地域分析記事

地域の暮らしと地域課題を数学とデータで考える

外房でガソリンスタンドがなくなると何が起きるのか~給油・灯油・農業・医療・災害を支える地域インフラとして考える

はじめに

 人口減少地域では、鉄道や路線バス、スーパー、金融機関など、日常生活を支える施設の減少が問題になります。その中で見落とされやすいのが、ガソリンスタンドです。ガソリンスタンドが閉店すると、自動車を利用する人が少し遠くまで給油に行けば済むようにも思えますが、地方ではそれほど単純ではありません。

 ガソリンスタンドは、自家用車へガソリンを販売するだけの店舗ではありません。軽油を使用する農業機械や建設機械、事業用車両への燃料供給、灯油販売や家庭への配送、災害時の消防・救急・行政車両への燃料供給、非常用発電機用燃料の確保などを担うことがあります。人口減少地域では、民間の小売店であると同時に、地域のエネルギー供給拠点という性格を持っています。

 特に外房では、居住地、医療機関、商業施設、農地、観光施設などが広い範囲に分散しており、自動車に依存する生活が少なくありません。本稿では、御宿町、勝浦市、いすみ市、大多喜町などを含む外房地域を念頭に、ガソリンスタンドの減少が生活や地域産業、防災にどのような影響を与えるのかを考えます。

全国ではガソリンスタンドが長期的に減り続けている

 全国のSS(Service Station・サービスステーション、一般にいうガソリンスタンド)は、1994年度末の6万421か所をピークとして長期的に減少してきました。資源エネルギー庁によると、2024年度末には2万7,009か所まで減少しています。さらに石油連盟が2026年にまとめた資料では、2025年度末には2万6,412か所とされており、ピーク時の半分以下になっています。

 背景には、人口減少だけではなく、自動車の燃費向上、石油製品需要の減少、価格競争、設備の老朽化、地下タンクや計量機などの更新費用、経営者の高齢化、人手不足、後継者不足があります。今後はEV(Electric Vehicle・電気自動車)などの普及もガソリン需要を減らす方向に働くと考えられます。一方で、需要が減ったからといって、地域に必要な燃料供給機能まで同じ速度でなくしてよいとは限りません。

 販売量の少ない地域では、競合店舗が閉店すれば残った店舗へ需要が集まり、経営が安定するようにも見えます。しかし、地域全体の人口と燃料需要そのものが減少していれば、最後の1店舗になっても十分な販売量を確保できない場合があります。むしろ、少ない需要で広い地域を支えることになり、灯油配送や災害対応などの負担が最後の店舗へ集中する可能性があります。

全国615市町村がSS過疎地等に該当している

 国は、市町村内のSSが3か所以下となった地域だけでなく、居住地から最寄りのSSまで道路距離で15キロメートル以上離れている地域についても、燃料供給上の問題を把握しています。2025年3月31日時点では、SSが3か所以下の市町村が381市町村、15キロメートル以上離れた地域を持つ市町村が291市町村あり、両方に該当する57市町村を重複除外すると、合計615市町村がSS過疎地等に該当します。

 ただし、市町村内の店舗数だけで住民の不便さを判断することはできません。自治体内に2店舗しかなくても、隣接自治体の店舗が近ければ給油環境は比較的良い場合があります。反対に、自治体内に4店舗以上あっても、市域が広く、山間部や沿岸部などから最寄り店舗まで15キロメートル以上離れている場合があります。

 したがって、本当に重要なのは行政区域内の店舗数だけではありません。集落ごとの道路距離、所要時間、営業時間、定休日、ガソリン・軽油・灯油の取扱い、灯油配送の有無、大型車両への対応、自家発電設備の有無、隣接自治体にある代替店舗まで含めて考える必要があります。2026年に資源エネルギー庁が検討している重点的な維持支援でも、単純な店舗数だけでなく、最寄りSSとの距離や、その店舗がなくなった場合に生じる供給空白が重視されています。

御宿町はすでに「店舗数が少ない地域」である

 外房について考えるうえで、御宿町は分かりやすい例です。経済産業省を出所とする2023年3月31日時点の資料では、御宿町のSSは2か所とされており、店舗数基準ではすでにSS過疎地に該当していました。2026年時点の民間のガソリンスタンド検索でも、通常の給油所として2店舗が確認されています。ただし、登録上の店舗数と実際の営業状況が必ず一致するとは限らず、将来の営業継続予定や販売量については公開資料だけでは判断できません。

