地域分析記事

地域の暮らしと地域課題を数学とデータで考える

空き家を解体した木材と瓦はどこへ行くのか

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家がなくなったあとに残るもの

 長いあいだ人が住まなくなった家を解体すると、数日後には、それまでそこにあった建物が嘘のように消えてしまう。柱も屋根も窓もなくなり、道路から眺めれば「古い家が1軒なくなった」というだけの出来事に見えるが、実際には家そのものが消滅したわけではなく、何十年も建物を支えていた柱や梁、雨風を受け続けてきた瓦、窓のガラス、金属、コンクリートなどは、トラックに積まれて、それぞれ異なる行き先へ運ばれている。

 そこで気になるのが、解体された家から出た大量の木材や瓦が、その後どこへ行くのかということである。昔の解体工事では、建物を一気に壊して混合廃棄物として処理する方法も珍しくなかったが、現在では木材、金属、コンクリート、瓦、石膏ボード、ガラス、プラスチックなどを可能な範囲で分け、それぞれ異なる処理経路へ送ることが基本になっている。

 つまり住宅の解体とは、建物を単純に消してしまう作業ではなく、住宅というひとつの完成品を再び材料へ分解していく仕事でもある。空き家が消えた跡地だけを見ていると分からないが、その家を構成していた物質は、解体された瞬間から別の長い旅を始めているのである。

解体工事では最初から「分ける」ことが重要になる

 現在の解体工事では、何でも一緒に壊して最後に選別するのではなく、できるだけ建材ごとに分けながら解体することが重視されている。その背景にあるのが建設リサイクル法であり、建築物の解体では床面積80平方メートル以上など一定規模以上の工事で、コンクリート、コンクリートと鉄からなる建設資材、木材、アスファルト・コンクリートといった特定建設資材について、原則として分別解体と再資源化等が求められている。

 ここで重要なのは、瓦そのものは建設リサイクル法に定められた特定建設資材には含まれていないことである。そのため、木材と瓦は同じ住宅から大量に出てくる材料でありながら、法律上まったく同じ扱いを受けているわけではない。それでも実際の解体現場では、瓦も他の廃棄物と混ぜずに分別され、中間処理施設などへ運ばれることが多い。

 また木材についても、すべての場合に必ず材料として再利用しなければならないという単純な制度ではない。再資源化施設までの距離が遠い場合など一定の条件では、焼却などによって体積を減らす「縮減」が認められるため、制度上は「再資源化」だけではなく「再資源化等」という表現が正確である。

木造住宅は大きな木材の集積でもある

 日本の古い住宅、とりわけ地方に残る木造住宅を解体すると、かなりの量の木材が現れる。柱や梁だけではなく、床板、天井、間柱、下地材、押し入れ、建具など住宅のいたるところに木が使われているため、木造住宅は見方を変えれば、何十年ものあいだ大量の木材を建築物という形で保管してきた巨大な木材の集積でもある。

 もっとも、解体された柱や梁が、そのまま次の住宅の柱になるとは限らない。古民家の太い梁や状態の良い柱には古材として商品価値が生じ、店舗の内装や家具、新しい住宅の一部として再使用されることもあるが、一般的な住宅解体から出る木材の多くは、長さや太さが不揃いで、釘が残り、塗料や接着剤が付着していることもあるため、そのまま建築材料として再使用するのは容易ではない。

 そのため、多くの解体木材は住宅という形を失ったあと、今度は「木質資源」として扱われることになる。

柱や梁は木質チップへ姿を変える

 解体現場から運び出された木材は、中間処理施設などでさらに選別され、金属や異物などを取り除いたうえで破砕機に投入されることがある。何十年ものあいだ屋根を支えていた梁も、そこで数センチほどの木片へ姿を変え、木質チップという新しい資源になる。

 木質チップの用途はひとつではなく、品質、大きさ、異物の混入状況などによって行き先が変わる。状態の良いものはパーティクルボードなど木質ボードの原料になり、ほかにも製紙原料、家畜用敷料、堆肥、マルチング材などとして利用される場合があるが、実際の統計を見ると、解体木材の主要な行き先として特に大きいのは燃料利用である。

 国土交通省の2018年度資料では、建設発生木材の現場外搬出量約553万トンのうち、再資源化施設などで燃料として利用されたものは約327万トンで、全体の約59%を占めていた。これに対して、堆肥への利用が約11%、パーティクルボードが約6%、敷料が約6%、製紙が約5%、マルチング材が約2%などとなっており、「解体された木材は新しい板になる」というより、現実にはエネルギーとして利用される割合の方が大きい。

 この数字を見ると、住宅を支えていた柱や梁の最終的な姿は意外に多様であることが分かる。再び板材の一部として建物へ戻る木材もあれば、紙や堆肥など別の製品へ姿を変えるものもあり、さらに燃料となって熱や電気へ変換されるものもある。

