地域分析記事

地域の暮らしと地域課題を数学とデータで考える

閉店時間になった瞬間、食品が「ごみ」になるわけではない

 夜のスーパーへ行くと、総菜売場の弁当や揚げ物に20%引き、30%引き、半額といったシールが貼られていることがある。閉店時刻が近づくにつれて商品が減り、最後にはほとんど何も残っていない店もあれば、閉店直前まで弁当や刺身が並んでいる店もある。その光景を見ていると、「結局、残った食品は閉店したら全部捨てられるのだろうか」と思う人もいるだろう。

 しかし実際には、閉店時間を境に、それまで商品だった食品が一斉に廃棄物へ変わるわけではない。売れ残った食品の行き先は、閉店するかなり前から決まり始めており、商品の種類、消費期限や賞味期限、店舗が定める販売期限、保存状態、翌日も販売できるかどうかなどによって扱いが変わる。つまり閉店後の食品売場で行われているのは、「残ったものを全部捨てる作業」というより、翌日へ引き継げる商品と、その日のうちに販売を終える商品を分ける作業なのである。

 なお、以下は農林水産省や消費者庁などが公表している資料と、食品小売業で一般的に行われている商品管理の仕組みをもとに、スーパーの典型的な流れを説明したものである。値引きの時刻や割合、販売期限、寄附、再資源化、廃棄、従業員への提供などの具体的な運用は、企業、店舗、商品、地域によって異なり、全国のスーパーで一律に同じ処理が行われているわけではない。

半額シールは、廃棄ではなく「最後の販売」である

 最も分かりやすいのが、弁当、総菜、寿司、刺身など、その日のうちに売り切りたい食品である。こうした商品では、販売可能な時間が残っているうちに段階的な値引きを行い、できるだけ購入してもらおうとする。私たちにとっては「安く買える時間」だが、店にとって値引きは、需要と実際の販売量とのずれをできるだけ小さな損失で処理するための手段でもある。

 もっとも、値引きは早ければ早いほどよいわけではない。まだ通常価格で十分に売れる時間帯から大幅に値下げすれば、本来得られたはずの利益を失う。一方、値引きを遅らせすぎれば買い手が現れないまま販売できる時間が尽き、商品の価値は急速に失われる。このため店舗では、過去の販売実績だけでなく、曜日、時間帯、天候、気温、来店客数、地域行事などを考慮しながら、どの程度の商品を用意し、どの時点から値引きするかを調整している。

 ここには、小売業が抱える避けにくい問題がある。余らせないことだけを目標にするなら、最初から商品を少なく作ればよい。しかし、それでは夕方や夜に来店した客が「欲しいものが何もない」という状態になり、店は販売機会を失ってしまう。逆に、閉店間際まで十分な品ぞろえを維持しようとすれば、どうしても一定の売れ残りが発生しやすくなる。したがって、閉店前の値引き商品が存在すること自体を、単純に「店の需要予測が失敗した証拠」と考えることはできない。多少の売れ残りを想定してでも欠品を防ぐ方が、経営上合理的な場合があるからである。

閉店後も翌日にそのまま売られる食品は多い

 もちろん、閉店時に売場に残っていた商品が、翌朝には処分されているわけではない。缶詰、菓子、調味料、飲料、乾麺など、賞味期限まで十分な期間があり適切に保存されている商品は、そのまま翌日の販売へ引き継がれる。牛乳、豆腐、納豆などの日配食品や包装された生鮮食品でも、期限や品質、店舗の基準を満たしていれば翌日も販売されることがある。

 ここで重要なのが、「賞味期限」と「消費期限」の違いである。賞味期限は、定められた方法で保存した未開封の商品について、おいしく食べることができる期限を示すものであり、その時刻を1分過ぎた瞬間に食べられなくなるという意味ではない。一方、消費期限は、傷みやすい食品について安全性を考慮して設定される期限であり、期限を過ぎた食品は食べない方がよい。弁当や総菜、サンドイッチなどには、こちらが表示されることが多い。

 さらにスーパーでは、食品に表示された消費期限や賞味期限とは別に、「店頭でいつまで販売するか」という販売期限を設定する場合がある。この販売期限は法律で全国一律に決められたものではなく、販売者が設定するものである。そのため、賞味期限がまだ先であっても売場から外すことがある一方、食品ロス削減の観点から従来の販売期限を見直し、賞味期限まで可能な限り販売する方向へ運用を変える事業者も現れている。

 したがって、「売場からなくなったから賞味期限が切れて捨てられた」とは限らない。私たちが普段あまり意識しないところで、食品そのものの期限と、小売業が商品として扱う期限という2つの時計が動いているのである。

それでも売れなかった弁当や総菜はどうなるのか

 値引きをしても買い手が現れず、店舗が定めた販売可能な時間を終えた食品は売場から撤去される。特に当日製造の弁当、寿司、総菜などでは、翌日にもう一度商品として並べることができないものがあり、その一部が食品ロスとなる。

