地域分析記事

地域の暮らしと地域課題を数学とデータで考える

30年後シリーズ

30年後シリーズ

外房の生活インフラは30年後どこまで残るのか

千葉県の外房に暮らしていると、現在の生活だけを見れば、人口減少がすぐに生活を困難にするようには感じないかもしれません。

道路があり、水道があり、スーパーやドラッグストアがあり、自動車を使えば病院にも行けます。宅配便も届き、ガソリンも給油できます。地域によって差はありますが、「地方だから生活できない」という状況ではありません。

しかし、問題は30年後です。

人口が減少したとき、道路、水道、医療、介護、商店、公共交通、ガソリンスタンド、ごみ収集といった生活インフラは、現在と同じ形で維持されるのでしょうか。

結論からいえば、外房から生活インフラそのものが消えてしまう可能性は低いでしょう。

一方で、「どこに住んでいても、今と同じ距離、同じ頻度、同じ料金で利用できる」という状態は維持しにくくなると考える方が現実的です。

30年後の外房で起こる可能性が高いのは、生活インフラの消滅ではありません。

集約、広域化、拠点化です。

2050年はすでに予測できる未来である

国立社会保障・人口問題研究所は、2020年の国勢調査を基準として、市区町村別の人口を2050年まで推計しています。つまり、現在から約30年後を完全に予測することはできなくても、その少し手前にある2050年までなら、人口構造についてかなり具体的な見通しが存在しています。

重要なのは、単純に人口が減ることではありません。

道路の延長が人口と同じ割合で短くなるわけではなく、水道管も人口が減った地区だけ自動的に撤去できるわけではありません。消防、救急、ごみ収集、郵便なども、利用者が半分になったから業務量を単純に半分にできるものではありません。

ここに人口減少地域特有の問題があります。

仮に人口が3割減少しても、地域の面積が3割小さくなるわけではありません。

むしろ、少ない住民で広い地域のインフラを支えることになります。

したがって外房の30年後を考えるとき、本当に重要なのは人口の総数ではなく、「一人の住民を支えるために、どれだけ長い道路、水道管、移動距離、行政サービスを維持しなければならないか」という人口密度の問題なのです。

水道は残る。ただし「町ごとの水道」ではなくなっていく

生活インフラの中でも、水道は比較的最後まで維持される可能性が高いものです。

水は生活そのものに直結しており、行政が簡単に供給をやめることはできません。

しかし、その運営方法はすでに変わり始めています。

勝浦市、いすみ市、大多喜町、御宿町では、2025年4月1日にそれぞれの水道事業が統合され、現在は夷隅郡市広域市町村圏事務組合が2市2町の水道事業を運営しています。

これは30年後の外房を考えるうえで非常に重要な動きです。

人口が減少したから水道をなくすのではなく、自治体単独で維持する仕組みをやめ、広い地域で共同運営することによって残そうとしているからです。

今後、水道施設や管路の更新が必要になる一方、料金収入の基礎となる給水人口は減っていきます。この構造では、小さな自治体がそれぞれ浄水施設、設備、人員、料金徴収などを抱えるより、広域化した方が合理的です。

そのため30年後も外房で水道が使えなくなるというより、事業主体の大型化、施設の統合、設備の集約がさらに進む可能性の方が高いでしょう。

ただし、それは「現在と同じ料金で維持できる」ことを意味しません。

利用者が減る一方で老朽化した管路を更新するなら、一人当たりの維持負担が上昇する可能性は残ります。

水道は残る。しかし、維持コストの問題は残る。

これが最も現実的な見方でしょう。

道路もなくならない。しかし「すべてを同じ水準で維持する」ことが難しくなる

道路も水道と似ています。

主要国道や県道、自治体間を結ぶ幹線道路が30年後になくなるとは考えにくいでしょう。物流、救急、防災、通勤、観光など、地域そのものを維持するために必要だからです。

問題になるのは生活道路です。

人口が減り、空き家が増えても道路そのものは残ります。数世帯しか住んでいない地区でも、舗装補修、側溝、草刈り、倒木対策などは必要です。

ここでも人口減少とインフラ量が比例しない問題が生じます。

その結果として将来起こりやすいのは、「道路がなくなる」というより、維持管理の優先順位が明確になることです。

主要道路は重点的に維持する。一方、利用量の少ない道路では補修頻度を下げる。行政だけではなく、地域住民や民間事業者との役割分担を増やす。

そのような差が現在以上に大きくなると考えた方が自然です。

30年後の外房では、同じ市町村の中でも、幹線道路に近い地区と山間部や人口の少ない地区との生活条件の差が大きくなっている可能性があります。

最も先に変わるのは公共交通かもしれない

水道や道路より、人口減少の影響を直接受けやすいのが公共交通です。

バスや鉄道は、利用者が減れば運賃収入も減ります。それでも運転士、車両、燃料、整備などの費用は必要です。

実際、外房の自治体では、すでに地域公共交通を行政が支える仕組みが導入されています。御宿町でも地域公共交通確保のための事業が行われており、過去の国の事業評価では利用者数や収入目標が未達となった年度もあります。

30年後に考えられるのは、現在の路線をそのまま維持することではなく、交通手段そのものを再設計することです。

大型バスが決められた路線を一日に何便も走る仕組みから、予約型の乗合交通、小型車両、病院や商業施設への目的地型交通などへ移行する可能性があります。

つまり、

公共交通がなくなるのではなく、「時刻表に合わせて乗る交通」から「必要な人を必要な場所へ運ぶ交通」へ変わる。

外房の人口密度を考えれば、この方向の方が合理的です。

スーパーや商店は「人口」より「商圏」で残る場所が決まる

スーパー、ドラッグストア、ホームセンターなどは行政サービスではありません。

採算が取れなければ撤退します。

そのため、水道や道路よりも人口減少の影響が早く現れます。

ただし、人口が減ったから一律に店がなくなるわけでもありません。

重要なのは商圏です。

周辺地域から自動車で客を集められる店舗、幹線道路沿いの店舗、複数の生活サービスをまとめて提供できる店舗は残りやすい。一方、小さな地区の住民だけを対象とする店舗は経営が難しくなります。

その結果、30年後の外房では商業施設が現在以上に拠点へ集中する可能性があります。

自宅から数分の場所に店舗がある地域と、買い物のために10キロ、20キロ移動しなければならない地域との差が広がるかもしれません。

そのとき重要になるのが宅配です。

人口が少ない地域では、「店舗を各地区に置く」よりも「商品を各家庭へ運ぶ」方が合理的になる場合があります。

したがって、人口減少地域の買い物問題は単純な店舗数の問題ではありません。

店舗型サービスから配送型サービスへの転換も含めて考える必要があります。

ガソリンスタンドは重要な弱点になる

自動車依存度の高い外房では、公共交通以上に注意したいのがガソリンスタンドです。

資源エネルギー庁も、ガソリン需要の減少や後継者問題などを背景として給油所が減少する地域を「SS(Service Station・ガソリンスタンド)過疎地」として対策の対象にしています。

外房でガソリンスタンドが減ると、都市部以上に影響が大きくなります。

鉄道やバスが少ないため、自動車そのものが生活インフラになっているからです。

ただし、30年という期間で考えると、自動車側も変化します。電動化が進めば、家庭や商業施設で充電できる車が増える可能性があります。

このため30年後の問題は、「ガソリンスタンドが何軒残るか」だけではありません。

地域で自動車を動かすためのエネルギーをどのように供給するのかという問題へ変化している可能性があります。

給油所が減る一方、自宅充電や拠点型充電設備が普及すれば、自動車利用そのものは維持できるかもしれません。

ここは30年間で最も構造が変化する可能性がある分野です。

医療は「病院がなくなる」より「近くですべて診てもらえなくなる」

医療も重要です。

千葉県は現在の保健医療計画でも、地域ごとの医師確保や医師偏在を政策課題として扱っています。

人口が減少すれば患者数も減りますが、高齢者が多い地域では人口減少と同じ割合で医療需要が減るとは限りません。

むしろ問題は、医療を提供する側の人材です。

医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師をはじめ、多くの人員が必要です。人口の少ない地域ですべての診療科を維持することは難しくなります。

その結果として考えられるのは、医療機関そのものが全面的になくなることよりも、医療機関ごとの役割分担が明確になることです。

日常的な診療は地域で受ける。しかし、手術や高度な検査、専門診療は一定規模の病院へ集約する。

オンライン診療や遠隔医療も補助的に使われるでしょう。

つまり30年後には、「病院まで何キロか」という距離だけでは生活の安心度を判断できなくなります。

その病院で何ができるのか。

こちらの方が重要になります。

介護は施設より「人」が問題になる

高齢化する外房で最も難しい問題の一つが介護です。

介護施設を建設すること自体は可能です。

しかし、介護職員、看護職員、ケアマネジャーなどがいなければサービスは提供できません。

特に訪問介護や訪問看護では、人口が薄く分布していることが大きな問題になります。

一人の利用者を訪問し、次の利用者宅まで何キロも移動する場合、都市部より一日に訪問できる人数が少なくなります。

人口密度が低い地域では、移動時間そのものが介護サービスのコストになるのです。

したがって30年後の外房では、施設介護、訪問介護、通所介護、小規模多機能型サービス、送迎などを別々の事業として考えるのではなく、地域単位で組み合わせる必要性が現在以上に高まるでしょう。

介護保険制度が存在していても、事業者や職員がいなければ実際のサービスは提供できません。

制度があることと、サービスを利用できることは別の問題です。

ここは30年後の生活を考えるうえで非常に重要です。

ごみ収集や行政サービスも広域化する

ごみ処理、消防、水道などは、すでに自治体の境界を越えた運営との相性がよい分野です。

実際、御宿町でも、水道事業だけでなく、ごみ処理などについて近隣自治体との広域的な取り組みが進められています。

人口が減れば、町ごとに焼却施設や専門職員を持つより、複数自治体で共同運営した方が効率的になります。

30年後には「御宿町のサービス」「勝浦市のサービス」「いすみ市のサービス」という区分よりも、「夷隅地域として提供するサービス」が増えていても不思議ではありません。

自治体そのものがなくならなくても、実際の行政サービスは広域化していく。

水道ですでに始まった変化が、他の分野でも進む可能性があります。

30年後に残りやすいもの、変わりやすいもの

ここまでを整理すると、生活インフラには性質の違いがあります。

水道、幹線道路、消防、救急、ごみ処理などは公共性が非常に高いため、形を変えながらも維持される可能性が比較的高いでしょう。

一方、スーパー、ガソリンスタンド、飲食店などは民間事業であり、地域の人口や商圏に強く左右されます。

公共交通、診療所、介護サービスはその中間にあります。

社会的には必要ですが、利用者が減れば単独の事業として成立しにくくなるため、行政支援、広域化、集約化、送迎、訪問、デジタル技術などを組み合わせなければ維持できなくなります。

したがって30年後に最も大きな変化が起こるのは、インフラの「有無」ではありません。

インフラまでの距離です。

そして、

サービスを受けるために必要な移動量です。

「外房に住めるか」ではなく「外房のどこに住むか」が重要になる

30年後も外房で生活することは十分可能でしょう。

しかし、どこに住んでも同じ条件で生活できるとは考えにくくなります。

駅、スーパー、医療機関、幹線道路などが比較的近い生活拠点では、人口が減少してもサービスを集約して維持しやすい。

一方、住宅が広く分散している地域では、一つ一つのサービスまでの距離が長くなり、自動車への依存度がさらに高まる可能性があります。

人口減少によって外房全体が一様に衰退するのではありません。

むしろ、

便利な場所と不便な場所の差が大きくなる。

これが30年後の外房を考えるうえで最も重要な視点ではないでしょうか。

移住を考える場合も、現在の景観や住宅価格だけでなく、30年後に生活拠点となり得る場所との距離を見る必要があります。

若いうちは車で30分走ることが問題にならなくても、80歳になったときにも同じ移動ができるとは限りません。

住宅そのものより、周囲にどのような機能が残りそうなのかを見る必要があります。

外房は消えるのではなく「薄く、広く」から「小さく、集約して」へ変わる

30年後の外房から、水道も道路も医療も商店もすべて消えてしまうという未来は現実的ではありません。

しかし、現在の生活環境がそのまま維持されると考えることも現実的ではありません。

人口が減少すれば、生活インフラは再配置されます。

水道は広域化し、医療は役割分担し、公共交通は予約型へ変わり、店舗は拠点へ集まり、商品やサービスの一部は家庭まで運ばれるようになるでしょう。

つまり外房の30年後を表す言葉は「消滅」ではありません。

集約です。

これまでの地方は、広い地域に人が住み、その人々を道路、商店、病院、学校、公共交通などが支えてきました。

人口が減少する社会では、この構造をそのまま維持することが難しくなります。

これから必要になるのは、人口を無理に以前の規模へ戻そうとすることだけではなく、少ない人口でも生活できる地域構造をつくることです。

外房で本当に問われているのは、

30年後に人口が何人残るのかではありません。

その人口で、どの範囲まで生活圏を維持できるのか。

そこに、これからの外房の生活を考える核心があります。

地域の課題を、自分の判断に置き換えて考える

有限会社アードレでは、住まい・車・移住などの大きな選択を、 費用や将来条件をもとに数字で比較し、判断できる形に整理しています。

数字で比較するサービスを見る

病院や診療所で診察を受ければ、それで医療が完結するわけではありません。

薬を処方された場合、患者はその後に薬局へ行き、薬を受け取る必要があります。高齢者にとっては、病院まで行くことだけでなく、診察後に別の場所へ移動して薬を受け取ることまで含めて「通院」です。

人口減少が進む地方では、病院や診療所の将来が問題になる一方、薬局についてはあまり注目されません。しかし、医療機関が残っていても、近くに薬局がなくなれば、地域住民にとって医療へのアクセスは確実に変化します。

