はじめに
地方では、「町の本屋がなくなった」という話を聞くことが珍しくなくなりました。
千葉県の外房地域でも、茂原市、いすみ市、勝浦市、鴨川市、館山市などには現在も書店がありますが、市町村によって状況は大きく異なります。
一方、公共図書館についても、すべての自治体が同じ規模の図書館を持っているわけではありません。
市立・町立図書館を設置している自治体がある一方、公民館の一角に図書室を設けている自治体もあります。
さらに、2025年3月には茂原市立図書館が茂原ショッピングプラザアスモ内へ移転し、2026年7月1日には、いすみ市で初めて「いすみ市図書館」が開館しました。
外房の読書環境は、一方的に縮小しているわけではありません。
民間の書店は全国的な縮小圧力を受けていますが、公共図書館については再編、移転、新設、デジタル化など別の動きも起きています。
この記事では、
「外房から本を入手する場所はなくなってしまうのか」
という問題を、
- 書店
- 公共図書館
- 公民館図書室
- 通信販売
- 電子書籍
- 人口減少
- 高齢化
- 自動車依存
- 地域拠点
という複数の視点から検討します。
最初に結論~書店と図書館は同じ問題ではない
最初に結論を示すと、今後の外房では、
民間書店は地域中心都市への集中がさらに進む可能性が高い一方、公共図書館・図書室は自治体による公共サービスとして一定程度維持される可能性が高い
と考えられます。
ただし、
書店がある
=十分な読書環境がある
でも、
図書館がある
=書店がなくても問題ない
でもありません。
両者は役割が異なるからです。
書店は、
「欲しい本を購入する場所」
であり、
図書館は、
「資料へアクセスする公共施設」
です。
したがって地域の読書環境は、
地域の本へのアクセス
=書店へのアクセス
+図書館へのアクセス
+図書館間貸借
+インターネット通販
+電子書籍
という複数の経路で考える必要があります。
これは公式指標ではなく、本記事で地域の読書環境を整理するための考え方です。
全国の書店数は長期的に大きく減少している
まず、外房だけの問題ではないことを確認しておく必要があります。
日本出版インフラセンターの書店マスタを基にした出版科学研究所の統計では、登録書店数は2003年度に20,880店ありました。
2024年度には10,417店となり、さらに2025年度末には9,993店となっています。
つまり約20年間で、
20,880店
↓
9,993店
まで減ったことになります。
単純計算では半分以下に近い水準です。
特に重要なのは、一時的な景気後退による閉店ではないことです。
長期間にわたり減少が続いています。
したがって、
「景気が回復すれば昔のように町の本屋が戻る」
と考えることには慎重であるべきでしょう。
紙の出版市場そのものも縮小している
書店経営が難しくなっている背景には、人口減少だけではなく出版市場そのものの構造変化があります。
2025年の紙と電子を合わせた出版市場は約1兆5,462億円でした。
その中で紙の出版物市場は1兆円を下回りました。
一方、紙の書籍販売額は約5,939億円で、前年よりわずかに増加しました。
ここから分かるのは、
「本そのものが完全に読まれなくなった」
という単純な話ではありません。
むしろ、
- 紙から電子へ
- 書店からインターネット通販へ
- 雑誌から別の情報媒体へ
という購入・情報取得手段の変化が進んでいます。
特に雑誌の縮小は書店にとって大きな問題です。
以前の町の書店では、書籍だけでなく、
などを定期的に買う顧客が重要でした。
この需要が減ると、来店頻度そのものが低下します。
書店経営を人口だけで説明してはいけない
地方書店の撤退は、
人口減少
↓
客が減る
↓
閉店
だけで説明できません。
書店経営を簡単に表すなら、
書店利益
=書籍・雑誌等の売上
-仕入関連費
-人件費
-家賃
-電気料金
-物流費
-店舗維持費
-その他経費
となります。
人口が減れば売上にはマイナスですが、それだけではありません。
インターネット通販、電子書籍、コンビニエンスストアなどとの競争があります。
