上上限を下げる重要な要因です。しかし、撤退を直接決めるのは、売上に対して人件費、物流費、電気料金、廃棄損失、設備更新費などを負担し、企業が必要とする利益を確保できるかどうかです。

全国のスーパー販売額が増加していても、地方の個別店舗が安定しているとは限りません。

食品価格の上昇によって名目売上が増えても、仕入価格や各種費用が増えれば、利益は改善しない可能性があります。

また、店舗が現在黒字でも、老朽設備の更新投資を将来の商圏人口から回収できないと判断されれば、閉店することがあります。

地方スーパーを生活インフラとして維持するには、単に「住民が必要としている」と訴えるだけでは足りません。

誰が利用するのか。 1日に何人が来店するのか。 1人がいくら購入するのか。 商品を誰が運ぶのか。 従業員を確保できるのか。 設備更新にいくら必要なのか。 赤字を誰が何年間負担するのか。

これらを具体的に検証する必要があります。

スーパーを残すことが最も合理的な地域もあれば、小型店舗、移動販売、宅配、交通支援を組み合わせた方が現実的な地域もあります。

重要なのは、すべての店舗を一律に残すことでも、市場原理だけに任せることでもありません。

地域ごとに、必要な食料供給機能を定め、その機能を最も持続可能な方法で維持することです。

データ利用上の注意

本記事で使用した販売額や店舗数は、全国または業界全体の統計です。

個別の地方店舗の売上、利益、閉店理由を直接示すものではありません。

また、経済産業省の商業動態統計は、2025年1月分に2021年経済センサス~活動調査を基礎とする水準調整が行われており、2024年12月以前の販売額との間に不連続がある点に注意が必要です。

地域や個別店舗を分析する場合は、国勢調査、住民基本台帳、経済センサス、企業の公式発表、自治体資料、交通情報などを組み合わせて判断する必要があります。

主な参考資料

  • 経済産業省「商業動態統計」
  • 経済産業省「2025年小売業販売を振り返る」
  • 全国スーパーマーケット協会「2025年版スーパーマーケット白書」
  • 全国スーパーマーケット協会「スーパーマーケット年次統計調査」
  • 農林水産省「食品アクセス問題の現状」
  • 農林水産政策研究所「食料品アクセスマップ」
  • 農林水産省「事業系食品ロス量(2024年度推計値)」
  • 資源エネルギー庁「電気料金の仕組み」
  • 総務省統計局「人口推計」

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