では、地方の薬局は30年後も現在と同じように近くに残っているのでしょうか。

最初に結論を述べると、地方から薬局そのものが一斉になくなる可能性は低いものの、「自宅や診療所の近くに薬局があり、営業時間中に薬剤師がいて、必要な薬をその場で受け取れる」という現在の形がすべての地域で維持されるとは考えにくいでしょう。

むしろ将来は、店舗の集約、営業時間の短縮、在宅訪問、オンライン服薬指導、薬の配送、広域的な薬局間連携などを組み合わせ、「薬局という店舗を残す」ことから「処方薬を受け取れる機能を残す」ことへ重点が移っていく可能性があります。

全国には6万を超える薬局があるが、地域差は大きい

厚生労働省の資料では、日本全国の薬局数は6万店を超えています。一見すると、薬局不足はそれほど深刻ではないようにも見えます。

しかし、全国の総数だけでは地方の実態は分かりません。

厚生労働省の統計では、薬局が一つもない町村も存在しています。また、薬剤師についても全国に均等に配置されているわけではなく、都市部へ集中する傾向があります。厚生労働省は薬剤師についても「偏在」という問題を政策課題として扱っています。

つまり、

全国に薬局が多い ≠ どの地域にも十分な薬局がある

ということです。

さらに、厚生労働省が2025年の中央社会保険医療協議会で示した資料では、薬局1店舗当たりの勤務薬剤師数は平均2.7人、処方箋枚数は1か月当たり約1,100枚とされています。比較的小規模な薬局が多いことが分かります。

地方の小規模薬局を考える場合、この「店舗数」だけでなく「何人の薬剤師で運営しているか」が重要になります。

30年後を考えるとき、人口だけを見てはいけない

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」では、2020年の国勢調査を基準として、市区町村別人口を2050年まで推計しています。

2026年から30年後は2056年です。そのため、市区町村単位で「2056年に薬局が何店残るか」を現在の公的資料から正確に推計することはできません。

しかし、2050年までの人口推計を見るだけでも、多くの地方では人口減少が長期間続くことを前提に考える必要があります。

ここで注意しなければならないのは、

人口が30%減る = 薬の需要も30%減る

とは限らないことです。

医薬品を多く利用するのは高齢者層です。人口全体が減少しても、一定期間は高齢者の割合が高い状態が続く地域があります。

したがって、地域人口が減ったからといって、処方箋需要が同じ割合で減少するとは限りません。

問題になるのは、むしろ需要よりも供給側です。

薬局経営には、患者数が減っても残る費用がある

薬局にも固定的な費用があります。

店舗を営業するには、薬剤師や事務職員の人件費、建物の賃料や維持費、調剤設備、レセプトコンピューター、通信設備、医薬品在庫、電気料金などが必要です。

患者が1割減ったからといって、これらの費用をすべて1割減らせるわけではありません。

極端に考えれば、1日に100人の患者が来る薬局でも30人しか来ない薬局でも、営業する以上は一定時間、薬剤師を配置しなければなりません。

そのため、

患者数の減少率 ≠ 薬局運営費の減少率

となります。

これは人口減少地域のスーパー、病院、公共交通などにも共通する構造です。

患者数が一定水準を下回ると、地域には薬を必要とする住民がいても、店舗として採算を維持することが難しくなる可能性があります。

つまり、

需要がある ≠ 現在と同じ店舗形態で事業が成立する

という問題です。

薬剤師が確保できなければ店舗だけあっても機能しない

さらに重要なのが薬剤師です。

薬局は建物だけでは営業できません。

厚生労働省は薬剤師の地域偏在を把握するため、薬剤師偏在指標を整備しています。地域によって薬剤師の確保状況が異なること自体が、すでに政策上の課題になっています。

人口減少地域では、薬局経営の採算だけでなく、そこで働く薬剤師を継続的に確保できるかという問題が加わります。

例えば、経営者が高齢になって後継者がいない場合、患者が一定数残っていたとしても閉局する可能性があります。

チェーン薬局であっても、薬剤師を確保できなければ営業時間の短縮や店舗統合という判断が必要になるでしょう。

したがって将来の薬局を考える場合には、

薬局数 +薬剤師数 +営業時間 +必要な医薬品を供給できる能力

を一体として見る必要があります。

「近くに薬局がある」だけでは十分ではない

生活者にとって重要なのは、行政区域内に薬局が何店舗あるかではありません。

例えば、自宅から10km離れた場所に薬局が1軒残っていたとしても、自動車を運転できない高齢者にとって利用できるとは限りません。

診察を受けた病院から薬局まで移動しなければならない場合もあります。

また、営業時間が短くなれば、診療時間との組み合わせによっては当日に薬を受け取れないことも考えられます。

そこで、地域住民にとっての「薬へのアクセス」を、分析のために次のように整理できます。

薬へのアクセス =薬局・調剤拠点の存在 +薬剤師の確保 +必要な薬の在庫・調達能力 +営業時間 +患者の移動手段 +在宅訪問 +配送 +オンライン利用能力

これは公的な指標ではなく、問題構造を理解するための概念的整理です。

この式から分かるのは、薬局が1店舗減ったから直ちに地域医療が維持できなくなるわけでもなければ、1店舗残ったから安心ともいえないということです。

オンライン服薬指導があれば解決するのか

将来の有力な選択肢の一つがオンライン服薬指導です。

薬剤師と情報通信機器を使って服薬指導を行うことで、患者が毎回薬局まで移動しなくてもよい場面を増やせます。

厚生労働省も、オンライン服薬指導や電子処方箋などを含む薬局業務のデジタル化を進めています。

地方では非常に重要な仕組みになる可能性があります。

ただし、

オンライン服薬指導ができる = 薬局へのアクセス問題がすべて解決する

わけではありません。

薬そのものは患者の手元へ届ける必要があります。

スマートフォンや通信環境を利用できることも前提になります。

高齢者が自分で電子処方箋、オンライン予約、ビデオ通話、決済などを操作できるかという問題もあります。

さらに、薬剤師そのものが不足していれば、オンラインに切り替えただけでは人的資源は増えません。

デジタル化は「患者の移動」を減らすことはできますが、「薬剤師が必要」という構造までなくすものではありません。

在宅訪問も万能ではない

在宅療養者に対して薬剤師が訪問する仕組みも重要になります。

特に自動車を運転できない高齢者、寝たきりの人、複数の薬を使用している人にとって、薬剤師が自宅を訪問して薬の管理まで確認することには大きな意味があります。

一方で、訪問サービスには地方特有の問題があります。

利用者の家が離れていれば、薬剤師は移動しなければなりません。

訪問薬剤師の勤務時間を単純化すると、

勤務時間 =服薬管理・指導時間 +移動時間 +調剤時間 +記録・連絡・調整時間

となります。

これも公式指標ではなく、構造を理解するための整理です。

人口密度が低い地域では、患者が減っても一人当たりの移動距離は短くなりません。

これは訪問看護や訪問介護と同じ問題です。

患者が薬局へ行かなくてよくなる代わりに、薬剤師が患者のところへ移動することになります。

したがって、在宅訪問を増やせばすべて解決するわけではありません。

30年後に残りやすい薬局と残りにくい薬局

以上を考えると、将来も残りやすいのは、単に現在患者数が多い薬局だけではないでしょう。

地域の複数医療機関から処方箋を受け付けられ、在宅医療にも対応し、必要に応じてオンライン服薬指導や配送を利用できる薬局ほど、地域医療の拠点として残る可能性があります。

厚生労働省も、外来時だけでなく在宅医療や入退院時の情報連携などに対応する「地域連携薬局」の制度を設けています。

反対に、特定の一つの診療所からの処方箋への依存度が高く、地域人口が減り、後継者がおらず、薬剤師の採用も難しい小規模薬局は、今後厳しい条件になる可能性があります。

ただし、個別薬局の将来の閉店・存続可能性は経営情報が公開されていないため、外部から正確に判断することはできません。

将来は「各地区に1店舗」より広域ネットワークになる可能性がある

人口が大幅に減少した地域で、すべての薬局を現在と同じ店舗数、同じ営業時間で維持することは現実的でない場合があります。

一方で、薬局を大きな都市へ集中させるだけでは、自動車を運転できない高齢者の負担が増えます。

そこで現実的なのは、

一定規模の調剤拠点 +診療所との連携 +在宅訪問 +オンライン服薬指導 +配送 +地域交通

を組み合わせる方法でしょう。

これは、現在の薬局をすべてそのまま残す考え方とは異なります。

守る対象を、

「薬局という店舗」から「住民が必要な薬を安全に受け取れる機能」へ変える

ということです。

病院が残っていても、薬を受け取れなければ医療アクセスは完成しない

地方医療を考えるとき、病院数や医師数が注目されやすいのですが、住民の生活から考えると、その後の処方薬まで含める必要があります。

特に高齢者の場合、

自宅から病院へ行き、診察を受け、薬局へ移動し、薬を受け取り、自宅へ戻るところまでが一連の医療行動です。

したがって、

病院で診察を受けられる ≠ 必要な薬まで受け取れる

と考える必要があります。

今後、地方の医療機関が集約されれば、病院と薬局の立地も変わっていく可能性があります。そのとき、医療提供者側の効率だけでなく、患者本人の移動時間、家族による送迎、交通費、待ち時間まで含めて評価する必要があります。

地方の薬局はなくなるのではなく、「形」が変わる可能性が高い

30年後の地方で、現在と同じ数の薬局が、現在と同じ場所で、現在と同じ営業時間を維持している可能性は高いとはいえません。

人口減少、患者数の変化、薬剤師の地域偏在、後継者問題、店舗経営の固定費などを考えれば、一定の集約は避けにくいでしょう。

しかし、それは直ちに「地方では薬を受け取れなくなる」という意味でもありません。

調剤拠点を集約しながら、電子処方箋、オンライン服薬指導、在宅訪問、配送、地域交通などを組み合わせれば、薬局店舗が減っても薬へのアクセスを維持できる地域はあります。

重要なのは、薬局数を守ることそのものではありません。

30年後も、住民が必要なときに、必要な薬を、安全に、無理のない移動と負担で受け取れるか。

地方の薬局問題は、この視点から考える必要があります。

人口減少社会で守るべきなのは「現在と同じ店舗配置」ではなく、地域住民が処方薬へ到達できる仕組みそのものではないでしょうか。

地域の課題を、自分の判断に置き換えて考える

有限会社アードレでは、住まい・車・移住などの大きな選択を、 費用や将来条件をもとに数字で比較し、判断できる形に整理しています。

数字で比較するサービスを見る

地方で暮らしていると、ガソリンスタンドがあることを特別な生活インフラだと意識する機会は、それほど多くありません。車で買い物へ行き、通院し、仕事へ向かい、農作業や事業に使う車両に燃料を入れる。灯油を購入する家庭もあります。現在はそれが日常の一部として成立しています。

しかし、人口減少が今後も続き、自動車の燃費が改善し、さらに自動車そのものの電動化が進んでいけば、地方のガソリンスタンドを取り巻く経営環境は今より厳しくなります。

問題は、単純に「電気自動車が増えればガソリンスタンドが不要になる」ということではありません。むしろ地方では、ガソリンの需要が減少していく途中の長い期間に、一定数のガソリン車や軽油を使う車両が残るにもかかわらず、それを支えるガソリンスタンドの方が先に姿を消していく可能性があります。

30年後の地方を考えるとき、本当に重要なのはこちらの問題です。

ガソリンスタンドはすでに大きく減っている

日本のガソリンスタンドは、将来になって突然減り始めるわけではありません。すでに長期間にわたって減少しています。

資源エネルギー庁によると、全国の給油所数は1994年度末に6万421か所ありました。それが2024年度末には2万7009か所まで減少しています。約30年間で半分以下になった計算です。直近でも2023年度末の2万7414か所から、2024年度末には405か所減少しました。

つまり、「30年後にガソリンスタンドが減るのか」という問いを立てる以前に、日本では過去30年間ですでに約3万3000か所の給油所がなくなっています。

しかも、減少の理由を電気自動車だけに求めることはできません。人口減少、自動車の燃費向上によるガソリン需要の縮小、経営者の高齢化や後継者不足、人手不足など、複数の要因が重なっています。資源エネルギー庁も、こうした事情によってガソリンスタンドが減り続けていると認識しています。

この構造を考えると、人口減少の大きな地方ほど問題は深刻になります。

人口が30%減れば、ガソリンの需要も小さくなる

ガソリンスタンドは道路があれば成立する施設ではありません。当然ながら、一定量の燃料を購入する利用者が必要です。

例えば、ある地域に現在1万人が暮らし、3000台の自動車が日常的に利用されているとします。それが30年後に人口6000人となり、保有される自動車が2000台程度まで減ったとすれば、それだけでも地域全体の燃料需要は小さくなります。

さらに、一台当たりの燃料消費量も減少する可能性があります。

ハイブリッド車の普及やエンジンの燃費改善によって、同じ距離を走るために必要なガソリンは以前より少なくなっています。そこへ電気自動車やプラグインハイブリッド車が増えていけば、ガソリンスタンドで販売される燃料の量はさらに減ります。

したがって、

人口減少 × 自動車台数減少 × 燃費改善 × 電動化

という複数の要因が、同時にガソリン需要を押し下げることになります。

地方のガソリンスタンドにとって厳しいのは、利用者がゼロになることではありません。「利用する人はまだかなりいるのに、店舗を維持できるだけの販売量には届かない」という状態になることです。