 ここで重要なのは、「御宿町ではすでに給油できない」という意味ではないことです。現在2店舗があるのであれば、日常生活が直ちに成り立たなくなる状況ではありません。しかし、2店舗から1店舗へ減る場合と、10店舗から9店舗へ減る場合では、地域供給網への影響が違います。店舗数が少なくなるほど、1店舗の廃業、設備故障、定休日、災害被害、在庫切れが地域全体へ与える影響は大きくなります。

御宿町の生活は自動車への依存度が高い

 御宿町が実施した住民アンケートでは、通勤・通学の交通手段として自家用車を挙げた回答が56.2%で最も多く、30代では80.4%、40代では80.2%でした。これは回答者511人を対象とした調査結果であり、町民全体にそのまま当てはめることはできませんが、自動車が重要な移動手段であることを示しています。

 さらに日常の移動先を見ると、通勤・通学では74.0%、通院では81.8%、買い物では62.7%が御宿町外と回答しています。つまり、町内だけで日常生活が完結しているわけではなく、多くの住民が町外への移動を必要としています。特に通院先が町外である割合が高いことは、高齢化が進む地域において自動車と燃料供給を考える際の重要な要素です。

 この結果から「御宿町民の何%が自動車なしでは生活できない」とまでは言えません。しかし、ガソリンスタンドの減少を単なる民間店舗の閉店として考えるのではなく、通勤、通院、買い物を支える交通インフラとの関係で評価する必要があることは分かります。

給油場所が遠くなると、燃料を買うために燃料を使う

 給油拠点の減少による負担を簡単な数値で考えてみます。仮に最寄りのガソリンスタンドへ行くための往復距離が10キロメートル増え、月2回給油するとします。年間の追加走行距離は、10キロメートル×2回×12か月で240キロメートルです。

 自動車の実燃費を1リットル当たり15キロメートルとすると、追加走行に必要な燃料は年間16リットルです。ガソリン価格を1リットル180円と仮定すれば、追加の燃料費は年間2,880円になります。往復距離が20キロメートル増えれば、同じ条件では5,760円です。

 ただし、この数字をそのまま「1世帯当たりの損失」と考えるのは適切ではありません。実際には通勤や買い物の途中で給油する人も多く、給油だけを目的とした追加走行が10キロメートル発生するとは限らないからです。この計算は実態推計ではなく、給油場所が遠距離化した場合のシナリオ試算と考えるべきです。

 時間についても同じです。仮に1回30分余計に必要となり、月2回給油すれば年間12時間になります。時間価値を1時間1,000円と仮定すると、機会費用は1万2,000円相当です。しかし、燃料費2,880円は実際に財布から出ていく現金支出であるのに対し、1万2,000円は失われた時間を金額換算した経済的評価です。両者を区別し、「現金支出」と「時間を含めた一般化費用」を分けて示す方が正確です。

高齢者ほど影響を受けやすい

 給油距離の増加は住民へ均等に影響するわけではありません。遠距離運転や夜間運転を避けている人、運転できる家族が1人しかいない世帯、複数台の車を必要とする世帯、農業機械を利用する農家などでは負担が大きくなります。

 さらに高齢者世帯では、ガソリンより灯油の問題が深刻になる場合があります。灯油18リットルは灯油そのものだけでおおむね14キログラム程度となり、容器を含めればさらに重くなります。自分で店舗へ行き、容器へ給油し、自動車へ積み、自宅で降ろして室内へ運ぶ作業は、年齢や身体状況によっては容易ではありません。

灯油配送はガソリン販売とは別の重要な機能である

 人口減少地域でガソリンスタンドがなくなるとき、見落としてはいけないのが灯油配送です。店舗へ自分で行けない高齢者にとって、灯油配送は単なる便利なサービスではなく、冬季の暖房を維持するための生活インフラになる場合があります。

 しかし灯油配送には、配送車両、燃料、人件費、受注管理、日程調整、不在時の再訪問などの費用がかかります。利用世帯が広い地域へ分散しているほど、1件当たりの配送時間と費用は増えます。人口が減り、灯油使用世帯も減少すると、必要性は残っているのに事業としては維持しにくいという問題が生じます。

 灯油配送がなくなれば、電気暖房へ切り替える方法もありますが、停電への弱さという別の問題が生じます。ただし、灯油暖房ならすべて停電時に使用できるわけではありません。石油ファンヒーターは通常、送風や制御に電気を必要とします。一方、電源を必要としない芯式の石油ストーブなどは停電時にも利用できるため、災害対策では暖房方式の違いまで考える必要があります。

