地域政経

地域の暮らしと地域課題を考える

はじめに~党首候補を選ぶことは、政治家の人気順位をつけることではない

本稿は、特定の政党や政治家への支持を呼びかけるものではない。

令和8年7月末時点で国会に議席を持つ政党について、現在の党首以外から次の指導者を選ぶとすれば、どのような人物が適切なのかを検討するものである。

ただし、すべての政党について、無理に「現職より優れた人物」を挙げることはしない。

現職党首を交代させる合理性が乏しい政党もある。

後継者候補が十分に育っていない政党もある。

代表選挙を終えたばかりで、新代表の運営を検証すべき段階にある政党もある。

党首候補の評価は、知名度、交流サイトでの人気、演説のうまさ、政治的な好き嫌いだけでは決められない。

本稿では、次の七項目を共通の評価軸とする。

  1. 党の理念と政策との整合性
  2. 政策を制度や法案へ落とし込む能力
  3. 国会で質問や批判に答える説明力
  4. 党内の異なる意見を調整する能力
  5. 他党、官僚、自治体との交渉能力
  6. 誤りや不祥事に対応し、組織を修正する能力
  7. 代表個人に依存しない政党をつくる能力

強い言葉で支持者を集めることと、政党を運営することは異なる。

党首は、支持者の感情を代弁するだけではなく、党内をまとめ、政策の費用を説明し、他党と協議し、必要な場合には妥協や修正を受け入れなければならない。

令和8年7月末の国会勢力

令和8年2月18日時点の衆議院では、自由民主党・無所属の会が316人、中道改革連合・無所属が48人、日本維新の会が36人、国民民主党・無所属クラブが28人、参政党が15人、チームみらいが11人、日本共産党が4人となっている。参議院には、これらに加えて、れいわ新選組、社会民主党、日本保守党などに所属する議員もいる。