ここに地方特有の難しさがあります。

「ガソリン車がなくなるまで残る」とは限らない

政府は2035年までに、乗用車の新車販売を電動車100%とする目標を掲げています。ただし、この「電動車」にはEV(Electric Vehicle・電気自動車)だけでなく、HEV(Hybrid Electric Vehicle・ハイブリッド自動車)、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle・プラグインハイブリッド自動車)、FCV(Fuel Cell Vehicle・燃料電池自動車)も含まれます。したがって、2035年になればガソリンを使用する乗用車が販売されなくなる、という意味ではありません。

さらに、自動車は購入してから十年以上使用されることも珍しくありません。

2035年以降も、現在販売されているガソリン車やハイブリッド車は長期間道路を走ります。農業機械、建設機械、トラック、二輪車、発電機などを含めれば、液体燃料への需要はさらに長く残るでしょう。

したがって2040年代、2050年代になっても、地方に石油燃料を必要とする人が完全にいなくなるとは考えにくいのです。

ところが問題は、その少ない需要だけでガソリンスタンドの経営が成立するかどうかです。

仮にある地域で現在三つのガソリンスタンドが営業していて、30年後の燃料需要が現在の半分になったとします。単純に考えれば、三店舗が少ない需要を分け合うより、一店舗に需要を集約した方が経営は成立しやすくなります。

その結果として起きるのは、ガソリンスタンドの完全消滅より先に、給油できる場所の集約でしょう。

三店舗が二店舗になり、二店舗が一店舗になり、住民が給油のために移動する距離が少しずつ長くなっていく可能性があります。

「町に一軒ある」状態になったとき、問題の性質が変わる

資源エネルギー庁は、市町村内のガソリンスタンドが3か所以下となった地域を「SS(Service Station・サービスステーション)過疎地」として扱っています。人口減少や燃料需要の縮小を背景に、このような地域は増加しています。

ガソリンスタンドが三店舗から二店舗になるだけなら、住民生活への影響は限定的に見えるかもしれません。

しかし二店舗が一店舗になると、意味は大きく変わります。

唯一の店舗が設備故障や人手不足で休業すれば、その地域には給油場所がありません。経営者が高齢になり、後継者が見つからなければ、町全体の燃料供給が一つの事業者の経営判断に左右されます。

競争の問題もあります。

都市部では複数のスタンドから価格やサービスを比較できますが、一店舗しかなければ住民に選択肢はありません。一方で、その一店舗に過度な価格競争を求めれば、今度は店舗そのものが維持できなくなります。

つまりガソリンスタンドが極端に少なくなった地域では、ガソリン販売を通常の小売業だけとして考えることが難しくなります。

水道、公共交通、診療所などと同じように、「採算だけでは維持しにくいが、なくなると生活が困る施設」という性格が強くなっていきます。

地方では「最後の一軒」を市場原理だけで維持できるのか

ここから先は、地方のガソリンスタンド問題が地域政策の問題へ変わります。

人口5000人の町と人口50万人の都市では、一店舗のガソリンスタンドが持つ意味が違います。

都市で一店舗が閉店しても、数百メートル先や数キロ先に別の店舗がある場合があります。しかし地方では、一店舗がなくなった結果、次のガソリンスタンドまで十数キロ、場合によってはそれ以上走らなければならなくなることがあります。

さらに地方ほど自動車への依存度が高いという逆説があります。

鉄道やバスが十分にある都市なら、ガソリンスタンドが減っても生活そのものへの影響は比較的小さいでしょう。ところが公共交通の弱い地方では、高齢者の通院、買い物、介護、訪問看護、宅配、農業、建設、行政業務まで自動車に依存しています。

「人口が少ないからガソリンスタンドがなくなる」のに、「人口が少ない地域ほど自動車がなければ暮らしにくい」のです。

ここに、単純な市場原理だけでは解決しにくい構造があります。

実際、国もガソリンスタンドを単なる民間小売店とは位置付けていません。経済産業行政では地域の燃料供給を支える重要な社会インフラとして扱われ、過疎地域での供給体制維持への支援が行われています。2026年にも資源エネルギー庁の研究会で、自治体向けのガソリンスタンド維持に関するガイドライン案が検討されています。

災害時には、ガソリンスタンドの意味がさらに大きくなる

地方の燃料供給を考える際、平常時の採算だけでは評価できないもう一つの理由があります。

災害です。

大規模停電や道路寸断が起きたとき、救急車、消防車、自治体車両、復旧工事車両、発電機などには燃料が必要です。一般家庭でも停電時に自動車を移動手段として使います。

資源エネルギー庁は、自家発電設備を備え、停電時にも給油を継続できるガソリンスタンドを「住民拠点SS」として整備してきました。

これはガソリンスタンドが単なる「車に燃料を売る店」ではなく、災害時のエネルギー供給拠点でもあることを示しています。

とくに房総半島のように台風や停電の影響を受ける可能性がある地域では、平常時には利用量の少ない店舗でも、非常時には地域全体を支える施設になる可能性があります。

経済合理性だけで店舗数を減らした結果、非常時の地域対応力まで低下するのであれば、それは別のコストを生みます。

では30年後、地方のガソリンスタンドはどうなっているのか

30年後に現在と同じ形のガソリンスタンドが、現在と同じ数だけ残っている可能性は高くありません。

一方で、すべてが電気自動車に置き換わり、ガソリンスタンドそのものが不要になっていると考えるのも極端です。

現実には、その中間が長く続く可能性があります。

ガソリンや軽油の販売量は減る。しかしゼロにはならない。電気自動車の充電需要は増える。地域によっては灯油やLP(Liquefied Petroleum・液化石油)ガスなどのエネルギー供給も必要です。さらに災害対応、カーサービス、配送、地域商店的な機能まで組み合わせなければ事業として成立しにくくなるでしょう。

つまり30年後に残っている施設は、現在の意味での「ガソリンスタンド」というより、地域エネルギー拠点へ変わっている可能性があります。

ガソリンと軽油を給油し、電気自動車を充電し、灯油を販売し、災害時には非常用電源を使って地域へエネルギーを供給する。そのほかのサービスを組み合わせる施設になれば、少ない人口でも維持できる可能性は高まります。

しかし、それでもすべての地域に現在と同じ密度で配置することは難しいでしょう。

外房では「あるか、ないか」より「何キロ先にあるか」を見る必要がある

外房の将来を考える場合、ガソリンスタンドの総数だけを見ても十分ではありません。

重要なのは、住宅地から最寄りの給油所までの距離です。

人口が減って一店舗ずつ撤退すると、地域全体ではガソリンスタンドが残っていても、特定の地区では給油のために往復20キロ、30キロ移動しなければならない状況が生まれる可能性があります。

そのとき問題になるのは、ガソリン価格そのものよりも「給油するための移動コスト」です。

仮に往復20キロ走らなければ給油できないとすれば、そのためにも燃料を使います。高齢になって長距離運転が難しくなれば、距離はさらに大きな負担になります。

したがって地域分析では、

人口に対するガソリンスタンド数

だけではなく、

居住地から最寄り店舗までの平均距離

高齢者人口

自動車保有率

公共交通の代替可能性

まで一緒に考える必要があります。

地方の生活インフラでは、施設が行政区域内に存在することと、住民が実際に利用できることは同じではないからです。

30年後も「残る」のではなく、「残さなければならない地域」が出てくる

地方のガソリンスタンドは、これから30年間でさらに減っていく可能性が高いと考えるのが自然です。

ただし、一定水準まで減った後も同じ速度で減り続けられるとは限りません。

最後の一店舗がなくなれば、その地域の住民だけでなく、救急、消防、介護、宅配、農業、建設、行政などにも影響が及びます。

その段階になると、「事業者が採算を取れるか」という問題だけでは済まなくなります。

地域バスと同じように、自治体が施設維持に関与する地域が増える可能性があります。複数事業者による共同運営、公設民営、設備更新への補助、営業時間の調整、他業種との複合化など、従来とは異なる維持方法が必要になるでしょう。

実際に国がSS過疎地対策を進めていること自体、燃料供給を完全に市場任せにはできない地域がすでに現れていることを示しています。

30年後の地方で問題になるのは、「ガソリン車が残っているか」だけではありません。

必要な燃料を、必要な場所で購入できる仕組みが残っているか。

こちらの方が重要です。

人口が減っても道路はなくなりません。救急車も介護車両も宅配車も必要です。そして地域社会が完全に電動化されるまでには長い移行期間があります。

その移行期間を支えるガソリンスタンドが先になくなってしまえば、地方では「車はあるのに燃料を簡単に買えない」という問題が起こり得ます。

地方のガソリンスタンドの30年後を考えることは、単に石油産業の未来を考えることではありません。

それは、人口が減少する地域で、どこまで現在の生活圏を維持できるのかという問題です。

水道、病院、スーパー、公共交通と同じように、ガソリンスタンドもまた、「店が一軒減った」というだけでは済まない段階へ、地方では少しずつ近づいているのです。

地域の課題を、自分の判断に置き換えて考える

有限会社アードレでは、住まい・車・移住などの大きな選択を、 費用や将来条件をもとに数字で比較し、判断できる形に整理しています。

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地方でスーパーが閉店したというニュースを見ても、それだけで地域から食料が消えるわけではない。車を運転できる人であれば隣町のスーパーへ行けるし、家族に買ってきてもらうこともできる。移動販売車が巡回している地域もあれば、宅配サービスを利用できる地域もある。

そのため、スーパーの撤退は一見すると「店が一つ減った」という問題に見える。

しかし、人口減少がさらに進んだ30年後まで視野を広げると、問題の性質はかなり違ってくる。問われるのはスーパーが存在するかどうかではない。人口が減り続ける地域で、食品を住民のところまで運ぶ仕組みそのものを維持できるのかという問題だからである。

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口」は、2020年を基準として2050年までの市区町村別人口を推計している。つまり、現在から見ればすでに「約30年後の地方」がかなり具体的に見え始めている。人口減少は全国一律ではなく、地方の小規模自治体ほど大きな人口減少に直面する地域が少なくない。

この人口減少は、買い物環境に二重の影響を与える。

一つは、利用者が減ることである。

スーパーを維持するためには一定数の客が必要になる。人口が1万人の地域と3,000人の地域では、同じ規模の店舗を維持する難易度がまったく違う。さらに人口が減るだけではなく、高齢化によって一人当たりの購買量も変化する可能性がある。若い家族世帯が多い地域では肉、魚、飲料、日用品などをまとめて購入する世帯が多いが、高齢者の単身世帯や夫婦世帯では購入量そのものが小さくなりやすい。

店舗側から見ると、「人口減少」と「一世帯当たり購買量の縮小」が同時に起きる可能性がある。

すると店舗の売上が減り、固定費を支えられなくなる。最初に大型店が撤退し、その後、小型スーパーや商店も維持できなくなるという現象が起こり得る。

もう一つは、商品を運ぶ側も減ることである。

スーパーがなくなれば宅配を利用すればよい、と考えることはできる。しかし、宅配も商品が自動的に家まで移動してくるわけではない。倉庫から地域までトラックが走り、さらに各家庭まで商品を届ける人が必要になる。

現在すでに物流では運転手不足が問題になっている。国土交通省も、過疎地域では貨物量の減少や積載効率の低下によって、物流サービスを持続的に提供することが困難になる可能性を指摘している。2025年にまとめられたラストマイル配送に関する提言でも、人口の少ない地域で配送を維持すること自体が政策課題として扱われている。

ここに、将来の買い物問題の難しさがある。

人口が減ればスーパーが成立しにくくなる。しかしスーパーがなくなったから宅配へ移行しようとしても、その宅配も人口密度が低くなるほど効率が悪くなる。

例えば100軒の住宅へ商品を届ける場合を考えてみよう。

住宅が半径1キロメートル程度に集中していれば、一台の配送車で短時間に多くの家庭を回ることができる。しかし同じ100軒が山間部や海岸部に10キロメートル、20キロメートルと分散していれば、一軒当たりの配送距離は長くなる。

配送事業者から見れば、

人口密度の低下=一件の商品を届けるために必要な移動距離の増加

である。

単純化すれば、配送の採算性は、

配送収入 ÷ 配送に必要な時間・距離・人件費

によって決まる。

人口密度が下がれば分母が大きくなり、配送の採算は悪化する。

つまり地方の買い物問題は、小売業だけの問題ではない。人口密度と物流密度の問題なのである。

「ネットスーパーがあるから大丈夫」とは限らない

30年後には現在よりデジタル技術が進歩している可能性が高い。そのため、店舗へ行くのではなくスマートフォンや音声端末から商品を注文する生活は、現在以上に一般的になっているだろう。

しかし、注文方法がデジタル化しても、最後には米、野菜、肉、牛乳、飲料水を物理的に運ばなければならない。

インターネットは注文を運ぶことはできても、牛乳を運ぶことはできない。

この違いは非常に重要である。

電子商取引が発達すれば「買う場所」はなくせる。しかし「運ぶ工程」はなくならない。

しかも食品には一般の商品とは異なる制約がある。冷蔵品、冷凍品、生鮮食品には温度管理が必要であり、保存できる期間も短い。書籍や衣類であれば数日まとめて配送することが可能でも、食品では同じ方法が常に使えるわけではない。

したがって30年後の地方では、ネットスーパーが店舗を完全に代替するというより、物流インフラと一体化した新しい買い物システムへ変化していく可能性が高い。

移動販売車も万能ではない

スーパーが撤退した地域で現在よく利用されている方法の一つが移動販売である。

経済産業省も買物困難者対策として、移動販売、宅配、買い物代行、店舗への送迎など、さまざまな取り組みを紹介している。実際に移動販売は、自動車を運転できない高齢者にとって重要な生活インフラになっている地域がある。