 しかし、「売場から撤去された」ことと「そのまま焼却された」ことも同じではない。食品関連事業者には、食品リサイクル法、正式には「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」に基づいて、まず食品廃棄物そのものの発生を抑え、それでも発生したものについて再生利用などを進めていく考え方がある。条件が整えば、売れなくなった食品や調理過程で生じた食品残さなどが分別され、飼料や肥料などの原料として利用されることがある。

 ただし、ここでも話は単純ではない。食品の種類、包装材を分離できるか、異物混入の可能性、回収できる量、輸送距離、近隣に処理施設があるかといった条件によって、再資源化できるかどうかは変わる。「スーパーの売れ残りは全部家畜の餌になる」という説明も、「全部焼却される」という説明も、どちらも現実を正確には表していないのである。

フードバンクに渡せばすべて解決するわけでもない

 まだ食べられるのなら、必要としている人へ渡せばよいのではないかと考える人もいるだろう。実際、食品事業者などから提供された未利用食品をフードバンクが受け入れ、福祉団体などへ届ける仕組みは存在しており、食品寄附は食品ロスを減らす重要な方法の1つになっている。

 日本でも制度整備が進み、2024年12月には食品寄附を安全かつ適切に行うためのガイドラインがまとめられ、2026年4月にはフードバンク認証制度が始まった。同年7月には最初の認証団体も誕生しており、単に「余った食品を渡す」という善意だけではなく、食品を安全に受け渡す仕組みそのものを整備しようとする段階へ進んでいる。

 とはいえ、賞味期限に余裕のある加工食品と、閉店直前まで冷蔵ケースに並んでいた弁当や刺身では事情が違う。傷みやすい食品を寄附するには、限られた時間内に回収して配送し、適切な温度管理と期限管理を維持したまま受取先へ届けなければならない。人員も車両も保管場所も必要になるため、「売れ残った食品を全部フードバンクへ渡せば食品ロスはなくなる」というほど簡単ではない。

 だからこそ、食品寄附は大切な出口ではあるものの、最も重要なのは出口を増やすことだけではなく、そもそも必要以上に余らせないことである。発注や製造の段階で余剰を減らせれば、寄附や再資源化、廃棄といった後工程そのものを減らすことができる。

ところで、昔は廃棄の弁当をもらったこともあった

 売れ残った食品の話になると、「店員が持って帰るのではないか」という話もよく出てくる。筆者自身、学生時代にコンビニエンスストアでアルバイトをしていたころ、販売できなくなったパンや弁当をもらったことがある。40年以上も前の話なので、今さら当時の店長に叱られることもないだろうが、少なくとも筆者にとって「廃棄予定の食品をアルバイトがもらう」という話は、都市伝説ではなく実体験である。

 ただし、その経験を現在のスーパーやコンビニエンスストアへそのまま当てはめることはできない。従業員への販売、提供、持ち帰りを認めるかどうかは企業ごとの規定や店舗運用によって異なり、売れ残った食品を従業員が自由に持ち帰れると一般化することはできないからである。40年以上前の筆者の記憶は、現在の制度を説明する証拠ではなく、あくまで昔の小さなエピソードとして受け取っていただきたい。

 むしろ、この40年ほどの間に食品衛生や在庫管理、コンプライアンスに対する企業の考え方が変わってきたことを考えると、「昔、自分のアルバイト先ではそうだった」という経験ほど、現在の一般論にしてはいけないものなのかもしれない。

日本の食品小売業からは年間48万トンと推計されている

 では、日本では実際にどれほどの食品が失われているのだろうか。農林水産省などが公表した2024年度の推計では、日本全体の食品ロス量は461万トンで、そのうち事業活動から生じたものが237万トン、家庭から生じたものが224万トンとなっている。事業系237万トンを業種別に見ると、食品製造業110万トン、食品卸売業9万トン、食品小売業48万トン、外食産業70万トンと推計されている。

 ここでは「推計」という言葉が重要である。48万トンという数字は、全国のスーパーで閉店後に捨てられた弁当や総菜を直接すべて計量して合計した数字ではない。また、スーパーだけの数字でもなく、食品小売業全体について算出された食品ロス量である。したがって、「スーパーでは毎年48万トンの売れ残りが閉店後に捨てられている」と読み替えるのは誤りである。

 それでも、食品小売業だけでこれほどの食品ロスが推計されている事実は重い。しかも店にとって食品を廃棄することは、環境問題である以前に経営上の損失でもある。例えば500円で販売する予定だった弁当が売れなければ、その商品を作るために負担した原材料費や人件費、包装費などを売上によって回収できず、予定していた売上も得られない。さらに処理方法によっては、廃棄物として回収・処理するための費用も発生する。

 ただし、「500円の売上を失ったうえに、さらに原材料費や人件費を500円とは別の損失として加える」と考えるのは正確ではない。売上が得られなかったことと製造原価を回収できなかったことには重なる部分があるからである。それでも、売れない食品を必要以上に作ることが経営上好ましくないことに変わりはない。スーパーには、本来、食品を大量に捨てることで利益を得る仕組みなどないのである。

では、なぜ最初から売れる分だけ作らないのか

 ここまで読めば、「それなら最初から売れる分だけ作ればよいではないか」という疑問が残る。しかし、この問いに完全な答えを出すには、明日の客が何を何個買うかを正確に知る必要がある。