以下では、国会に所属議員を持ち、政党として継続的な活動を行っている各党を検討する。


自由民主党~次期総裁候補として小林鷹之氏をどう評価するか

令和8年7月時点の自由民主党総裁は高市早苗氏である。

党役員は、麻生太郎副総裁、鈴木俊一幹事長、有村治子総務会長、小林鷹之政務調査会長、西村康稔選挙対策委員長らで構成されている。

現職総裁を除いて次の候補を考える場合、小林鷹之氏が有力候補の一人になる。

小林鷹之氏を候補とする理由

第一に、政務調査会長として、自民党の政策全体を取りまとめる立場にあることである。

自民党総裁には、外交、安全保障だけでなく、財政、社会保障、医療、農業、地方経済、教育、エネルギーなどを総合的に扱う能力が必要になる。

特定分野で目立つことより、党全体の政策を調整した経験の方が、総裁候補として重要である。

第二に、世代交代を示せることである。

自民党は、長年の政権運営によって行政、業界団体、地方組織との関係を蓄積している。

一方で、特定の長老政治家や過去の派閥構造への依存が続けば、組織の更新が遅れる。

小林氏が総裁候補になることには、従来の自民党の政策基盤を維持しながら、執行部を次世代へ移す意味がある。

第三に、経済安全保障や産業政策を重視する点で、高市路線の一部を引き継ぎながら、より政策実務型の運営へ移行できる可能性がある。

小林氏の課題

一方、小林氏が党全体をまとめられるかは、まだ十分に証明されていない。

自民党には、積極財政派、財政規律派、保守派、穏健派、地方組織、農業団体、経済界など、複数の利害が存在する。

政策に詳しいことと、相反する利害を調整できることは別の能力である。

総裁候補として評価するには、保守的な支持層だけでなく、地方、高齢者、若者、無党派層にも説明できる政治的な幅が必要になる。

自民党に必要な党首像

自民党に必要なのは、高市氏以上に強い言葉を使う人物ではない。

強い衆議院基盤を持っていても、参議院、野党、官僚、地方自治体との調整を軽視しない人物である。

現段階では、小林鷹之氏は有力な次世代候補であるが、総裁としての適性は、党内調整と国会運営の実績によって今後確認される必要がある。


中道改革連合~岡本三成氏は旧来の二つの政治文化を統合できるか

衆議院では、中道改革連合・無所属が48議席を持っている。

この政党にとって最大の課題は、単に党首を交代することではない。

異なる政治文化や支持基盤を持つ議員を、一つの政策政党として統合できるかどうかである。

仮に現職代表以外から選ぶなら、政策調整を担う岡本三成氏が候補となる。

岡本三成氏を候補とする理由

中道を掲げる政党では、右派と左派の中間にいるだけでは不十分である。

どの分野では政府の役割を強め、どの分野では民間活力を使うのか。

安全保障と平和主義をどう両立するのか。

社会保障をどこまで拡充し、その財源をどこに求めるのか。

これらを一つの政策体系として説明しなければならない。

岡本氏のような政策責任者には、旧来の出身母体や支持団体を超えて、党の基本政策を作り直す役割が期待される。

岡本氏の課題

中道政党は、主張が穏健であるだけでは支持を得にくい。

何を守り、何を変えるのかが曖昧であれば、与党と野党の間で態度を決められない政党に見える。

岡本氏が党首となる場合には、生活者重視、立憲主義、福祉、財政、外交について、明確な優先順位を示す必要がある。

また、出身母体の一方だけを代表する人物と受け取られれば、党内統合が難しくなる。

中道改革連合に必要な党首像

この党に必要なのは、テレビで目立つ人物より、複数の政治文化を政策として統合できる人物である。

現段階では岡本三成氏が候補になるが、党名どおりの「中道」を、単なる妥協ではなく政策原理として説明できるかが問われる。


日本維新の会~現職以外の明確な代替候補はまだ育っていない

日本維新の会では、吉村洋文氏が代表、藤田文武氏が共同代表として活動している。党の公式情報でも、藤田氏の共同代表としての会見や、吉村代表と藤田共同代表が並ぶ活動が確認できる。