ただし、移動販売にもスーパーと同じ問題がある。

客が減れば採算が悪くなる。

仮に一つの集落に50人の利用者がいれば販売車を走らせる意味があっても、10人、5人と減っていけば、一人の利用者のために走行する距離が長くなる。

さらに移動販売車を運転し、商品を積み込み、販売する人も必要である。

したがって人口減少が極端に進んだ地域では、「店が維持できないから移動販売にする」というだけでは問題は解決しない。

店舗、移動販売、宅配は形こそ違うが、すべて、

一定数の利用者が一定範囲に存在すること

を前提としているからである。

本当に深刻なのは「運転できなくなったとき」

地方では、自動車を持っている間は買い物問題が表面化しにくい。

スーパーまで10キロメートル離れていても、自動車なら15分程度で行けるかもしれない。そのため店舗が減少していても、多くの住民は日常生活を続けることができる。

ところが高齢になると状況が変わる。

視力、判断力、身体能力が低下し、運転をやめる時期が来る。

その瞬間、それまで10キロメートルだったスーパーまでの距離が、生活上はほとんど越えられない距離になることがある。

地方の買い物問題で重要なのは、「スーパーまで何キロメートルあるか」だけではない。

自動車を使わずにスーパーまで行けるか

である。

ここまで考えると、スーパー撤退問題は交通問題ともつながってくる。

バスがあれば店舗へ行ける。しかし人口が減れば路線バスも採算が悪化する。タクシーを利用する方法もあるが、年金生活者が毎回数千円の交通費を負担することは現実的ではない。

店舗、物流、公共交通は別々の問題に見えて、実際には同じ人口密度の低下によって同時に弱くなっていく可能性がある。

30年後に残るのは「スーパー」ではなく「買い物機能」かもしれない

では、人口が大きく減った地域では買い物ができなくなるのだろうか。

必ずそうなるわけではない。

ただし現在と同じスーパーをそのまま残すことだけを目標にするのは、人口が大幅に減少する地域では現実的ではないだろう。

必要なのは、スーパーという「施設」を守る発想から、住民が食品を手に入れられる「機能」を守る発想への転換である。

例えば地域の中心部に小規模な物流拠点を置き、そこへ複数のスーパーや卸売事業者の商品をまとめて運ぶ。その先を移動販売、共同配送、福祉車両、公共交通などが担う仕組みである。

現在は別々に走っている車両を統合することも考えられる。

宅配便の車、スーパーの商品配送車、移動販売車、介護関連車両、自治体の車両が、それぞれ少量の荷物や人を運んでいるのであれば、地域全体として輸送を最適化する余地がある。

国土交通省も、物流の担い手不足への対応として共同輸配送や事業者間の協業などを課題として挙げている。

これは単なる効率化ではない。

人口が少なくなる地域では、一つの事業だけで採算を取ることが難しくなるため、複数の生活サービスを一つの物流網に載せる必要が出てくるのである。

週7日いつでも買える社会から「曜日で届く社会」へ

もう一つ、大きく変わる可能性があるのがサービス水準である。

現在の都市生活では、欲しい商品を欲しい日に購入できることが当然になっている。

しかし人口密度が極端に低い地域で、このサービス水準をそのまま維持するには高いコストがかかる。

そこで30年後には、

月曜日はA地区、火曜日はB地区、水曜日はC地区というように配送日を集約したり、住民があらかじめ注文した商品を週に数回まとめて届けたりする仕組みが増えるかもしれない。

これはサービスの後退に見える。

しかし毎日配送して赤字になり、最終的に撤退してしまうより、週2回でも確実に商品が届く仕組みを維持する方が生活インフラとしては安定している。

地方では今後、

利便性の最大化より、持続可能性の最大化

が重要になる可能性がある。

買い物問題は福祉政策だけでは解決できない

高齢者の買い物問題は、しばしば福祉の問題として語られる。

しかし実態はそれほど単純ではない。

スーパーは商業政策、配送は物流政策、移動手段は交通政策、高齢者支援は福祉政策、人口分布は都市計画や住宅政策に関係する。

つまり一人の高齢者が夕食の食材を買えるかどうかという問題の背後には、複数の社会システムが存在している。

そのため自治体が「高齢者向け買い物支援事業」を一つ始めただけでは、長期的な解決にならない可能性がある。

特に30年間という時間で考えれば、現在70歳の住民を支援するだけでは不十分である。

その地域に2040年、2050年に何人が住み、どこに居住し、何人が自動車を運転でき、どの程度の配送需要が存在するのかを予測したうえで、商業、交通、福祉、物流を一つの生活インフラとして設計する必要がある。

人口が減るほど「住む場所」そのものが重要になる

そして最終的には、さらに難しい問題に行き着く。

人口が減少しても、住宅が広い範囲に散らばったままであれば、一人当たりのインフラ維持費は高くなる。

道路、水道、電気、通信、医療、介護、公共交通、そして食品配送まで、すべて同じ問題を抱える。

人口1,000人が半径2キロメートルに暮らしている地域と、同じ1,000人が半径20キロメートルに散らばっている地域では、生活サービスを維持するコストは大きく違う。

だからスーパー撤退問題を突き詰めると、最後には、

人口減少時代に人はどのように集まって暮らすのか

という地域構造の問題になる。

すべての集落にスーパーを置くことはできなくても、生活拠点となる地域に食品、医療、行政、交通などの機能を集約し、周辺集落との移動手段を確保することはできるかもしれない。

一方で、居住地が極端に分散した状態を維持しながら、現在と同じサービスを将来も提供し続けることには限界がある。

30年後、高齢者は買い物できるのか

結論として、スーパーがなくなった地域でも、30年後に高齢者が買い物を続けることは不可能ではない。

しかし、それは現在のスーパーの代わりに移動販売車を一台走らせれば解決する、というほど簡単な話でもない。

人口が減れば店舗の客が減る。

客が減れば店舗が撤退する。

店舗がなくなれば宅配需要が増える。

ところが人口密度が下がれば配送効率も悪化する。

高齢化が進めば自動車を運転できない人が増え、公共交通も人口減少によって維持が難しくなる。

つまり、スーパー撤退は問題の始まりにすぎない。

30年後の地方で問われるのは「スーパーを残せるか」ではなく、人口が減っても食品を住民の手元まで運び続けられる地域構造を作れるかである。

そのためには、店舗、宅配、移動販売、公共交通、福祉を別々に考えるのではなく、一つの地域物流システムとして組み直す必要がある。

人口減少社会では、すべての地域に現在と同じ便利さを残すことは難しいだろう。

しかし、便利さを少し下げる代わりに、買い物できる仕組みそのものを残すことはできる。

地方にとって本当に危険なのは、スーパーが一軒なくなることではない。

スーパーがなくなってから代替手段を考え始めることである。

人口が減ることがかなり高い確度で分かっているのであれば、30年後の買い物問題は30年後に考える問題ではない。

現在の人口と店舗数を見るだけではなく、2040年、2050年に誰が、どこに住み、どのように食料を受け取るのか。

そこから逆算して地域の商業と物流を設計することが、いま必要になっている。

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郵便・宅配は人口減少地域でも維持できるのか

人口が減少する地方では、鉄道、路線バス、水道、医療、介護など、さまざまな生活サービスの維持が問題になります。

そのなかで、普段はあまり意識されないものの、生活に大きな影響を与えるのが郵便と宅配です。

現在は、山間部でも海沿いの集落でも、手紙や荷物は基本的に自宅まで届けられます。インターネットで商品を注文すれば、都市部と大きく変わらない感覚で宅配便を利用できる地域も少なくありません。

しかし、この仕組みは人口が減っても自然に維持されるのでしょうか。

問題を考えるときに重要なのは、単純な人口の減少ではありません。

荷物を届けなければならない地域の面積は変わらないのに、同じ地域で受け取る人だけが減っていく

という構造です。

人口密度が低下するほど、一つの郵便物や荷物を届けるために必要な走行距離や時間は相対的に増えます。しかも、配送を担う人材そのものも減少していきます。

地方の郵便・宅配をめぐる問題は、すでに「将来起きるかもしれない問題」ではなく、現在の物流政策で持続可能性が議論される段階に入っています。国土交通省も、過疎地域では貨物量の減少と積載効率の低下によって物流サービスの持続的な提供が困難になることを課題として明示しています。

人口が半分になっても、配達区域は半分にならない

地方物流の構造を理解するには、簡単な例を考えると分かりやすくなります。

面積100平方キロメートル、人口1万人の地域があり、毎日1000個の郵便物や荷物を配達していたとします。

30年後、人口が5000人に減り、配達物も500個まで減ったとします。

荷物の個数だけを見れば、仕事量は半分です。

しかし、配達区域の面積は100平方キロメートルのままです。

道路もそのまま残り、山間部の住宅にも、集落の端にある住宅にも配送しなければなりません。

人口を (P)、地域面積を (A) とすれば、人口密度 (D) は、

[ D=\frac{P}{A} ]

で表せます。

人口だけが半分になれば、

[ D'=\frac{0.5P}{A}=0.5D ]

となります。

つまり、平均的に見れば、一軒と次の一軒との距離は広がっていきます。

物流にとって重要なのは荷物の総数だけではなく、一個届けるために何キロメートル走らなければならないかです。

国土交通省が過去に示した物流事業者の実績例では、荷物一個当たりのトラック走行距離が、過疎地域では都市部の平均約6倍、条件によっては最大約7倍になるケースが確認されています。

これは地方物流の本質的な問題です。

都市では一つのマンションに数十個の荷物を届けられます。

地方では数キロメートル走って一軒に一個届け、その次の家まで再び走ることがあります。

同じ「100個の荷物を届ける」という仕事でも、必要な時間と燃料、人件費は同じではありません。

郵便と宅配は似ているようで、仕組みが違う

ここで郵便と宅配を分けて考える必要があります。

宅配便は基本的には民間の商業サービスです。

一方、郵便には全国的な郵便ネットワークを維持するという公共サービスとしての性格があります。

日本郵政グループは全国約2万4000の郵便局ネットワークを持っています。

この全国ネットワークがあるため、都市部だけでなく人口の少ない地域でも郵便サービスを利用できます。

しかし、その維持が以前より容易になっているわけではありません。

日本郵政自身が2026年の経営計画で、郵便物数の大幅な減少や郵便局窓口の利用者減少によって、郵便・郵便局ネットワークによる持続可能なユニバーサルサービスの提供が課題になっていると説明しています。