 雨が予報より強くなれば客数が減るかもしれない。逆に、近所の行事が予想以上の人出になれば弁当や飲料が急に売れることもある。給料日前後、曜日、気温、季節、学校行事、連休、競合店の特売など、売上を動かす要因は数多く存在する。過去の販売データからかなり精密な需要予測を行うことはできても、人間が明日どの商品を何個買うかを完全に当てることはできない。

 ここに小売業の難しさがある。夕方に弁当が全部売り切れれば、廃棄は発生しない。しかし、18時に来店した客が弁当売場を見て、何も残っていなければ、その客は何も買わず別の店へ行くかもしれない。店にとっては、それも損失である。一方で、閉店直前まで豊富な品ぞろえを維持すれば、今度は売れ残りが増えやすくなる。

 経営の問題として考えると、重要なのは「廃棄を1個も出さないこと」だけではない。品切れによって失う販売機会と、余らせることによって発生する損失の双方をできるだけ小さくする必要がある。だからこそ、多少の商品が最後に値引きされて残ることは、必ずしも経営の失敗を意味しない。予測できない需要に備えて商品を用意した結果として、一定の余りが生じることは、ある程度避けられないのである。

閉店後の食品売場は、その日の需要予測の「答案用紙」である

 夜のスーパーで半額になった弁当を見れば、私たちはまず「今日は安く買えた」と思う。しかし店側から見れば、その弁当は、予測して用意した数量と実際に客が買った数量との間に生じた、小さなずれの1個でもある。それを半額でも買う人が現れれば、食品は最後まで食品として役割を果たし、店も少しでも売上を得ることができる。それでも買い手が現れなければ、販売可能な時間を終え、店舗のルールに従って売場から撤去される。その後は、条件によって寄附、再資源化、廃棄など異なる道へ進むことになる。

 こうして見ると、閉店後にスーパーの裏側で起きていることは、単純な「余った食品を捨てる作業」ではない。翌日に販売できる商品を残し、その日に販売を終える商品を分け、利用可能なものには別の出口を探し、そして「なぜ今日はこれが余ったのか」という結果を次の発注や製造へ返していく。その繰り返しによって、店は少しずつ翌日の数量を調整している。

 翌朝になると、何事もなかったように新しい弁当や総菜が売場へ並ぶ。しかし、その数が昨日とまったく同じとは限らない。昨日20個余ったなら今日は少し減らし、逆に早い時間に売り切れたなら少し増やす。もちろん、翌日の天候や曜日まで考えれば、単純に20個減らせばよいわけでもない。その小さな計算と修正を毎日繰り返しながら、スーパーは「いつ行っても商品がある便利さ」と「できるだけ食品を捨てないこと」という、完全には両立しにくい2つの課題の間で均衡を探している。

 閉店間際に残った半額の弁当は、単なる売れ残りではない。その日の天候、人の流れ、店の予測、そして最後にそれを手に取った客までが重なった、小売業の1日の結果なのである。

地域の課題を、自分の判断に置き換えて考える

弊社では、住まい・車・移住などの大きな選択を、 費用や将来条件をもとに数字で比較し、判断できる形に整理しています。

数字で比較するサービスを見る

 夕方になると、町のスーパーの駐車場に車が一台、また一台と入ってくる。入口には買い物かごが重なり、店内には野菜や鮮魚、肉、牛乳、総菜、弁当などが並んでいる。住民はそれぞれ必要なものを選び、レジで代金を支払い、夕食の材料を持ち帰る。あまりにも日常的な光景であるため、私たちはスーパーがなぜその場所で営業を続けられるのか、普段はほとんど意識していない。

 しかし、人口減少と高齢化が進む地方では、これまで当たり前に存在していた店舗が、将来も営業を続けられるとは限らない。住民が減れば地域全体の購買需要が縮小する可能性があり、人件費や電気料金、物流費が上昇すれば、人口がそれほど減っていなくても採算が悪化することがある。さらに、経営者の高齢化や後継者不足によって、一定の売上が確保されている店舗でも閉店を余儀なくされる場合がある。

 では、スーパーを一店舗維持するには、何人の住民が必要なのだろうか。この問いについて調べると、「食品スーパーには人口1万人~3万人程度の商圏が必要」という数字が出てくる。国土交通省の資料にも同様の数値が掲載されているため、一見すると人口1万人がスーパー存続の境界であるかのように思える。

 ところが、この数字をすべてのスーパーに適用すると、地方の実態を十分に説明できない。人口数千人規模の地域で営業する小規模な食品スーパーと、広い駐車場を備えた大型食品スーパーでは、設備も従業員数も必要な売上高も異なるからである。重要なのは、単純な人口の大小ではなく、その店舗がどのような需要を獲得し、どの程度の経費で営業しているかという経済構造である。

「人口1万~3万人」という数字の本当の意味

 国土交通省の「利用人口と都市機能」という資料には、売場面積2,000~3,000平方メートル規模の食品スーパーについて、周辺人口1万人~3万人という商圏規模が示されている。同じ資料では、売場面積1,000~1,500平方メートル規模のドラッグストアについても、同程度の周辺人口が一つの目安として挙げられている。