さらに地方では、
「町全体では本を買う人がいる」
ことと、
「1店舗を維持できるだけの売上が集中する」
ことは同じではありません。
外房では書店が地域中心都市へ集まりやすい
2026年8月時点で確認できる外房の代表的な書店を見ると、地域差が明確です。
茂原市には蔦屋書店茂原店があります。
館山市には宮沢書店本店や宮沢書店TSUTAYA館山店があります。
鴨川市には鴨川書店やTSUTAYA鴨川店があります。
いすみ市では井上書店、土屋鍾文堂、伊丹屋などの書店が確認できます。
勝浦市にも既存の書店があります。
御宿町にも地域の書店が確認できます。
一宮町には小規模な独立系書店も存在します。
つまり、
「外房にはもう書店がない」
という表現は正確ではありません。
一方、
どの町にも大型書店があり、多数の新刊から自由に選べる環境がある
とも言えません。
外房の書店問題は「ゼロか一か」だけでは測れない
書店については、
書店が存在する
=1
存在しない
=0
という評価だけでは不十分です。
実際の利便性は、
書店アクセス
=店舗数
×品揃え
×営業時間
×交通利便性
×利用者の移動能力
のような要素で決まります。
これも公式指標ではなく、分析のための概念です。
例えば町内に1軒の書店があっても、
- 欲しい専門書がない
- 新刊の種類が少ない
- 自動車がなければ行けない
なら、大都市の書店とは機能が異なります。
逆に小規模書店でも、
- 教科書
- 学習参考書
- 地域資料
- 文具
- 地元学校への納品
などを扱うことで、地域では重要な役割を果たしている場合があります。
小さな書店には大型店とは違う役割がある
地方の小規模書店を、
「大型書店より品揃えが少ないから不要」
と評価するのも適切ではありません。
地域書店には、
- 学校教材
- 教科書
- 地域出版物
- 文具
- 地域住民からの取り寄せ
- 行政・学校との取引
など、大型店とは異なる機能があります。
特に高齢者の場合、インターネット通販や電子書籍が使えるとは限りません。
したがって、
Amazonなどがある
=地域書店が不要
という関係にはなりません。
ただし小規模書店を公費だけで維持するのも容易ではない
一方で、
「文化的に必要だから書店を補助金で維持すればよい」
という考え方にも限界があります。
民間書店を維持するには継続的な売上が必要です。
書店1店舗を維持する年間必要売上を考えると、
必要売上高
=固定費
÷粗利益率
という関係があります。
家賃、人件費、光熱費などが存在する以上、一定以上の販売量がなければ営業を続けることはできません。
人口数千人規模の自治体すべてに大型書店を復活させる政策は、現実性が高いとは言えません。
では外房の図書館はどうなっているのか
ここから公共図書館を見ます。
千葉県統計年鑑の2023年度公共図書館統計では、外房・南房総地域に、
- 茂原市立図書館
- 勝浦市立図書館
- 館山市図書館
- 鴨川市立図書館
- 南房総市図書館
- 大多喜町立大多喜図書館天賞文庫
などがあります。
一方、
- 一宮町
- 睦沢町
- 長生村
- 白子町
- 長柄町
- 長南町
- 御宿町
などでは、公民館や文化施設内の図書室が読書サービスを担っていました。
そして当時のいすみ市も、大原・岬・夷隅の各公民館図書室を中心とする体制でした。
この構造が2026年に変化しました。
いすみ市に2026年7月、市として初めて図書館が開館
いすみ市では2026年7月1日、大原文化センター2階に「いすみ市図書館」が開館しました。
これは重要な変化です。
それまでいすみ市の公共読書施設は公民館図書室を中心としていました。
新しい図書館では、開館時間が午前9時から午後7時となっています。
一方、公民館図書室は午前9時から午後5時です。
図書・雑誌は合わせて10冊まで、3週間借りることができます。
さらに、市内所蔵資料を予約し、図書館だけでなく近くの公民館図書室で受け取る仕組みもあります。
つまり、
大原に中央的図書館
+岬・夷隅の図書室
というネットワーク型に変わったと考えることができます。