つまり、「郵便だから将来も現在と全く同じ形で維持される」と考えることもできません。

全国的なサービスを維持するという原則と、そのサービスをどのような頻度、料金、方法で提供するのかは別の問題だからです。

郵便物は減っているが、宅配荷物は簡単には減らない

さらに難しいのは、郵便物と宅配便では需要の変化が逆方向に動いていることです。

日本郵便によると、2024年度の郵便物・荷物などの総引受物数は約169億通・個で、前年度から3.2%減少しました。

手紙、請求書、通知書などは電子化が進み、従来型の郵便物は長期的に減少する方向にあります。

一方で宅配便は、EC(Electronic Commerce・電子商取引)の普及によって大きな物流需要を抱えています。

国土交通省によれば、2024年度の宅配便取扱個数は約50億個に達しています。物販系のEC市場も15兆円を超える規模となっています。

これは地方にとって重要です。

人口減少地域では実店舗が減る可能性があります。

スーパー、衣料品店、家電店、書店、ホームセンターなどが撤退すれば、住民はインターネット通販への依存度を高める可能性があります。

その結果、

人口が減少しているのに、一人当たりの宅配需要は増える

という現象も起こり得ます。

地域人口だけを見て「人口が半分なら荷物も半分になる」と推定すると、将来の物流需要を過小評価する可能性があります。

店舗がなくなるほど、宅配の重要性は高くなる

人口減少地域では、物流は単なる便利なサービスではなくなります。

例えば、地域にスーパーがある間は、高齢者でも家族に送迎してもらったり、自家用車で買い物に行ったりできます。

しかし店舗が撤退した場合、日用品や食品を入手する方法そのものが変わります。

そこで宅配が生活インフラになります。

薬、衛生用品、介護用品、衣類、食品、家電製品などが自宅に届くことには、都市部以上の意味があります。

したがって地方では、

配送効率が最も悪くなる地域ほど、宅配の社会的重要性が高くなる

という矛盾が生じます。

市場原理だけで考えると、配送コストが高い地域ほどサービス縮小の対象になりやすくなります。

しかし生活インフラという視点で考えれば、そうした地域ほど配送サービスを維持する必要性があります。

ここに、地方物流の難しさがあります。

最大の制約は「荷物」ではなく「人」になる可能性がある

物流問題では燃料価格や車両コストも重要ですが、中長期的には配送する人を確保できるかが大きな問題になります。

トラック運転者の時間外労働規制などを背景として、物流業界では輸送能力不足への対応が進められています。

国土交通省が示してきた試算では、対策を講じなければ2030年度に輸送能力が約34%不足する可能性があるとされています。

この数字を「2030年に荷物の34%が必ず届かなくなる」という意味に理解するのは適切ではありません。

料金、配送方法、共同配送、効率化、労働生産性などが変われば需給は調整されるからです。

しかし、少なくとも現在と同じ方法で、現在と同じ量の物流を、現在と同じ人数で処理し続けることが難しいという方向性は明確です。

特に人口減少地域では、配送需要の減少と同時に、配送員となる生産年齢人口も減ります。

そのため、

「荷物が少なくなったから配送員も少なくてよい」

とは単純にはなりません。

荷物が減っても配達距離は残るからです。

再配達は地方物流ではさらに大きな負担になる

物流効率を考えるとき、再配達も無視できません。

2025年10月の宅配便再配達率は全国で約8.3%でした。以前より低下しているものの、依然として一定量の再配達が発生しています。

都市部であれば、一度不在だった住宅の近くに別の配達先が多数存在します。

しかし人口密度の低い地域では、一軒の再配達のために数キロメートル余分に走ることもあります。

仮に一軒の再配達に追加で往復6キロメートル必要で、それが一日に10件発生すれば、60キロメートルの追加走行です。

人口密度が低い地域では、再配達率をわずか数%下げるだけでも配送効率に与える影響が大きくなります。

このため国土交通省も、宅配ボックス、置き配、コンビニ受取など、多様な受取方法を推進しています。

地方ではこれらを単なる利便性向上ではなく、物流網を維持するための手段として考える必要があります。

将来は「家まで毎回来る」ことが当たり前ではなくなる可能性がある

人口減少がさらに進めば、物流サービスそのものが消えるというより、配送方法が変わる可能性の方が高いと考えられます。

例えば、複数の宅配会社が別々の車で同じ集落を回る現在の方法は、人口密度が低下するほど非効率になります。

A社が一個、B社が一個、日本郵便が一個の荷物を持って、同じ日に同じ山間集落へ向かうのであれば、三台の車が同じ道路を走ることになります。

将来は地域の配送拠点まで各社が荷物を運び、そこから先は一つの事業者がまとめて配送する共同配送が合理的になる可能性があります。

国土交通省も、人口減少地域の物流について、事業者間の連携や地域物流の共同化などを検討してきました。

つまり、

「どの会社で注文しても最後に運んでくる車は同じ」

という地域が増えても不思議ではありません。

利用者にとって重要なのは、配送会社の境界ではなく、荷物が確実に届くことだからです。

集落ごとの共同受取拠点という方法もある

さらに人口密度が下がれば、すべての荷物を一軒ずつ玄関まで届ける仕組みそのものを見直す地域も出てくる可能性があります。

例えば郵便局、道の駅、スーパー、コンビニエンスストア、公民館などを地域物流拠点として利用し、そこに荷物をまとめて届ける方法です。

利用者が自分で受け取りに行ける場合は拠点受取を使い、高齢者や移動困難者には自宅まで配送するという仕組みも考えられます。

これは一律のサービスを全員に提供する方法から、

必要度に応じて配送方法を変える仕組み

への転換です。

特に地方では、すでに医療、介護、買い物支援、移動販売などが別々に地域を回っています。

郵便、宅配、買い物支援、見守りなどを完全に別々の事業として維持するより、一部の機能を統合した方が地域全体の効率は高くなる可能性があります。

ドローンがすべてを解決するわけではない

人口減少地域の物流というと、ドローン配送が解決策として語られることがあります。

確かに山間部、離島、道路条件の悪い地域では、無人航空機による配送が有効な場合があります。国土交通省も過疎地域の物流効率化策の一つとしてドローン活用を検討してきました。

しかし、ドローンが普通の配送車を全面的に置き換えると考えるのは現実的ではありません。

重量物、大型商品、多数の荷物、悪天候、離着陸地点、安全管理、運航コストなどの制約があります。

むしろドローンは、

通常の配送車では非効率になる最後の数キロメートル、

離島、

山間部、

緊急性の高い小型物資

などで有効になる可能性があります。

将来の地方物流は、一つの技術ですべてを解決するのではなく、トラック、軽貨物車、共同配送、宅配ボックス、地域拠点、場合によってはドローンを組み合わせる形になると考えた方が合理的です。

問題は「届くか」ではなく「今と同じ条件で届くか」

人口減少地域の郵便・宅配について考えるとき、「将来も荷物は届くのか」という問いだけでは十分ではありません。

より重要なのは、

今と同じ料金で届くのか。

今と同じ曜日に届くのか。

今と同じ翌日・翌々日という速度で届くのか。

今と同じように玄関まで届けてもらえるのか。

というサービス水準の問題です。

物流サービスを完全になくすことは社会的に難しくても、配送頻度、料金体系、受取方法、配送日数が変わる可能性はあります。

例えば、毎日配達していた地域を曜日別配送にするだけでも、車両一台当たりの荷物密度を高められます。

一日に50個しかない荷物を毎日配るより、二日分をまとめて100個配る方が、一個当たりの配送コストは低下します。

物流の持続可能性を考えれば、このようなサービス水準の調整は十分起こり得ます。

物流は人口ではなく「密度」で考える必要がある

地方政策では人口何万人という数字がよく使われます。

しかし物流を考えるとき、総人口だけでは重要なことが分かりません。

同じ人口1万人でも、10平方キロメートルに集中して住んでいる地域と、300平方キロメートルに分散して住んでいる地域では配送効率が全く違います。

物流サービスを考えるうえでは、

[ 物流効率 \approx \frac{荷物数}{走行距離\times配送時間} ]

という考え方ができます。

同じ荷物数でも走行距離が増えれば効率は低下します。

人口減少によって荷物数が減り、さらに住宅間距離が広がれば、効率は二重に悪化します。

そのため、30年後の地方物流を予測するときには人口減少率だけを見るのではなく、

人口密度、

集落配置、

高齢化率、

宅配便利用量、

商業店舗の分布、

道路網、

物流拠点までの距離

などを重ねて見る必要があります。

30年後も郵便・宅配は残る可能性が高い。しかし形は変わる

郵便も宅配も、地方生活に不可欠なインフラです。

特に実店舗が減る地域では、その重要性は現在より高くなる可能性があります。

したがって、人口が減ったからといって郵便や宅配そのものが地方から消えると考える必要はありません。

一方で、

今と同じ会社が、今と同じ人数で、今と同じ頻度で、今と同じ料金体系で、一軒ずつ玄関まで届け続ける

という仕組みまで30年後も維持されると考えるのは楽観的です。

日本郵政自身が郵便物数や窓口利用者の減少を背景としてユニバーサルサービスの持続性を経営課題として掲げ、国土交通省も過疎地域のラストマイル配送の持続可能性を政策課題として扱っています。

将来必要になるのは、配送サービスを廃止することではなく、配送の仕組みを組み替えることです。

共同配送、置き配、宅配ボックス、地域受取拠点、郵便局の物流拠点化、地域事業者との連携、そして条件によってはドローンなどを組み合わせ、一人の配送員が一日に届けられる荷物数を維持する必要があります。

人口減少社会で問われるのは、「郵便や宅配を残すか、なくすか」ではありません。

人口密度が低下しても、必要な物流をどのような形なら維持できるのか。

それを地域ごとに設計することです。

これまで地方物流は、人口が多かった時代に作られた仕組みを縮小しながら使ってきました。

しかし人口減少が本格化するこれからは、単なる縮小では対応できなくなる可能性があります。

郵便・宅配の将来は、荷物を運ぶ会社だけの問題ではありません。

スーパーや商店が減り、高齢者が増え、自家用車を運転できない住民が増える地域では、物流網そのものが生活を維持する最後のインフラになるからです。

人口が減っても道路の距離は短くなりません。

家と家の距離も縮まりません。

だからこそ地方では、人口減少そのものよりも、「薄くなった人口をどのように物流で支えるか」という問題が、今後ますます重要になっていくのです。

地域の課題を、自分の判断に置き換えて考える

有限会社アードレでは、住まい・車・移住などの大きな選択を、 費用や将来条件をもとに数字で比較し、判断できる形に整理しています。

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地方で暮らしていると、救急車は119番に電話すれば来るものだと考えがちです。消防署や分署が現在と同じ場所にあり、道路も大きく変わらないのであれば、30年後も救急車の到着時間は現在とそれほど変わらないようにも思えます。

しかし、救急医療を人口減少という側面から見ると、この前提は必ずしも成り立ちません。

むしろ地方では、人口が減るほど救急車が暇になるのではなく、人口密度の低下、高齢化、消防職員の不足、救急需要の増加、医療機関の再編が同時に進むことで、現在の救急体制を維持すること自体が難しくなる可能性があります。

30年後の問題は「救急車がなくなるか」という単純な話ではありません。

重要なのは、119番通報から患者が治療を受けられるまでの時間を、現在と同じ水準で維持できるのかという問題です。

全国平均では、すでに救急車の到着時間は長くなっている

消防庁の「令和7年版 救急・救助の現況」によると、2024年の救急自動車による救急出動件数は約771万8千件で、統計開始以来最多となりました。現場到着までの平均時間は約9.8分です。2019年と比較すると約1.1分長くなっています。さらに、119番通報から医師へ患者を引き継ぐまでの病院収容所要時間は平均約44.6分で、2019年より約5.1分延びています。

ここで注意したいのは、救急医療の時間には大きく二つの段階があることです。

119番通報を受けてから救急車が現場に到着するまでの時間と、そこから搬送先を決め、患者を病院へ運び、医師へ引き継ぐまでの時間です。

したがって、

「救急車が10分で来たから救急医療は維持されている」

とは限りません。

救急車が早く来ても、受け入れる病院まで30分、40分とかかれば、患者にとって重要なのは後者を含めた総時間だからです。

そして地方の将来を考える場合、この二つの時間の両方に人口減少の影響が及びます。

人口が減れば救急需要も減る、とは限らない

人口10万人の地域が将来6万人になれば、単純に考えると救急車を呼ぶ人数も4割減りそうに見えます。

ところが、人口構成が変わります。

厚生労働省が示している2040年の人口構造では、2025年から2040年にかけて15~64歳の生産年齢人口は約15%減少する一方、85歳以上人口は約42%増加すると推計されています。地方都市型地域でも、生産年齢人口が平均19.1%減少する一方、高齢人口は2.4%増えるという構造です。

救急需要を考える場合、この人口構成の変化は非常に重要です。

若い人と85歳以上の人では、救急車を必要とする確率が同じではありません。心疾患、脳血管疾患、転倒、骨折、呼吸器疾患など、年齢が高くなるほど救急搬送につながる病態は増えていきます。

つまり地方では、

総人口は減少しているのに救急需要はそれほど減らない

という時期が発生する可能性があります。

さらに問題なのは、救急サービスを提供する側の人口です。

救急需要を支える消防職員、救急救命士、看護師、医師などは主として生産年齢人口から供給されます。

したがって地方では、

救急サービスを利用する高齢者の割合が上がる一方、それを支える働き手が減る

という非対称な人口構造が生まれます。

救急医療の将来を考えるうえでは、総人口だけを見るのではなく、この比率を見る必要があります。

人口密度が下がっても、地域の面積は小さくならない

地方の救急でさらに重要なのが「面積」です。

例えば、ある自治体の人口が3万人から1万5千人に半減したとしても、市町村の面積が半分になるわけではありません。

道路の長さも大きくは変わりません。

集落間の距離も変わりません。

山間部や海岸部まで救急車が走らなければならないことも変わりません。

この点を消防庁自身も問題として認識しています。

消防庁の「市町村の消防の広域化に関する基本指針」では、人口減少によって消防本部の管轄人口が減少し、生産年齢人口の減少を通じて財政面や人材確保が厳しくなる一方、人口密度が低下しても消防活動に必要な消防署や出張所などの数は大きく変化しないため、消防力の維持が難しくなる可能性があるとしています。特に小規模な消防本部ほど影響が深刻になるとしています。

これは地方公共サービスに共通する重要な問題です。

人口を (P)、管轄面積を (A) とすると、人口密度は

[ D=\frac{P}{A} ]

です。

人口だけが半分になれば、

[ D'=\frac{0.5P}{A}=0.5D ]

となります。

ところが救急車が走らなければならない最大距離は、人口が半分になったからといって半分にはなりません。

つまり人口1人当たりで考えると、広い地域を維持するための消防・救急インフラ負担は相対的に大きくなります。

この構造こそが、人口減少地域で公共サービスを維持する難しさです。

「人口が減ったから消防署を半分にする」ができない理由

仮に人口4万人の地域に消防署や分署が4か所あったとします。

30年後に人口が2万人になったから、人口に比例して2か所に減らせばよいでしょうか。

財政だけを考えれば合理的に見えます。

しかし消防署を統合すると、残された署所から地域の端までの距離が長くなります。

救急車の平均速度を時速40キロメートルと仮定した場合、出動地点までの距離が5キロメートル伸びれば、単純計算だけでも、

[ \frac{5}{40}\times60=7.5 ]

となり、約7.5分余計に必要になります。

実際には信号、交差点、狭い道路、山道、救急車への乗車準備などがあるため、距離と時間は完全な比例関係ではありません。それでも、署所の配置が救急車の到着時間を左右することは明らかです。

したがって人口減少地域では、

利用者は減るが、地理的なサービス範囲はほとんど減らない

という公共サービス特有の問題が生じます。

水道、道路、路線バスなどでも見られる構造ですが、人命に直結する救急ではサービス水準を簡単に下げることができません。

もう一つの問題は「救急車が出払っている時間」である

救急車の到着時間を決めるのは消防署までの距離だけではありません。

近くの救急車がすでに別の患者を搬送していれば、より遠い消防署から別の救急車を向かわせなければならない場合があります。

ここで重要になるのが、一件の救急搬送に救急車が拘束される時間です。

全国平均では、119番通報から病院へ患者を引き継ぐまで約44.6分かかっています。

仮に一件の救急搬送で救急隊が約45分拘束されると考えれば、救急件数が増えるほど同時出動の可能性は高まります。

地方の場合、搬送先の病院までの距離が長ければ、この拘束時間はさらに長くなることがあります。

例えば近隣病院まで20分だった地域で救急対応病院が集約され、40分離れた病院へ搬送するようになれば、一件の搬送が地域の救急車を占有する時間も増えます。

すると問題は、

「救急車が何台あるか」

ではなく、

「必要な瞬間に何台が地域内で利用可能なのか」

へ変わります。

この違いは非常に大きな意味を持ちます。

病院の再編は救急車の問題でもある

人口減少時代の救急を消防だけの問題として考えることはできません。

厚生労働省は2040年以降を見据え、新たな地域医療構想を進めています。そこでは人口減少や85歳以上人口の増加を踏まえ、急性期医療、高齢者救急、在宅医療などについて医療機関間の役割分担を進めるとともに、病院や病床の連携、再編、集約化を進める方向が示されています。