 ただし、この数字の性格を正しく理解する必要がある。資料に掲載されている商圏人口は、国土交通省が全国のスーパーの財務諸表や閉店事例を統計分析し、損益分岐点として算出したものではない。都市再構築戦略検討委員会における流通分野の専門家の説明を基に整理された実務的な参考値であり、資料自体も、人口規模と都市機能の対応は概略的なイメージであって、具体的な条件によって差が生じると注意している。

 したがって、「2,000~3,000平方メートル級の食品スーパーでは、周辺人口1万人~3万人が商圏の一つの目安になる」という説明には資料上の根拠があるが、「人口1万人未満の地域では食品スーパーは経営できない」という結論にはならない。まして、1万人と3万人の中間が2万人だからといって、スーパー一店舗の標準的な必要人口を2万人とすることもできない。数値の中間を取ることと、経営上の損益分岐人口を推定することは、まったく別の問題である。

 さらに、この目安には、統計的に推定された信頼区間や、全国の店舗に共通する最低人口としての意味はない。スーパーの出店を規制する法的な人口基準でもなく、店舗立地を検討する際の参考情報として扱うのが適切である。

「人口6,000人にスーパー2店舗」はなぜ考えられるのか

 仮に人口6,000人の地域に、地域密着型の個人スーパーが二店舗営業していたとしよう。人口を店舗数で単純に割ると一店舗当たり3,000人となるため、先ほどの1万人~3万人という目安とは大きな差が生じる。しかし、この状況は経済理論上、必ずしも矛盾しない。

 最初に確認すべきなのは、行政上の人口と、実際の商圏人口が一致するとは限らないことである。地域外から買い物客が訪れる場合もあれば、住民が隣接する市町村の大型店で日常的に買い物をする場合もある。観光地であれば観光客や別荘利用者の需要が加わり、幹線道路沿いの店舗であれば通勤者や通過交通による購買も考えられる。反対に、地域の人口が6,000人いても、その大部分が地域外で買い物をしていれば、地元店舗が獲得できる需要は小さくなる。

 また、二店舗が存在するからといって、6,000人の住民が3,000人ずつ均等に分かれて利用しているわけでもない。生鮮食品は近所の店、加工食品や日用品は大型店というように購入先を使い分けることもあり、一人の住民が複数の店舗を利用することも一般的である。スーパーが獲得する売上高を考える際には、客の人数だけでなく、来店頻度、購入単価、商品構成、競合店との購買の分担を把握する必要がある。

 さらに重要なのが、店舗の規模と経営形態である。売場面積300平方メートルの地域スーパーと、2,500平方メートルの郊外型食品スーパーでは、必要な設備投資や在庫、人員配置、冷蔵・冷凍設備、駐車場などの規模が大きく異なる。経営者自身が店頭に立つ店舗と、多数の従業員を雇用するチェーン店舗とでは、経費の構造も同じではない。

 ただし、小規模店舗は必ず低コストで運営できると考えるのも誤りである。大型チェーンには大量仕入れによる価格交渉力、共同配送、情報システムの共通化、広告宣伝費の分散といった利点がある。一方、個人スーパーでは仕入単価や小口配送費が割高になりやすく、経営者や家族の長時間労働によって営業を維持している場合も考えられる。設備が小さいことによる費用の削減と、規模の小ささから生じる不利な条件の両方を評価しなければならない。

 したがって、人口6,000人の地域で二店舗が営業しているという状況が確認されたとしても、それだけで「3,000人あれば一店舗経営できる」とは言えない。地域の需要構造や店舗ごとの収支を確認し、営業していることと十分な利益を確保していることを区別する必要がある。

全国統計から見える小型スーパーと大型スーパーの違い

 スーパーの規模によって営業実態がどの程度異なるのかを考えるうえで参考になるのが、全国スーパーマーケット協会、日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会の三団体による「2025年スーパーマーケット年次統計調査」である。

 この調査では881社を対象として286社から回答を得ており、回収率は約32.5%だった。回答企業には少数の店舗を運営する企業から多数の店舗を保有する企業まで含まれているが、回答率が100%ではないため、回答企業と非回答企業の間に経営状況や店舗規模の違いが存在する可能性には注意が必要である。また、調査に参加した企業の回答店舗に基づく集計であり、国内すべての食品スーパーを無作為に抽出した統計ではない。

 店舗の平日における一日平均来店客数は、全体平均で1,753.8人だった。売場面積800平方メートル未満では1,148人、800~1,200平方メートル未満では1,602.1人、1,200~1,600平方メートル未満では1,741.7人、1,600平方メートル以上では2,252.8人となっている。店舗規模の大きい区分ほど平均来店客数が多い傾向が確認できるものの、これらは実際に営業している回答店舗の実績であり、利益を確保するための最低来店客数ではない。