いすみ市図書館の本当の意味は建物を一つ増やしたことではない
図書館新設というと、
「立派な建物ができた」
ことが注目されがちです。
しかし地域サービスとして重要なのは建物そのものではありません。
いすみ市の場合、
中央施設
+地域図書室
+蔵書検索
+予約
+取り寄せ
を組み合わせたことに意味があります。
これは人口密度の低い地域では重要です。
市域が広い自治体で、
「全住民が中央図書館まで行く」
ことを前提にするのは現実的ではありません。
外房の図書館規模には大きな差がある
2023年度の千葉県統計年鑑によると、主な施設の蔵書数は次のようになっていました。
| 施設 |
蔵書冊数 |
年間貸出冊数 |
| 茂原市立図書館 |
約23.5万冊 |
約21.9万冊 |
| 館山市図書館 |
約16.3万冊 |
約11.2万冊 |
| 南房総市図書館 |
約13.6万冊 |
約7.2万冊 |
| 鴨川市立図書館 |
約10.6万冊 |
約10.8万冊 |
| 大多喜図書館天賞文庫 |
約5.0万冊 |
約3.7万冊 |
| 勝浦市立図書館 |
約4.1万冊 |
約2.8万冊 |
| 当時のいすみ市大原公民館 |
約5.7万冊 |
約3.7万冊 |
| 長生村文化会館 |
約3.8万冊 |
約1.0万冊 |
| 睦沢町中央公民館図書室 |
約3.0万冊 |
約1.5万冊 |
| 長柄町公民館図書室 |
約2.5万冊 |
約1.8万冊 |
| 白子町青少年センター図書室 |
約1.6万冊 |
約0.5万冊 |
| 一宮町まちの図書室 |
約1.5万冊 |
約1.4万冊 |
| 長南町中央公民館 |
約0.9万冊 |
約0.2万冊 |
| 御宿町公民館 |
約0.6万冊 |
約0.2万冊 |
※2023年度の千葉県統計年鑑「公共図書館」を基礎として整理。2026年現在の蔵書数ではないため、新設・移転・購入・除籍によって現在とは異なる。
この表からも、同じ「図書館・図書室」と呼ばれる施設でも規模が大きく違うことが分かります。
蔵書数だけで図書館を評価してはいけない
ただし、
蔵書20万冊
>
蔵書5万冊
だから前者が5倍優れている、というわけではありません。
重要なのは、
- 新しい本が継続して入るか
- 必要な本を探せるか
- 他館から取り寄せられるか
- 専門職員に相談できるか
- 子どもが利用できるか
- 高齢者が行けるか
- 学習スペースがあるか
- 開館時間が利用者に合うか
です。
地方の小規模図書室では、すべての分野の本を大量に持つことはできません。
そこで重要になるのが図書館間のネットワークです。
千葉県では県立図書館から本を取り寄せられる
千葉県では、市町村立図書館や読書施設と県立図書館の間で資料を貸し借りする仕組みがあります。
これは外房の小規模自治体にとって重要です。
例えば、
自分の町の図書室にはない
↓
県立図書館・他自治体から取り寄せる
↓
近くの図書室で受け取る
という仕組みが機能すれば、
「小さな町だから数千冊しか利用できない」
という状態をある程度改善できます。
したがって地方図書館では、
自館蔵書数
だけではなく、
利用者がアクセス可能な図書館ネットワーク全体の蔵書
を見る必要があります。
御宿町のような小規模自治体ではネットワークの価値が大きい
御宿町の2023年度統計では、公民館の蔵書規模は約5,900冊でした。
単独の図書館として見れば大きな規模ではありません。
しかし現在の御宿町公民館では、千葉県立図書館資料の取り寄せも可能です。
また、冷暖房やWi-Fi(Wireless Fidelity・無線通信によるインターネット接続環境)があり、学習・読書スペースとしても利用されています。
ここから重要なことが分かります。
小規模自治体では、
巨大図書館を建設する
ことだけが選択肢ではありません。
小規模図書室
+県立図書館
+他市町村図書館
+電子資料
という方法もあります。
茂原市では図書館を商業施設へ移転した
茂原市立図書館は2025年3月21日、茂原ショッピングプラザアスモ内へ移転しました。
これは地方図書館の将来を考えるうえで興味深い例です。