医療資源が限られる以上、すべての地域に現在と同じ病院機能を残すことは難しくなります。

高度な救急医療については、一定規模の病院へ患者を集めたほうが医師や設備を効率的に配置でき、医療の質を維持しやすくなります。

これは医療政策として合理性があります。

しかし住民側から見ると別の問題が生じます。

病院が集約されれば、救急車の搬送距離が延びる地域が出てくるからです。

したがって人口減少時代には、

病院を集約して医療の質を維持する合理性

と、

病院までの距離が延びることで救急搬送時間が長くなる問題

を同時に考えなければなりません。

どちらか一方だけを最適化すればよい問題ではありません。

2050年までの人口減少は、すでに市町村単位で推計されている

30年後の話というと、非常に遠い未来の予測のように感じます。

しかし人口については、かなり具体的な推計がすでに存在します。

国立社会保障・人口問題研究所は2020年国勢調査を基に、全国の市区町村について2050年まで5年ごとの人口を推計しています。しかも総人口だけでなく、年齢階級別の人口まで市町村単位で公表されています。

したがって地域ごとに、

現在の人口、

2050年人口、

65歳以上人口、

75歳以上人口、

生産年齢人口、

消防署の所在地、

救急車の配置台数、

救急対応病院の所在地

を重ねれば、将来の救急体制にどの程度の負荷がかかるのかをある程度分析できます。

これは単なる将来予想ではありません。

人口統計と地理データを組み合わせれば、地域ごとに異なる問題として可視化できるテーマです。

30年後も現在と同じ時間で来る可能性はある

ここまで見ると救急車の到着時間は必ず長くなるようにも見えますが、そう断定するのも適切ではありません。

消防庁は小規模消防本部の課題に対応するため消防の広域化を進めており、広域化した消防本部では人員配置の効率化や消防体制の強化といった成果が確認されているとしています。

複数自治体の消防本部を一体化すれば、市町村境に縛られず最も近い救急車を出動させる運用もしやすくなります。

さらに、救急車の配置最適化、通信指令システムの高度化、デジタル技術による搬送先検索、ドクターヘリなどを組み合わせれば、人口が減っても到着時間を維持できる可能性があります。

つまり将来は、

消防署を現在と同じ数だけ残すこと

と、

現在と同じ救急サービスを維持すること

が必ずしも同じ意味ではなくなります。

署所を再編しながら広域的に救急車を運用し、情報技術によって配車を最適化するという方向も考えられます。

地方で本当に見るべき数字は「救急車が来るまでの時間」だけではない

住民にとって最も分かりやすい数字は救急車の到着時間です。

しかし将来の地域医療を評価するのであれば、それだけでは不十分です。

重要なのは、

[ T=T_{119}+T_{出動}+T_{走行}+T_{現場}+T_{搬送}+T_{受入} ]

という患者が治療につながるまでの時間全体です。

ここで、消防署が近くても搬送先病院が遠ければ総時間は長くなります。

逆に消防署が多少遠くなっても、広域的な救急車配置や病院との連携が改善されれば、総時間を短くできる可能性もあります。

したがって地方の救急医療を考えるときには、

「消防署を残すか」

ではなく、

「119番から治療開始までの時間をどのように維持するか」

という視点に変える必要があります。

30年後の地方で問われるのは、人口ではなく「距離を支える能力」である

人口減少について議論すると、「人が減れば公共サービスも小さくすればよい」という考え方が出てきます。

しかし救急ではその考え方が簡単には成立しません。

住民が半分になっても地域の面積は半分にならず、道路も集落間距離もほとんど変わらないからです。

しかも住民の高齢化が進めば、人口減少ほど救急需要が減らない可能性があります。

その一方で、消防職員や医療従事者を供給する生産年齢人口は減少します。

つまり地方の救急医療では、

人口減少、人口密度低下、高齢化、人材不足、病院再編

という五つの変化が同時に進みます。

消防庁自身も、人口減少と低密度化が進む一方で必要な消防署所の数は大きく変化しにくく、特に小規模消防本部では消防力の維持が難しくなる可能性を指摘しています。

したがって、

「地方では30年後も、救急車は今と同じ時間で来るのか」

という問いに対する答えは、

「何もしなくても現在と同じ時間で来るとは考えにくい。しかし、必ず遅くなるとも決まっていない」

となります。

消防の広域化、救急車の配置最適化、医療機関との連携、救急需要そのものを減らす地域医療、そして人口密度を考慮した地域構造を今から設計できるかによって結果は変わります。

30年後の救急体制は、30年後になってから考えても間に合いません。

人口構造の変化はすでに予測されています。

問われているのは未来を予測できるかではなく、予測できている未来に対して、現在のうちから公共サービスの配置を変えられるかどうかなのです。

地域の課題を、自分の判断に置き換えて考える

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数字で比較するサービスを見る

高齢になって自分で病院へ通うことが難しくなっても、医師や看護師が自宅まで来てくれれば、住み慣れた地域で暮らし続けられる。

在宅医療を考えると、この仕組みは非常に重要です。

特に訪問看護では、看護師などが患者の自宅へ出向き、主治医の指示に基づいて健康状態の観察、医療処置、服薬管理、療養上の支援などを行います。

しかし、地方では一つ見落としやすい問題があります。

訪問看護は「患者が移動しなくてよい医療」である一方、医療従事者が患者の代わりに移動する医療でもある

ということです。

人口が減り、住宅が広い地域に分散したまま残れば、利用者一人を訪問するための移動距離や時間はなくなりません。

さらに、高齢者の増加によって在宅医療の需要が増える一方、訪問看護師を十分に確保できなければ、

訪問看護ステーションが地域に存在していても、必要な頻度で来てもらえない

という問題が生じる可能性があります。

この記事では、外房を含む山武長生夷隅地域を念頭に、公的資料を基に、30年後の訪問看護を考えます。

最初に結論

現時点の公的資料だけから、

「2050年には外房で訪問看護が受けられなくなる」

と断定することはできません。

反対に、

「訪問看護ステーションが増えているから、将来も問題なく利用できる」

とも言えません。

全国では訪問看護ステーションが増加しています。

厚生労働省の2024年「介護サービス施設・事業所調査」では、2024年10月1日時点の訪問看護ステーションは全国18,042事業所で、前年の16,423事業所から1,619事業所、9.9%増加しました。

一方、千葉県が山武長生夷隅保健医療圏についてまとめた保健医療計画では、

65歳以上人口10万人当たりの訪問看護ステーション数は千葉県平均を下回っている

とされています。千葉県は同時に、この地域では今後も在宅医療等の需要増加が見込まれるとしています。

つまり外房を含む地域では、

需要が増える可能性がある一方、訪問看護の供給基盤は県平均より薄い

という構造を考える必要があります。

訪問看護とは何をするサービスなのか

訪問看護は、単に高齢者の話し相手になるサービスではありません。

主治医の指示を受け、利用者の自宅などを訪問し、

・健康状態の観察 ・病状悪化の予防 ・療養生活の支援 ・医療処置 ・服薬管理 ・リハビリテーション ・緊急時への対応 ・看取りへの支援 ・医師や介護職との連携

などを行います。

訪問看護の利用者は高齢者だけではなく、小児、難病患者、精神疾患のある人などにも及びます。

したがって、

高齢者人口だけを見れば将来の訪問看護需要が分かる

というものでもありません。

厚生労働省の調査資料でも、医療保険による訪問看護利用者は高齢者だけに限られず、幅広い年齢層に存在しています。

全国では訪問看護ステーションは増えている

訪問看護について、

「人口減少だからステーションも減っている」

と考えるのは、少なくとも現在の全国統計とは一致しません。

厚生労働省によると、2024年10月1日時点の訪問看護ステーションは18,042事業所でした。

2023年は16,423事業所だったため、

18,042-16,423=1,619事業所

増加しています。

増加率は9.9%です。

したがって、現状を正確に表現するなら、

訪問看護ステーションそのものは全国的に増えている

ということになります。

しかし、ここで重要なのは、

事業所数が増えること = 全国どこでも同じように訪問看護を利用できること

ではない点です。

1事業所に看護師が何人いるのか

訪問看護サービスの供給能力を考えるには、事業所数だけでは不十分です。

実際に訪問する看護職員が必要だからです。

厚生労働省の2024年データを用いた調査では、訪問看護ステーション1事業所当たりの看護師・准看護師数は、常勤換算で全国平均5.7人でした。

千葉県は5.6人です。

全国平均との差は小さいものの、

一つの訪問看護ステーションに数十人の看護師がいるのが標準というわけではありません。

さらに、日本看護協会の調査を基にした厚生労働省資料では、所在地を問わず、看護職員5人未満の訪問看護事業所が最も多い結果となっています。

町村部では回答148事業所のうち71事業所、48.0%が看護職員5人未満でした。

これは外房の訪問看護ステーションそのものを調査した数字ではありません。

したがって、

「外房の半数の事業所が5人未満」

とは言えません。

ただし、全国的に訪問看護が比較的小規模な事業所によって支えられていることは確認できます。

小規模事業所では「1人減る影響」が大きい

仮に看護職員が20人いる事業所で1人退職すれば、単純な人数比では5%の減少です。

一方、5人の事業所から1人減れば20%の減少です。

これは単純な算術例であり、実際の訪問能力を直接示す公式指標ではありません。

しかし、小規模な訪問看護ステーションほど、

病気 退職 産休・育休 研修 夜間対応

などによる一人の欠員が、事業所全体の運営へ与える影響が相対的に大きくなりやすいことは理解できます。

したがって、

訪問看護ステーションが1か所存在する

という事実だけから、その地域の供給能力を判断することはできません。

外房を含む地域では県平均より訪問看護ステーションが少ない

千葉県保健医療計画では、勝浦市、いすみ市、大多喜町、御宿町などを含む山武長生夷隅保健医療圏について、

65歳以上人口10万人当たりの訪問診療実施診療所・病院数は千葉県平均を上回る一方、訪問看護ステーション数は千葉県平均を下回る

と整理しています。

さらに千葉県は、

今後も在宅医療等の需要が増加すると見込まれる

ため、在宅医療の拡充と体制整備を進める必要があるとしています。

ここには重要な意味があります。

医師の訪問診療体制が比較的確保されていても、

医師が診察することと、日常的な療養を訪問看護で支えることは別

だからです。

在宅医療は医師だけでは成立しません。

看護師、薬剤師、介護職、リハビリテーション職などによる連携が必要になります。

訪問看護は「移動する医療」である

病院の場合、患者が医療機関へ移動します。

訪問看護では逆です。

看護師が利用者の自宅へ移動します。

そのため勤務時間は概念的には、

訪問看護師の勤務時間 =看護を提供する時間 +利用者宅への移動時間 +記録・連絡・調整などの時間

に分けられます。

これは公式統計の算定式ではなく、訪問看護の構造を理解するための概念的整理です。

重要なのは、

移動時間には直接看護を提供できない

ことです。

例えば同じ8時間勤務でも、利用者宅が近接している地域と、住宅が広範囲に分散している地域では、訪問可能件数が同じとは限りません。

人口密度が低い地域では「利用者が少ないから楽」とは限らない

人口減少地域では、利用者数そのものが都市部より少ない場合があります。

一見すると、

利用者が少ない ↓ 必要な訪問看護師も少ない

と考えられます。

しかし、この関係は単純ではありません。

利用者数が少なくても、その利用者が広い地域に分散していれば、一件ごとの移動時間が長くなります。

つまり、

利用者数の減少率 ≠ 訪問に必要な労働時間の減少率

です。

これは、このブログでこれまで扱ってきた、

人口が減る速度と管理対象が減る速度は一致しない

という問題にも似ています。

訪問看護の場合は、

人口が減る速度と、必要な移動距離が減る速度は一致しない

可能性があります。

「移動負担」を数字だけで断定することはできない

ただし、ここでは慎重さも必要です。

今回確認した千葉県の公的資料から、

「外房の訪問看護師は1日平均○km走行している」

「都市部より移動時間が○分長い」

という統一的な地域データは確認できませんでした。

そのため、

外房では訪問時間の○%が移動で失われている

といった数字は示しません。

公開資料だけでは判断困難です。

実際の移動負担は、

事業所所在地 利用者の居住場所 道路状況 訪問エリア 利用者数 訪問頻度

などによって異なります。

30年後の人口構造はどうなるのか

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」では、市区町村別人口が2050年まで推計されています。

山武長生夷隅地域についても、前の記事で確認したように、総人口の減少が続く一方、高齢者、とりわけ75歳以上人口が地域生活で大きな割合を占める状態が続くと見込まれています。