 また、この来店客数は商圏内の異なる住民の人数を表しているわけではない。同じ人が一週間に何度も来店することがあるため、平均来店客数1,148人の店舗について、周辺に1,148人の住民がいれば営業できるという解釈は成立しない。商圏人口と延べ来店客数は、明確に区別しなければならない指標である。

 さらに興味深いのが、売場面積一平方メートル当たりの年間売上高である。2025年調査では全体平均が133.7万円だったのに対し、800平方メートル未満の店舗では204.4万円、800~1,200平方メートル未満では138.2万円、1,200~1,600平方メートル未満では114.7万円、1,600平方メートル以上では107.5万円となっている。小規模店舗群ほど売場面積当たりの売上高が高いという傾向が見られ、800平方メートル未満の区分では44店舗の有効回答が集計されている。

 ただし、この数字から「小型スーパーは大型スーパーより経営効率が高い」と断定することはできない。売場面積当たり売上高が高くても、仕入費用や人件費が大きければ利益が少なくなるからである。また、売場面積が小さい店舗には都市部の高密度な商圏に立地する店も含まれるため、人口密度の低い地方の個人スーパーと同じ条件で営業しているわけではない。小型化によって売上密度が高くなるという因果関係まで、この統計が証明しているわけではない。

 加えて、この調査は営業を継続している店舗の実績を中心に把握している。すでに閉店した店舗の売上高や費用構造を同時に比較したものではないため、存続している店舗の平均値だけから閉店の境界条件を推定すると、生存者バイアスが生じる。統計が示しているのは店舗規模別の営業実態の違いであり、どの規模の店舗がどの人口で存続できるかという普遍的な法則ではない。

大型スーパーには年間数十億円規模の売上が必要なのか

 店舗の規模による違いを考えるため、先ほどの売場面積当たり年間売上高を使って試算してみよう。2025年調査における1,600平方メートル以上の店舗の平均値は、一平方メートル当たり年間107.5万円である。この数値を単純に当てはめると、売場面積2,000平方メートルで年間約21.5億円、3,000平方メートルで年間約32.3億円の売上高になる。

 もちろん、これは平均的な売上密度を一定と仮定した参考計算であり、これだけ売らなければ倒産するという意味ではない。実際の必要売上高は商品構成、粗利益率、人件費、賃料、物流費、設備投資などによって変わり、同じ面積の店舗でも地域によって大きな差が生じる。

 それでも、2,000~3,000平方メートル級の食品スーパーが、年間数十億円規模の売上を持つこともある施設だという点は理解できる。これに対し、小型の地域スーパーでは売場面積や在庫、従業員数などを抑えた経営が可能な場合があり、同じ売上高を必要とするとは限らない。

 もっとも、店舗面積を半分にしたから固定費も必ず半分になるわけではない。食品を販売する以上、レジ、冷蔵設備、衛生管理、仕入れ、搬入、廃棄物処理といった基本的な機能が必要であり、経費には店舗規模を縮小しても残る部分がある。規模の小さな店舗ほど、限られた売上高でこうした基本的な経費を負担しなければならないという問題も生じる。

スーパーに必要な人口を決めるのは、売上と損益分岐点である

 スーパーの存続可能性を考えるには、人口と売上高の関係だけでなく、売上高と費用の関係を調べる必要がある。経営学や管理会計では、売上高から商品仕入れなどの費用を差し引き、固定費を回収した結果、利益がゼロになる売上高を「損益分岐点売上高」と呼ぶ。

 スーパーの年間売上高は、商圏人口、住民一人当たりの購入額、その店舗が獲得する購買割合、地域外からの需要などによって左右される。一方、営業利益は売上高から仕入原価、人件費、物流費、光熱費、賃料、減価償却費などを差し引いた結果として決まる。つまり、人口が同じでも購買需要の獲得率や費用構造が異なれば、損益分岐点を超えられるかどうかは変わってくる。

 ここで、人口6,000人の仮想地域を使って考えてみよう。住民一人当たりの年間食料品購入額を30万円と仮定すると、地域全体の年間購入額は18億円になる。ただし、これは計算のための仮定であり、特定地域の実際の支出額を示したものではない。

 仮に地域内の二店舗が、この18億円のうち合計50%を獲得し、売上を均等に分け合っているとすれば、二店舗の合計年商は9億円、一店舗当たりの年商は4.5億円となる。さらに、売上高から仕入原価と売上に比例する営業経費を差し引いた限界利益率を22%、一店舗当たりの年間固定費を9,000万円と仮定すると、年商4.5億円から生じる限界利益は9,900万円となり、営業利益は900万円になる。

 ところが、人口が同じ6,000人でも、地元二店舗への購買残留率が40%に低下すれば、一店舗当たりの年商は3.6億円となり、先ほどの条件では年間1,080万円の営業赤字になる。逆に購買残留率が60%まで高まれば、一店舗当たりの年商は5.4億円となり、営業利益は年間2,880万円になる。

 この試算では、人口、住民一人当たりの購入額、利益率、固定費を同じ条件にしている。それでも、地域内の店舗にどれだけ購買が残るかによって、黒字にも赤字にもなる。スーパーの経営を決めるのは人口そのものではなく、実際に獲得できる売上高と、それを得るために必要な経費との関係なのである。