従来の図書館は駅前のサンヴェルビルにありました。
移転先は商業施設です。
商業施設型図書館には、
- 大きな駐車場
- 買い物との組み合わせ
- 子ども連れでの利用
- 高齢者の利用
- 建物の共同利用
などの利点があります。
特に自動車依存度の高い外房では、
「駅から近いこと」
だけがアクセスの良さとは限りません。
図書館とショッピングセンターの組み合わせは外房と相性がよい可能性がある
外房の生活では、
スーパー
+ドラッグストア
+飲食
+銀行ATM(Automated Teller Machine・現金自動預払機)
+図書館
などを一度の移動で利用できれば、自動車移動の回数を減らせます。
高齢化地域ではこの効果は無視できません。
利用者移動負担を単純化すると、
生活サービス利用負担
=移動距離
×訪問回数
と考えることができます。
複数サービスを一つの場所へ集約すれば、訪問回数を減らすことができます。
ただし、商業施設が将来撤退した場合のリスクも考えておかなければなりません。
図書館を新設すれば地域が活性化する、とは限らない
図書館をめぐっては、
「立派な図書館を作れば交流人口が増える」
という議論があります。
実際に全国には、図書館を中心とした複合施設で多数の来館者を集めている自治体があります。
しかし、
図書館建設
=地域活性化
ではありません。
図書館には、
- 建設費
- 賃借料
- 職員費
- 資料購入費
- システム費
- 光熱費
- 修繕費
が必要です。
重要なのは建設時の来館者数ではなく、
20年、30年にわたり住民が使い続けられるか
です。
書店と図書館は競争相手なのか
「図書館で無料で本を借りられるから書店が売れなくなる」
という議論もあります。
しかし、両者の関係は単純ではありません。
図書館利用者は本への関心が高い人も多く、図書館で知った作家の本を購入することもあります。
一方でベストセラーを大量に貸し出せば、購入需要の一部と競合する可能性も否定できません。
したがって、
図書館
対
書店
という二者択一ではなく、
地域全体で本に触れる人口を維持する
という視点が重要です。
地方では書店と図書館の連携に意味がある
地方では、
図書館が地域書店から本を購入する
ことにも一定の意味があります。
図書館にとっては資料調達であり、地域書店にとっては売上になります。
また、
- 図書館イベントで地域書店が販売
- 地域作家の紹介
- 郷土資料コーナー
- 読書会
- ビブリオバトル
- 子どもの読み聞かせ
なども考えられます。
ただし、これによって地域書店の経営問題がすべて解決するわけではありません。
自治体図書館の年間購入額だけで一般書店を維持できるとは限らないからです。
電子書籍は地方の情報格差を小さくできる
地方にとって電子書籍には大きな利点があります。
物理的な距離がなくなるからです。
電子図書館なら、
自宅
↓
インターネット
↓
電子資料
という形で利用できます。
特に、
- 自動車を運転できない人
- 高齢者
- 障害のある人
- 山間部の住民
には意味があります。
千葉県立図書館でも電子書籍サービスが提供されており、2026年5月末時点で5,600点を超える電子資料が利用可能となっています。
ただし電子書籍ですべて解決するわけではない
電子書籍には限界があります。
すべての本が電子化されているわけではありません。
また、
- スマートフォン
- タブレット
- インターネット
- 利用者登録
- 操作能力
が必要です。
高齢者の中には電子サービスを利用しにくい人もいます。
したがって、
電子書籍
=図書館不要
でも、
電子書籍
=書店不要
でもありません。
高齢化地域ほど「移動」が重要になる
外房では、この問題を読書だけで考えてはいけません。
今後、
免許返納
↓
自動車移動困難
↓
書店・図書館へ行けない
という問題が増える可能性があります。
特に、
店舗や図書館が10キロメートル離れている
場合、
自動車を持つ人には大きな問題でなくても、自動車を持たない人には非常に大きな距離になります。
したがって、
図書館アクセス
=施設数
ではありません。
実際には、