ただし、

2050年の外房に訪問看護利用者が何人いるか

訪問看護師が何人必要になるか

という市町村別の公式推計は、今回確認した資料では存在しません。

したがってこの記事では、

「2050年には訪問看護師が○人不足する」

という独自推計は行いません。

在宅医療を増やすほど訪問する人が必要になる

高齢者が病院へ長期間入院するのではなく、自宅などで療養できる体制を整えることには大きな意味があります。

しかし、

病院から在宅へ移せば医療従事者が不要になる

わけではありません。

むしろ、患者が複数の自宅に分散するため、

医師 看護師 薬剤師 リハビリテーション職 介護職

などがそれぞれ移動する必要があります。

千葉県も、山武長生夷隅地域について在宅医療需要の増加を見込み、在宅医療提供体制の整備が必要だとしています。

したがって、

入院から在宅へ = 低コストで簡単に医療を維持できる

とは限りません。

「24時間対応」はさらに人員を必要とする

在宅療養では、昼間だけ医療ニーズが発生するとは限りません。

夜間に、

発熱する 呼吸状態が悪化する 点滴やカテーテルに問題が起こる 痛みが強くなる 転倒する

といったことがあります。

そのため訪問看護には24時間連絡可能な体制を持つ事業所もあります。

千葉県の保健医療計画策定資料では、2023年4月時点で県内に24時間対応可能な訪問看護ステーションが544か所あるとされています。

ただし、24時間対応とは、

24時間いつでも看護師が直ちに訪問できる

ことと同義ではありません。

連絡体制や緊急訪問体制には事業所ごとの差があります。

さらに、小規模な事業所で夜間・休日を継続して担当する場合、職員への負担も考えなければなりません。

ステーションが増えても廃止・休止する事業所はある

全国では訪問看護ステーション数が増えていますが、すべての事業所が永続的に運営されているわけではありません。

厚生労働省の訪問看護事業所の事業継続に関する調査資料では、訪問看護事業所の廃止や休止も確認されています。

つまり、

新規開設 -廃止・休止

の結果として全体の事業所数が増えているのであり、

現在ある最寄りの訪問看護ステーションが30年後にもそのまま存在する

ことを保証する数字ではありません。

これは地方のサービスを考えるうえで重要です。

大きな事業所と小さな事業所では経営条件も異なる

厚生労働省の調査資料では、看護職員数の多い訪問看護事業所ほど収益が高い傾向が示されています。

これも、

「小規模事業所はすべて赤字」

という意味ではありません。

しかし、訪問看護では一定の規模を持つことによって、

夜間対応 休暇時の交代 研修 緊急訪問 管理業務

などを複数職員で分担しやすくなると考えられます。

一方、人口の少ない地域で利用者数を確保するためには、訪問範囲を広げる必要が生じる可能性があります。

ここに地方特有の矛盾があります。

規模を大きくするには利用者が必要 ↓ 人口密度が低いので広い地域から利用者を集める ↓ 訪問距離が延びる

という構造です。

これは分析上の整理であり、外房の全事業所が実際にこの状態にあるという意味ではありません。

ICTで移動時間そのものは消せない

ICT(情報通信技術)を利用すれば、

記録 情報共有 医師との連絡 予定管理 オンライン会議

などを効率化できます。

これは訪問看護の生産性向上に有効です。

しかし、

患者の身体を観察する

点滴や処置を行う

褥瘡を確認する

自宅で療養状態を確認する

ためには、必要に応じて実際に患者宅へ行かなければなりません。

そのため、

ICTを導入する = 訪問看護の移動問題がなくなる

とは言えません。

移動しなければならないサービスである以上、地理的条件は残ります。

オンライン診療とも役割が違う

オンライン診療によって、医師への相談や診察の一部を遠隔化できる場合があります。

しかし訪問看護は、

患者の身体状態を直接観察する 医療処置を行う 療養環境を確認する 家族の介護状況を見る

といった役割を持っています。

したがってオンライン化によって、すべての訪問を置き換えることはできません。

むしろ、

オンライン診療 +訪問看護 +必要時の通院・入院

を組み合わせる形が重要になります。

地方で必要なのは「事業所数」ではなく実際の訪問能力

地域の訪問看護体制を評価するときは、

訪問看護ステーションが3か所ある

という数字だけでは十分ではありません。

分析上は、

地域の実質的な訪問看護供給力 =看護職員数 ×実際に訪問できる勤務時間 ×対応可能日数 -移動時間 -記録・連携などに必要な時間

と考えることができます。

これは公式指標ではなく、分析のための概念的整理です。

さらに、

24時間対応 精神科訪問看護 小児対応 看取り リハビリテーション

など、事業所によって提供できるサービスも違います。

したがって、

訪問看護ステーションがある ≠ 自分に必要な訪問看護を利用できる

のです。

利用者にとっては「来てもらえる距離」が重要になる

病院では、

自宅から病院まで何kmか

が問題になります。

訪問看護では逆に、

訪問看護ステーションから自宅まで何kmか

が重要になります。

さらに、

その事業所が自宅を訪問対象地域としているか

を確認する必要があります。

地図上で最寄りの訪問看護ステーションだからといって、必ず契約できるとは限りません。

受入れ状況、職員数、疾患、医療処置、訪問エリアなどによって利用できない場合もあります。

高齢者一人暮らしでは訪問看護の重要性がさらに高くなる

家族と同居している場合には、

体温を測る 薬を確認する 病状変化に気づく 病院へ連絡する

といったことを家族が補う場合があります。

一人暮らしでは、その役割を家族に当然のように期待できません。

したがって単身高齢者が増える地域では、

訪問診療 訪問看護 訪問介護 配食 緊急通報

などを組み合わせる必要性が高まります。

ただし、ここでも重要なのは、

サービスの種類を増やすことだけではなく、それぞれを担う人が確保できるか

です。

訪問看護だけで在宅生活を維持できるわけではない

訪問看護は重要ですが、利用者宅に24時間看護師がいるサービスではありません。

訪問と訪問の間には、本人や家族が生活する時間があります。

したがって在宅生活の継続可能性は、

訪問看護 +訪問診療 +介護サービス +服薬支援 +食事 +緊急対応 +家族・地域支援 +住環境

などによって決まります。

訪問看護だけを増やせば、一人暮らしの高齢者問題が解決するわけではありません。

30年後に成立しやすい地域の条件

人口減少地域でも訪問看護を維持しやすい条件としては、

・一定数の看護職員を確保できる ・小規模事業所同士で連携できる ・夜間や休暇時の応援体制がある ・利用者が過度に広範囲へ分散していない ・医師、薬局、介護事業者との連携がある ・ICTで記録・情報共有を効率化できる ・必要に応じて複数市町村をまたいだ連携ができる

などが考えられます。

一方、

・職員が少ない ・利用者宅が広範囲に分散している ・夜間対応を少人数で担う ・一人退職しただけで訪問枠が大きく減る ・医療・介護事業者との連携が弱い

地域では、継続が難しくなる可能性があります。

「各町に1か所残せばよい」とも言えない

行政的には、

「町内に訪問看護ステーションを確保する」

という考え方は分かりやすいものです。

しかし小規模なステーションを各地域に分散させれば、

一つ一つの事業所が十分な職員数を確保できない可能性があります。

反対に大規模なステーションへ統合すれば、人員配置や夜間対応はしやすくなる可能性がありますが、

訪問距離が長くなる

という問題が生じます。

つまり、

分散 =近いが小規模になりやすい

集約 =規模を確保しやすいが遠くなりやすい

というトレードオフがあります。

したがって、単純に「統合すれば効率的」とも「各町に残せば安心」とも言えません。

判断前に確認したいこと

高齢期に外房などの地方で在宅生活を考える場合には、現在の事業所数だけではなく、次の点を確認する必要があります。

  • [ ] 自宅を訪問対象とする訪問看護ステーションがあるか
  • [ ] 現在、新規利用を受け付けているか
  • [ ] 看護師による訪問に対応しているか
  • [ ] 必要な医療処置に対応できるか
  • [ ] 夜間・休日の連絡体制があるか
  • [ ] 緊急訪問が必要な場合の対応を確認したか
  • [ ] 主治医との連携ができるか
  • [ ] 訪問診療・介護サービスも利用できるか
  • [ ] 家族がいなくても療養を継続できる仕組みがあるか
  • [ ] 現在の最寄り事業所だけに依存していないか

現実的な結論

現在、全国の訪問看護ステーション数は増えています。

2024年10月1日時点では全国18,042事業所となり、前年から9.9%増加しました。

したがって、

訪問看護そのものが現在衰退している

とは言えません。

一方、外房を含む山武長生夷隅保健医療圏では、65歳以上人口10万人当たりの訪問看護ステーション数が千葉県平均を下回り、千葉県自身が今後の在宅医療需要の増加を見込んでいます。

さらに、全国の訪問看護ステーションは比較的小規模な事業所が多く、千葉県でも1事業所当たり看護師・准看護師数は2024年に常勤換算5.6人でした。

したがって30年後を考えるとき、重要なのは、

訪問看護ステーションを何か所残せるか

だけではありません。

重要なのは、

実際に訪問できる看護師を何人確保し、その人たちが限られた勤務時間の中で、どの範囲まで訪問できるか

です。

在宅医療は、患者が病院へ行かなくてよい医療です。

しかしその代わりに、

医療従事者が患者のところへ行かなければならない医療

でもあります。

人口減少地域では、

人口が減る ↓ 住宅や集落は広い範囲に残る ↓ 一人当たりの移動負担が必ずしも減らない

という問題が生じます。

そのため、

訪問看護サービスが存在すること ≠ 必要なときに実際に来てもらえること

と考える必要があります。

30年後の地方の在宅医療を支えるために必要なのは、単に訪問看護ステーションを増やすことではありません。

限られた看護職員で、移動を含めて持続可能な訪問体制をどう構築するか。

そこまで考えて初めて、「住み慣れた地域で暮らし続ける」という在宅医療の理念を、現実の生活として維持できるのではないでしょうか。

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家庭から出るごみは、決められた日に集積所へ持って行けば、収集車が運んでくれます。