 ただし、これらは理論を説明するための仮想的な計算であり、地方スーパーの平均的な利益率や固定費を示したものではない。実際の分析では、食料品購入額の範囲、店舗別の販売構成、粗利益率、廃棄損失、人件費、経営者の適正な報酬などを確認しなければならない。また、営業利益が黒字でも、設備の更新や借入金返済に必要な資金を十分に確保できるとは限らない。

小規模なスーパーほど経営に余裕があるとは限らない

 ここで、もう一つ重要な統計を確認しておきたい。2025年スーパーマーケット年次統計調査の経営指標には、企業の売上規模別の営業利益率と損益分岐点比率が掲載されている。

 このうち、年間売上高30億円未満の企業群では、売上高営業利益率の平均が0.18%、損益分岐点比率の平均が99.46%となっている。損益分岐点比率とは、現在の売上高に対して利益がゼロとなる売上高がどの程度の水準にあるかを示す指標であり、一般に100%に近いほど売上減少への余裕が小さいことを意味する。

 ただし、0.18%と99.46%はそれぞれの対象企業について計算された平均値であり、特定の一店舗の損益構造を示すものではない。損益分岐点比率99.46%についても、対象企業の平均的な傾向を表すのであって、すべての企業が売上高を0.54%失えば赤字になるという意味ではない。また、これは企業の年間売上高による分類であり、売場面積800平方メートル未満の店舗だけを対象にした統計ではない。

 それでも、小規模企業群の中には利益の余裕が限られた経営が多く含まれる可能性を示す数字として重要である。人口が少ない地域でもスーパーが営業できることと、そのスーパーが長期にわたって安定的に経営できることは、明確に区別する必要がある。

 とりわけ個人経営の店舗では、経営者や家族が長時間働き、十分な報酬を受け取らないことによって営業が維持されている可能性もある。帳簿上の利益が確保されていても、設備更新費や将来の人件費上昇まで考えると、事業を継続する余力が不足している場合も考えられる。地域のスーパーが存在しているという事実だけでは、その経営が持続可能であることまでは証明できない。

市町村人口と商圏人口は同じではない

 地方のスーパーを分析する際に注意したいのが、市町村の行政区域と、消費者の買い物行動によって形成される商圏の違いである。行政上は人口6,000人の町であっても、隣接する自治体から多くの買い物客を集めていれば、実質的な商圏は町の人口より大きくなる。反対に、人口2万人の自治体であっても、住民が隣接地域の大型店を日常的に利用していれば、地元店舗が獲得できる購買需要は小さくなる。

 地方では自動車による移動が一般的な買い物手段となっている地域も多く、道路条件や店舗への所要時間が商圏の形成に大きく影響する。自治体の境界を越えて移動できる幹線道路沿いの店舗と、山間部や交通条件の悪い地域にある店舗とでは、同じ距離に住む消費者であっても来店しやすさが違う。

 そのため、地域のスーパーについて調べるなら、店舗から自動車で10分、15分、20分程度の範囲にどれだけの人口が分布しているかを確認し、同じ範囲に存在する競合店舗や道路網も調べる必要がある。ただし、10分や15分という時間自体がすべての地域に共通する商圏の境界ではない。実際の利用圏を分析するための便宜的な区分であり、地域の交通事情や買い物行動に応じて設定し直すべきものである。

 さらに、人口の年齢構成や世帯構成、所得水準、観光需要、別荘利用などによって、同じ人口でも食品に対する購買需要は変わる。例えば、観光地では居住人口だけでは把握できない売上が発生する一方、住民の高齢化が進む地域では自動車を利用できる人の割合が変化し、店舗への来店行動そのものが変わる可能性がある。

 したがって、人口8,000人の自治体だからスーパーの存続が危険で、人口2万人の自治体だから安全だという判断は適切ではない。地域人口は重要な基礎指標だが、それだけで経営の成立条件を決定することはできないのである。

人口減少で失われるのは、店舗数だけではない

 スーパーの存続を考える際には、経営上の採算性と、住民の生活利便性を分けて評価する必要がある。人口が減少した地域で複数の店舗が一店舗に集約されれば、残った店舗の売上が増え、経営効率が改善する可能性はある。しかし、その一方で、近所の店舗を失った住民の買い物距離が長くなり、自動車を利用できない高齢者の生活が不便になる可能性もある。

 農林水産政策研究所が2024年に公表した2020年の推計では、65歳以上の食料品アクセス困難人口は全国で約904万人となり、65歳以上人口の25.6%を占めていた。75歳以上では約566万人、同年齢層の31.0%に達している。

 この推計における食料品アクセス困難人口とは、食料品を扱う店舗まで直線距離で500メートル以上あり、かつ自動車の利用が難しい65歳以上の人を、国勢調査などの情報から推計したものである。対象店舗には食品スーパーだけでなく、食肉店、鮮魚店、青果店、コンビニエンスストア、ドラッグストアなども含まれる。