「98%再資源化」の数字には注意が必要である

 建設発生木材については、国土交通省の2022年度モニタリングで「再資源化・縮減率」が98.0%とされている。この数字だけを見ると、解体木材のほぼすべてが新しい製品に生まれ変わっているように感じるかもしれないが、実際にはそう単純ではない。

 この98.0%という数字には、材料として再利用されたものだけでなく、燃料利用や一定の縮減処理も含まれているため、「木材の98%が新しい木製品へリサイクルされている」と解釈するのは誤りである。統計を見る場合には、どのような処理まで含めて「再資源化・縮減」と呼んでいるのかを確認する必要があり、数字が大きいからといって、そのすべてが同じ形のリサイクルではない。

 それでも、建設発生木材の大部分が何らかの形で利用または縮減されていることは確かであり、現代の解体工事では、木材をそのまま最終処分場へ送るよりも、別の用途へ回す仕組みがかなり定着していると見ることができる。

木材なら何でも利用できるわけではない

 木質資源としての再利用が進んでいるとはいえ、すべての木材が同じように利用できるわけではない。防腐剤や塗料が使用された木材、接着剤や他の建材が大量に付着した木材、著しく腐食した木材などは用途が限定され、受け入れ可能な処理施設も異なる。

 木材だけで分けられた廃材であれば比較的利用しやすいが、石膏ボードや断熱材、プラスチックなどが大量に混ざれば、それらを取り除く選別作業が必要になるため、処理費用が増え、再生資源としての価値も低くなりやすい。したがって、木である以上、細かく砕けばすべて再利用できるというわけではなく、解体するときにどれだけ丁寧に分けることができたかが、その後の価値を大きく左右する。

瓦は土から作られていても、簡単には土へ戻らない

 木材とは対照的なのが瓦である。古い日本家屋を解体すると、屋根から大量の瓦が下ろされるが、瓦は粘土などを成形し、高温で焼いて作られた焼き物であるため、見た目が土に近いからといって、そのまま庭に埋めれば自然に土へ戻るというものではない。

 粘土は焼成されることで鉱物構造が変化し、焼き締められた陶磁質の材料になるため、一度瓦になったものは、生の粘土とは性質が異なる。極めて長い時間をかければ風化することはあっても、住宅解体後の廃棄物処理という時間尺度では自然分解を期待できる材料ではない。

 廃棄物としての瓦は、一般に「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」などの区分で扱われる。したがって、土から作られたものだからそのまま土へ返せばよいという考え方ではなく、他の建設廃棄物と同じように適切な処理が必要になる。

瓦は再使用されるものと、砕かれるものに分かれる

 まだ十分に使用できる瓦であれば、そのまま再使用される場合がある。特に古い型の瓦では、新品が手に入りにくいため、既存住宅や寺社、古民家などの補修用として価値が残ることもあるが、一般の住宅解体では割れや欠けが生じやすく、すべてを再使用できるわけではない。

 再使用されない瓦は、中間処理施設などで破砕され、再生資源として利用されることがある。細かく砕いた廃瓦は硬く、水はけも良いため、道路の下に敷く路盤材や舗装材料、骨材などとして利用される事例があり、家の屋根にあった瓦が、今度は道路や地面を支える側へ回ることになる。

 ただし、ここでは木材ほど単純に全国的な数字を示すことはできない。廃瓦については、全国で何%が路盤材になり、何%が最終処分されたのかを詳細に示した統一的な統計は限られており、実際の処理方法は地域の中間処理施設、再生材の需要、運搬距離、処理費用などによって変わる。

 そのため、「瓦の多くが必ず再資源化される」と断定するのは正確ではなく、再使用されない瓦は、地域の処理体制や需要に応じて、破砕して再資源化されるものと、最終処分されるものに分かれると考える方が現実に近い。

家の上にあった瓦が、道路の下へ移ることもある

 瓦の再利用を考えると、住宅という建物が別の形で社会に残っていく様子がよく分かる。何十年ものあいだ雨を受け止めてきた瓦が砕かれ、次には道路の下で自動車や人の重さを受け止める材料になることがあるからである。

 家の一部だったときには頭上にあったものが、今度は足元へ移るという変化は興味深い。同じ物質であっても、住宅の一部としての役割を終えたあと、形や大きさを変えることで、まったく別の役割を持つことができる。

 もっとも、こうした循環が成立するためには、瓦を破砕して再生材を製造する施設が近くにあり、その再生材を利用する工事や需要が存在しなければならない。再利用できる技術があることと、実際にすべての地域で経済的に再利用できることは同じではなく、運搬距離が長くなれば燃料費や二酸化炭素排出量も増えるため、再資源化には地域の条件が大きく関係する。

「資源」か「ごみ」かは解体方法で変わる

 木材と瓦の流れを追っていくと、解体時の分別が極めて重要であることが分かる。木材と瓦と石膏ボードとプラスチックを最初から完全に混ぜてしまえば、あとから一つずつ選別するために大きな手間と費用が必要になり、それだけ再資源化しにくくなる。