普段はそれほど意識しません。

しかし、ごみ集積所そのものは誰が管理しているのでしょうか。

ネットを掛ける。

散乱したごみを片付ける。

カラスや猫への対策をする。

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設備が壊れれば修理する。

新しく転入した人に利用方法を伝える。

こうした作業の一部を、自治体ではなく自治会・町内会や利用住民が担っている地域があります。

人口減少と高齢化が進む外房では、この仕組みを今後30年間そのまま続けられるのでしょうか。

問題は単純に、

「ごみ収集を続けられるか」

だけではありません。

家から集積所へ持って行く人、集積所を管理する人、そこからごみを回収する人という三つの役割を、将来も維持できるか

という問題です。

最初に結論~ごみ収集は残っても、現在の集積所管理方式は見直しが必要になる

結論からいえば、人口減少地域で30年後も家庭ごみの収集そのものが必要であることは変わりません。

人が住んでいる以上、ごみは発生します。

しかし、

現在と同じ数のごみ集積所を、現在と同じように自治会や地域住民の無償作業で管理し続けることが難しくなる地域は増える

と考えた方が現実的でしょう。

その理由は、

人口が減る 高齢者が増える 自治会員が減る 実際に管理作業ができる人はさらに減る

一方で、

集積所の数や管理作業量が同じ速度では減らない可能性があるからです。

今後必要になるのは、

集積所を統合する

だけではありません。

地域によって、

集積所方式 戸別収集 高齢者向けごみ出し支援 自治体による管理 民間委託

などを組み合わせ、

「住民がごみを出せること」と「収集を効率的に行うこと」を両立する仕組み

へ変えていく必要があります。

「ごみ収集」と「集積所管理」は別の仕事

この区別は重要です。

一般に市町村は家庭ごみの収集・処理を行います。

しかし、収集車が来る場所であるごみ集積所の日常管理まで、必ず自治体が担当しているわけではありません。

勝浦市は2026年3月更新の公式案内で、

ごみは決められた集積所へ収集日の朝8時30分までに出すこと、

そして、

集積所は共同で使用し、その管理は地域住民が行っている

と案内しています。

市に寄せられた過去の問い合わせへの回答でも、自治会代表者や利用者が、ごみの分別、集積所の管理・清掃を行う仕組みが説明されています。

いすみ市の2026年版「くらしのガイドブック」でも、

集積所は自治会や地域住民が管理し、その利用範囲も管理団体が決める

とされています。

つまり、

自治体 =収集・処理

地域住民 =集積所の日常管理

という役割分担が存在しています。

勝浦市には約880か所のごみ集積所がある

勝浦市の一般廃棄物処理基本計画では、市内に約880か所のごみ集積所があり、収集・運搬は民間事業者へ委託しているとされています。

この数字を人口との関係で考えてみます。

勝浦市の人口は2020年国勢調査で16,927人でした。

国立社会保障・人口問題研究所の2023年推計では、2050年には8,815人になると推計されています。

およそ半分です。

では人口が約半分になれば、

880か所の集積所も440か所程度になるのでしょうか。

必ずしもそうではありません。

住宅が同じ場所に残り、人が広く分散して暮らしていれば、人口が減ったからといって簡単に集積所を半減することはできません。

ここに人口減少地域特有の問題があります。

人口が半分になっても、ごみ集積所が半分になるとは限らない

例えば100世帯が暮らす地区に10か所の集積所があるとします。

人口減少によって30年後に50世帯になったとしても、住宅が地区全体に分散したままであれば、

10か所 ↓ 5か所

へ単純に減らせるとは限りません。

集積所を減らせば、残された住民の移動距離が長くなるためです。

特に、

高齢者 歩行が難しい人 自動車を使えない人

にとって、ごみ集積所までの距離は重要です。

したがって、

集積所を減らす =管理効率が上がる

一方で、

集積所を減らす =住民のごみ出し負担が増える

という関係があります。

本当に減るのは「利用者」より「管理できる人」かもしれない

地域の管理負担を考える場合、人口だけを見るのでは不十分です。

例えば50人の住民がいる地域でも、

高齢のため作業できない 仕事で不在 身体的な事情がある

人を除けば、実際に集積所管理を担当できる人は20人かもしれません。

本記事では、この問題を次のように整理します。

ごみ集積所管理負担 =集積所の管理作業量 ÷ 実際に管理できる人数

これは公式指標ではなく、分析上の概念式です。

仮に管理作業量が100で、管理可能人数が50人なら、

100 ÷ 50 =2

です。

人口減少後も作業量が80残り、管理できる人が20人になれば、

80 ÷ 20 =4

となります。

地域全体の作業量は減っていても、一人当たり負担は2倍になります。

外房ではすでに高齢化が非常に進んでいる

これは遠い未来だけの話ではありません。

千葉県の2025年度年齢別人口統計では、65歳以上の老年人口割合は、

御宿町 52.8% 勝浦市 47.3%

となっています。

御宿町は県内で最も高い水準です。

高齢者が多いこと自体が問題なのではありません。

重要なのは、

集積所までごみを運べる人、清掃できる人、ネットを交換できる人などの実働可能人数

がどう変化するかです。

70歳代でも問題なく作業できる人はいます。

しかし80歳代、90歳代まで同じ役割を担うことを地域制度の前提にはできません。

ごみを出すこと自体が難しくなる高齢者も増える

さらに大きな問題があります。

集積所を誰が管理するか以前に、

自宅から集積所までごみを持って行けない人

が増える可能性があります。

例えば、

重いごみ袋を持てない 歩行器を使っている 集積所まで坂道がある 数百メートル離れている 雨の日には歩けない

という状態です。

ごみ収集車が毎週来ていても、自宅から集積所へ運べなければ、ごみ収集サービスを実質的に利用できません。

つまり、

ごみ収集制度がある ≠ すべての住民がごみを出せる

ということです。

いすみ市には「ごみステーションまで運ぶ」支援がある

いすみ市では、75歳以上の一人暮らしなど一定の条件を満たす人を対象に「孫の手生活援助事業」が実施されています。

その対象作業には、

家庭ごみを集め、

指定された収集日にごみステーションまで搬出する

ことが含まれています。

同じ制度では、

草刈り 庭木管理 軽易な住宅修繕 買い物代行

も対象です。

これは、高齢者が地域で暮らし続けるためには、

介護だけでなく、

ごみ 買い物 住宅管理

のような日常生活機能を支える必要があることを示しています。

「ごみ出し支援」は介護とは少し違う

ごみを集積所まで運べないからといって、必ずしも常時介護が必要とは限りません。

料理はできる。

洗濯もできる。

トイレも一人でできる。

しかし、

重いごみ袋を200メートル運ぶことだけができない。

こうした人もいます。

つまり、ごみ出し困難は、

全面的な生活能力の喪失

ではなく、

生活の一部分だけが成立しなくなる問題

として現れる場合があります。

このような小さな問題を補助できれば、一人暮らしを長く続けられる可能性があります。

全国では戸別収集を行う自治体もある

高齢者などのごみ出し困難者に対して、自宅前などからごみを回収する自治体もあります。

千葉県が公表している2025年度調査では、松戸市が一定の要件を満たすごみ出し困難世帯を対象に戸別訪問による収集を行っています。

野田市でも、高齢者や障害者などを対象に安否確認を行いながら戸別収集する制度があります。

つまり、

家 ↓ 集積所 ↓ 収集車

という現在一般的な形だけが、ごみ収集の唯一の方法ではありません。

家 ↓ 収集車

という方式もあります。

戸別収集ならすべて解決するのか

では、人口減少地域ではすべて戸別収集にすればよいのでしょうか。

それも単純ではありません。

集積所方式なら、収集車は一か所で複数世帯分を回収できます。

戸別収集では住宅一軒一軒を回る必要があります。

特に外房のように住宅が広い範囲へ分散している地域では、

走行距離 収集時間 燃料 車両 作業員

が増える可能性があります。

環境省の過去の検討でも、戸別収集には高齢者支援としての利点がある一方、収集コスト増加の可能性が指摘されています。

したがって、

戸別収集 =必ず効率的

ではありません。

ステーション方式は効率がよいが、住民労働に依存している面がある

集積所方式の強みは、収集効率です。

例えば20世帯分のごみを一か所にまとめれば、収集車は一度停車するだけで済みます。

しかしその効率は、

住民が家から集積所まで運ぶ 住民が集積所を管理する

ことによって成立しています。

言い換えれば、

行政や収集事業者の効率化の一部を、住民側の移動と管理作業が支えている

とも考えられます。

これは必ずしも悪い仕組みではありません。

住民に十分な体力と人数があり、集積所が近ければ合理的です。

問題になるのは、その前提が崩れたときです。

「行政支出が安い」と「社会全体で安い」は同じではない

例えば戸別収集へ変更すると、自治体の収集費は増えるかもしれません。

一方でステーション方式を維持すると、

家族が高齢者宅へごみを取りに行く 近所の人が代わりに運ぶ 自治会員が清掃する

といった負担が発生します。

行政会計には表れなくても、

家族の時間 住民の労働 自動車移動

には社会的な費用があります。

したがって、

行政のごみ収集費 だけではなく、

行政費用 +住民負担 +自治会作業 +家族負担

で考える必要があります。

自治会に入らない人のごみはどうするのか

集積所を自治会が管理している地域では、難しい問題も生じます。

自治会に加入していない住民も家庭ごみを出します。

一方で、

清掃 ネット交換 設備管理

を自治会員だけが負担していれば、不公平感が生じることがあります。

しかし、

ごみを出すなら自治会に入らなければならない

という単純な整理も適切ではありません。

家庭ごみの収集は住民生活に不可欠な公共サービスだからです。

今後は、

自治会の任意活動

と、

全住民が必要とする生活インフラの管理

を分けて考える必要があります。

30年後には自治会員そのものがさらに減る可能性がある

現在は、

集積所当番 ネット管理 清掃

を順番に担当できている地域でも、

世帯数が減ると同じ人へ当番が頻繁に回ってきます。

例えば30世帯で月ごとに当番を交代するなら、約2年半に1回です。

15世帯になれば約1年3か月に1回です。

10世帯なら10か月に1回です。

これは単純化した例ですが、

世帯数が減る ↓ 一人当たり当番頻度が増える

という構造を示しています。

しかも、そのうち実際に当番を担当できない高齢世帯が増えれば、残された世帯の負担はさらに増えます。

ごみ集積所を統合するという方法

管理人数が減れば、集積所を統合する方法があります。

これは合理的な選択肢の一つです。

例えば10か所を5か所に減らせば、

ネット 清掃 修繕

などの管理対象を減らせます。

しかし問題は距離です。

現在100メートル先にある集積所が、統合によって500メートル先になれば、高齢者には大きな負担になる可能性があります。

つまり、

管理拠点を減らすこと

と、

住民が利用しやすいこと

の間にはトレードオフがあります。

集積所は「数」だけではなく配置で考える必要がある

今後重要になるのは、

何か所あるか

ではなく、

誰がどの集積所を利用し、そこまで何メートル移動する必要があるか

です。

例えばGIS(Geographic Information System・地理情報システム)を利用し、

住宅位置 高齢者人口 道路勾配 集積所 収集ルート

を重ねれば、将来的に統合しやすい集積所と、残す必要がある集積所を分析できます。

人口が減ったから一律に集積所を減らすのではなく、

利用可能性

を基準に配置する考え方です。

管理対象を減らす工夫も必要

集積所の管理負担を減らすには、人を増やす以外の方法もあります。

例えば、

耐久性の高いボックス型集積所 カラス対策設備 清掃しやすい床面 ネット交換回数を減らせる設備

などです。

初期費用は発生します。

しかし、毎週誰かが細かな管理を行う必要が減れば、長期的な労働負担を下げられる可能性があります。

人口減少地域では、

安い設備を住民が頻繁に管理する

より、

多少費用をかけても管理作業が少ない設備へ変える

という考え方も必要でしょう。

ごみ出しと見守りを組み合わせる方法

高齢者向け戸別収集には、もう一つ重要な機能があります。

安否確認です。

定期的にごみを回収する際、

いつも出ているごみがない 呼びかけても応答がない

などの異変に気づく可能性があります。

千葉県の調査でも、安否確認を兼ねた高齢者向け戸別収集の事例が確認されています。

千葉県の廃棄物処理計画も、高齢化社会への対応として、こうした安否確認を兼ねた戸別収集等の取組について市町村への情報提供や助言を進める方針を示しています。

つまり、

ごみ収集 +見守り

という二つの機能を組み合わせられる可能性があります。

全世帯戸別収集ではなく「必要な人だけ」も考えられる

人口密度の低い地域で全世帯を戸別収集にすると、費用が大きくなる可能性があります。

そこで、

通常住民 → 集積所

ごみ出し困難者 → 戸別支援

という二層構造も考えられます。

すでにいすみ市の生活援助制度は、この考え方に近いものです。

自力でごみを出せる人まで支援するのではなく、

自力では難しい部分だけ補う

という方法です。

これは高齢者の一人暮らしを支えるうえでも合理的です。

地域によって答えは変わる

住宅が密集している地区と、山間部に住宅が点在する地区では最適な方式が違います。

住宅密集地域なら戸別収集でも比較的短い距離で回れる可能性があります。

一方、住宅が数百メートルずつ離れている地域では、戸別収集コストが高くなるでしょう。

したがって、

外房全域を一つの方式へ統一する

必要はありません。

地域ごとに、

集積所維持型 集積所統合型 高齢者個別支援型 戸別収集型

を選ぶ方が合理的です。

30年後を考えると「収集できる人」も問題になる

もう一つ忘れてはいけないのが、収集側の労働力です。

人口が減る地域では、

ごみ収集車運転手 収集作業員 清掃業者

も確保しにくくなる可能性があります。

住民側だけではありません。

そのため、

収集ルートを効率化する 集積所を適切に再配置する 作業員の負担を減らす

ことも必要です。

住民負担を減らすため戸別収集を増やした結果、収集作業員を大量に必要とする仕組みにしてしまえば、別の持続可能性問題が生じます。

ごみ集積所の将来を判断するためのチェックリスト

自分の地域のごみ集積所が30年後も維持できるか考える場合、次の項目を見るとよいでしょう。

・集積所はいくつあるか ・それぞれ何世帯が利用しているか ・管理主体は誰か ・自治会員以外も利用しているか ・清掃は誰がしているか ・当番制か ・年間何時間程度の作業があるか ・設備修理費は誰が負担するか ・カラス対策は誰がするか ・高齢者が増えているか ・ごみを持って行けない世帯はあるか ・最も遠い住宅から何メートルあるか ・集積所を統合できるか ・統合した場合、高齢者の移動距離はどうなるか ・ごみ出し支援制度はあるか ・戸別収集へ変更した場合の費用はいくらか ・10年後に管理できる人は何人残るか

重要なのは、

現在困っているか

だけではありません。

10年後、20年後に誰が同じ作業をするのか

を考えることです。

成立しやすい集積所管理

今後も比較的維持しやすいのは、

利用世帯が一定数まとまっている 集積所までの距離が短い 管理設備が簡素 住民当番が少ない 清掃負担が小さい 高齢者向け支援制度がある

地域です。

こうした地区ではステーション方式の効率性を活かせます。

成立しにくい集積所管理

反対に、

少数世帯が広範囲に分散 利用者の多くが高齢者 集積所が遠い 坂道が多い 管理設備が老朽化 自治会員が少ない 当番を担当できる世帯が限定される

地域では、現在の仕組みを維持することが難しくなります。

その場合には、

集積所統合だけではなく、

個別支援や戸別収集も検討する必要があります。

30年後のごみ政策は「収集方式」だけの問題ではない

ごみ行政というと、

焼却施設 リサイクル ごみ袋料金

などが注目されます。

しかし高齢化した地域では、

家庭の玄関から収集車まで、ごみをどう移動させるか

という極めて身近な問題が重要になります。

これは、

廃棄物政策 高齢者福祉 地域交通 自治会政策

が交差する問題です。

環境部門だけでは解決できない可能性があります。

自治会を維持するためにごみ集積所を守るのではない

最終目的は自治会という組織を維持することではありません。

住民が衛生的に生活できることです。

現在は、その一部をごみ集積所と自治会が担っています。

しかし自治会が管理できなくなるなら、

別の方法へ変えても構いません。

自治体管理。

民間委託。

戸別支援。

集積所統合。

設備改善。

これらを組み合わせればよいのです。

重要なのは、

昔と同じ管理方式

ではなく、

少ない人数でも、ごみを確実に排出・収集できる機能

を残すことです。

現実的な結論

地方のごみ集積所は誰が管理するのでしょうか。

外房の一部自治体では現在、自治会や地域住民・利用者が日常的な管理を担っています。

これは、多数の住民が地域活動に参加できる時代には合理的な仕組みでした。

しかし人口減少と高齢化が進むと、

利用世帯が減る 管理できる人はさらに減る 一方で集積所は残る

という状況が起こります。

そこで、

高齢者になったら若い人が代わりにやればよい

という考え方では不十分です。

若い人そのものが減っているからです。

また、

全部戸別収集すればよい

とも限りません。

収集費と労働力が必要になるからです。

現実的なのは、

利用者が多い地域では現在の集積所を維持する。

人口が減った地域では集積所を統合する。

自力でごみを出せない人には個別支援を行う。

管理負担の大きい設備は改良する。

必要な地域では戸別収集を導入する。

という組み合わせでしょう。

人口が減っても、

ごみそのものはゼロになりません。

さらに、

人口が半分になる =集積所も管理作業も半分になる

とは限りません。

これからの地方で重要なのは、

「今あるごみ集積所をどう守るか」

だけではなく、

30年後の住民数と身体能力でも、ごみを衛生的かつ現実的な負担で出せる仕組みに変えられるか

ではないでしょうか。

地域維持の問題を考えるとき、

人口が何人残るか

だけでは十分ではありません。

管理対象量 ÷ 実際に管理できる人数

という視点で、ごみ集積所も考える必要があります。

そして将来の地域社会では、

住民に同じ仕事を引き継がせることより、

住民が引き継がなければならない仕事そのものを減らすこと

が、ますます重要になるでしょう。

地域の課題を、自分の判断に置き換えて考える

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