 ただし、904万人という数字は、実際に買い物ができないと回答した人数ではなく、店舗までの距離や自動車利用の条件に基づく推計値である。また、店舗が500メートル以内に存在していても、十分な品ぞろえがなかったり、道路の勾配や身体的な事情によって来店が難しかったりする可能性もある。食料品アクセス困難人口は問題の規模を把握するための重要な指標だが、住民一人ひとりの買い物の困難さを完全に表しているわけではない。

 地域にスーパーが一店舗残っていたとしても、その店まで自宅から数キロメートル離れていれば、自動車を運転できない高齢者には利用が難しい。反対に、店舗側から見れば、人口密度の低い地域では十分な客数を確保するために商圏を広げる必要が生じることもある。経営のために広い範囲から客を集めることと、住民の身近な場所に食料品を供給することは、必ずしも一致しない。

 つまり、スーパーの店舗数が維持されることと、地域全体の買い物環境が維持されることは同じではない。人口減少が進む地域では、経営上の合理性と住民の生活利便性が、異なる方向へ動く可能性まで考えなければならない。

小さなスーパーが残る地域には、どのような条件があるのか

 人口の少ない地域で営業する小規模スーパーには、大型店とは異なる経営上の強みが存在する場合がある。地域住民の好みや購入頻度を把握し、売れ筋の商品に品ぞろえを絞ることができれば、過剰在庫や売れ残りを抑えられる可能性がある。鮮魚や総菜など特定の商品に強みを持つ店舗であれば、価格や品ぞろえの総量だけで大型店と競争せず、特定の商品を目当てに来店する顧客を獲得することも考えられる。

 ただし、こうした条件が成立するかどうかは店舗ごとに異なる。商品を絞り込めば在庫管理が容易になる一方、必要な商品がそろわないことで客離れが生じる可能性もある。地域密着型の接客が固定客の維持につながる場合もあれば、低価格を重視する消費者が大型チェーンへ流れる場合もあるため、小規模であること自体が競争上の優位性を保証するわけではない。

 また、個人スーパーにとって深刻なのは、人口減少以外の要因による閉店である。経営者の高齢化や後継者不足、従業員の確保難、冷蔵設備の更新費用、仕入価格や物流費の上昇などは、売上が比較的安定していても経営を圧迫する可能性がある。特に経営者本人の労働に強く依存する店舗では、経営者が引退した時点で営業を続けられなくなることも考えられる。

 そのため、地域のスーパーの将来を評価するには、現在の人口と売上だけでなく、経営者の年齢、事業承継の見通し、従業員の確保、設備の更新計画、資金繰りまで調べる必要がある。利益が確保されている店舗でも将来の営業継続が保証されるわけではなく、逆に一時的に利益が小さい店舗でも、資産や経営方針などの条件によって営業が続けられる場合がある。

制度上も「人口1万人」が出店基準ではない

 食品スーパーの出店や営業について、全国一律に商圏人口1万人以上を必要とする法律上の規定は存在しない。例えば、大規模小売店舗立地法は、原則として店舗面積の合計が1,000平方メートルを超える小売店舗を対象に、交通、駐車場、騒音、廃棄物処理など、周辺地域の生活環境への配慮を求める制度である。

 この制度が扱うのは主として大型店の立地による周辺環境への影響であり、スーパーの経営採算を人口によって保証するものではない。また、実際の出店には用途地域などの土地利用規制、建築基準、食品衛生関係の規制なども関係するため、人口条件がないからといって、すべての場所に自由に出店できるわけではない。

 ここでも、商業施設の立地を考える際の人口目安と、法律上の出店条件、さらに経営上の損益分岐点を分けて理解することが重要になる。国土交通省の資料に示された1万人~3万人という数字は、営業許可の人口基準でもなければ、採算性を保証する基準でもないのである。

地方のスーパーを分析するには何を調べるべきか

 人口減少地域でスーパーの将来を考えるなら、まず店舗の周辺人口と将来人口を把握する必要がある。ただし、市町村全体の人口だけでは十分ではなく、国勢調査の小地域人口などを用いて、店舗への到達時間別に人口や世帯の分布を調べることが望ましい。さらに、年齢構成や自動車利用の状況、競合店舗の位置、購買の流出入まで把握できれば、地域の需要構造をより現実に近い形で評価できる。

 次に必要なのは、店舗が獲得できる売上高と費用の推計である。住民一人当たりの食料品購入額を基礎として、地域内の購買残留率、店舗ごとの市場占有率、観光客などの地域外需要を考慮すれば、売上高の複数のシナリオを作成できる。そのうえで、粗利益率、人件費、物流費、賃料、光熱費、設備更新費などを組み合わせ、人口が減少した場合に損益分岐点を下回る可能性を評価することになる。

 ただし、将来予測には必ず不確実性がある。人口が同じ割合で減少しても、世帯構成や購買行動、物価、競合店舗の動向が変化すれば売上高は異なる。したがって、一つの人口予測から閉店年を断定するのではなく、需要が大きく減少する場合、緩やかに減少する場合、地域外需要などによって補われる場合を分けて検討する方が合理的である。