農業では燃料供給の遅れが作業時期へ影響する

 外房では、水稲、野菜、施設園芸、畜産などさまざまな農業が行われています。農業では自動車だけでなく、トラクター、コンバイン、田植機、草刈機、管理機、乾燥機、暖房機、揚水ポンプ、発電機などでガソリン、軽油、灯油、重油を使用する場合があります。

 一般家庭なら給油日を数日前後させても大きな問題にならないことがありますが、農業は同じではありません。田植え、収穫、防除、耕起などには適期があり、天候が崩れる前に作業を終える必要がある場合もあります。燃料供給が不安定になると、単なる燃料価格の問題ではなく、作業時期、収量、品質へ影響する可能性があります。

 大規模な農業法人であれば、一定量をまとめて配送してもらえる可能性があります。一方、小規模農家では使用量が少ないため個別配送の効率が低く、自ら燃料を調達する必要が生じることがあります。しかし、農家ごとに大量の燃料を保管すればよいというものでもありません。ガソリンなどの危険物には消防法令や市町村の火災予防条例に基づく規制があり、ガソリンは合計40リットル以上になると保管設備や届出などが問題になります。

建設、物流、漁業、観光にも影響する

 建設会社では、トラック、重機、小型発電機、草刈機などに燃料が必要です。これは平時の工事だけではなく、台風や豪雨後の倒木処理、土砂撤去、道路応急復旧にも関係します。地域内の燃料供給力が弱くなれば、災害から地域を復旧させる事業者自身が活動しにくくなる可能性があります。

 物流でも同様です。宅配便、食品配送、介護用品配送などでは複数台の車両が毎日走行します。給油所が配送経路から遠くなれば、給油のための回送距離と時間が増えます。1台1回では小さな違いでも、複数車両が年間を通して繰り返せば経営費用として無視できなくなることがあります。

 漁業では、漁船そのものへの燃料供給は一般の自動車用ガソリンスタンドとは異なる経路を使う場合があります。それでも、水揚げ後の運搬車、冷蔵車、作業車、発電機などには燃料が必要です。

 観光については注意が必要です。給油所が少なくなれば自家用車やレンタカー利用者の不便が増える可能性はありますが、「ガソリンスタンドが減れば観光客が大幅に減少する」とまで言える公的な統計的根拠は十分ではありません。影響の大きさは、近隣地域までの距離、道路案内、営業時間、電気自動車充電設備などによって変わります。

医療・介護も自動車と燃料に依存している

 外房では、病院へ患者が移動するだけでなく、訪問診療、訪問看護、訪問介護、通所介護の送迎など、多くの医療・介護サービスが自動車によって提供されています。御宿町の住民アンケートで通院先の81.8%が町外だったことを考えても、自動車による移動と医療へのアクセスは切り離して考えにくい問題です。

 訪問型サービスでは、給油場所が遠くなれば給油時間や回送距離が増えます。しかし、診療報酬や介護報酬によって価格が決まるサービスでは、燃料調達費が増えたからといって、その分を自由に利用者料金へ上乗せできるとは限りません。移動距離が長く訪問件数が少ない地域ほど、燃料価格だけでなく給油に要する時間まで含めて採算性を考える必要があります。

災害時にはガソリンスタンドの意味が変わる

 平時にはガソリンスタンドは燃料を購入する店舗ですが、大規模災害時には地域を動かすためのエネルギー拠点になります。消防車、救急車、警察車両、自治体公用車、物資輸送車、給水車、道路復旧用重機、医療・福祉施設の非常用発電機、避難所の発電機、通信設備などが燃料を必要とします。

 外房では地震、津波、台風、高潮、豪雨、土砂災害、大規模停電などを想定する必要があります。特に2019年の房総半島台風では千葉県内で長期間の停電が発生し、電力だけではなく燃料供給を含めた複数のインフラを維持する重要性が改めて認識されました。

 災害時の燃料供給には行政と石油関係団体の協定がありますが、協定を結んでいれば必ず燃料が届くわけではありません。店舗の建物や地下タンク、配管、計量機が無事であること、電源や従業員を確保できること、道路が通行できること、タンクローリーが到着できること、油槽所側に在庫があることなど、複数の条件がそろって初めて供給できます。

 したがって、地域に複数の給油拠点が存在する意味は、価格競争だけではありません。1店舗が使用不能になった場合でも別の店舗を利用できるという冗長性があります。店舗数が少なくなるほど、1店舗の故障や被災が地域全体へ波及しやすくなります。