 逆に、屋根を外して瓦を分け、内装材を取り除き、最後に木造部分を解体するように材料ごとに分離できれば、それぞれの材料を適した処理施設へ送りやすくなり、再利用できる可能性も高まる。同じ柱でも、木材だけで集められたものと、石膏や断熱材やプラスチックが混ざったものでは価値が異なり、同じ瓦でも、瓦だけで集められたものと、土や木片や金属が大量に混ざったものでは処理のしやすさが違う。

 経済的に見れば、再生資源の価値から選別費用や運搬費用を差し引いた残りが小さくなれば、再資源化は難しくなる。つまり、資源と廃棄物の境界は物そのものだけで決まるのではなく、どのように取り出し、どのように分け、どの程度の距離を運ぶのかによっても変わるのである。

解体現場から処理施設へ、そして次の利用先へ

 家の前から走り去ったトラックは、木材や瓦を勝手にどこかへ捨てに行くわけではなく、許可を受けた処理業者の施設などへ運び、そこで選別、破砕、再生、処分といった工程を受ける。建設工事では原則として、発注者から直接工事を請け負った元請業者が排出事業者となり、廃棄物を適正に処理する責任を負う。

 処理を他の業者へ委託する場合にも、誰に処理を委託し、どこへ運び、どのような処理を行ったのかを確認する仕組みがあり、その中心になるのが産業廃棄物管理票、いわゆるマニフェストである。したがって、解体された住宅から出た木材や瓦は、制度上は「トラックに積まれたあと行方が分からなくなるもの」ではなく、処理の流れを管理することが求められている。

 もちろん、不法投棄などが完全になくなったわけではないが、それは制度上認められた処理とは別の問題である。通常の適正処理では、木材には木材の処理先があり、瓦には瓦の処理先があり、金属には金属としての再生ルートがあり、それでも利用できないものが最終処分場へ向かう。

古い住宅では石綿にも注意が必要になる

 古い空き家を解体するときには、木材や瓦だけでなく、石綿、いわゆるアスベストを含む建材にも注意しなければならない。過去には屋根材、外壁材、天井材、断熱材などさまざまな建材に石綿が使用されており、見た目だけでは含有の有無を判断できないものもある。

 現在は建築物の解体や改修を行う際、原則として事前に石綿含有建材の有無を調査する必要があり、一定規模以上の解体工事では、その調査結果を行政へ報告する制度も設けられている。床面積80平方メートル以上の建築物解体では、この事前調査結果の報告対象となるため、80平方メートルという数字は建設リサイクル法だけでなく、石綿対策の制度でも重要な基準のひとつになっている。

 石綿を含む建材が見つかった場合には、通常の木材や瓦とは別の方法で飛散防止や適正処理を行わなければならないため、古い住宅の解体は、単純に重機で壊せば終わる仕事ではないのである。

古い家は「地上の資源庫」とも考えられる

 住宅を1軒解体すると、現場には一見すると大量の「ごみ」が現れる。しかし、その山を材料別に見直してみると、木材、鉄、アルミニウム、銅、瓦、コンクリート、ガラスなど、まだ社会で利用できる物質が相当量含まれている。

 高度経済成長期以降、日本では膨大な数の住宅が建設され、それらが老朽化し、空き家となり、やがて解体される時代に入りつつある。そう考えると、全国に存在する古い住宅は、単なる老朽建築物ではなく、木材や金属、鉱物系材料などが何十年にもわたって蓄えられてきた「地上の資源庫」と見ることもできる。

 もちろん、住宅を解体すればすべての材料が美しく循環するわけではない。腐食したもの、有害物質を含むもの、複数の素材が強く接着されて分離できないもの、再生するより運搬や処理に大きなエネルギーを使うものもあり、最終処分を避けられない場合もある。

 それでも、建物をまとめて廃棄するのではなく、できるだけ材料ごとに分け、利用できるものを社会へ戻そうとする仕組みは確実に進んできた。木材については再資源化・縮減率が極めて高い水準に達している一方、瓦については地域ごとの処理設備や需要によって再資源化の状況に差が生じるというように、材料ごとに循環の仕組みや成熟度も異なっている。

家は消えても、材料は消えない

 空き家が取り壊された跡地を見ると、そこにあった住宅の歴史まで消えてしまったように感じることがある。しかし、その家を支えていた木材の一部は木質ボードや紙、堆肥、燃料へ姿を変え、屋根を覆っていた瓦の一部は細かく砕かれて道路や舗装の材料になり、金属部分は再び金属資源として使われているかもしれない。

 そう考えると、解体とは建物の「死」だけを意味するものではない。住宅というひとつの形を終え、その内部に何十年も閉じ込められていた材料を、もう一度社会の中へ戻していく入口でもある。

 昨日まで屋根の上にあった瓦が、明日は道路の下で人や車を支え、何十年も家を支えてきた柱が、別の製品やエネルギーへ変わっていくこともある。私たちの目には家そのものが消えたように見えても、その材料まで消えたわけではなく、かつてひとつの住宅だった物質は、それぞれ別の場所で次の役割を始めているのである。

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