現在の両氏を除いた場合、直ちに全国政党の代表を任せられる人物は明確ではない。

維新の課題は後継者不足より地域依存である

維新は大阪での知名度と行政実績を強い基盤としている。

しかし、全国政党としては、人口減少地域の医療、農業、鉄道、バス、学校、上下水道など、大都市型改革だけでは対応できない問題を扱わなければならない。

大阪で成立した政策が、財政規模や人口密度の異なる地方でそのまま再現できるとは限らない。

無理に代替候補を挙げるべきではない

党首候補の記事では、すべての政党に一人ずつ名前を挙げたくなる。

しかし、十分な実績が確認できない人物を、形式的に候補とすることは客観的ではない。

維新の場合、現在の代表・共同代表を除くと、全国的な党務、政策、国会運営を総合的に担当した候補者層が薄い。

したがって、現段階で必要なのは交代ではなく、大阪以外の議員を政策責任者や国会責任者として育てることである。


国民民主党~榛葉賀津也氏は玉木依存を解消できるか

国民民主党では、玉木雄一郎氏が代表、古川元久氏が代表代行、榛葉賀津也氏が幹事長、浜口誠氏が政務調査会長を務めている。

玉木代表以外から選ぶ場合、榛葉賀津也氏が最も現実的な候補である。

榛葉賀津也氏を候補とする理由

国民民主党は、政策ごとに与党とも野党とも協議する立場を取っている。

この姿勢には、政党間対立に縛られず、政策実現を優先できる利点がある。

一方で、判断基準が不明確であれば、与党と野党の間で都合よく立場を変えているように見える。

榛葉氏には、党の判断や他党との違いを、比較的明確な言葉で説明する力がある。

また、代表交代によって「玉木氏個人の党」という印象を弱め、組織政党へ移行する意味もある。

榛葉氏の課題

発信力だけでは党首は務まらない。

国民民主党が掲げる減税、手取り増加、エネルギー政策、賃金上昇などについて、社会保障、地方財政、国債、物価との整合性を説明する必要がある。

榛葉氏が代表となる場合、短い言葉で注目を集める能力に加えて、中長期的な制度設計を示せるかが問われる。

国民民主党に必要な党首像

国民民主党が今後さらに議席を増やすには、人気のある代表だけでなく、政策判断の基準を党全体で共有する必要がある。

榛葉氏は有力候補だが、代表個人が変わっても政策が継続する組織を作れるかが重要である。


参政党~吉川里奈氏は党の個人依存を弱められるか

参政党では、神谷宗幣氏が代表、吉川里奈氏が副代表、松田学氏が代表代理、安藤裕氏が幹事長、豊田真由子氏が政務調査会長を務めている。

神谷代表以外から選ぶ場合、吉川里奈氏が候補となる。

吉川里奈氏を候補とする理由

参政党は、神谷氏の発信力、党組織づくり、街頭活動によって拡大した政党である。

しかし、規模が大きくなるほど、創設期の指導者一人に依存する運営には限界が生じる。

吉川氏は副代表として、次の指導者候補に位置づけられる立場にある。

女性、子育て世代、生活者の問題をより前面に出すことで、国家観、歴史、外国人政策などに偏って見られやすい党の政策領域を広げる可能性もある。

吉川氏の課題

副代表であることだけで、党首としての能力が証明されるわけではない。

参政党が掲げる医療、食、教育、農業、主権、外国人政策などには、科学的・法的な検証を要する論点が多い。

党首には、支持者が好む情報だけでなく、反証や専門家の批判も取り上げる姿勢が必要である。

参政党に必要な党首像

参政党に必要なのは、神谷氏以上に刺激的な言葉を使う人物ではない。

党の主張を、統計、法令、財源、政策効果によって検証し、誤りがあれば訂正できる仕組みをつくる人物である。

吉川氏は候補となり得るが、その評価は政策検証と党内統治の実績によって決まる。


チームみらい~古川あおい氏は将来候補だが、現時点で党首交代は早い

チームみらいは、安野貴博氏が立ち上げた政党であり、公式にも安野氏が党首とされている。令和8年衆議院選挙後は11議席を持つ会派となった。

現時点で安野氏を交代させる合理性は低い。

ただし、将来的な候補としては、政務調査会長を務める古川あおい氏が考えられる。

古川あおい氏を候補とする理由

古川氏は厚生労働省、公共政策、データサイエンス、金融機関、技術企業での経験を持ち、令和8年の衆議院選挙で当選後、政務調査会長を務めている。

チームみらいが技術政党から総合政党へ発展するには、行政実務、医療、介護、社会保障などを理解する人材が必要である。

古川氏の経歴は、技術だけでなく社会政策を扱ううえで一定の強みとなる。

現時点では交代させるべきでない理由

チームみらいは誕生から日が浅く、安野氏の理念と組織が強く結びついている。

党の政策体系、組織文化、地方基盤が固まる前に党首を交代すれば、政党の方向性が不明確になる可能性がある。

古川氏は将来候補ではあるが、現在は安野氏の下で政策実績を蓄積すべき段階である。


日本共産党~山添拓氏は世代交代と組織改革を両立できるか

日本共産党では田村智子氏が委員長を務め、志位和夫氏が議長を務めている。

田村委員長以外の候補としては、山添拓氏が有力である。

山添拓氏を候補とする理由

山添氏は法律、憲法、労働、安全保障などについて、論点を整理して説明できる政治家の一人である。

共産党の政策を、従来の支持層だけでなく、若年層や無党派層へ説明する役割を担える可能性がある。

また、長期間にわたって同じ世代の指導部が中心となってきた党において、世代交代を示す意味もある。

山添氏の課題

日本共産党の課題は、委員長一人を若返らせれば解決するものではない。

党内の意思決定、異論の扱い、党員減少、他党との協力、安全保障政策、企業政策などについて、組織全体の見直しが必要になる。

若い指導者を就任させても、従来の意思決定構造が変わらなければ、党の外部からは実質的な変化と評価されにくい。

日本共産党に必要な党首像

共産党に必要なのは、理念を薄める人物ではない。

平和、人権、労働、格差是正という理念を維持しながら、異論を認め、政策変更の過程を公開し、他党と現実的な協議ができる人物である。

山添氏にはその可能性があるが、党首交代と組織改革を一体で行えるかが問われる。


れいわ新選組~山本譲司新代表を中心に、党そのものを再構築する段階に入った

れいわ新選組については、前稿の評価を全面的に改める必要がある。

2026年7月31日に行われた代表選挙では、山本譲司衆議院議員が新代表に選出された。

党の公式活動では「山本ジョージ」の表記も用いられているが、山本譲司氏と同一人物である。

代表選には山本氏、阪口直人前衆議院議員、石井れいこ三鷹市議会議員が立候補し、山本氏が過半数を得た。新代表は、地域の問題を吸い上げて政策を作る、ボトムアップ型の党運営を掲げている。