 御宿町、いすみ市、勝浦市、大多喜町などの地域を考える場合にも、同じ分析が必要となる。観光や別荘利用の影響が考えられる地域、人口が広い範囲に分散する地域、道路交通によって周辺市町村との買い物の往来が生じる地域では、行政人口が同じでも実際の商圏は異なる。地元スーパーの存続可能性を評価するには、単純な人口比較を超えて、住民の生活圏と購買行動を把握する必要がある。

 さらに、経営が成立するかという評価と、住民が必要な食料品を購入できるかという評価は分けなければならない。小規模スーパー、食品を扱うドラッグストア、移動販売、宅配サービスなどを組み合わせることによって食料品へのアクセスを維持できる可能性はあるが、各サービスの採算性、利用料金、配送範囲、継続的な担い手の確保についても検討する必要がある。単に代替手段が存在するだけでは、持続可能な地域の食料供給体制が確立したとは言えない。

「何人いれば営業できるか」と「将来も続けられるか」は違う

 スーパーに必要な人口を考えるとき、実際には三つの異なる問題を区別する必要がある。一つ目は、ある人口規模の地域に店舗が立地できるかという問題であり、二つ目は、店舗が日々の経費を賄いながら営業を続けられるかという問題である。三つ目は、経営者や従業員への適正な報酬、設備の更新、将来の事業承継まで含めて、長期的に持続可能な経営を実現できるかという問題である。

 この三つは似ているようで同じではない。現在、人口数千人の地域にスーパーが存在しているとしても、その店舗が十分な利益を確保しているとは限らず、利益が出ていたとしても後継者や設備更新の問題によって将来閉店する可能性がある。反対に、人口が比較的多い地域でも競合店が集中していれば、個々の店舗の収益性が悪化することは考えられる。

 したがって、「スーパー一店舗には何人必要か」という問いに全国共通の数字を一つ示すことは適切ではない。ある店舗について、店舗規模、収益構造、商圏内の購買需要、競合環境などを具体的に設定すれば、損益分岐点に相当する人口を推定することは可能である。しかし、その推定値を別の地域や経営形態にそのまま適用することはできない。

 また、店舗の採算性だけを優先して大型店への集約を進めれば、移動手段を持たない住民の買い物環境が悪化する場合がある。一方、生活利便性を維持するために小規模店舗を残そうとしても、必要な売上や人材を確保できなければ事業は継続できない。地域全体で考えるべきなのは、単独店舗の収益性と住民の生活に必要な食料供給機能を、どのように両立させるかという問題である。

人口減少時代に本当に必要なのは、店が残れる条件を見極めること

 結局、スーパー一店舗に必要な人口は何人なのだろうか。国土交通省の資料に示された2,000~3,000平方メートル規模の食品スーパーについては、周辺人口1万人~3万人が一つの商圏目安になる。しかし、それは全国の食品スーパーに共通する最低必要人口ではなく、まして小規模な地域スーパーの採算を判断する基準でもない。

 実際に店舗が営業を続けられるかどうかは、人口の大小だけでなく、住民の購入額、店舗が獲得する購買割合、地域外からの需要、仕入れや物流、人件費、設備更新費などの組み合わせによって変わる。人口が少なくても比較的小さな店舗なら営業が成立する可能性がある一方、人口が多くても競争や費用構造によって採算が悪化する可能性はある。

 そして、現在の営業継続と将来の持続可能性も分けて考えなければならない。人口6,000人の地域に二店舗が存在することが仮に確認されたとしても、それだけで一店舗当たり3,000人が必要人口だとは言えず、経営の安定性や将来の事業承継まで保証されるわけではない。単に店舗が存在しているという事実から、地域の経済的な持続可能性を評価することには限界がある。

 人口減少地域にとって重要なのは、人口が何人を下回ったときにスーパーが消えるのかを、全国共通の数字で予測することではない。その地域の人口構造や交通条件、購買行動、店舗の規模、経営費用を踏まえ、どのような店舗やサービスの組み合わせであれば、必要な食料品を供給し続けられるのかを検討することである。

 町の小さなスーパーに明かりがついている。店内には大型店ほど多くの商品がないかもしれないが、日々の食事に必要なものを買いに来る住民がいて、地域の暮らしを支える役割を担っている。その店がこれからも営業を続けられるかどうかを決めるのは、「人口1万人」という一本の線ではない。

 人口減少が進む地方で本当に問われるのは、スーパー一店舗を成立させる最低人口が何人なのかという単純な問題ではなく、人口が減っても地域に必要な購買需要を確保し、経営を維持しながら、住民が食料品を購入できる環境をどこまで残せるのかという問題である。

 地域の将来を考えるうえで必要なのは、人口の減少だけを見て店舗の閉店を予想することではない。人口、購買力、経営構造、交通手段、事業承継という複数の条件を把握し、何を変えれば営業や食料供給を継続できるのかを具体的に検証することである。その積み重ねこそが、人口減少時代の地域商業を考える現実的な出発点になる。

地域の課題を、自分の判断に置き換えて考える

弊社では、住まい・車・移住などの大きな選択を、 費用や将来条件をもとに数字で比較し、判断できる形に整理しています。

数字で比較するサービスを見る