住民拠点SSがあれば安心とは限らない

 国は、自家発電設備を備え、災害などによる停電時にも可能な限り給油を継続する「住民拠点SS」を整備しています。2025年2月28日時点で千葉県には522か所あり、地域の災害対応力を高める重要な設備です。

 ただし、住民拠点SSは「災害時に必ず営業する店舗」という意味ではありません。店舗自体が被災した場合、燃料在庫がなくなった場合、道路が寸断された場合、従業員が出勤できない場合などには給油できません。自家発電設備は停電という一つの障害には対応できますが、災害時のすべてのリスクを解消するものではありません。

電気自動車が増えればガソリンスタンド問題は解決するのか

 EV(Electric Vehicle・電気自動車)が普及すれば、乗用車のガソリン需要は確実に減少します。しかし、地域の燃料問題が直ちに解決するわけではありません。

 地域にはトラック、建設機械、農業機械、発電機、消防・救急車両、災害復旧車両などが残ります。また、自動車が電動化しても、灯油暖房や非常用発電機などの液体燃料需要が同じ時期にすべて消滅するわけではありません。石油連盟の2026年資料でも、今後の電動車普及がガソリン需要を減少させる一方、地域の燃料供給拠点としてSSを維持する必要性が示されています。

 災害対策でも、電気と液体燃料のどちらか一方だけに完全依存することには弱点があります。停電すれば通常の充電設備は使用できません。一方、ガソリンスタンドも電源や在庫、道路がなければ機能しません。地域全体の耐災害性を考えれば、移行期には複数のエネルギー供給手段を持つ方が合理的です。

最後の1店舗を補助すればよいわけではない

 ガソリンスタンドが地域インフラなら、自治体が補助金を出して残せばよいという考え方もあります。しかし、設備費だけを補助しても、販売量が少なく毎年営業赤字が続けば事業は持続しません。反対に営業赤字だけを補填しても、地下タンク、配管、計量機、自家発電設備、配送車両などを更新できなければ長期的な営業は困難です。

 さらに、人材の問題があります。設備があっても、経営者の後継者や危険物を扱う従業員を確保できなければ営業を続けられません。このため、公共支援を検討するときは、「地域に必要だから」という理由だけではなく、その店舗がなくなれば何世帯が影響を受けるのか、最寄り店舗まで何キロメートルになるのか、年間販売量はどの程度か、灯油配送を何世帯が利用しているか、農業・建設・福祉施設へどの程度供給しているか、災害時にどの施設へ供給するのか、設備更新にいくら必要か、何年間維持できるのかまで評価する必要があります。

 2026年の資源エネルギー庁の検討でも、全国のすべての小規模SSを一律に維持するのではなく、地域の燃料供給上、特に重要なSSを選び重点的に支援する方向が示されています。これは、「全店舗維持」と「完全な市場任せ」の中間に、地域インフラとして必要な拠点を選択的に維持する考え方が必要になっていることを示しています。

自治体単位ではなく生活圏単位で考える必要がある

 住民は自治体境界を意識して給油するわけではありません。御宿町の住民が勝浦市やいすみ市の店舗を利用することもあれば、反対方向の住民が御宿町の店舗を利用することもあります。このため、ガソリンスタンド政策を自治体ごとに完全に分けて考えると、実際の生活圏とずれる可能性があります。

 外房では、御宿町、勝浦市、いすみ市、大多喜町、長生地域などを含め、道路網に沿った到達時間で分析する方が合理的です。平均距離だけではなく、集落単位で「現在はどの店舗が最寄りか」「その店舗が閉店した場合、次の店舗まで何分かかるか」「災害で主要道路が使えなくなった場合に代替経路があるか」を調べる必要があります。

 店舗維持策としては、中核的な給油拠点への支援、灯油配送の共同化、農業者や事業者による共同調達、店舗間の休日調整、電気自動車充電設備や日用品販売などとの複合化が考えられます。ただし、どの方法も万能ではありません。例えば複合化すれば収益源は増えますが、人員、設備、在庫、管理業務も増えるため、サービスを増やしただけで黒字になるとは限りません。

休日輪番制という方法もある

 店舗数が少ない地域では、各店舗が無理に毎日営業するより、複数店舗で休業日を調整し、地域内のどこかが営業している状態を作る方法があります。2025年には、公正取引委員会が、参加を強制せず、販売価格などを共同決定しない一定の条件の下で、SS過疎地における休業日の調整が独占禁止法上問題とならないとする事例を公表しています。