大石あきこ氏を次期代表候補とする評価が適切でない理由

大石あきこ氏は、山本太郎氏の下で共同代表や政策責任を担った人物である。

しかし、党首候補として評価するには、発信力や支持者への訴求力だけでは不十分である。

党内の異論をまとめる力、他党との政策協議、組織の混乱への対応、選挙結果に対する責任、党外の人々への説明力が必要になる。

れいわ新選組は、令和8年2月の衆議院選挙で山本譲司氏一人の当選にとどまった。党公式の選挙結果でも、比例南関東ブロックの山本氏一人の当選が示されている。

この結果を踏まえれば、従来の執行部の延長線上で党を立て直すより、党運営の原理そのものを再検討する必要がある。

新代表選挙で山本譲司氏が選ばれたことは、党員や構成員が従来とは異なる指導者像を選択した結果と見るべきである。

したがって、現時点で大石氏を代表候補として推す合理性は乏しい。

山本太郎氏の辞任と、れいわの転換点

山本太郎氏は、健康上の問題などを理由として代表辞任と政界引退を表明した。

辞任会見では、自身が代表でなくても党が動く仕組みづくりを進めてきたと説明している。

れいわ新選組は、山本太郎氏の演説力、知名度、個人的な求心力によって成長した政党である。

その功績は大きい。

一方で、代表個人への依存が強かったため、代表の健康問題や活動縮小が、そのまま党全体の危機につながった。

山本譲司新代表に求められるのは、山本太郎氏の話し方や政治手法を再現することではない。

山本太郎氏が一人で担っていた役割を、複数の責任者へ分けることである。

山本譲司氏を評価するうえで避けて通れない過去

山本譲司氏は、過去に秘書給与をめぐる事件で有罪判決を受け、服役した経歴を自ら公表している。

党の公式プロフィールでも、その過去を隠さず、服役中に高齢者や障害者の置かれた状況を知り、その後の福祉活動や更生支援へつながったと説明している。

この経歴をどのように評価するかは慎重でなければならない。

過去に有罪判決を受けたという事実は、政治家として軽視できない。

公金や政治活動に関する不正であれば、特に説明責任が問われる。

一方で、刑を終えた人物が、その経験を基に福祉、更生支援、再犯防止へ取り組むことまで否定すべきではない。

法治国家では、刑を終えた人物の社会復帰も重要な原則である。

したがって、山本氏を評価する際には、過去を隠していないか、責任を認めているか、その後の活動に一貫性があるか、新たな不正がないかを確認すべきである。

過去の一件だけで永久に排除することも、現在の福祉活動を理由に過去の責任を消すことも、どちらも適切ではない。

山本譲司新代表に期待できる点

第一に、福祉や社会的孤立を、理念ではなく現場経験から語れることである。

山本氏は、服役経験や更生支援活動を通じて、刑務所、高齢者、障害者、出所者などの問題に関わってきた。

れいわ新選組が従来掲げてきた「弱い立場の人を切り捨てない」という理念を、より具体的な福祉政策へ発展させられる可能性がある。

第二に、地域の問題を吸い上げるボトムアップ型の党運営を表明していることである。

山本太郎氏の街頭演説を中心とする党から、地方議員、党員、当事者団体、地域組織が政策形成に関わる党へ変わるなら、組織としての持続性は高まる。

第三に、個人中心型の政党から制度中心型の政党へ移行する機会になることである。

山本譲司新代表の重大な課題

第一に、党の信頼回復である。

山本氏自身の過去に加え、党勢の縮小、離党者、内部対立、山本太郎氏への依存など、複数の問題を抱えている。

新代表は、批判を敵意として退けるのではなく、党内外からの検証を受け入れなければならない。

第二に、消費税廃止や積極財政を、標語ではなく制度として説明することである。

山本氏は代表就任時、消費税廃止を引き続き訴える考えを示した。

しかし、消費税を廃止するなら、地方消費税を含む税収減をどう補うのか。

社会保障財源をどう確保するのか。

供給力が不足する局面で物価にどう影響するのか。

国債発行をどこまで許容するのか。

これらを具体的に説明する必要がある。

第三に、攻撃的な政治文化を改めることである。

れいわ新選組の一部の発信では、政府、他党、報道機関、批判者を強い言葉で非難する傾向が見られた。