図書館アクセス
=距離
+交通手段
+開館時間
+身体条件
です。
今後の外房で大型書店が各町に増える可能性は高くない
人口動態と全国の書店数減少を考えると、
御宿町
大多喜町
長南町
長柄町
睦沢町
白子町
など人口規模の小さい自治体に、今後大型総合書店が次々と出店する可能性は高くないでしょう。
これは悲観論ではありません。
商圏規模から考えた経営上の問題です。
大型書店必要商圏
>
単独町村人口
となる場合、複数自治体を商圏として考える必要があります。
外房の書店は「生活圏単位」で考えた方がよい
今後の現実的な構造は、
茂原圏
茂原市を中心に長生郡から利用。
夷隅圏
いすみ市を中心とし、勝浦・御宿・大多喜にも地域書店が存在。
安房圏
館山・鴨川を主要な書籍購入拠点とする。
という形です。
行政区域ごとに大型店を置くよりも、
生活圏単位で一定規模の書店を維持する
方が現実的です。
一方、図書館はもう少し細かい配置が必要
書店と違って公共図書館には社会教育という役割があります。
したがって、
「人口が少ないから全部閉鎖して中心都市の図書館だけ利用すればよい」
とも言い切れません。
子どもや高齢者は自由に自動車で移動できないからです。
したがって外房では、
中心図書館
+地域図書室
+学校図書館
+図書館間貸借
+電子図書館
という構造が合理的です。
いすみ市方式は外房の一つの現実的モデルになり得る
2026年に始まったいすみ市の方式は興味深いものです。
大原に市立図書館を置き、
岬・夷隅には既存の公民館図書室を残す。
さらに、蔵書検索・予約を利用して近くの施設で受け取れるようにする。
これは、
すべての地域に大規模図書館を建設する
わけでも、
中央図書館だけに集約する
わけでもありません。
中央
+分散拠点
という方式です。
人口密度の低い自治体では合理性があります。
今後の図書館に必要なのは「本の倉庫」以上の役割
人口減少が進む地域で図書館を維持するには、
「本が並んでいる施設」
だけでは利用価値が弱くなる可能性があります。
今後は、
- 読書
- 学習
- 調査
- インターネット利用
- 地域資料
- 子育て
- 高齢者の居場所
- 市民活動
などを組み合わせる必要があります。
ただし、
何でも図書館に入れればよい
という意味ではありません。
図書館の役割を広げすぎる危険もある
図書館に、
観光
カフェ
交流
子育て
イベント
コワーキング
などをすべて求める議論があります。
しかし、本来の図書館機能が弱くなってしまえば本末転倒です。
図書館の基本機能は、
です。
交流施設として人気があっても、必要な資料を探せないなら図書館として十分とはいえません。
今後、重要になるのは蔵書数より「アクセス可能資料数」
地方図書館では、今後この考え方が特に重要になります。
例えば小さな図書室に2万冊しかなくても、
県立図書館
+周辺市町村
+電子書籍
を利用できれば、実際に利用可能な資料ははるかに多くなります。
したがって、
地域読書資源
=自館蔵書
+相互貸借可能蔵書
+電子資料
として考える方が合理的です。
これは本記事での独自整理で、公式指標ではありません。
外房の書店と図書館を維持する現実的な5つの方向
1 地域中心都市の書店を維持する
各町に大型店を復活させるより、
茂原
いすみ
館山
鴨川
などの地域中心都市で一定規模の書店を維持する方が現実的です。
2 小規模書店は専門性を持つ
小規模店が大型店と品揃えだけで競争するのは難しくなっています。
そこで、
- 地域本
- 文芸
- 子どもの本
- 教科書
- 学習参考書
- 独立系出版物
など、地域ごとの特色を持つ方法があります。
3 図書館はネットワーク化する
単独施設ですべてを保有しようとせず、
県立図書館
+市町村図書館
+公民館図書室
を接続します。
4 電子資料を補完的に利用する
紙を廃止するのではなく、
紙
+電子
で利用機会を増やします。
5 図書館を生活動線の中へ置く
茂原市のような商業施設への配置は、その一つの方法です。
買い物と図書館利用を同時に行える場所は、自動車依存地域では一定の合理性があります。