 これは人手不足対策として有効な可能性がありますが、住民への周知が不可欠です。営業日が分からなければ、住民が閉店している店舗まで行った後、別の店舗へ長距離移動するという逆効果も起こります。

住民側にもできる備えがある

 地域の燃料供給問題は行政や事業者だけの問題ではありません。平時から通常利用する店舗だけでなく、隣接自治体を含めた代替店舗を把握し、自分が利用可能な住民拠点SSも確認しておくことには意味があります。また、燃料計がほぼ空になるまで給油を待つ生活より、自分の移動距離や避難経路に応じて一定残量で給油する方が災害時の余裕につながります。

 一方、ガソリンスタンドが遠いからといって家庭で大量のガソリンを備蓄することは適切ではありません。ガソリンは非常に引火性が高く、容器や保管量には法令上の制約があります。大量備蓄ではなく、車両内の燃料を一定量以上保つことや、複数の移動・暖房手段を持つことの方が現実的です。

公開資料だけでは分からないことも多い

 全国のガソリンスタンド数、SS過疎地の自治体数、御宿町の交通行動、住民拠点SSなどについては公的資料から把握できます。しかし、地域の燃料供給が何年後に危機的になるかまでは、公開統計だけでは分かりません。

 特に重要なのは、個々の店舗の年間販売量、営業利益、経営者の年齢、後継者の有無、地下タンクなどの更新時期、灯油配送先世帯数、農業者や事業者への販売量、災害時に維持できる在庫日数です。これらは通常、公表されていません。

 したがって、「外房では数年後にガソリンスタンドがなくなる」「御宿町では近いうちに給油できなくなる」と断定することはできません。必要なのは、店舗数の統計だけで危機を煽ることではなく、事業者への聞き取り、店舗の営業実態調査、集落ごとの道路距離分析、灯油配送利用者の把握などを組み合わせることです。

外房で今から調べるべきこと

 外房で燃料供給網を維持する政策を検討するなら、まず現在の店舗数だけでなく、各店舗が閉店した場合の影響を数値化する必要があります。例えば、各集落から現在の最寄りSSまでの道路距離と所要時間を計算し、1店舗ずつ仮想的に閉店させた場合に次の店舗までの距離がどれだけ増えるかを求めれば、「地域にとって重要な店舗」を客観的に比較できます。

 さらに、人口、高齢化率、自動車利用率、灯油配送世帯数、農地面積、事業所数、医療・介護施設、避難所、消防・救急拠点などを重ねれば、単なる店舗数より実態に近い評価ができます。国が2026年に示している方向も、こうした「その店舗がなくなったとき、どの程度の供給空白が発生するか」を重視する考え方です。

現実的な結論

 外房でガソリンスタンドがなくなる問題は、「給油のために少し遠くまで走ればよい」という問題ではありません。住民の自家用車だけでなく、灯油配送、農業、建設、物流、医療、介護、災害復旧などへ影響が連鎖する可能性があります。

 特に御宿町では、公式資料で確認できる時点ですでにSSが2か所という少ない状態にあり、住民アンケートでも自家用車利用の多さや、通院・買い物の町外依存が確認されています。だからといって現在すぐに燃料危機が起きると断定することはできませんが、店舗がさらに減ってから対策を考えるのでは遅い可能性があります。

 ガソリンスタンドは民間企業である以上、地域に必要だからという理由だけで採算を無視して営業を続けることはできません。一方で、完全に市場競争だけへ任せれば、最後の店舗がなくなった後に初めて、その店舗が担っていた灯油配送、農業用燃料、防災機能などの価値に気付くことになりかねません。

 必要なのは、すべての既存店舗を公費で残すことでも、すべてを市場任せにすることでもありません。外房を一つの生活圏として捉え、どの給油拠点がなくなると住民、農業、事業者、医療・福祉、防災に大きな影響が生じるのかを事前に把握し、本当に必要な拠点を選択的に維持する仕組みを作ることです。

 将来、ガソリン車が減少する方向そのものは変わらないでしょう。しかし、ガソリン需要が完全になくなる前に地域の燃料供給網だけが先に消滅すれば、移行期間に大きな空白が生じます。問題の本質は、ガソリン車をいつまで残すかではありません。地域で暮らし、働き、農業を続け、医療や介護を提供し、災害から生活を守るために必要な燃料供給機能を、誰が、どの拠点で、いくらの費用を負担し、いつまで維持するのかという地域インフラ設計の問題です。

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