支持者を熱狂させることはできても、他党との法案協議や幅広い有権者の信頼にはつながりにくい。

山本新代表が掲げるボトムアップ型運営が本物であるなら、党内の反対意見や批判者の声も政策へ反映しなければならない。

第四に、山本太郎氏の影響力との関係を整理することである。

創設者への敬意は必要である。

しかし、新代表の決定が常に前代表の意向によって左右されるなら、代表交代は形式的なものになる。

れいわ新選組に必要な再構築

れいわ新選組を倫理的・論理的に再構築するには、少なくとも次の改革が必要である。

1.責任と権限を明確にする

代表、幹事長、政策責任者、国会対策責任者、選挙責任者の権限を分ける。

誰が何を決めたのかを公開する。

2.代表選挙と役員選任を定例化する

代表交代が危機時だけに行われるのではなく、一定期間ごとに党員が選択できる仕組みにする。

3.政策の費用と副作用を示す

消費税廃止、給付、社会保障拡充などについて、利益だけでなく、財源、物価、地方財政、実施時期を明示する。

4.党内の異論を認める

政策に反対した議員や党員を敵視せず、少数意見を記録する。

5.個人攻撃を禁止する

政府や他党への批判は、政策、法案、予算、発言記録に限定する。

支持者による過度な攻撃にも明確な態度を示す。

6.地方議員と当事者の声を政策へ反映する

ボトムアップを掲げるなら、地域組織から提出された意見が、どのように政策へ反映されたかを公開する。

れいわ新選組の現段階の評価

れいわ新選組については、もはや「現職代表以外なら誰がよいか」を論じる段階ではない。

山本譲司氏が2026年7月31日に新代表へ選ばれた直後であり、まずその運営を検証すべき段階である。

したがって、本稿の結論は次のようになる。

れいわ新選組では、新たな代替候補を探すより、山本譲司新代表がボトムアップ型運営、政策の具体化、組織の透明化、攻撃的文化の修正を実行できるかを見極めるべきである。

山本氏がこれらを実現できなければ、代表交代は人物の入れ替えにとどまる。

実現できれば、山本太郎氏の個人的求心力に依存した政党から、制度によって存続できる政党へ移行する転機となる。


社会民主党~大椿ゆうこ氏は党の世代交代を担えるか

社会民主党では、令和8年4月の党首選挙で福島みずほ氏が再選された。

再選挙では、福島氏が2364票、大椿ゆうこ氏が1792票を獲得している。

現職以外の候補としては、大椿氏が最も自然である。

大椿ゆうこ氏を候補とする理由

大椿氏は党首選で相当数の支持を得ており、党内で実際に後継候補として認められた人物である。

非正規雇用や労働問題に取り組んだ経験があり、社民党の労働、人権、社会保障という理念との整合性もある。

大椿氏の課題

社民党の問題は、党首を交代すれば解決するものではない。

国会議員数、地方組織、資金、候補者育成、政策立案人材が不足している。

また、令和8年の党首選後の記者会見では、大椿氏らへの発言機会をめぐって会見運営が問題となり、福島党首が配慮不足を謝罪した。

少数意見や党内対立をどう扱うかは、社民党自身が掲げる民主主義や人権の理念にも関わる。

社民党に必要な党首像

社民党には、福島氏の知名度に依存する状態から脱し、地方議員、労働運動、若い党員を結びつける人物が必要である。

大椿氏は候補となるが、党内対立を激化させるのではなく、世代交代を組織再建へつなげられるかが問われる。


日本保守党~有本香氏は候補になり得るが、党首交代だけでは個人依存は解消しない

日本保守党では百田尚樹氏が代表・創設者、有本香氏が事務総長を務めている。

現職代表以外から選ぶ場合、組織運営を担う有本香氏が候補になる。

有本香氏を候補とする理由

有本氏は事務総長として、党務、候補者、組織運営に深く関与している。

百田氏の知名度だけでなく、実際の政党運営を理解している人物という点では、後継候補として自然である。

有本氏の課題

日本保守党は、百田氏と有本氏の二人への依存が強い。

代表を百田氏から有本氏へ交代しても、少数の創設者に権限が集中する構造が変わらなければ、組織政党への移行にはならない。

また、保守的な価値観を語るだけでなく、財政、社会保障、医療、地方経済、農業、外交を総合的に扱う政策体制が必要になる。

日本保守党に必要な党首像