現実性の低い主張
外房の書店・図書館問題について、次のような主張には注意が必要です。
「ネット通販があるから書店はいらない」
高齢者、子ども、地域文化、実際に本を見て選ぶ機能を無視しています。
「図書館があれば書店はいらない」
購入と貸出は役割が異なります。
「すべての町に大型書店を誘致すべきだ」
人口・商圏から成立しない可能性があります。
「立派な図書館を建てれば地域活性化する」
建設費だけでなく長期運営費を見る必要があります。
「電子図書館なら建物はいらない」
デジタル利用が難しい住民もいます。
「書店を補助金で支援すれば維持できる」
補助終了後の採算が必要です。
書店がなくなることには文化以外の問題もある
書店は文化施設として語られがちですが、経済的な側面もあります。
書店では、
「目的の本を買う」
だけではありません。
棚を見ることによって、
知らなかった本
↓
関心
↓
購入
という偶然の発見があります。
インターネットでは利用履歴に基づく推薦が中心になりやすいのに対し、書店では自分の関心外の本を偶然見る機会があります。
これは数値化しにくい価値です。
ただし、価値があることと、事業として黒字になることは別問題です。
図書館にも同じ問題がある
図書館についても、
社会的に必要
≠
どの施設規模でも維持可能
です。
図書館の社会的価値と財政負担は両方を見る必要があります。
図書館の社会的便益を概念的に表すなら、
図書館便益
=資料利用価値
+学習機会
+情報格差縮小
+子どもの読書支援
+地域資料保存
+居場所機能
-運営費用
となります。
これも公式の計算式ではありません。
重要なのは、
「赤字だから不要」
でも、
「文化施設だから費用を考えなくてよい」
でもないということです。
外房の今後は「一つの大型施設」ではなく「ネットワーク」にある
外房は人口密度が低く、市町村が広く分散しています。
この地域条件を考えると、
大型書店1店
大型図書館1館
ですべてを解決するのは難しいでしょう。
現実的なのは、
地域書店
+市町村図書館
+公民館図書室
+学校図書館
+県立図書館
+電子書籍
+インターネット通販
を組み合わせることです。
現実的な結論~外房で本へのアクセスをどう残すか
外房の書店と図書館を調べると、二つの異なる流れが見えてきます。
民間書店については、全国的な店舗減少が続いています。
2025年度末には全国の登録書店数が1万店を下回りました。
人口減少が進む外房だけが、この流れから完全に逃れることは難しいでしょう。
今後は、
各自治体に大型書店を維持する構造から、茂原・いすみ・館山・鴨川など地域中心地の書店を周辺地域の住民も利用する構造
が一層強まる可能性があります。
一方、公共図書館では別の動きがあります。
茂原市では2025年に図書館を商業施設へ移転しました。
いすみ市では2026年7月に、市として初めて市立図書館が開館しました。
これは地方の読書環境が単純に縮小しているわけではなく、
施設の再配置とネットワーク化が進んでいる
ことを示しています。
外房の課題は「本がない」ことより「本まで到達できるか」である
今後、高齢化と人口減少が進む外房では、
蔵書が何冊あるか
だけでなく、
住民が実際にその本へ到達できるか
が重要になります。
本へのアクセスを阻害するものは、
本の不足だけではありません。
- 距離
- 自動車を運転できるか
- 開館時間
- インターネット利用能力
- 身体状況
なども関係します。
したがって、今後の外房で必要なのは、
「豪華な図書館を作ること」
でも、
「町の本屋を昔の数まで復活させること」
でもありません。
より現実的なのは、
地域中心都市には持続可能な書店を残し、小規模自治体では図書館・図書室を維持しながら、県立図書館、周辺自治体、電子資料を結び、本へのアクセスを地域全体で保証すること
です。
書店の存在と図書館の存在を別々に考えるのではなく、
住民が「読みたい本を知り、探し、手に取ることができる仕組み」をどこまで維持できるか。
これが、人口減少が進む外房で書店と図書館の将来を考える際の、本質的な問題ではないでしょうか。