日本保守党に必要なのは、百田氏と同じ言葉を使う人物ではない。

保守理念を法案、予算、行政制度へ変換し、党内に複数の政策責任者を育てられる人物である。

有本氏は候補となるが、個人中心型の組織を制度中心型へ変えられるかが評価の中心となる。


各党に共通する最大の課題~代表個人への依存

現在の日本の政党には、代表個人の知名度や発信力に依存する傾向がある。

国民民主党は玉木雄一郎氏。

参政党は神谷宗幣氏。

チームみらいは安野貴博氏。

れいわ新選組は長く山本太郎氏。

日本保守党は百田尚樹氏。

こうした人物の発信力が、政党の成長に貢献したことは否定できない。

しかし、その人物が離れたときに党が機能しなくなるなら、政党として成熟しているとはいえない。

成熟した政党には、少なくとも次の機能が必要である。

  • 党の理念を説明する代表
  • 政策を設計する責任者
  • 国会を運営する責任者
  • 選挙と候補者育成を担う責任者
  • 地方組織をまとめる責任者
  • 財政、法令、統計を検証する専門組織
  • 代表に反対意見を述べられる幹部

最も優れた党首とは、自分以外の有能な政治家を排除する人物ではない。

自分が退任しても機能する政党を残す人物である。

令和8年の日本に必要な党首の共通条件

第一に、利益だけでなく費用を説明できること

減税、給付、防衛、教育、医療、公共交通、社会保障には費用が伴う。

誰が利益を得るのかだけでなく、誰が負担するのかを説明できなければならない。

第二に、支持者以外へ説明できること

支持者だけを喜ばせる政治家は、党内の人気者にはなれても、国全体を率いることはできない。

反対する有権者の疑問に答えられる人物が必要である。

第三に、誤りを修正できること

一度示した政策を絶対に変えないことが、信念の強さとは限らない。

事実や環境が変われば、政策も修正する必要がある。

第四に、地方の生活基盤を理解していること

大都市では市場で維持できるサービスも、人口減少地域では維持できない。

病院、学校、鉄道、バス、上下水道、介護などを、採算性だけで判断しない人物が必要である。

第五に、党内の異論を排除しないこと

党首の意見に反対した議員を敵視する政党は、政策の誤りを修正できない。

少数意見を記録し、議論できる組織が必要である。

総合評価

現職党首以外を前提にした場合、現段階の候補は次のように整理できる。

自由民主党では小林鷹之氏。

中道改革連合では岡本三成氏。

国民民主党では榛葉賀津也氏。

参政党では吉川里奈氏。

日本共産党では山添拓氏。

社会民主党では大椿ゆうこ氏。

日本保守党では有本香氏。

日本維新の会は、現在の代表・共同代表を除く明確な全国党首候補がまだ育っていない。

チームみらいでは古川あおい氏が将来候補になり得るが、現時点で安野貴博氏を交代させる合理性は低い。

れいわ新選組では山本譲司氏が2026年7月31日に新代表へ選ばれたばかりであり、次の候補を探す段階ではない。

山本新代表が、党の透明化、ボトムアップ型運営、財源を含む政策説明、個人依存からの脱却を実現できるかを検証すべき段階である。

結論~望ましい党首は、支持者を最も熱狂させる人物ではない

党首は、政党で最も有名な人物である必要はない。

最も攻撃的な人物でも、最も交流サイトで拡散される人物でもない。

必要なのは、党の理念を政策へ変え、費用を説明し、異論を調整し、他党と交渉し、誤りを修正できる人物である。

また、現職党首以外の名前を挙げること自体が目的であってはならない。

代替候補が育っていないなら、その事実を指摘すべきである。

新代表が選ばれた直後なら、その人物の実績を確認するべきである。

現職が党の発展に必要なら、交代を急ぐべきではない。

れいわ新選組の代表交代は、この問題を象徴している。

山本太郎氏の強い個人的求心力によって成長した党が、山本譲司新代表の下で、制度と組織によって存続できる党へ変われるのか。

これは、れいわ新選組だけの問題ではない。

日本のすべての政党に共通する課題である。

党首交代が政党の危機になるのではなく、党首交代によって政策と組織が更新される。

そのような政党が増えることが、議会制民主主義を安定させるために必要なのである。